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291話 最終決戦!④

「さて、そろそろだな。」


クローディアさんが上空を見上げ呟いた。


「マスター・・・」


アルファがジッと俺を見つめる。


2人の様子でそろそろ決着の時間が迫ってきたと理解した。


アンとテレサも俺を見て頷く。

アーク・ライトを握る手に力が入った。


「ラピスとソフィアがお膳立てしてくれた戦いの最後の仕上げだ!」




クローディアさんが言った通りだった。



ドチャッ!


ソフィアの攻撃からかなり長い時間が経過してからだったが、打ち上げられていたダリウスが床へと落ちてくる。



「ぐがががぁぁぁ・・・」



力無く横たわっている姿からは先程までの強気な神気は感じられなかった。


あれだけ巨大だった姿のダリウスだったが、今、落ちてきた時の姿は最初に魔王の体を取り込んだ姿ほどの大きさしかない。

しかもだ!

あの筋骨隆々とした魔王の姿ならまだマシだったけど、ガリガリに痩せ細りまるで重病人のような姿までになってしまっていた。


「レンヤ・・・」

「レンヤさん・・・」


ラピスとソフィアが俺をジッと見つめた。


「アレは腐っても邪神だから、あの見た目に騙されちゃダメよ。」

「そうよ、例の宝玉には手をだしていないし、油断したら一気にひっくり返されるわよ。」


2人からしっかりと注意されたよ。


確かに彼女達は直前までダリウスと戦っていたんだし、あいつの事は俺以上に分かっているだろうな。



「くそがぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」



ダリウスが絶叫しながら立ち上がる。


しかし、2人からの攻撃で相当なダメージを受けのだろう。

立ち上がっているが、少しフラフラとして足元もおぼつかない感じだ。


(だけど!)


決して油断は出来ない!


自分自身で『不死の神』と豪語しているからな。

さすがにあの巨大化は無理だろうが、最初に俺達を圧倒していた力くらいは残っているだろう。


アンもテレサもこの事が分かっているからか、ダリウスを見る視線は真剣なものだった。


アルファが俺の前に浮かんだ。


「マスター、私達聖剣の真の力を開放します。」



「ミーティア!」

「デスペラード!」



テレサとアンの驚いた声が聞こえる。


(どういう事だ?)


ガンマとベーターは相変わらすテレサとアンの横に浮いている。


しかしだ!


聖剣ミーティアと魔剣デスペラードは俺の前に浮いているアルファの横に一緒に浮いていた。



ヒュン!



俺の手に握られていたアーク・ライトも俺の手から勝手に離れ、アルファの前で浮いていた。


「アルファ・・・、一体何をするつもりだ?俺達の手から聖剣を離して?」


俺の言葉にアルファはただニッコリと微笑んだ。


「マスター、あのダリウスを確実に倒すには私達の力を合わせなくてなりません。遙か昔、神々の血で血を洗うような激しく長い戦いを憂いたデウス様が、その戦いを収束させようとして創造された兵器、それが私達でした。」


しかし、アルファの笑顔が痛々しく感じる。


「しかし、私達がロールアウトした時は既に戦いは終わっていました。そして私達は長らく封印されていたのですよ。」


「だけど、どうして君達はこの世界に?聖剣として?」


「それは私には分かりません。全てはデウス様のお考えですからね。多分ですが、心当たりはあります。マスターの魂がこの世界に転生されたのを、デウス様が無意識に感じ取っていたかもしれません。

現在、マスターと合体した蒼太様の前世は、かつてはデウス様の親友でしたから・・・」


(蒼太さんが?)


そうなると、かつての俺はデウス様と繋がりが?

フローリア様を始め神々の方が俺に次々と関わってきたのは、そういう事だったのか。


「時間があまりありませんので、このお話は終りにしますね。」


「そうよ、今はこんな話をしても混乱するだけ、戦いに集中させないとね。」


銀髪のベーターが少しツンツンした雰囲気でアルファに話しているよ。

何だろうな?口調がテレサに似ている気がするけど?


