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268話 聖剣の真の姿

「未来へと!」


「戯言をほざくなぁあああああああああああ!」


俺は叫びながら魔王へと切り込む。

魔王は負けじと俺の剣を受け止めた。



ギギギ・・・



お互いに一歩も譲らない鍔迫り合いが続く。


「この俺が!人間の器を捨て神の域までとなった俺がぁあああああああああああ!たかが人間に押されるだとぉおおおおおお!」


「そうだ!貴様は魔王でも神でも何でもない!単なる欲望に負けた人間なだけだ!」



ドン!



(くっ!)


魔王からの力が増大する!

このままだと押し切られてしまう!



「させない!」



ドォオオオオオオオオオオオン!



「ぐぉおおおおおおおおおおお!」


魔王の顔面に漆黒の炎の玉が激突した。

その衝撃で魔王が後ろへと吹き飛ばされたが、ゴロゴロと転がらず両足を床に付けたまま後ろへと下がっただけだ。


「小娘がぁあああああああああああ!」


アンの攻撃で魔王が憤怒の表情で睨む。



「ダーク・フレアの直撃でも牽制にすらならないなんて!」



俺の後ろで左手を前に突き出したアンが、忌々しそうに魔王を見ている。


「例え技術は無くても、単純な力と魔力の暴力は侮れないな。あの桁違いの魔力がアンの魔法やデスペラードの次元斬を弾くみたいだ。」


「そうみたいね・・・」


アンがグッとデスペラードを両手で握りしめる。


「だけど、これが最後の戦い!私達の意思が勝つか?魔王の欲望が勝るのか?」


俺もグッとアーク・ライトを構える。


「そうだ!俺達は勝つ!勝ってみんなが幸せになる未来を掴む!ここにいない仲間達の願いも込めてなぁああああああ!」



「黙れぇえええええええ!下等生物ごときがぁあああああああああああ!」



ズバババァアアアアアアアアアアアアアア!



魔王が大剣を横薙ぎに振るうと、再び巨大な衝撃波が俺達へと飛んでくる。


「あいつは疲れる事を知らないのかぁあああああ!アーク・ライト!頼む!」


光牙斬を撃つ為にアーク・ライトを上段に構えた。



『了解です!マスター!』



「へ?」


思わず変な声が出てしまった。


俺の横から声が聞こえたので、慌てて横を向くと・・・



今までの戦いの中でアーク・ライトの前に出現し浮かんでいた、例の金髪で赤い瞳の少女が微笑みながら俺を見ている。



『マスター!集中してください!急がないとあの衝撃波に呑み込まれますよ!』


「あ、あぁぁぁ・・・」


まさか、あの少女が喋れたのか?

そして?あの姿がアーク・ライトの本来の姿なのか?


いや!


今はそんな疑問は考えないでおこう。

目の前まで迫っているあの衝撃波を何とかしないと、呑み込まれでもしたら全身がバラバラになるのは確実だ。


(どうして?)


まだチャージもしていないのに刀身が激しく輝いている。


「君の力なのか?」


そう話しかけると嬉しそうに微笑む。

そして、その刀身の輝きが俺の全身をも包み込んだ。


『マスター、これが真の光牙斬です。だから・・・』


彼女の視線が迫り来る衝撃波へと向いた。


『遠慮しないでぶっ放して下さい!あの神の紛い物に本当の神の力を見せてやって下さい!』


「分かった!」


グッと左足を前に踏み出す。


ダン!


体の奥底から今まで感じた事がない程の力が湧き出てくる。


「この力ならぁあああああ!」


全身を包み込んでいた光が刀身へと集中した。

刀身がかつてない程に光を放った。


「これぞ!真!光牙斬っっっ!」



『ゴァアアアアアアアアアアアアアアアアア!』



巨大な黄金の狼が刀身より飛び出し、咆哮を上げながら衝撃波の壁へと突っ込んだ。



ドォオオオオオオオオオオオン!



「ぐっ!」


黄金の狼は衝撃波の壁を軽々と打ち破り、そのまま魔王に激突する。

直後に激しい爆発が起きた。


「どうだ!」


思わず叫んでしまったが、大量の土煙で何も見えない。


しばらくすると土煙が薄くなり、魔王の姿がおぼろげながら見えてくる。


「何なのだ?このパワーは・・・」


唖然とし、信じられない表情の魔王が立っていた。


しかもだ!


