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287話 ダリウス最後のあがき

その頃、城の外では・・・


「いやいや・・・、テレサってあんなに強かった?」


空に大きく映るテレサの姿を見てシャルロットが「はぁ~~~」と大きなため息をする。


「雷属性ってレンヤさんと私の専売特許なのにぃぃぃ・・・、しかもよ、私よりも強力な攻撃力ってあり得ないんじゃない?」


ジト~とした目でシャルロットがフランを見つめると、流石にフランは気まずいのかスッと視線を逸らした。


「まぁ、あそこにいるのは我々の中でも特に最強揃いだしな。よく見るとあの女魔人すらも仲間にしているのだ。あ奴は我々よりも上位の強さだったと思うが、あの様子だと全員が女魔神よりも強いのかもしれん。旦那様のあの姿もそうだが、底が見えん連中ばかりになってしまったな。」


ティアマットも少し呆れ顔で空を見上げる。


「しかしだ・・・」


グッと唇を噛む。


「我もこのままで終わらんぞ。いつかは貴様達へと必ず届いてやる。」


拳を空に突き上げると、シャルロット達もティアマットに続いた。



「ふふふ・・・、いい傾向ね。」


夏子がティアマット達を見て微笑んでいたが、千秋が少し心配そうに夏子を見ていた。


「しかし大丈夫か?」


「うん?何が?」


千秋の言葉に夏子が不思議そうな顔をする。


(千)「彼も蒼太さんと同じかと思うと少し同情してな・・・」


(夏)「あ!そうかもね・・・」


(千)「分かるだろう?現時点でのお互いの妻連合の数は圧倒的に蒼太さんの方が多いけど、ほとんどの連中が武闘派でそんなのに囲まれていると思うとな・・・」


(夏)「確かにな・・・、フローリア様もそうだけど、お互いのちょっとした小競り合いでもこの世界の1国くらいが軽く亡ぶくらいの大惨事になるからな。いつかは彼もそんな目に遭うのかもな?」


(千)「それは否定出来んな。私から見ても彼女達の力量は未知数だし、これからもどんどんと上がっていくだろうな。そう遠くない未来、最強の武闘派国家が誕生する未来が見えるよ。」


(夏)「本来ならこのような国は世界のパワーバランスを崩してしまう存在になってしまうだろうが、彼や彼女達なら心配する事は無さそうだな。フローリア様の人を見る目は確かだと思う。」


(千)「だけどね、そのフローリア様自体が時々巨大な爆弾となってしまうけどな。」


(夏)「ホント、そうだよな。その爆心地で色々と後始末をする我々の事も考えて欲しいよ。」


(千)「そうだな・・・」


2人が深くため息をしていた。



「ママ、あれだけ強いとなったら、もうあのダリウスは終わりじゃない?超イケメンに変身したパパもそうだけど、テレサお姉ちゃん達も圧倒的だしね。」


フランが空を見上げて嬉しそうにしている。


「フラン、それはフラグよ。」


マナが心配そうにフランを見つめていた。


「フラグって?」



「あのダリウスを舐めるな。」



千秋がマナへと近づく。


「フラグを知っているとは、ずいぶん我々神界の言葉を覚えたものだな。」


「いえいえ、覚える事だけは得意なもので・・・」


マナが恭しく頭を下げる。


「確かにあれで終わったと思う事は早計だな。ダリウスがあのレベルで討伐出来ればフローリア様も苦労はしなかったと思うぞ。当時のフローリア様は今ほどの力を持ってはいなかったが、それでも十分に化け物の領域にいたからな。」



ビクン!



その場にいた全員がブルっと震えた。


「ママ・・・、どうしたのかしら?急にとっても怖くなったけど何?」


フランがガクガクしながらシャルロットに抱きついている。



「マジか・・・」

「ここまでとは予想外だぞ・・・、地獄耳にも程がある・・・」



夏子も千秋も青い顔で上空に映っている映像を見ていた。


全員がその時に気付いた。


映像の隅っこでひっそりと映っていたフローリアだったが、ジッと夏子達を見ていて目が合った事を・・・



すぐにニコッとフローリアが微笑んだ。



ゾゾゾゾゾォォォォォ!



