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250話 デミウルゴス再び⑥

「はぁ~~~~~、これはママが危惧した通りテレサさんよりも質が悪いわ・・・、どうしましょう?」


フローリアが疲れた感じでトワを見つめている。


「前々回の終りと似たような感じですし、読者から『ワンパターン』だと感想で指摘されそうですね。それにしても次から次へと厄介事ばかりで頭が痛いですよ。そして鬼神族はかな~~~り、いえ!相当に嫉妬深い種族でしたからね。そのヤキモチ焼きはかなりのものだったとデウス様が仰っていましたし・・・、私が封印で植え付けていたテレサさんの疑似人格はレンヤさんの妻の中でも最強のヤンデレ娘になっていましたからね。その嫉妬深さは元の魂であるトワ様から溢れ出ていた感情で染まっていたのでしょう。最強のヤンデレとしての感情は決して私の感情では無いと思いますよ。そんな話をした時のデウス様とママはとても変な目で私を見ていましたが、何か納得出来ない感じでしたよ。私はいたって普通の女神です。普通よりちょっとだけ旦那様の事がみんなより好きなだけですわ。ほ~~~~~~~~~~~~んのちょっとだけなのにねぇ~~~、何で誰も信じてくれないのでしょう。美冬さんからは『あんた以上に病んでいる奴はいないわ!ソータが可哀想よ!』って言われたけど、私ってそんなにヤバいヤンデレですか?心外です!プンプン!ふふふ・・・、こうして少しは可愛いところも見せないとね。え!誰にそんなところを見せているかって?それはもちろん旦那様に決まっているでしょう。時々思うのですよ。いえ、ごめんなさい。いつも思っていました。てへっ!私だけを見て、私だけを愛してってね。決してヤンデレな思考ではないと思いますが?そうですよね?あ!話は元に戻りますけど、そんな最強のヤンデレが復活してしまったら、間違いなくアンジェリカさん達も危ないでしょう。トワ様なら全員を抹殺しかねないとママが言っていましたからね。現実に今、そう宣言されてしまいましたし、これは非常~~~にマズイです。」



「フローリア・・・」



チラッとデミウルゴスがフローリアへ視線を送る。


「デミウルゴスさん、どうしました?」


そのデミウルゴスが少し怪訝な顔をしている。


「何を1人でブツブツ言っているの?さっきもそうだけどやたらとセリフも長いし、ハッキリ言って、あんたちょっと気持ち悪いわ。私でも引くレベルだと思うわね。ホント、見ない間にかなり変わったわねぇ・・・、悪い方向にね。それにしてもねぇ、いやぁぁぁ・・・、さっきは私が何とかすると啖呵を切ったけど、やっぱりアレ相手ではちょっと無理っぽい気が・・・、いえ!私が死ぬ未来しか見えないのよ!」


「それはそうでしょうねぇ~~~」


ジト目でフローリアがデミウルゴスを見ていた。


「オーガ族ならともかく、鬼神族相手ではねぇ・・・、この体だとクローディアも呼べませんし、さて、どうしましょうか?」


デミウルゴスがフローリアの隣に立った。


「不本意だけど、この場はこれで乗り切るしか方法がないかもね。あの時以来ね、フローリア、あんたと連携をして戦うのは・・・」


フローリアがデミウルゴスの言葉でニヤリと笑った。


「懐かしいですね。あの時は私が第7部隊の部隊長でしたね。」


お互いに目を合わせ小さく頷いた。



「フローリア様、私も微力ながらお手伝いします。」



ソフィアが2人の後ろに立ったが、フローリアは手を出しソフィアを制止した。


「ここは私とデミウルゴスさんに任せて。あの鬼神族はあなたでは正直手も足も出ない相手ですからね。本物の強者の戦いを見ていなさい。これも修行ですよ。」


「はい・・・、申し訳ありません・・・」


そう言ってから、ソフィアがフローリア達からかなり離れた場所へ移動した。



「さて、これで心置きなく戦えるわね。」


フローリアの言葉にニタァ~とトワが笑う。

戦う事がとても楽しそうな笑顔だ。



「やっぱり神界最強の戦闘民族だけあるわ。この戦いを楽しもうとするなんてね。ダーリンの虫退治なんて本当の目的じゃないんじゃないの?ホント、快楽戦闘狂は面倒ね。」


タラリと額から汗を流しているデミウルゴスだが、視線はトワをジッと見つめている。


「そうでしょうね。本当に戦う事が好きなお方でしたし、ママも言う事を聞かせるのに苦労していたみたいですよ。味方となればこれだけ心強い存在はないと言っていましたけど・・・」


