表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

290/335

290話 最終決戦!③

「その力をこの拳に乗せて!あんたへと叩き込む!」


エメラルドグリーンから金色に変化したソフィアの瞳が巨大なダリウスを見据える。


グッと突き出した拳も瞳と同じように金色に輝いていた。






(ソフィアの強さ・・・)



昔から変わっていないな。


500年前の時、初めてソフィアに会った時は「この子が?本当に大丈夫なのか?」と思ったよ。


ソフィアの第一印象はそうだった。


ラピスが


『フォーゼリア王国の大聖堂に聖女が誕生します。魔王を倒す為にその聖女と一緒に戦いなさい。』


とのフローリア様の神託を受けたのだよな。


そうやって大聖堂へ赴き、聖女の称号を得たソフィアを仲間にした。


それから約1年、旅を続けた。


最初の頃のソフィアは戦いなんて全くダメで、いつもアレックスの後ろに隠れて治療や身体強化の魔法をかけてくれていた。

あの頃の俺は勇者でありながら自分の事しか考えない嫌な男だったし、ソフィアは正直足手纏いと思っていた。


でもな・・・


ソフィアは聖女の称号もあって戦いは苦手だったけど戦闘以外の事は本当に頑張っていたよ。


魔族領に近づくにつれ魔王軍との戦いも激化し、一般市民達にも魔族の被害が大きくなっていた。

そんな人達を精力的に治療し、親を失った子供達にはまるで母親のように優しく接して、市民達の心の支えになっていた。


何で見ず知らずの人にもここまで尽くせるのか?と聞いた事があったな。


その時のソフィアの顔は今でも忘れない。


ニッコリと微笑んで


「私の家族は私以外を残して全員魔族に殺されました。10年以上前になりますが・・・、そして私は孤児として教会に引き取られ、シスターとして活動していたのです。生き残った私には何か出来る事はないか?そして気付いたのですよ。私には確かに戦う力はありません、ですが、怪我を治したり困った人を助ける事が出来るはずと・・・、私の頑張りでみんなが笑顔になれるならいくらでも頑張れます。そして、いつかはレンヤさんも笑顔にしたいって・・・」


そう言っていたよ。


あの時の俺はソフィアの言った意味は分からなかったけど、今ならその意味が分かる。


ソフィアの力の源はみんなの笑顔なんだってな。

その為ならいくらでも頑張れるし、それ以上に人が傷つくのを嫌がる。

だからなんだろう・・・

ダリウスに虐げられてきた人達の痛みが理解出来て、その痛みにとても怒りを感じている事もな。


今のソフィアは神に匹敵する力を手に入れた。


その力の使い方は



【力無き者達の為の牙になる!】



それを本気で実践している。


だからだろうな・・・


ソフィアにはみんな自然と力を貸してくれる。

フローリア様を始め師匠である美冬さんもそうだし、いつもは喧嘩しているけどラピスも何だかかんだで親友だしな。

それにテレサもそうだけど、みんながソフィアを慕っているよ。



ソフィア・・・



お前の信念、最後まで貫き通せよ。


ダリウスなんかじゃお前を止められないって見せてやれ!




しっかしなぁ~~~




ソフィアの信念は昔から変わっていないのは分かったし、人の痛みは自分の痛み以上に感じる事も知っている。

そして、昔はいつも俺達の一歩後ろに立っていた奥ゆかしい女性だったはずなんだけど・・・



今では・・・



う~ん・・・



戦いにおいては完全に戦闘民族のソレみたいになってしまったよ。

確かにとっても頼りになるが、あまりにもねぇ?

例の1万年の及ぶ修行はソフィアの精神構造すらも変えたのかもな。



とっても好戦的な性格に・・・



そんなソフィアを相手にするのだ。


ある意味、ダリウスも可哀想かもしれん。



だからといってダリウスには全く同情もしないし、これからの世界の為にも確実に滅ぼすけどね。





ダン!