全員がガタガタと震えた。



「女神イヤー恐るべし・・・」




「夏子様、ダリウスはそれまでに手強い神だったのですか?」


フローリアからの無言のプレッシャーから解放された彼女達は、ホッとした表情に戻り元の雑談を始める。

ダリウスに関する疑問をマナが夏子へ聞いていた。


「我々は直接対峙した事はなかったが、フローリア様と美冬がやっとの事で封印したと聞いているぞ。お前達もダリウスのあの再生能力を見て分かると思うが、物理攻撃も魔法攻撃もあまり効果が無いから苦戦していたとな。それ以前に、まるでゾンビが更に気持ち悪くなって結婚を迫ってくる光景・・・、これにフローリア様は心が折れて、ダリウス自体、見るのも嫌になってしまったようだった。結局、美冬が最後の後始末をしたようだが、あの美冬でさえトドメを刺せず自前のダンジョン空間に逃げ込まれて膠着状態になったとな。」


「でも、その時のフローリア様の気持ちは分かるような気がします。」


マナの言葉にシャルロットもティアマットもうんうんと頷いている。


「確かにアレは気持ち悪い。我もドン引きするレベルだ。言動そのものというよりも、アレの存在自体が危険だと体が警報を放っている。」


「確かにな。私もアレはさすがに気持ち悪いし、フローリア様に同情するよ。」


ティアマットの言葉に夏子も千秋もウンウンと頷いた。



「あのぉぉぉ~~~~~、それであのダリウスがそう簡単に討伐出来ないって理由は何ですか?」



話が脱線していたのをフランが軌道修正を行う。


「そうそう、悪かったなおチビちゃん。」


千秋がフランへとニコッと微笑んだ。


「あの巨大化したダリウスが最終進化ではない。美冬からの話だと、ダリウスにはまだ隠された進化が残っていると言っていた。その進化をされる前に宝玉状態まで追い込んだのだが、寸前のところで逃げだしてダンジョンに籠ってしまったのが、当時の話だ。」


「最終進化ですか?」


千秋の説明にシャルロットがグイっと身を乗り出す。


「その点に関しては蒼太さんも大体の予想はしていたみたいだな。『最終ボスのお約束』だと言ってとても喜んでいたよ。」


「そうだな・・・、あの時の旦那様はとっても嬉しそうだったし、その話でデウス様も一緒になってノリノリで何日も話をしていたぞ。確か・・・、更に巨大化した最終形態を倒す為にと・・・」


夏子がこめかみに指を当て、何にかを思い出すようにしている。


ポン!と夏子が手を叩いた。


「そうそう!思い出した!マナ、お前の6号機のデーターベースにその資料が残っているはずだ。もう完成しているみたいだったが、フローリア様に稼働は止められたようだったな。」


「プラチナ・クイーンにですか?」


マナが左手を目の前にかざすと半透明のモニターのようなものが現われる。

そのモニターを見ながらいくつかの画像やフォルダーをスクロールさせた。

ある1つのフォルダーを見つけ指差す。


「もしかして?コレでしょうか?」


マナの行動に夏子も千秋も呆れた表情になって見ている。


「本当にこの世界の人間か?もっと科学の進んだ別の世界から転生した訳じゃないよな?」

「これだけ優秀ならデウス様が助手として引き抜きたいとする気持ちも分かるわ。」


「そうですか?私はこれといった特別な知識はないのですが・・・」


「出たわ、ここにも無自覚チートがね。」


夏子が「はぁ~~~~」と深いため息をしたが、何でそんな行動を夏子が取ったのか不思議そうな表情で見ている。


「夏子、深くは考えるとダメね。フローリア様がダリウスを完全に滅ぼす為に準備したものがこの世界の人、いえ、彼の回りに集まる人に現われているのでしょうね。腐っても女神だし、ある程度の運命操作は可能だからね。」