「そうですよ、ほら見てください、ダリウスの再生が既に始まっていますよ。みなさんが繋いでくれたこのチャンス、確実にモノにしなければ怒られますからね。」


今度は黒髪のガンマが口を少し尖らせている。

こっちはこっちでアンと口調が似ているよ。


思わずクスッと笑ってしまう。


「マスター、何が可笑しいのですか?」


ジトーとした目でアルファが俺を見ている。


「いやな、こうして見るとアルファ達って本当の姉妹に見えると思ったんだよ。見た目だけじゃなくて、やり取りがな。」


「そうなんですか!」


とても嬉しそうにアルファが笑っている。

最初に見た頃の無表情な顔とは全く違っていた。


それはベーターもガンマもそうだな。


「ふふふ・・・、やる気が倍増ですよ!私達3姉妹の本当の力!見せてあげますよ!」


ザッとアルファが右手を頭上に掲げた。



「ベーター!ガンマ!モードGよ!マスターの力に!」



アルファが叫ぶと2人が頷いた。


アーク・ライトが激しく金色に輝き始めた。


(何が起きる?)


輝いているアーク・ライトの周りをミーティアとデスペラードが回り始めた。



カッ!



「うっ!」


あまりの眩しさに目を開けられない。



「何だぁあああああああああ!何が起きているんだ!」



俺達の遥か下の床の上にいるダリウスが叫んでいる。



スゥゥゥ・・・



「これは?まさか?」


徐々に輝きが収まりアーク・ライトの姿が再び見えるようになってきた。


(いや、これは?)


確かに金色に輝いている剣だが、今までのアーク・ライトの姿とは全く違っている。


思わずクローディアさんを見つめてしまった。

彼女は俺と視線が合うとニヤリと笑う。


目の前に浮いていたアーク・ライトは・・・



まるでクローディアさんが神器になった姿と同じ巨大な黄金の剣と変化していた。



「驚いたか?」


クローディアさんは全てを理解しているかのように俺を見つめている。


「これが聖剣の真の姿、その名も『ラグナロク』だ。」


「ラグナロクですか?」


「そうだ、始まりの神器である『唯我独尊』の対となっている幻の神器だよ。さぁ!その力を解き放て!『神々の黄昏』と呼ばれる真の神殺しの剣の力をな!」


クローディアさんが叫ぶとアーク・ライト、いやラグナロクがゆっくりと俺の前に移動する。


右手を伸ばし剣を握った。



ドクン!



(!!!)


とてつもなく強い力が俺の中に流れ込んでくる。


(この力なら!)


一気に急降下を行いダリウスの前に降り立った。

ラグナロクを肩に担ぎ対峙した。


「貴様ぁあああああ!これは何なのだぁあああああ!何で神器クローディアが2本もあるんだ?しかもだ!この出鱈目な力は何ななのだよぉおおおおおおおおおおおおお!」


俺の目の前でダリウスが絶叫している。


「黙れ!」


肩に担いでいた剣を上段に構え一気にダリウスへと振り下ろす。



ドォオオオオオオオオオオオン!



「あれ?」


斬撃がダリウスへと当たらずに、ダリウスの横の何も無い床を大きく切り裂いただけだった。

今の斬撃がダリウスに当たれば、さすがにあのダリウスですら致命傷になるはずなのに!


マズい!

ラグナロクの圧倒的な力に俺の技量が追い付いていない。

ただ剣に振り回わされるだけの斬撃になってしまった。


「ぶひゃはははははぁああああああああああ!笑わせてくれる!剣の持つ力を制御出来ないなんてなぁああああああああ!」


(くそぉおおおおおおおお!)


「だったら!その力に慣れる前に貴様を殺してくれる!」



ブゥン!



ダリウスの手に巨大なデスサイズが握られる。

まるで死神のような姿に変貌したダリウスにピッタリの武器だ。


その巨大な鎌を俺に振り下ろした。


「ちっ!」



ガキィイイイイイイイイイ!



辛うじてラグナロクで受け止める。


「マスター!」


俺の隣で心配そうな顔でアルファが見つめている。


(くそぉおおおおおおおお!)


情けない!

折角、蒼太さんまでが協力してくれて最強と呼ばれる体になったはずなのに、俺の技量が全く追い付いていない!


「ぐふふふ・・・」


醜悪な表情のダリウスが上から俺を見降ろす。


「今の貴様の姿になった時はヒヤッとしたが杞憂だったな。人間が神の肉体を手に入れようが、それは過ぎた力、あまりにも強過ぎる力は逆効果だったようだな。それは貴様が未熟!それだけだぁああああああああああ!未熟!未熟!未熟ぅうううううううううううううう!」



「うるせぇええええええええええええ!」



ドカッ!