ソフィアが一歩前に踏み出す。


「あんまりダラダラしてもキリがないし、この一撃をもって私の最後の攻撃にするわ!」


膝を付いていたダリウスだったが、ソフィアの言葉にブルっと震えた。


「何を蟻が生意気を言っている?いくら貴様が最強の攻撃力を持とうが、蟻がこの俺に楯突く事は無理なんだよ。俺に徹底的なダメージを与えるにはまだまだ攻撃力が足りん!これが人間の限界なんだよぉおおおおおおおおおおおおおお!」


ソフィアとの圧倒的な体格差(質量差)にダリウスはまだまだ自分が有利だと思ってか、ダリウスは高圧的な態度は崩していない。


「本気でそう思っているの?」


ソフィアが凶悪な笑みを浮かべた。


「当たり前だ!俺は神だ!人間が神を裁くなんて事は所詮無理なんだよぉおおおおおおおおお!」




「精々ほざいていなさい・・・」



スッとソフィアの目が細く鋭くなる。



いつものソフィアの構えは体を少し横に向け右手と右足を前に出す構えだが、今の構えは全く違っていた。

両足を左右に軽く広げ膝もごく浅く曲げている。

両手は肘をグッと曲げ、脇を締め少し後ろへと下げていた。


(何をする気だ?)


マグナムやファントムの構えとも全く違う。


しかし、俺には分かる。

いつも以上にソフィアの力が高まっている事に!



ブワッ!



ソフィアの足元から黄金の闘気がまるで渦のように巻き上がる。


「これはマグナムやファントムと同じ師匠のオリジナル・フィニッシュブローよ。だけどね、これからの技はそんなのとは次元が違う・・・、それこそ神が神を必ず滅ぼす『必滅の拳』!残念だけど、未熟な私はまだ師匠の域に達していないから必滅にならないけどね。」


十数メートルの身長でソフィアと比べ圧倒的に優位に立っているダリウスが、初めてジリっと少し後ろへと後ずさりをする。


「バ、バカな・・・、神である俺が怯えている?目の前にいる蟻のようなゴミの人間に?そんなの・・・、そんなの・・・、そんなのはぁああああああああああああ!」


ダリウスが再生した右手を大きく頭上に掲げソフィアへと振り下ろそうとした。


「あら?そんな気の抜けた腰の入っていない攻撃が私に通用すると思って?」


ジロリとソフィアがダリウスを下から睨みつけた。


「へひゃぁああああああああああ!俺が!俺が!怯えるぅううううう?そんな訳がぁあああああああああああああああああああああああ!」


ダリウスが頭上に高々と抱えた腕を一気にソフィアへと振り下ろした。



「俺は神なんだよぉおおおおおおおおおおおお!神が人間に怯える訳がぁあああああああああああああ!」



その瞬間、グッと構えていたソフィアが軽く膝を曲げ腰を落とした。


「今こそぉおおお!私は真の限界を超える!」



「燃え上がれぇええええええええええ!私の魂よ!そして果てしなく高く!突き上げろ!私の魔力よ!師匠の域までぇえええええええええええええええええええええ!」



ソフィアの全身が激しく金色に輝く。

真っ白な背中の翼までもが全身と同じように金色に輝いた。



「刮目せよ!これが師匠最大のぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」



グッと握っていた拳を広げ、目の前で腕を交差する。

全身の輝きがソフィアの両手に集まり始めた。



「真の神殺しの拳!」



交差した両手を一気に左右に広げた。




「銀河ぁああああああ!爆裂掌ぉおおおおおおおおおおおおおおお!」




黄金の滝のような奔流がソフィアの足元からダリウスへと襲いかかる。


「ぎゃぁああああああああああああ!」


一気にダリウスが黄金の光に呑み込まれ、上空へと猛スピードで打ち上げられていった。


飛び上がってしまったダリウスを見届ける事もなく、ソフィアがクルッと身を翻し飛び上がる。

そのまま一気に俺の前まで飛んできた。


ソフィアが右手を上げてきたので、俺もアーク・ライトを握っていない左手を上げハイタッチをする。


パシッ!


「レンヤさん、最後は任せたわ。勇者らしくかっこよくね。」


そう言ってパチンとウインクをする。



「任された!」



俺も軽く微笑むとソフィアの顔が少し赤くなりラピスの横へと移動したが、その際に「レンヤンさん、その笑顔はやっぱり反則よ・・・」と呟いていたのが聞こえた。

その言葉の意味は良く分からなったけど・・・



「レンヤさん・・・」


アンが心配そうな顔で俺を見ている。

俺と目が合うと上を向いた。



「落ちてきませんねぇ~~~」



「そうだな・・・、どこまでぶっ飛ばしたんだ?」


そう言ってソフィアへ顔を向けたが、当のソフィアは少しバツの悪そうな顔をしていた。


「いやぁ~~~、ちょっと力加減を間違えたかもね。でも大丈夫よ、完全に消滅させていないはずだし、しばらくすれば落ちて来ると思うわ。多分ね・・・」


(おいおい・・・)


多分て?


