表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

258/335

258話 閑話 頑張れ!デミウルゴスさん

「う~~~~~、死ぬかと思った・・・」


あの厚顔無恥なヴリトラが憔悴しきって私の前に座っているわ。

あのヒスイって言うヤバいメンヘラ娘はフローリアと一緒に料理を始めて、今は私とヴリトラの2人でソファーに座っている。


「いつもの事だけど、あのメンヘラドラゴン娘は本当恐ろしいな・・・、俺の精神の生きるか死ぬかのギリギリをネチネチと攻めてくるよ。あんな呪いのような小言の精神攻撃、俺じゃどうにもならん。小姑のいる嫁さんの気持ちってこんなものかと思うな。しかも、単純な戦いでも手も足も出ないときたものだ。」


(はい?ドラゴン娘?しかも、ヴリトラでも相手にならないって?)


「ねぇ、ヴリトラ・・・、あの子はフローリアの子供じゃないの?『ママ』って呼んでいたしね。とんでもなく可愛い子だけど、確かに見た目からでもフローリアの子供に見えないわ。分かるように説明してよ。」


ヴリトラすら死の一歩手前まで精神的に追い込むほどだから、てっきりフローリアの子供だと思っていたけど違っていたんだ。

だったら誰の子供?

何でフローリアの事をママと呼ぶの?


「あの子はなぁ、神界に転生したあいつと神龍の子供さ。しかもだぞ、生まれ変わった本来のあいつはフローリアの旦那でもあるんだよ。だからだろうな、生まれてからずっとフローリア達のハーレムに育てられてきたんだ。ある意味、フローリアも母親みたいなものだろうな。あのフェンリル族の娘もあいつのハーレムの一員だぞ。」


「マジ?あっちのダーリンって、ここと一緒でハーレムなの?」


やっぱりダーリンの魂ってそうなのね。

確か、あの鬼っ娘もダーリンの前世でもある初代創造神のハーレムの一員だったわね。


(確か?)


初代創造神のハーレムはとんでもない数だったと伝承に残っていたわね。

その魂が2つに分かれているけど、半分になってもどっちもハーレムに間違いなのかもね。

でもね、私はこっちの方が良かったと思うわ。


(だってね・・・)


今のダーリンの奥さん達は確かに敵だった連中ばかりだったけど、何だかんだ言っても私が認めた連中だしね。

絶対にこっちの方が楽しいに決まっているわ。



「そうそう・・・」


ヴリトラが更に神妙な態度で私を見てきたわ。

何が言いたいの?


「知識として覚えておいた方が良いと思って言うが、フローリアの娘は最凶にヤバい。あのヒスイすら可愛いと思うほどだぞ。神界にいるアイツ、蒼太と呼んでいるが、そいつとフローリアの間に生まれた子供だ。ハイスペックどころではないな。あの創造神でもあるレオですら本気になっても引き分けになってしまう奴だ。まだ4歳でだぞ・・・、しかもな、ヒスイ以上に父親である蒼太に対してのメンヘラ具合はそりゃもう・・・、うっ!」


あ!ヴリトラが言い淀んで遠い目になっているなんて、その時の状態はどうだったのよ。

思い出したくない程に怖い思い出だったの?


「まぁ、神界に行かない方が良かったんじゃないか?ヒスイだけでも厄介なのに、更に恐ろしい化け物の近くにはいられないからな。」


滝のようにびっしょりと汗をかいているヴリトラなんて初めて見るんじゃないのかな?

そんなこいつを見ると、私もここで生きていくのが正解だと思う。


「絶対に神界に戻らないって、あんたの態度で私の気持ちも決まったわ。」


そう思ってジッとヴリトラを見つめると、ヴリトラがフッと笑った。


「変わったな・・・」


(はい?何を言っているの?こいつは・・・)


「ついこの間まで全てを恨んでいたような死んだ目だったお前がなぁ・・・」


(どういう事よ?私の目が死んでいるって、何よ!)


「今のお前は生き生きしているな。俺もそうだったが、あの悪さをしていた頃の俺が馬鹿らしいと思えるほどに今は充実している。たまにするあいつとの模擬戦も楽しくてたまらないよ。」



(そっかぁ・・・)



さっきヴリトラを見た時に少しだけ違和感があったけど、その違和感の正体が分かったわ。


ヴリトラは生きがいを見つけたのでしょうね。

多分だけど、ダーリンとは仲良くしているみたいだわ。


(私が好きなダーリンだもの、ヴリトラにも良い方向に変えたのでしょうね。)


そして・・・


あのヒスイって言うドラゴン娘もヴリトラの心を変えた一因でしょう。

あれだけブツブツ言っているのに別れるつもりもないみたいだし、まぁ、あのドラゴン娘から逃げられないってのが正解でしょうね。

それでも、一緒にいても嫌そうな感じではなかったわ。


あれだけ重いけど、ヴリトラにとっては満更じゃないみたい。


(ある意味、お似合いかもね。)


あのヴリトラにもやっとモテ期が来て、しかし、それが凶悪ドラゴン幼女だったて事ね。


そう思ったら、思わずにやけてしまったわ。


「ふふふ・・・」



「デミウルゴス・・・」


(はっ!)