スッとフローリアが右手を前に差し出すと、テレサの使っていたミーティアが現われ握られる。


「クローディアの召喚は無理でしたが、何とかこのミーティアは協力してくれる事になりましたよ。あなたも本来のマスターであるテレサさんに戻ってきてもらいたいのですね。」


そう呟くと青い宝玉が点滅する。


「それなら、あなたの期待にも応えませんとね。」


グッと下段に剣を構えた。


「ふふふ・・・、当時は『黒薔薇』と呼ばれたソノカの剣、久しぶりに見られるなんてね。こうして蘇った事に感謝よ!」



ドン!



まるでロケットのようにトワがフローリア目がけて飛び出した。


「ミーティア!峰打ちモードよ!さすがに真剣の刃で切る訳にいきませんからね!」



ガシィイイイイイイイイイ!



トワの正拳突きをフローリアは剣で受け止める。

ミーティアの刃は切れるような事はなくなっているが、それでもミーティアの刀身から『ミシッ!』と音が聞こえた。


「マジですか?この剣でなければ折れてましたよ。美冬さんと同レベルかそれ以上かも?峰打ちモードだから刃は切れないようにしていますが、自分の手を断ち切られる事も構わずに殴りつけてくるなんて、戦う事に快楽を感じる種族だけありますね。」



「このぉおおおおおお!」



ヒュン!



大きなコウモリの翼を背中から生やしたデミウルゴスが、宙を飛び上空から鞭を振りかぶった。

頭上から漆黒の鞭がトワへと襲いかかる。


「ヒュドラ!ウイップ!」


その鞭がトワの目の前で何本も増殖し、次々と飛んできた。


「こんな児戯でぇえええええ!」


トワがノーモーションで一気に後ろへと飛んだ。


「あんな体勢で後ろに飛べるの?どんな体のバネと体幹なのよ!だけどねぇえええ!このヒュドラ・ウイップを舐めないで!どこまでも追いかけて絡み取るわよ!」


「だったら!」


スタッ!


トワが床に着地し、少し腰を屈める。



「覇王流!百烈掌!」



フッ!



トワの両手が一瞬見えなくなる。


スパパパァアアアアアアアアアアアアン!


トワに絡みつこうと直前まで迫っていた鞭が全て吹き飛ぶ。


「何なの!この拳圧はぁあああ!化け物めぇえええええええ!」


デミウルゴスが叫ぶと、トワがキッとデミウルゴスを睨む。


「鬼神族は徒手空拳の戦いしか出来ないはず!こうして空を飛べる私にアドバンテージがあるわ!」


左手の掌をトワに向けると、掌の中央から白い光が溢れる。


「これならどうよ!マジック!ミサイル!」


掌から何本もの光の玉がトワへと飛び出した。



「空中からの攻撃?そんなの関係無いわよ!」



トワが叫んだ瞬間、デミウルゴスが放った魔法を躱し天井へと跳び上がった。


「バカめぇえええ!あんたでは空中での姿勢は変えられないわ!」


デミウルゴスが叫ぶと、彼女の周囲に漆黒の玉がいくつも現れた。

一瞬膨張し黒球から黒い光線が放たれる。


「ダークレイ!貫けぇええええええ!」


トワはデミウルゴスへと一直線に飛び込んできているので、今の状態だと回避する事は不可能だろう。

しかし、その表情には焦りも無く、それどころか笑みを浮かべていた。


「私を舐めるなぁあああ!」



ダン!