力任せに剣を振りダリウスを突き飛ばす。


「俺を突き飛ばすなんてなぁあああああああああああ!生意気なんだよぉおおおおおおおおお!」


ダリウスが大鎌を真上から振り下ろしてくる。


「くっ!」


その斬撃を剣で受け流し鎌が床に刺さる。


「隙あり!」


一瞬、硬直したダリウスの隙を突き、剣を横薙ぎに振りぬいた。


「甘いわぁあああああああああああ!!


ガキッ!


その隙はダリウスがワザと作った誘いの隙だった。

すぐさま新しい大鎌を生成し、俺の剣を受け止める。


カッ!


(マズい!)


ダリウスの瞳が光った瞬間、ビームのようなものが瞳から発射された。

そのままだと、俺の眉間を貫通してしまう!


その光線を首を捻ってギリギリに躱す。


バキィイイイイイイイイイ!


あ互いに武器を押し合い、一気に跳躍し距離をとって再び対峙する。



「はぁはぁ・・・」


「げへへ・・・」



くそ、ダリウスは本当に無限の体力でキリがないのか?


(でもな!)


「そんなのは関係ないんだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


ラグナロクを水平に構え一気に飛び出す。


ガキィイイイイイイイイイ!


俺の突進にダリウスは大鎌で受け止めた。


「まだだぁああああああああ!」


受け止められた反動を利用し、今度は俺が上へと飛び上がる。

剣を一気に頭上へと構え振り下ろした。


ギィイイイイイイン!


「これで終わりじゃないぜぇえええええ!」


次は右から!そして下から!


休む間も無く俺はダリウスへと切りかかる。



「ぐぅうううううううう!」



ダリウスから苦悶の声が響き始めた。



キン!


キン!


キン!



果てしなく剣と大鎌の打ち合いが続く。



(不思議だ・・・)



最初の頃の打ち合いは体と技術が噛み合っていない感じだったけど、打ち合いを続ける度に体に技術が馴染んでくる気がする。



ザシュ!



とうとうダリウスの体に俺の剣が届いた!


まだ脇腹を浅く切り裂いただけだ。


しかし!


傷を負ったダリウスが信じられない顔で俺の剣を見ていた。


「バカなぁあああああああああああ!傷が再生しない!その剣は一体何ななのだよぉおおおおおおおおおおおおお!」


「この剣はぁあああああああああ!」


グッとラグナロクを下段に構えた。


「真の神殺しの剣!貴様のような邪悪を滅ぼす剣だぁあああああああああああ!」



ザン!



キィイイイイイイイイイッン!



ダリウスの大鎌の刃が半分に折れ宙に舞う。



「バカなぁあああああああああああ!」



信じられない顔で宙に舞っている大鎌の刃を見つめていた。



ズバババァアアアアアアアアアアアアアア!



一瞬でダリウスの両腕を肩から切り飛ばす。


正眼の構えでラグナロクを握り、両腕を失い棒立ちになっているダリウスと対峙する。



スタタッ!



アンとテレサが俺の両脇に立った。


「レンヤさん!」

「兄さん!」


そのまま2人の手が剣を握っている俺の手に添えられた。



「3人の力を合わせて!」



俺が叫ぶとアンもテレサも頷く。


アルファが俺に上に、ガンマがアンの上に、ベーターがテレサの上に浮いている。


アンから漆黒のオーラが湧き上がり、テレサからは白銀色のオーラが湧き上がった。



「行くぜぇええええええええ!」



俺からは金色のオーラが立ち上る。


「ダリウス!これで終わりだぁああああああああああああああああ!」



バサッ!



俺達3人の翼が大きく広がりフワッと浮かぶ。

3人のオーラが螺旋となってダリウスへと伸びていく。




「「「三位一体!神気!穿孔撃!」」」




一気にダリウスへと飛び出した。






ドン!






「あへぇぇぇ・・・」



ダリウスの情けない声が響いた。



そのダリウスの胸の中央には大きな穴が開いている。


俺達3人が1本の光の矢となって、ダリウスの胸の中央にあった宝玉を貫いた。





「これで終わりだ・・・」


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