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28話 怒ると怖いアンジェリカさん

アンが俺に寄り添って座っていたが・・・


「お~い!こんなところにカップルがいるぞ!」


近くから騒々しい声が聞こえた。


(こいつらの声は・・・)


足音がどんどんと俺達の方へ迫ってくる。どうやら、俺達がターゲットにされたみたいだ。


目の前に3人の男が立っていた。俺よりも少し年上の感じで、全員がニヤニヤと笑っている。

1人がズイッと前に出てくる。このパーティーのリーダーだ。

「うひゃひゃひゃはぁあああああ!誰かと思えばレンヤじゃないか?髪が黒くなっているからすぐに分からなかったぞ。何だ、名前だけでなく見た目も伝説の勇者の真似事まで始めたのかなぁ~、無能は何をやっても無能なのにご苦労な事だ。」


そして、アンへ視線を移すと雷を浴びたように硬直してから、にたぁ~と笑い出した。

「レ、レンヤ!こんな可愛い子!どうした!まさか、お前の彼女じゃないだろうな?」


「それがどうした?別にお前達には関係の無い話だよ。」


俺の言葉を聞いて顔が真っ赤になり目が吊り上がっている。

「無能がぁぁぁ~、何を生意気言っているんだ!俺達を差し置いて彼女を作るなんて100年早いんだよ!それに何だ、こんな可愛い子なんて見た事ない!本当に生意気な奴だなぁ~」


アンが奴等の事は視界に入っていないかのように無視して俺を見ている。

「ねぇ、レンヤさん、このうるさい蠅は何?邪魔ね。」


「まぁまぁ、そう言うなよ。一応人間だし蠅に例えたら可哀想だぞ。いや、奴等の性格なら蠅の方が可哀想かもしれないな。」


「そうね、虫の方がまだ可愛げがあるからね。」

アンがクスクスと笑っている。


「こいつらはCランクの冒険者パーティーだよ。ただなぁ、俺が無能って事で散々馬鹿にして意地悪をしてきたからなぁ~、自分より弱いと思う相手には徹底的に傲慢だけど、上の相手には媚びまくる奴等だ。余計に始末が悪い連中だよ。今日はギルドに来ていなかったみたいだし、知っていたらこんな事はしないだろうな。」


真っ赤な顔が更に赤くなってプルプルしている。

「無能がぁああああああああああ!俺様を無視するんじゃねぇええええええええええええ!黙って女を置いていけぇえええええええ!お前みたいな無能に似合う女じゃないんだよ!」


怒鳴りながら俺の胸ぐらを掴もうとしてきたので、その手首を軽く握りグイッと引っ張るとバランスを崩した。俺の方に倒れかかってきたので、スッと足払いをしそのまま上に放り上げると、キレイな放物線を描いて俺の頭上を飛び越え、ベンチの後ろの草むらに落ちてしまった。


「ぐえっ!」


グレン達の時の様にカエルの潰れたような悲鳴が聞こえる。

ニヤニヤしていた後ろの2人が、リーダーが俺に投げられたとあって目つきが鋭くなり腰の剣を握ろうとした。


(おいおい、いきなり刃物は勘弁してくれよ。)


ニヤッと笑いながら殺気を目の前の2人に向けると、急にガタガタし始め泣き出しそうな顔になってしまった。


「この無能がぁあああああああああ!死ねぇええええええええええええええええええ!」


リーダーが剣を抜き後ろから俺に斬りかかってきたが・・・


ピタッ!


首を少し動かし、右腕を顔の横に持っていく。奴の剣を指で挟んで止めた。


「な、何だよコイツはぁぁぁ・・・、振り向きもしないで剣を止める?しかも剣を指で挟んで止めるなんて、どんな達人なんだ?お前、本当にあの無能なのか?」


クイッと手首を捻ると奴の手から剣が離れた。

振り返り奴の手首を掴んで再び放り投げた。

棒立ちで呆けていたから、あっさりと簡単に投げられた。


「「「ぎゃ!」」」


目の前にいた2人に向かって投げたから、見事に激突したよ。


ゆっくりと立つと目の前の3人はガタガタしながら俺を見ている。

「わ、悪かった・・・、もうお前には手を出さない。だから許してくれ・・・」


「ダーク・シールド!」


黒い壁のような障壁がグルッと俺達の周りを囲むように出来上がった。


「アン、どうした?」


ニコニコ微笑みながらアンが立ち上がる。

そして、ゆっくりと男達の前まで歩いていった。

リーダーの男に手を差し伸べる。

「大丈夫ですか?立てます?」


「はひぃ・・・、た、立てます・・・」

アンの手を取って立ち上がった。だけど、その顔はとてもいやらしい表情で、アンを舐め回すように見ている。


(こいつ・・・)


「ふふふ・・・」

アンは微笑んでいるが・・・

「レンヤさんの実力はこれで分かったのでしょう。多分、もう2度と手を出さないと思いますね。だけど、私の事は諦めていないみたいね。私が1人になった時に自分のものにしようと思って必ず襲うでしょう。そんな顔ですよ。」


「はい?」

リーダーの男の顔がとても間抜けな顔になった。

しかし、だらだらと冷や汗が流れている。



ズンッ!



