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296話 最終決戦⑨

無事に退院出来ました。

まだ本調子ではないので更新が遅くなりますが・・・


「フローリアよ、これで終わったな。」


ルナが安堵した表情でフローリアに視線を送っていた。


「それにしても・・・」


フローリアに送っていた視線を今度はレンヤ達へと移す。


「妾の祖先といい、ダークエルフの宿敵でもあったエンシェントエルフである奴の子孫までいるとは・・・、しかもだぞ、妾は封印されていたから事の顛末は知らんが、妾の再来と言われた堕天女神のガーネットの魂の欠片、そして旦那様より別れた魂もこの世界に集まっていたとはな。」


レンヤ達を見て微笑んでいたルナがジロリとフローリアを睨んだ。

その視線にフローリアがブルっと震える。


「な、何でしょうか?」


「フローリアよ、お前はこの世界の管理者だよな?この世界にこれだけの神界に関係している者が集まっているのは不自然だぞ。何か知っているのではないのか?」


ルナの鋭い視線を受けていたフローリアだったが、優しく微笑み顔を空へと向けた。


「実は私もよく分からないのですよ。でもね、旦那様の・・・、かつて初代創造神と呼ばれていた頃、彼は全ての神を救おうとしていたみたいなの。かつてのラグナロクで倒れた仲間達はもちろん、敵として対立していた者までも救おうと計画していたわ。私も全てではないけど、かつての記憶が一部蘇って、その計画を知ったの。」


「かつての敵?それは妾達の事か?」


「そうよ。」


空を見上げていたフローリアが顔を下げルナに微笑んだ。


「初代創造神様の願い・・・、それは敵も味方も関係なくみんなが笑い合える争いの無い世界・・・、それを目指していたの。当時はラグナロクの戦いの爪痕が大きく、いつかの未来で再び巡り合い共に・・・、との願いを込めて初代創造神様は全ての力を使いアカシックレコードを操作したみたいね。」



「甘い!甘いな!そんな甘い連中がこの神界を治めている?そして妾もその温情でお前達の仲間に入れてもらった訳か?」



鋭い視線でフローリアを睨んでいたルナが更に鋭くなった視線をフローリアへ向ける。


しかし、その鋭い視線も一瞬で和らぎ、フローリアと同じような優しい微笑みで空を仰いだ。


「だが悪くはない。遥か昔から蘇った妾は周りにはもう誰もいなかった。そんな妾に居場所を作ってくれたのは旦那様とお前達だからな。」



「そして・・・」




「この居心地はかつて味わう事はなかった心地良さを感じる。妾の心に空いた穴を埋めるように・・・、これが幸せという感情なんだろう。」




「ルナさん・・・」


フローリアの言葉に空を見上げていたルナが視線をフローリアへと戻す。


「そんな顔をするではない。妾も父もあの時の狂気は邪神王となった者の宿命だった。負の感情があそこまで強力だったとはな。自分では最強の神と自負していたが、あの狂気に呑み込まれ自我を無くし破壊衝動のままに行動して滅ぼされる・・・、それが大いなる意志の導きだろう。そして、その大災害をラグナロクと呼び、神界の神々の人口調整や、より強力な神を選別するものだったと思う。」


「そうでしょうね・・・、本当に厄介な意思ですよ。その大いなる意志と呼ばれるものはね。」


フローリアが「はぁ~」と大きなため息を吐くと、ルナも同じようにため息を吐いた。


「その大いなる意志の働きの結果で旦那様とお前のような化け物が生まれた訳だな。数多の神をも滅ぼした邪神王すら足元にも及ばない絶対的な存在がな。そのような絶対的な存在を生み出す事に何の意味があるのだろうな?」


「そんな大袈裟な。大いなる意志がどんな目的を持っているかが分かりませんが、私は私、旦那様は旦那様ですよ。」


「そうだな・・・、しかし、大いなる意志は・・・」


フローリアを見つめていたルナが、今度はレンヤ達へと視線を移す。


「この世界にも多少なりとも大いなる意志の介入があったかもしれんな。スケールは桁違いに小さいが、どう見てもこの世界は神界を模した世界のようになっている。新たに邪神王も生まれ、人が神をも倒す進化をしている事も、大いなる意志が関係しているかもしれん。かつてその意志に呑み込まれはしたが、自分を取り戻した妾がそう感じるぞ。」


「でもね、ルナさん・・・」


フローリアもルナと同じくレンヤ達へと視線を移した。


「大いなる意志が何を目的にこの世界を実験台にしようとしたか分かりませんが、この結果を導き出したのはレンヤさん、そして彼女達の意志ですよ。誰も大いなる意志に影響はされていないと思いますね。そしてこの世界は私からの手を離れ、新しく神となる彼らがより良い未来を創造していくものだと思います。」



「ところでだ?この戦は大いなる意志でないとなるとだな・・・」


クスッとルナが微笑んだ。


「彼らのシナリオを作ったのはフローリア、お前なのか?」


その言葉にフローリアが首を横に振る。


「私は何もしていませんよ。まぁ、彼らの願いを叶えるお手伝いは少しだけしましたけど、全ては彼らが自ら考え行動していましたね。見ている私は彼らがどんな事をするのだろうか?とワクワクしていましたよ。」