ちょっと自分の世界に入っていたみたい。

目の間にいるヴリトラが少し呆れた表情をしているわね。


「本当に変わったな。お前がこんなに表情が豊かだったとはな・・・」


ジロジロとヴリトラが私の顔を見ているけど、ちょっと恥ずかしいわよ!


「今の魅力的なお前だったら、レンヤには勿体ないくらいだ。こうして目の前にいられると、俺も少しドキッとしてしまうな。どうだ?レンヤじゃなくて俺に乗り換えてみな・・・」



ジャキッ!



「「!!!」」



部屋の中が氷点下のように寒くなっている!


(いえ!実際に室温は下がっているのでは?)


しかもよ!


何なの!目の前で見せつけられているこの光景は?



(恐ろしい・・・)



部屋の室温が下がったのはこの子のせいで間違い無いわ。


その子は・・・


「あなた・・・、私という者がいながら何をナンパしているの?それもレンヤお兄ちゃんの奥さんになる人によ・・・、さっきのOHANASHIだけじゃ分からなかったのかな?」


(怖い!怖い!怖い!)


ヒスイちゃんがいつの間にかヴリトラの横にいるわ!まるで瞬間移動したかのようね。

私は空間を操れるから、瞬間移動や空間移動は出来るけど、それでも魔力の揺らぎや痕跡は残ってしまうわ。

でもね、この子から何も感じなかった。本当に目の前に突然現れたのよ!


(まさか?)


身体能力だけで瞬間移動のような動きが出来るって事?


(そんなのあり得ない!)


しかもよ!私とヴリトラの話はあっちのキッチンには聞こえていないはず!

そんな話を聞いたって?


(どんな化け物耳よ!)


こんな幼女からは想像も出来ない殺気を放っているわ!

その殺気が部屋の室温を物理的に下げたの?

それにね、この子はただヴリトラの横にいるだけじゃないの!


両手に握った包丁をヴリトラの首に突きつけているのよ!

まるで鋏のようにヴリトラの首を刈るような姿勢でね!


そんな物騒な行動もあり得ないけど、本当にこの子!何から何までおかしいわよ!

目付きがもう完全に据わっているし、もういつでもヴリトラを殺せるんじゃないかと思うほどに冷酷な目よ。

あのダリウス様よりも怖い目なんてどういう事?


突き付けた包丁の刃をヴリトラの首にゆっくりと押し付けているわね。

いくら刃物でもただ当てるだけだと、すぐには切れる事は無いわ。

当てた後に押すか引くかで切れてしまうからね。


ヴリトラもそれが分かっているからかピクリとも動いていない。

この状態で動けば確実に刃が首に喰い込むのは間違いないわ。

確実にこの子のヤバさを実感しているんじゃないかな?



私もヴリトラも身動き出来ない時間が過ぎていく。


一瞬だったかもしれないけど、私にとってはとても長く感じたわ。


その均衡をあいつの一声で崩されてしまうとはね。



「こらこらヒスイ、包丁は人を切る道具じゃないのよ。」



「えっ!いつのまに?」


見えなかった・・・

いつの間にフローリアがヒスイちゃんの横に立っているの?


そ、それによ!


ヒスイちゃんの持っていた包丁がなぜ?フローリアの手に?

視線をヒスイちゃんの手に戻すと、確かにヒスイちゃんの手には包丁が握られていなかった。


この2人!


ハッキリと理解したわ!


私やヴリトラなんて足元にも及ばない!あの鬼神族の鬼っ娘以上、いえ!そんな存在さえも軽く超える存在だわ!


(フローリア・・・)


あんた・・・


どれだけの存在になったのよ・・・


私が反乱を起こし封印された頃のあんたとは全く違うわね。

今、目の前にいるあんたは本体よりもかなり力が落ちる分身体と言っていたわよね?

その分身体で今の状態?