俺とアンがあれだけ攻撃をしていたのにほぼダメージを与えられなかった魔王だったが、今、俺の前にいる魔王は大剣が根元から、そして左上半身が消失した状態で立っていた。


「ば、馬鹿な・・・、魔王も超え神となった俺が・・・」



「ぐっ!」


(どうした?)


ガクっと全身の力が抜けたようになって、床に膝を付いてしまう。


『マスターの潜在能力を少し使い過ぎたみたいですね。申し訳ありません、次は気を付けます。』


そう言って、隣の少女がぺこりと頭を下げてくるけど、彼女はやっぱり?


『そうです。私の名前はアルファ、このアーク・ライトのマスターコアです。マスターと私のシンクロ率が規定値を超えましたので、こうしてマスターのお側に顕現する事が出来るようになりました。』


アルファ?

アーク・ライトのマスターコア?

シンクロ率?


(訳が分からない事ばかりだ・・・)


『マスター、色々と知らない言葉ばかり言ってしまいましたが、それは気にしないで下さい。今はこの戦いに勝つのが最優先ですからね。』


金髪の美少女はパチンとウインクをした。


(確かにそうだよな。)


気を取り直して魔王へと視線を戻す。

その魔王はまだ自分の置かれた状況を受け入れられていないのか、いまだにブツブツと何かを呟いていた。


『ふふふ・・・、思ったよりも精神的ダメージを与えられましたね。あれだけ自意識過剰な男でしたから、自分よりも遥かに劣る存在に上回られた事が受け入れられないのでしょう。』


(さて・・・)


この子の名前はどう呼べばいいのだ?


アーク・ライト?


とても可憐な女の子の姿には似合わない気がする。


やっぱり『アルファ』って呼ぶ?


でもなぁ~、今まで前世も含めてずっとアーク・ライトって呼んでいたし、たまに『相棒』とも呼んでいたしなぁ・・・

まさかの正体がこんな女の子だったとは・・・


『どちらの名前も良いですよ。』


「へ?」


ラピス以外で俺の心を読む存在がいた!


『失礼ですね。別にマスターの心を読んでいる訳ではありません。私とマスターは一心同体、既に心は繋がっているのです。まぁ、今の私の本体はこの剣、いえ、正式には赤い宝玉に埋め込まれているマスターチップですけどね。本体の体は神界にあるエデンの地下に保管されています。』


「そうなんだ。それじゃ、剣の時はまだアーク・ライトと呼ばせてもらうな。でもな、こうして女の子の姿の時や、本当の体に戻った時はちゃんと本来の名前『アルファ』で呼ばせてもらうからな。」


『はい!』


嬉しそうにアルファが頷いてくれた。


『マスター、本来の体に戻った時を楽しみにしていますね。我々機械神族は人の心を持つことが出来ず、衰退の一途にいました。唯一、心を持ったデウス様が我ら機械神族の生き残る道を模索し、こうして剣となり人との繋がりを持たせて自我を持つことを促してくれたのです。私はデウス様の願い通り、こうして心を持てた事により顕現出来ました。しかも、マスターの事を・・・」


何だ?急にアルファの顔が赤くなった。


(嫌な予感しかしないが・・・)


ふと気が付いた。


「こうして顕現したって言ったけど、俺以外にアルファの姿は見えるのか?」


しかし、アルファが首を横にゆっくり振った。


『マスターが見える今の私の姿はマスターの脳内に投影された私の姿です。ですから、私を含めた姉妹のマスター達だけが私達と会話が可能なんですよ。』


「姉妹って?まさか?」


俺の言葉にアルファがパチンとウインクをする。


『ふふふ・・・、マスターの予想通りです。ガンマ、目覚めなさい。』



「えっ!」



アンがいきなり声を上げる。


アンの隣には・・・


アルファソックリな美少女が立っていた。


確かにそっくりだが、顔の造形が同じだけで髪はアルファの金髪に対して、デスペラードの刀身と同じとても艶やかな黒髪だった。瞳は宝玉と同じく紫色でにっこりと微笑みながら俺を見ている。


