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282話 ダリウスの変化

「クローディア姉様?」


やっぱりデウス様じゃなかったんだな。


(しかしなぁ~~~)


俺ソックリの蒼太さんといい、デウス様ソックリの彼女といい、神々の人達はそっくりさんが好きみたいだ。


そういえば・・・


アルファもベーター、ガンマと髪や瞳の色は違うけど、それ以外は全く同じだし、神様ってのは本当にそっくりな人達が大好きなのに間違いはないかもしれん。


「アルファ、あの人は誰か知っているのか?」


『知ってるも何も!』


アルファが今にも首がもげるんじゃないか?って思う程に首をブンブンと振っているよ。


『クローディア姉様は私達3姉妹が1番に憧れているお方です!私達が初めて感情を持った切っ掛けを作られたお方なんです!』


(ははは・・・)


あのアルファがここまで食い付いて話してくるなんて初めてだよ。

少し引いてしまうほどだ。


『クローディア姉様は12ある神器の中でもですね、もうお1人のカスミ様とたったお2人だけが人の姿になられる人化機能を持っておられるのです!剣のお姿でも神々しいのに、人の身になられた時も何てお美しい・・・、あぁぁぁ・・・、今のこのお姿を私の目に焼き付けなくては!』


完全なるミーハーと化したアルファだけど、ベーターとガンマも見てみると・・・



「あちゃぁ~~~~~」



2人揃ってアルファと同じ姿勢でうっとりした表情でクローディアさんを見つめていた。


(何だろうな?とっても微妙な空気なんだけど・・・)


「貴様等!少しはシャキッとしろ!」


クローディアさんがジロッとアルファ達を睨んだけど、彼女には見えているのか?


「「「は!はい!」」」


その言葉で呆けていたアルファ達がビシッと直立不動の姿勢になった。


「良かろう。お前達、本来の使命を忘れるなよ。マスターの足を引っ張る事だけは許さんからな。」


(やっぱり見えているんだ。)



「クローディア、そんなに脅かすなよ。あまり緊張させると本来の力を出せなくなるぞ。」


蒼太さんが少し呆れた表情でクローディアさんを見ているけど、どうやら2人はかなり親しい仲なんだろうな。

もしかして、蒼太さんもアルファ達が見えているのかも?



「ふはははぁあああああああ!」



(ん?)


またダリウスが高笑いをしているよ。


「何だ!とうとう諦めたのか?いくら神器だろうが私には敵わないと尻尾を巻いたのか?ふはははぁあああああああ!そうだろうな!私は無敵!封印するのがやっとで、誰も私を倒す事は出来ない!」



ザワッ!



(くっ!)


今度はクローディアさんから殺気が溢れる。

蒼太さんやルナさんと遜色ないくらいに強大な殺気だ!


「「「はわわわぁぁぁ・・・」」」


アルファ達が口に手を当てクローディアさんの殺気にビビっている。


神器は剣だろう?

どうしてここまで殺気を放てるのだ?


いや!


確かに彼女に感情はあるのだろうが、生き物ではないのに殺気を放てる事自体があり得ない!



「クローディアは特別なんだよ。」



パチンと蒼太さんが俺にウインクをしてくる。

俺がどう考えているのか分かっているのか?


「俺も初めはそう思ったからな。でもな、彼女はれっきとした意思も人格もある人間だよ。ただ、体が神器となっているだけ。今では生身の体も得て・・・」



「旦那様!」



クローディアさんが少し恥ずかしそうにしている。

確かにあの表情などは人間と全く変わらない。


「スマンな。ちょっと話が逸れた。」


そしてジロリと蒼太さんがダリウスを睨んだ。



「ダリウス・・・、本気で俺達がお前を倒せないと思っているのか?」



その言葉でダリウスが両手を大きく広げ高々と笑い声をあげる。


「ふはははぁあああああああ!そうだろうが!かつてのフローリアもその神器をもってですら、私の本体を断ち割る事は不可能だった!そして、今も傷すら付けられなかったのだぞ!この世界の欲望と絶望を一身にため込んだこの魔王の肉体で強化され、どんな神だろうが私を滅ぼす事は不可能なんだよ!神は不老だが、不死ではない!だが!私は完全なる不死を手に入れたのだ!不死の私相手にどこまで頑張れるか・・・」



ズルッ!



ダリウスの肉体が一気に床へと崩れ去ってしまう。


「な、何が?」


ヘドロ状になったダリウスの肉体だったが、逆再生のように再び元の肉体に戻った。



「柔な体よのぉ~」



ニヤリとルナさんが口角を上げて笑っている。


「妾の本気に耐えられると本当に思っているのか?貴様の本体、妾がすり潰してやろうか?」


グッと右手の掌ををダリウスへ向け軽く握った。



「ぐ!ぐぎゃぁああああああああああああああああああ!」



どうした?