これが真の『戦女神』の力なのね。



(ふふふ・・・)



相手に不足はないわ。


いつの日か必ず・・・


あなたに追い付く・・・




「ヴリトラさん、うちのヒスイが申し訳ありませんね。」


フローリアがヴリトラにペコペコと頭を下げているわ。

そんなフローリアを見てヴリトラがちょっと困った感じね。

まぁ、あれだけ目の敵にしていた創造神レオの義理の娘だし、そんな相手から頭を下げられるのは変な感じよね。


「ママ、だってぇ~、彼がねぇ~、デミウルゴスお姉ちゃんを口説いていたんだよ。私っていう婚約者がいながらよ。」




「そうなの?」




ゾクッ!



(何?この何とも言えない空気は?息をするだけでも体の中に鋭く細かい針が入っていく感じは?)




「ヴリトラさん・・・」



「お、おぅ・・・」



ははは・・・、あのヴリトラが完全に委縮しちゃってる。

それによ、フローリア、あんたの今の魔力は何なの?分身体なのよね?


(今の状態でもヒスイちゃんを軽く越えているわ。)


さっきの戦いは力を抑えていた訳?



「そうよ。」



(へっ?)


何でフローリアが返事をする?


「私は女神なんですよ。それくらいの事が出来なければ世界の管理なんてやってられませんしね。」


(無い無い!それとこれは違う!)


「そうですかぁ?でもね、。これのおかげで旦那様の心の声が聞けますから役に立っていますよ。夫婦に隠し事はダメですし、旦那様の全て、心の中まで知りたいのは当然ですよね?」



そっちが目的かぁああああああああああああああ!



フローリアの旦那になったもう1人のダーリン・・・


心から同情するわ。


フローリアと一緒にいるって事は、プライパシーの欠片も存在しないって事なのよね。



あ!でもね・・・


私もフローリアの気持ちは分からなくもないわ。

そう・・・

私はダーリンを愛している。誰よりもね・・・

だから、ダーリンの事は隅から隅まで知りたいのは当然よね。心の中も!

本当は誰にも渡したくない。ダーリンを独占したい。


(でも、それは無理な事。)


だから諦める?


いえ!それは諦めきれない話よ!


でもね、そうなるとテレサちゃんとの関係が悪くなるかもしれないわ。

テレサちゃんってここにいるヒスイちゃんに似ているのよね。

メンヘラ度はテレサちゃんと比べてもヒスイちゃんは天元突破しちゃってるから比べようがないけどね。


テレサちゃんは私の妹になったし、あまりダーリンに固執し過ぎて関係が悪くなっても困るわね。



「デミウルゴスさん」


フローリアが微笑んでいる。


「頑張ってね。応援しているわよ。」


「ありがとう、ダーリンの1番になれるよう頑張るわ。」


「その心意気よ。」



そう言って微笑んでいたフローリアだったけど、急に目が鋭くなりヴリトラを睨んだわ。



「で!」



ピクッとヴリトラが震えているわね。


「さて、私の親友でもあるデミウルゴスさんに何て事を言ったのですかね?」


「いやいや・・・、これはちょっとした冗談でな・・・、なぁ、デミウルゴス・・・」



あらら、あのヴリトラが私に懇願するような目で見ているわね。


でもね、私にはとっても嫌いなものがあるの。



それはね・・・



「ヴリトラ、私ってセクハラされるのが大嫌いなの。サキュバスだって事でね、今まで散々と言われてきたのよ。体目当てで近寄ってきた男は数知れず・・・、淫魔だから卑猥な言葉を言えば喜ぶなんて馬鹿にしてきた男も数知れずよ。そんな男はことごとく殺してきたか、社会的に抹殺したかのどちらかだけどね。あんたは数少ないまともな目で私を見てきた男だったけど、だからって、冗談でもそんな言葉は許さないわ。」


ヴリトラからフローリアに視線を移したら、フローリアがコクンと頷いてくれた。


(さすが!私の親友ね。)



ガシッ!



「あがっ!」


フローリアがヴリトラの頭を後ろから鷲掴みにしたわ。


「待て!待て!フローリア!面白い冗談で言っただけだ!デミウルゴスには全くその気はないから!」


ギリギリ・・・


あらら、フローリアがヴリトラの頭を締め付ける音がこっちにまで聞こえるじゃないの。

どんだけ馬鹿力なの?


「ヒスイ」


「ママ、どうしたの?」


「私と一緒に彼とOHANASHIしない?」


「うん!」


とっても嬉しそうにヒスイちゃんがブンブンと頷いているわ。

そのままズルズルとフローリアに引きずられて、扉の奥にヒスイちゃんと一緒になって消えていたわね。


何かデジャヴを感じるけど気のせい?


(ご愁傷様・・・)


ヴリトラの冥福を祈るけど、あの2人相手じゃ骨すらも残らないかもね?



ま!私は私でこれからの事を頑張るとしますかね。




ダーリン・・・



ずっと一緒よ・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