「そうね、深く考えたら負けに間違いないわ。例のアレは神界でデウス様と蒼太さんのオモチャになりうそうね。あの2人の喜びようが見えるわ。」


夏子と千秋が見つめ合いながら笑っていた。



「あのぉぉぉ~~~、そろそろ宜しいですか?」



マナが申し訳なさそうに2人に声をかけた。



「お!すまない!ちょっと話しが逸れたな。このフォルダーを開けて見ろ。面白いものが見られるぞ。」


ニタリと千秋が口角を上げた。


マナが恐る恐るフォルダーに指を添えた。




「え!これって?」



マナが驚きの声を上げる。


「ママ、これってあの時のギガンテスのような巨大ゴーレム?それにしても格好いいな。」


「フラン!これはあのギガンテスよりも小さいらしいわね。でも、同じような真っ白な巨大ゴーレムがもう1体いるわよ。」


「シャルにフランよ、ちょっと待て!その後ろにもまだいるな。動物を模した巨大ゴーレムが・・・」


「夏子様、千秋様・・・、これって?まさか?」


「そうだ、コア・アイン、コア・ツヴァイを中心にレオ、ドラゴン、ホーク、シャークの支援メカを合体させ巨大ロボットにする計画だ。」


「だがな、これはあまりにもオーバーテクノロージー過ぎる。旦那様は男のロマンだと言っていたが、さすがにフローリア様は却下していたよ。」


「その気持ちは分かります。いくら何でもやり過ぎですからね。」


「そういうい事だ。」


パチンと夏子がウインクする。


「あそこにいる連中はそんなもの頼らずとも十分に強い!ダリウスが奥の手を出そうが絶対に負ける事がないと信じている。」


「「「「はい!」」」」


全員が元気よく返事をする。


そして再び上空へと視線を戻した。




その視線の先には・・・




「こんな馬鹿な・・・、絶対の神である俺が追い込まれる?」


ダリウスは手足を失い背中の翼までもが切り落とされ床に落とされてしまい、その惨めな姿を空中に曝け出していた。


ズズズ・・・


横たわっていたダリウスの全身が真っ黒に変化していく。



ボコッ!



切り落とされていた手足の付け根から巨大な肉機が飛び出てきた。



ボコ!ボコ!ボコ!



胴体までもが手足から出てきた漆黒の肉体に包まれていく。


数十メートルを超える巨大な漆黒の肉体が床の上に転がっていた。



ボコォオオオオオ!



その肉体から歪な手足が生え、ゆっくりと立ち上がり始める。

嫌悪感を催すまでの醜悪な姿になったダリウスの全身が露わとなった。


ブシュゥゥゥゥ


頭部らしきものが肉塊から生えてたが、元のダリスの顔とは全く違う造形となっていた。

端正な顔のダリウスとは真逆で、今のレンヤとは正反対のように、この世に存在する全ての悪意を具現化した表情がレンヤ達を見下ろしていた。




「アレがダリウスの最終形態?」


千秋がブルッと震え肩をすくめてダリウスを見ていた。


「ここまで醜悪なんてね・・・、それにしても、蒼太さんの言った通り本当に巨大化するなんて。しかもあれだけの規格外な大きさは初めて見るわ。」


「さて、彼らは?」


夏子が上空の映像を見てニヤリと笑う。


「ふふふ・・・、あれだけの大きさに少しは驚くかと思っていたけど笑っているなんてね。流石は勇者パーティーの名は伊達じゃないって・・・、、今度こそ正真正銘最後の戦いよ。世界中にあなた達の活躍を見せつけてあげなさい。そして、この世界に真の平和が訪れる瞬間をね。」


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