あれだけ不遜な態度をとっていたダリウスが今までにない程に苦しんでいる。


「ルナさん!」


フローリア様がルナさんの右手に手を添えた。


その瞬間、あれだけ苦しんでいたダリウスがガクっと膝を付き荒い息を吐いている。


「はぁはぁ、バカな・・・、もう少しで私の本体が握り潰されるところまで・・・、あり得ない・・・」


ルナさんを見てブルっと震える。


「単なる木っ端邪神ごときが妾の前で大きく出たものだな。」


あの蒼太さんが見せた猛獣のような笑みをルナさんも浮かべている。


「分かったか?貴様ごときいくらでも潰せるとな・・・」


フローリア様もやれやれといった表情で首を振っている。


「お分かりですか?今の私達はあの時とは違うのですよ。もちろん、私もあなたごとき即!すり潰せますけどね。」



「う!嘘だぁあああああああああああ!俺は最強なんだよ!神界の魔力!魔界の瘴気!そしてこの世界の負のエネルギーを取り込んでいる私が負ける?はぁ?そんなのはあり得ないんだよ!私はフローリア!お前を手に入れる為にあらゆる手を尽くしてきた!お前よりも上位の存在となって、お前をこの手で屈服させ、私のものにする為になぁあああああああああああ!」



(うわぁ~~~)


ここまでくればヤンデレどころではないぞ!テレサ達が可愛いくらいに思える。


完全に狂信の部類だよ。


そんな奴に目を付けらたフローリア様も災難だよな。



「いい加減にしろやぁあああ!このクズ神がぁあああああ!」



ドォオオオオオオオオオオオオン!



「げひゃぁああああああああああああああああああ!」



蒼太さんが一瞬でダリウスの懐に入り込んだ。

そのまま右腕を真下からダリウスの顎に叩き込むと、派手な炸裂音を響かせダリウスが垂直に打ち上げられた。


汚い悲鳴を上げながらグングンと上空へと飛んでいく。


「これで終わらせるかよ!」


グッと蒼太さんが少し屈むと爆発的なスピードで一気に急上昇しダリウスを追いかけた。


あっという間にダリウスを追い越し、上空で停止しダリウスが追い付くのを待っている。


「そのおしゃべりな口は塞いでいろ!」


ゴシャァアアアアアアアアアアア!



「うきゃきゃきゃぁああああああああああああああああ!」



ズガァアアアアアアアアアアア!



床に大きなクレータが出来上がり、その中心でダリウスが体の半分が埋った状態でピクピクと震えている。

そのクレーターの縁に蒼太さんが降り立った。


とても不機嫌な表情でボロボロになったダリウスを見ていた。


「貴様の口からフローリアの名前が出るだけでも不快なんだよ。人の嫁さんを気軽に呼び捨てにするな!」


(やっぱり!)


蒼太さんはフローリア様の旦那さんだった!


だけど、またしても新たな疑問が湧いてくる。


500年前に死んで生まれ変わった俺だけど、当時はフローリア様の干渉は無かったと思う。

まぁ、ラピスが俺を生まれ変わらせる為に禁呪を使ってフローリア様にお伺いを立てていたのは、内緒でソフィアから教えてもらった。

そういえば、ソフィアもフローリア様の計らいで美冬さんという師匠を得て、あの凶悪な強さを身に付けたのだよな。


(全ては500年後のこの戦いの為に?)


女神様だからある程度の未来は分かっているのかもな?


ブルっと体が震える。


ここまでお膳立てされているのに、最後に俺が台無しにしてはダメだな。


『マスター!』


アルファがグッと握りこぶしを作って俺を見つめていた。

何を言いたいのかも分かる。


「アルファ、この戦い!俺が決める!だからな、最後まで頼んだぞ!」


『はい!』


元気よくアルファが頷き姿が消える。


ブゥン!


アーク・ライトの赤い宝玉が激しく点滅していた。


(ふっ、アルファもやる気だな。)


思わず口元がにやけてしまった。



視線をダリウスへ向けると、蒼太さんとにらみ合いがまだ続いている。

だが、そのダリウスは顔を真っ赤にしてギリギリと歯軋りをして蒼太さんを睨んでいた。


「貴様のせいでフローリアは私になびかない!貴様がいる事が罪なのだよ!」


「うるせぇえええ!」


ドガッ!


「ぐひゃぁあああああ!」


再び蒼太さんのアッパーがダリウスの顎に炸裂する。

情けない悲鳴を上げながら派手に吹っ飛び床へ顔面を打ちつけた。


グッと拳を突きつけながら蒼太さんが叫ぶ。


「だから!フローリアを呼び捨てにするなって言っただろうが!この横恋慕野郎が!そもそもだな、俺がフローリアと一緒になるはるか昔から貴様は拒絶されていたんだろうが!」


(確かに・・・)


ここまで粘着質で勘違い野郎の相手は疲れるな。


(ん?そういえば・・・)


「どういう事だ!何で私のフィールドの効果が無効化されているんだ!」


ダリウスの言葉は尤もだ。

俺達もあのフィールドでかなり苦戦した。

しかし、今の蒼太さんは普通にダリウスを殴っている。


その蒼太さんがニヤリと笑う。


「大層なフィールドと自慢したそうだけどな、それくらいのフィールドは俺達にすれば紙のようにペラペラなんだよ。今じゃな、このフィールドの術式は化石みたいなものさ。うちにはもっと強力な防御魔法の使い手がいるからな!」