ラピスから聞いたけど、空をずっと上昇すると宇宙に飛び出すって話だ。

そうなってしまえばもう地上に戻る事は物理的に不可能だと・・・

だけど、ここはダンジョンだし、目に見えない境界に跳ね返されて、しばらくすれば落ちてくると思うな。


そんな破壊力を生み出すソフィアはもう既に人間を辞めているよ。



『姉様!』


いきなりアルファの声が俺の脳内に響いた。


(どうした?)


次の瞬間、俺の前の空間が割れる。



スゥゥゥ



その割れた空間からクローディアさんが現れる。

そして俺達を見てニコッと微笑んだ。


「お前達、デウス様より伝言だ。」


ブルっとアーク・ライトが一瞬震えた。


「モードG、そして最後の手段であるモードFの許可が出たぞ。私がデウス様よりリミッターを外す権限を譲渡してもらったから、今からリミッターを解除する。これで思う存分戦えるな。」



「「「はい!」」」



「うお!」


いきなり俺の隣でアルファの元気の良い返事が聞こえたので驚いてしまったよ。


慌てて隣を見ると美少女の姿に顕現しているアルファが浮いていた。


(いや!)


アルファだけではない。


アンのデスペラードのガンマやテレサのミーティアのベーターも顕現化し彼女達の隣に浮いていた。



「ちょっとレンヤ!」



(ん?)


何でラピスの怒鳴り声が聞こえる?


「これってどういう事なの?いつの間にか私の知らない女があんたの隣にいるって何?」


(はい?)


まさか?

今のラピスにはアルファが見えるのか?


「マスター」


アルファが嬉しそうに俺を見つめていた。


「リミッター解除で聖剣の全ての能力が解放されたのです。今の私は実体のあるホログラムのようなものです。今まではマスター達しか見えませんでしたが、普通にみなさんに見えるようになりました。」



「まさか、あんた?」



ラピスが驚愕した顔でアルファを見ている。


「そうです。」


アルファがラピスへペコリとお辞儀をする。


「ラピス様のご想像通り、私はアーク・ライトのコアでありますアルファです。此度のリミッター解除によって顕現する事が出来ました。今後はエデンより私達の体も転送されてくるでしょうから、以後、お付き合いの程よろしくお願いしますね。」



「はぁあああああああああ!」



大きなため息をした後、再びラピスが怪訝な顔で俺とアルファを交互に見渡す。


「まさかね・・・、確かに聖剣には自我があるって聞いていたけど、クローディア様やカスミ様と同じだとは予想外だったわ。多分だけど、デウス様も噛んでいるでしょうし、認めるしかないのかな?」


「ラピスとやら、そういう事だ。」


クローディアさんがニヤリと微笑んだ。

何だろう?とんでもない美人の笑顔って意外と怖いものなんだと思う。


「分かりました。今後はって?まさか3人も増えるのですか?」


「そうだが、何か問題でもあるか?」


「いえいえ!とんでもございません!デウス様の決定に異議はありません!彼女達はちゃんと私達の家族として一緒に過ごさせていただきます!」


(おぉおおお~~~)


あのラピスがタジタジだよ。

フローリア様とため口で話しをしているクローディアさんだし、いくらラピスでも頭が上がらない存在の1人なんだな。



ジロリ!


うわ!ラピスが一瞬だけ俺を睨んだ!


(ヤバい!ヤバい!俺の心が読まれてるよ!)




「さて、そろそろだな。」


クローディアさんが上空を見上げ呟いた。


「マスター・・・」


アルファがジッと俺を見つめる。


2人の様子でそろそろ決着の時間が迫ってきたと理解した。


アンとテレサも俺を見て頷く。

アーク・ライトを握る手に力が入った。


「ラピスとソフィアがお膳立てしてくれた戦いの最後の仕上げだ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