「デ!デスペラード!あなたは?」


アンが今にも目がこぼれ落ちそうなくらい目を広げ、黒髪の美少女を見ていた。

その美少女がアンに深々と頭を下げた。


『ご主人様、感情でのやり取りは行っていましたが、このように直接お話をするのは始めてですね。ご主人様の高潔なそのお心、その心が私の感情の基本となりました。その感情のやり取りの数々・・・、こうして顕現出来るまでに成長させていただき心から感謝しております。』


何だろうな、あの子の言動はアンに似ているよ。

アンの心が基本なら似ていて当たり前だな。


『私のコアチップの名前がガンマです。今の私のボディとして存在しているこの剣の名前がデスペラードと呼ばれていたのです。どちらの名前で呼ばれても私ですので、ご主人様のご自由にお呼び下さい、』


「そうね・・・」


アンが少し思案顔になっていたが、すぐに微笑んだ。


「あなたの事はやっぱりデスペラードと呼ぶわ。あなたの継承者になってからずっとこの名前で呼んでいたし、ガンマって何か記号みたいな名前で可哀想だしね。」


『ご主人様、そのお言葉と優しい心遣い感謝します。』


深々と頭を下げたが・・・


「こらこら、そんなに畏まってもねぇ~~~、私とあなたは主従関係じゃなくてパートナーだと思っているから、もっと気楽に付き合いましょう。その方がね、何だろう?もっとお互いに力を出せると思うのよ。だから、これからもよろしくね。」


『はい!ご主人様!』


とても嬉しそうに微笑んでいるよ。

アンの言う通り気楽な関係が良いと俺も思う。


でもなぁ~、こうして見ると姉妹の雰囲気に見えるから微笑ましいな。



『どうやらお互いの自己紹介の時間が終わったようですね。ベーターも紹介したかったのですが、まぁ、それは後ほどにしますか。』


アルファがキリッと表情を引き締め俺の顔を見てくる。


言いたい事は分かっている。


アーク・ライトを正眼に構え視線を向ける。



「・・・さん、貴様等ぁぁぁ・・・・、絶対にぃぃぃいいいいいいいいいいいいい!」



ズリュ!



吹き飛ばされ消滅していた左半身が一瞬のうちに再生する。

口からだけでなく、全身のあちらこちらからどす黒い紫色の煙が湧き上がっている。



パキパキパキパキ・・・



大剣の刀身は根元から消失してしたのに、漆黒の結晶がまるで鱗のように重なり刀身が再生していく。


(奴さんも本気になったようだな。)




ズン!




今まで全身から殺気や瘴気をダダ漏れで放出していたが、今の魔王からは余計な放出が止った。

その分、全身を巡り回り闘気?いや、瘴気のオーラを全身に一段と濃く張り巡らせている。




「許さぁあああああああああああああああああああああああああん!」




その怒りの声だけでこの場の空気が、いや!この城全体が揺れたのでは?

それ程までに激しいプレッシャーを魔王から感じる。


「下等生物どもがぁああああああああああ!どこまでも目障りなぁあああああああ!」



「黙れ!」



「あ”あ”っ!」


魔王がギロリと俺を睨む。


「魔王!貴様のその限りなく人を見下したその態度!この世に生を受けた者は全て平等!500年前の時は気付かなかったが、生まれ変わった今の人生でこの事に気付いた!俺は1人じゃない!アンにエメラルダ!テレサ!それにソフィアとラピス!俺は彼女達に支えられ、こうして成長する事が出来た!」


(ん?)


隣に立っているアンからとっても熱い視線を感じるのだが・・・

しかもだ!離れて見ているラピス達からも同じ視線を感じる。


やらかしてしまったかもしれないが、気にしないでおこう・・・



「ゴミは何があってもゴミには変わらん!神に楯突く愚か者が!真の俺の力を味わい!絶望の中で死ねぇえええええええええええ!」



魔王が再び吠えたが、俺にはもう通じない。

ここにはいないが、城の外で戦っている俺の妻達や可愛い娘!


それに・・・


『マスター・・・』


俺の隣で寄り添って微笑んでくれる、もっとも信頼出来る相棒!




「魔王には悪いけど!俺には負ける要素が無いんだよぉおおおおおおお!」




「ほざけぇええええええええええええええええええ!」




魔王が大剣を上段に構える。



「そのエゴ!俺達が断ち切る!」



正眼に構えていたアーク・ライトを腰だめに構え直し、魔王へと一気に飛び出した。


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