「それにね・・・」




「普通の勇者もののストーリーだと勇者が魔王を倒して平和が訪れるエンディングですけど、彼らのように勇者と魔王が結ばれるハッピーエンドも悪くないわね。」


パチンとフローリアがルナにウインクをし、ルナもフローリアと同じようにウインクで返した。


「妾も同じ意見だ。物語はハッピーエンドで終わってこそ価値がある。」






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






「レンヤさん・・・」


ジッとアンと見つめ合っていたが、不意にアンが俺から視線を外した。


アンの視線の先には・・・


ラピスとソフィアがいて俺をジッと見ている。


「私はもう十分よ。だから、ラピスさんとソフィアさんにも幸せのおすそ分けをね。」


そう言ってアンが微笑み俺から離れた。



俺は少し離れていた2人へと体を向ける。


ジッと俺を見ていた2人だったが、細かく震えているのが見える。


しばらくすると・・・


2人の瞳から大粒の涙がポロポロと流れ始めた。



「レンヤ・・・」


「レンヤさん・・・」



泣き顔のまま2人が駆け出し俺へと抱き着く。



「泣かないって決めていたのに・・・、あの時とは違うし、絶対にレンヤは勝つと分かっていたのに・・・、それでも何だかね・・・、あの時の事を思い出してしまって・・・、またレンヤがいなくなってしまうと思って・・・、ゴメンね、こんな時に変な事を言って・・・」



「私、ちゃんとレンヤさんを守れたのね?もう弱い私じゃないのね?あの時のようにレンヤさんが冷たくなっていない・・・、温かいよぉぉぉ・・・、もう私を置いていかないで・・・」



(そうか・・・)



500年ぶりに再会した時は確かにあの時のトラウマを抱えていると感じていた。

しかし、ずっと一緒にいるうちに彼女達からはそんな雰囲気は全く感じる事は無く、トラウマは解消したものだと思っていた。

俺は全く分からなかったけど、やはり、あの500年前の俺が死んだ事はずっと心に残っていたんだな。

最後の最後に魔王と相打ちになったのを・・・



深い・・・、深い心の傷となって今でも癒える事も無く・・・



その傷を抱えたままの2人は、俺とダリウスの戦いもあの時の光景を重ねていたのだろう。


戦いに絶対は無い・・・


ひょんな事からまた同じ過ちを繰り返すかもしれないと、心の片隅で思いながら・・・



(本当に済まない!)



しがみつく2人をギュッと抱きしめると落ち着いたのか、2人の涙も止まりしばらく3人で抱き合っていた。



「落ち着いたか?」


俺の言葉に2人はゆっくりと頷く。


「俺はもう2度とお前達から離れないと誓っただろう?だから、俺を信じて付いてきてくれないか?」


「そうね・・・」


ラピスがニコッと微笑んで俺を見つめる。


「だったらね・・・」


「何だ?」


「レンヤとアンを見ているとアンは1番なのは仕方ないけど、私は2番目に愛して欲しいな。隣の胸だけが無駄に大きいエセ聖女よりもね。」



ピキッ!



(ヤバい!)


ラピスの隣から絶対零度の凍気が湧き上がってくる。

このままじゃ俺の全身が凍りつきそうだ!



ゴゴゴゴゴゴォォォォォ



「あら?ラピスさん、今、何を言ったのかな?ツルッとペタペタなとっても慎ましい胸のダメダメ賢者がぁぁぁぁぁ~~~」



ブチッ!



「ソフィアァァァ~~~~~~、言って良い事と悪い事があるんじゃないかな?聖女の肩書を持っているのにそんな事も分からないのかな?やっぱり脳味噌まで筋肉だから馬鹿なのかな?」


ハイライトの無い瞳でラピスがソフィアへと顔を向ける。


「ふふふ・・・、あんたの胸が薄いのは脳味噌も薄いからよ。スカスカな頭の中身がそのまま胸の大きさで表れているのに気付かないなんて・・・、何て可哀想なのかしら・・・」


(ヤバい!ヤバい!ヤッバぁあああああああああああああああっっっい!)


ソフィアもラピスと同じようにハイライトの無い瞳をラピスへと向けている。



ギリギリ・・・



(うっ!)



2人からの抱きつく力がドンドンと強くなってくる!


(このままじゃ!)



ミシミシ・・・



いかん!俺の全身のあちこちの骨から聞こえてはいけない音が聞こえ始める!


しかもだ!


(く、苦しい・・・、意識がぁぁぁ・・・)




2人からの締め上げで意識が段々と遠くなってくる。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






「あのアホ共は何をやっているのだ?」


エメラルダが呆れた表情でレンヤ達を見ている。


「旦那様の最大の敵はダリウスではなく、やっぱりあの2人だったな。ふふふ・・・、女の嫉妬は怖いな。」


呆れた表情はそのまで、今度はアンジェリカへと視線を移した。


「だけどな、アン、お前は大丈夫なのか?アレを見ていると少しはお前も嫉妬しそうに見えるが?私は再婚だからあの2人程には嫉妬はしていないが、それでもアレはちょっと怖いものがあるぞ。」


エメラルダの言葉にアンジェリカは笑顔で微笑む。


「エメラルダ、それは大丈夫よ。レンヤさんは私を1番と言ってくれたからね。私はその言葉だけで十分だしね、うふふ・・・」


そして嬉しそうな表情でレンヤへと顔を向けた。


「あぁぁぁ、熱い!熱いな!あの当時はお前が恋にこれだけ燃え上がるようになるとは想像もしてないかったよ。でもな、私はお前の親友として応援しているからな。旦那様の1番の座を絶対に誰にも渡すなよ。」


その言葉にアンジェリカが元気よく頷いた。


「もちろん!分かっているわ!」


アンジェリカの言葉にエメラルダも嬉しそうに頷く。


「その笑顔なら私も安心だ。女の私でもドキッとするしな。頑張れよ。」


本年はありがとうございました。


来年もよろしくお願いします。


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