「ぐはっ!」


アンの右手が手首まで男の左胸に突き刺さっている。


「大丈夫よ、痛くないし血も出ていないわよ。血管や神経を全て躱して突き刺したからね。」

にやぁ~とアンが笑っていた。

「どう?心臓を鷲掴みにされた感覚は?あなたはもうレンヤさんには手を出さないでしょうね。でもね、私もレンヤさんと同じくらい強いのですよ。私を舐めないでね。それに、あなたは今、レンヤさんを殺そうとしたわね?人を殺すって事は自分も殺される事もあるのよ。どう?殺される気分は?この障壁で今は誰にも見られる事も無いし、私があなたを殺してあげる。もう少し力を入れれば心臓が潰れるからね。その後で骨も残さず消し去れば行方不明者の出来上がりよ。」


「ゆ、許して下さいぃぃぃ・・・」

ガタガタとリーダーが震えている。あまりの恐怖で失禁したのか、股間がビショビショに濡れている。


「ふん!そんな覚悟も無い男が冒険者だなんてお笑いだわ。もう2度と私達の前に現われないで。」


「は、はひぃ・・・」


アンが右手を抜くと、男の服の胸部分には穴が開いていたが、体には傷1つ出来ていなかった。

障壁が消えた瞬間に男達は我先へとこの場から逃げ去ってしまった。


「ふふふ、これだけ脅しておけば、もう2度と近寄って来ないでしょうね。私を怒らせるとこうなるって分かったかな?あれだけビビッていたから私達の視界にすら近づかないかもね。」

しかし、アンがため息をしている。

「はぁ、折角のレンヤさんとの幸せな時間を・・・、やっぱり殺した方が良かったかな?」


(おいおい、それは止めてくれ。俺が絡むと急に物騒になるからなぁ・・・)


しかしなぁ~、アンって怒ると本当に怖いよ。あの時もいきなり最大級の魔法をぶっ放してきたし、今回も心臓を握り潰そうとしたしなぁ・・・


再び、絶対にアンを怒らせてはダメだと誓った。



そろそろ時間になったのでギルドに戻ってきた。


かなりの人でごった返している。

夕方なので依頼が終わった冒険者が殺到いていると思ったけど、いつもよりもかなり人が多い。

よく見ると冒険者以外にも武器屋や防具屋の親父達も何人かいた。


(マナさんは?)


受付にいるけど他の冒険者の相手をしているし、かなり忙しそうだ。


「ラピスさんも戻っていないから、ちょっと待っていようか?」

アンがそう提案してきたので待つ事にして、周りの会話を聞いていた。



「おい、素材の買い取り窓口のアレ、見たか?」

「あぁ、見たぞ。こんなところでドラゴンの素材を見るなんてな。生まれて初めて見たぞ。」

「だけどなぁ~、鱗があまりにも硬過ぎてほとんど手が付けられないって、係がぼやいていたぞ。」

「武器屋や防具屋の親父達も頑張っているけど、いつになったら解体が終わるのかなぁ~」



(やっぱりぃいいいいいいいいいいいい!)


あのアースドラゴンの解体は無理だったか・・・

そのままにしておいて失敗だったな。


「アン」


「レンヤさん、どうしたの?」


「ちょっと解体の手伝いをしてくるよ。サクッと終わらせてくるな。」


「じゃあ、私も一緒に行くね。」

俺が立ち上がると、アンも一緒に立ち上がった。


「アンはここで待っていればいいんじゃないか?」


「えぇぇぇ~、やだよぉぉぉ~、だってねぇ、何か注目されているし、1人だと心細いからね。」


周りを見てみると・・・


(確かに・・・)


かなりの数の男どもの視線がアンに向けられている。アンが1人になったら確実にナンパされまくるだろうな。そんな光景が簡単に浮かんでくるよ。


「分かったよ。一緒に行こうな。」


「うん!」

アンが喜んで俺の腕に抱きついてきた。同時に周りの視線が痛い。昼間いなかった連中は、ここで何があったか分かっていないからなぁ・・・



「何だよ、あの無能は?あいつが何であんな可愛い子を連れているんだ?」

「それよりも、あいつは確か数日前に魔王城に行ったよな?帰って来るのが早過ぎないか?しかも黒の暴竜がいないぞ。ピンピンしているし何があった?」

「あぁ、あいつは勇者だってさ。ここにいる誰もあいつには敵わないよ。」

「しかも、あの可愛い子は魔剣士だぞ。それに伝説の大賢者ラピス様も一緒だ。逆らったら確実に殺される。」

「黒の暴竜の連中は、あいつ等に再起不能にされたって聞いたぞ。しかも、Sランクの緑の狩人も手下にしているみたいだ。」

「げっ!マジか?俺、殺されたくない・・・」



(う~ん・・・、何か俺に怖いイメージが付いてしまっている気がする。黒の暴竜を『ざまぁ!』したから?)


ちょっと悲しい気分で素材の受け取り窓口へ行ったけど・・・


デン!!!