「クローディア!」



蒼太さんが叫ぶとクローディアさんもニヤリと笑う


「あなた達!」


クローディアさんの言葉に応えるかのようにアーク・ライトの宝玉が点滅する。


「あなた達にあのフィールドの無効化術式を組み込んだから、もうあの邪魔なフィールドの事を考えずに戦えるわよ。」


『『『はい!』』』


アルファ達の元気な返事が聞こえる。



「レンヤ君!」



蒼太さんが俺を呼んでいる。


「君達の聖剣でならあのフィールドは効果を為さない。だからな、さっきのお返しだ!遠慮せずにやれ!」


「はい!」


俺がアーク・ライトを構えると、アンとテレサが俺の両脇に立った。


「レンヤさん・・・」

「兄さん・・・」


2人がゆっくりと頷く。


「アンにテレサ!行くぜぇえええ!さっきのお返しだぁあああああああああああ!」


「はい!」

「うん!」


一斉にダリウスへと駆け出す。


しかし、ダリウスも黙ってはいない!

いつの間にか右手にデスペラードに似た漆黒の大剣を握り構えている。



「クソ虫共がぁあああああ!どこまでも俺の邪魔をするんだぁあああああああああああ!こうなったら輪廻すら出来ないよう魂すら消し去ってやるぅううううううううううううう!」



おい!口調がとんでもなく変わったぞ!

これが素のダリウスの口調なんだろうか?


「まずは私が行きます!」


アンがスッと俺達の前に飛び出す。


「次元斬!」



ザクッ!



「がっ!」


アンがデスペラードを振るうとダリウスの大剣ごと袈裟切りで体が斜めに切り裂かれる。


「レンヤさん!フィールドが無効になっています!攻撃が通じます!」


確かにあれだけ苦しめられていたフィールドの効果が無くなっている。

アンの次元斬がダリウスの武器も肉体も同時に断ち切っていた。


しかし!例の宝玉が胸の切り口から見えるが、全く傷が付いているように見えない。


「なんて硬度なの!次元斬でも切れないなんて!」


悔しそうにしているアンのすぐ脇から、今度はテレサが飛び出す。


「今度は私よ!」


ミーティアを真横に構える。


「無塵斬!」


一瞬ミーティアが輝いたように見えた。



ブワッ!



ダリウスの全身が黒い霧となって霧散する。


「ちっ!宝玉は壊せないか!」


霧散していた黒い霧が宝玉に集まり再びダリウスの肉体へと再生を始めた。


「だけど!あのフィールドの邪魔が無いわ!これなら!兄さん!」


テレサが俺をジッと見つめる。


「分かった!光よぉおおおおおおお!」


アーク・ライトの刀身が激しく黄金の光を放った。


だが!今のアンやテレサの攻撃を見る限りでは普通に必殺技を出すだけではダメだ!


(もっと強力な技を!)


「ならば!」


上段に構えていたアーク・ライトを目線の高さで水平に構える。


「光牙斬の力を無蒼流に乗せてぇえええええええええええええ!」


俺の後ろから金色の吹雪が荒れ狂う。



「これぞ!必殺!」






「光牙!雪月花ぁあああああああああああ!」






金色の吹雪がダリウスを襲った!



「がぁあああああああああああああああああああああ!」



ダリウスの絶叫が響く。


俺の視線の先には胸を斜め十文字に切り裂かれているダリウスが映っている。


しかもだ!


十文字の中央部分に宝玉が露出していた。

その宝玉から微かだが黒い靄のようなものが流れているのが確認出来た。


(これは!)


アンとテレサが俺を見て頷いた。


「レンヤさん、あれは間違いないわ・・・」

「兄さん、私達でもダリウスに対抗出来た・・・」


あのダリウスの本体に傷を付ける事が出来た!



しかし!



喜びも束の間、ダリウスが再び元に再生してしまう。


「くそ!」


だけど希望が持てた!


俺達の力は蒼太さんやフローリア様達と比べてとてもちっぽけだろう。


でも!


それでも俺達にとっては大きな一歩だ!



(む!)


ダリウスの肉体に変化が表れる。



バキィイイインンンッ!



ダリウスの漆黒の全身鎧が砕けた。


みるみるとダリウスの全身が肥大化する。



「許さん!許さん!許さぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!」



今まで以上にダリウスの絶叫が響く。


まるでこのダンジョン全体が震える程に!



「ふぅ!ふぅ!もう許さん!たかが原住民の下等生物ごときが俺の本体に傷を付けるなんて・・・」



体が3倍くらいまでに大きくなったダリウスが、俺達を見降ろしている。

まるで巨人のようだ。

奴から発せられていたプレッシャーもさっきまでの比ではない!



「さすがは最終ボスね!ふふふ・・・、血が騒ぐわ!」

「この為なのね、私が強くなったのは・・・」

「アン!もちろん私も手伝うからな!新生魔王軍四天王の1人としてな!」



「お前達!」


ラピスにソフィア、エメラルダが俺達の隣に並びダリウスと対峙していた。


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