「へ?」





トワの行動にデミウルゴスが信じられない顔になり変な声も出してしまう。

まるで空中に見えない足場があるかのように、右足を踏み込むと空中なのに横へと飛び退いた。





「覇王流!奥義の一!迅雷!」





「何なのよぉおおおおおおおおおおおおおお!ここまでデタラメな種族だなんてぇえええええええ!」



ズバババァアアアアアアアアア!



漆黒の光線がトワの横を通り過ぎていく。


しかも!

光線を躱したトワが、再びデミウルゴスへと飛び出す。


「何よぉおおおおおお!何で空中を駆け上がってくるのよ!」


信じられない光景にデミウルゴスが絶叫する。

それもその筈、トワが空中なのにまるで階段を駆け上がるようにしてデミウルゴスへと迫ってくる。


「そんなの簡単よ!空中にある足が落ちる前に反対側の足で再び空中を踏ん張れば良いだけよ!それを繰り返せば落ちる事はないからね!」



「そんな訳あるかぁああああああああああああ!」



デミウルゴスがクルッと鞭を振りかぶりトワへと放つ。


「どんだけ滅茶苦茶な理論よ!喰らえ!サイクロン・ウイップ!」


鞭が渦を巻きながらトワへと襲いかかる。

しかし、その攻撃もさっきのように空中を足場にしてサッと躱されてしまう。



「この攻撃すら避けるって!さすがですね!」


突然フローリアの声が響く。


「むっ!」


フローリアも翼を広げ飛び上がり、トワの横まで迫りミーティアを水平に振りかぶった。


「やるわね!この剣筋ならさすがの私も避けられないわ!」


「胴体が真っ二つにならないよう切れ味は無くしましたが、峰打ちの痛みだけは覚悟して下さいね。」


ミーティアの刀身がトワの脇腹へと吸い込まれた。



ガシィイイイイイイイイイ!



「そ!そんなのってぇええええええええ!」



ニヤリとトワがフローリアへと笑みを浮かべる。

ミーティアが彼女の脇腹にと届く前に、彼女の肘と膝によって挟まれてしまっていた。

これがミーティアでなく腕か脚だったら、肘と膝に上下から挟まれ確実に骨は砕かれていただろう。




「これで勝った気になるなんて甘いわねよ。」




あまりの破壊力に『ミシッ!』とミーティアから嫌な音が聞こえる。


「このままだとミーティアが本当に折れてしまうわ!何という格闘センスなの!」


しかし、フローリアも負けてはいない。

このままミーティアに負担をかけてしまえば折れると分かったからか、すぐに手を放し一気にトワへ突きを放った。


シュッ!


渾身のフローリアの突きだったが、紙一重でトワに躱されてしまう。


「まだよぉおおおおおお!」


トワがフローリアの突きを躱した事でトワに押さえ付けられていたミーティアが解放された。


ブン!


フローリアの手の中にミーティアが瞬間移動し逆手で握る。


斬!


「くっ!」


フローリアが一気に剣をトワへ逆手で振りぬくが、またもや紙一重で躱されてしまった。

そのまま床へと落下したが、クルッと回転し音も無く着地する。



「さすがはソノカの生まれ変わりね・・・、今の剣筋はさすがに危なかったわ。」


スタッとフローリアもデミウルゴスも床へと降り立つ。


「これは申し訳ありません。狙った訳ではないのですが、女性の顔に傷を付けてしまうなんて・・・」


フローリアが深々と頭を下げているが、トワの方は全く気にしていないようで、頬に付いた傷から流れている血を指でふき取りペロッと舐めていた。


「気にしていないわ。戦いの傷は勲章だからね。そもそもよ、あんた達2人相手に無傷で勝てると思うほど自惚れていないわ。」


ニヤッとトワが笑ったが、その口角が更に上がってくる。


「あはははぁあああああああああ!楽しいね!とってもねぇええええええええええ!こうしてまたソノカと戦えるなんてね!」



「私は全く楽しくないのですが・・・」


「それは私も同感ね。でも、どうやってこの状況を打破するの?フローリア、何かいいアイデアはないの?」


「そんなのがあったらもう手を打っていますよ。」




小さくフローリアが呟いた。




「テレサさん、戻ってくると信じていますよ。あなたは私が認めた勇者の1人ですから・・・」


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