アースドラゴンの頭がそのまま鎮座していた。


(せめて解体場まで運んでおけよ・・・)


頭にたくさんの人が群がっていて、剣を突き刺したりしているが全く刃が通っていないのは見て分かる。

職員が俺を見つけて半泣きの顔で近づいてきた。


「レンヤさ~~~~~~ん!助けて下さい!」


「やっぱり無理だったか?」


「はい・・・、鱗の硬さが予想以上で、ここの手持ちの道具では少し傷を付けるだけでもやっとなんです。首の切断面から解体を始めていたのですが、骨はそのまま残しておきたかったので、なかなか進まず、このままでは腐ってしまいます。ドラゴンの素材が入ったと聞いて買い取りに来た武器屋の主人達にも手伝ってもらっているのですが・・・、やっぱりはかどっていません。何とかお手伝いしていただけないでしょうか?」


そうだろうな。上位種のドラゴンの鱗は魚の鱗みたいな感じで剥がす事は出来る。だけど、アースドラゴンの鱗は蛇やトカゲみたいな鱗だからなぁ、いわゆるとてつもなく硬い皮膚みたいなものだから、そう簡単には剥がす事も出来ない。


「分かったよ。取り敢えず解体場まで運ぼう。」


アースドラゴンの頭が消えた。



「何だ!いきなりドラゴンの頭が消えた!どうなっている?」



ドラゴンの頭が消えてしまったので、周りにいた人達がザワザワして騒いでいる。まぁ、収納魔法なんて知らないから何が起きたのかわからないのだろうな。


そのまま職員達と一緒に解体場まで移動した。

俺達の後ろには冒険者や武器屋の親父達がゾロゾロと付いてくる。


「ここで良いかな?」


かなり広い場所があったので、そこにドラゴンの頭を収納魔法から取り出した。

床の上にドカッ!とドラゴンの頭が再び現れた。


「「「「「おぉおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」


周りから一斉に声が上がった。



「これが伝説の収納魔法・・・」

「こんなの反則過ぎるよ・・・、荷物なんて持たなくていいなんてあり得ない。」

「これが勇者の力の片鱗なのか?規格外過ぎる・・・」



「さてと、やるか・・・」


「レンヤさん、頑張って!」

アンが手を振って応援してくれる。


アンよ・・・、お前もアースドラゴンを解体していただろうに・・・、魔剣であの鱗をバターのように簡単に切り刻んでいたしな。

今回はちょっとカッコよく決めてみようか?アンに良いところを見せたいからな。


右手を上に掲げると黄金に輝く聖剣が現れた。

覚醒した時から聖剣は俺が持っている。普段は収納魔法で収納してあり、必要な時に出し入れしている。この聖剣は普段は見せびらかすものではないからな。



「おぉおおおおおおおおお!いきなり黄金の剣が現れた!」

「待てよ!あれはぁあああああ!聖剣『アークライト』!教会にある勇者の肖像画で見た事があるぞ!間違いない!あの絵とそっくりだ!」

「ほ、本物の勇者だ・・・」

「だけど、聖剣って王城の宝物庫に保管してあるんじゃないのか?確か、伝説では聖剣は勇者の呼び出しで現れるとなっていたし、今は宝物庫から消えているぞ。」

「やっばぁぁぁ・・・、今頃は大騒ぎになっているんじゃ・・・」



さすがに聖剣を見せると驚くよなぁ~

一斉に周りがザワザワしている。


剣を正眼に構え呼吸を整える。

「行くぜぇ~、秘剣!乱れ桜ぁあああああああああ!」


一瞬で数百もの斬撃をドラゴンの頭に叩き込んだ。


ピシッ!


頭頂部の鱗がめくれ始める。


バラッ!


みかんの皮を剥ぐように頭頂部からベリベリと鱗がめくれた。

肉が剥き出しのドラゴンの頭が完成した。見た目は完全にホラーだよ。


「これなら、後は大丈夫か?」


「は、は、はい!」

高速でコクコクと職員が首を振っていた。


まぁ、肉は普通に切る事は出来るし、ここまですれば問題無いだろう。


「レンヤさん!カッコイイ!」

嬉しそうにアンが抱きついてきた。





その頃、フォーゼリア王国王城にある宝物庫では・・・


「昨日、宝物庫から聖剣『アークライト』が消えたと報告があり、慌てて戻ったが・・・」


1人の男が銀色の剣の前で佇んでいる。

「この聖剣『ミーティア』の隣にあったはずなのに消えているとはな・・・、やはり勇者様が甦ったのは間違いない。」


そして天井を見上げた。

「アレックス賢王・・・、我ら国王のみに語り継がれているあなた様のお言葉・・・、私の代にて現実になったようです。この目で勇者様を見られるとは、何という幸せ・・・」



「そして、このミーティアの宝玉も青く輝いています。今までずっと輝いていなかった宝玉が・・・、こちらも後継者が現れたのでしょう。」




「勇者様の目覚め、そしてミーティアの目覚め、この目覚めは一体、何を意味するのか・・・」

これから年末年始に向けて仕事で忙殺されます。

更新が滞ってしまうので申し訳ありません。

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