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239話 激突!死天王②

年度末の決算に、その他諸々とリアルの仕事で作業が進みませんでした。

しばらくは更新が遅れがちかも?

申し訳ありません。m(_ _)m


「どうやら、少しは骨のある奴がいたようだな。ここは我に任せろ!」


ティアの視線の先にはティアと同じようなドラゴンの翼を広げ、腕を組んで仁王立ちに浮いている男の姿があった。

その男も俺達を見てニヤリと笑った。


(デカい!)


男は大柄なヴリトラよりも更に一回り大きな体つきに見える。

紫の刈り上げた髪に黒のメッシュが入っていて、瞳は血のように真っ赤だ!



「ティア、アレは?お前やヴリトラと同じドラゴンが人化した姿か?」


俺の言葉にティアがフッと笑った。


「ご主人様よ、ドルフの街で最後に倒したあの魔人は覚えているか?」


(まさか?)


「ふふふ・・・、ご主人様の想像通りよ。あの男は魔人に間違いないが、竜の因子を組み込まれているようだ。あやつからは魔人以外にも複数の魔物の気配を感じるからな。我やヴリトラとは全く違う気配だな。」


「まさか、キメラの研究を色んな人間で試していたなんてね。」


ラピスが俺達の隣に並んで浮いている。


「キメラだと?」


「そう・・・、、あれは間違いなく悪魔の所行よ。別々の生物をつなぎ合わせて、更なる戦闘力の向上を図る生物実験の事よ。単純に継ぎ合わせたものから、生物の因子を取り込んで新たな生物を作る方法もあるわ。あのダリウスの無限に近い再生能力を利用して、生物同士の掛け合わせで壁になる拒絶反応を抑えたようね。でもね、あれだけの成果を出すのにどれだけの犠牲者がいたか・・・」


ギリッとラピスの視線が鋭くなる。


「それじゃ、あれはもう?」


ラピスがゆっくりと頷く。


「見た目は人間のように見えるけど、。もう完全に人間を辞めて意志のある生物兵器として存在しているのでしょうね。」



「そんなの・・・」



アンが青い顔で俺達を見ていた。


「ここまで人は残酷になれるのですか?我々魔族でも同族相手にはそこまで酷い事をしません。人体実験に生物兵器なんて・・・」


「それが、ダリウスが今回、魔族でなく人間を魔王に選んだ理由でしょうね。魔族を魔王として力を与えても、今までは勇者を筆頭に人間達に負けていたわ。単純な力では魔族の方が遙かに上なのに、人間には勝てなかった。」


「それはどうして?」


「人間は弱い種族だからよ。そう、弱いから強くなる為に色々と考えるの。そして同族同士で戦争を起こすのは歴史上でも人間だけね。」


「確かに・・・」


アンがウンウンと頷いている。

ラピスにそう言われてみれば、確かに人間だけが国の覇権を巡って戦っていた。

魔王と人類の戦いはダリウスの仕組まれた戦いだったが・・・


「人間の歴史は戦いの歴史でもあるのよ。戦いによって技術が向上し、戦いが終わればその技術が世の中に広まっていったのよ。」


「それでダリウスが人間を選んだのは、人間の持っている技術力を利用しようと?ロキのような神の技術を持っている者がいれば、その技術を取り込み更に向上させ戦いに投入してくると?」


「正解よ。」


パチンとラピスが俺へウインクをしてくる。


「ダリウスが望んでいるのはこの世界の滅亡よ。ここにいる生物の都合なんて知った事ではないのでしょうね。泥沼となった戦いの行き着く先は何か分かる?」


「お互いの消滅ね。」


ソフィアも俺達の会話に入ってきた。


「そういう事、かわいさ余って憎さ百倍って言葉があるように、フローリア様の生み出したこの世界を目茶苦茶にしようとしているからね。最終目標はこの世界を滅ぼす事、そうすればフローリア様がまた自分に構ってくれるのでは?と思っているのでしょうね。」


(本当にクソな神だよな。いい迷惑だ。)


「それなら、私が人間代表として、あのキメラ男と戦って、『人間!舐めんなよ!』って言ってあげるわ。」


ソフィアがグッと拳を構えた。


「待て!」


ズイッとティアが俺達の前へ出る。


「先ほども言ったが、ここは我に任せてもらおう。」


ティアがニヤリと笑う。


「あんな紛い物のドラゴンにでかい顔をされたくない。この世界のドラゴンの王が誰か?それを徹底的に教え込まなくてはな。」


久しぶりに見るティアのやる気MAXモードだな。

今のティアならまず負ける事はないだろう。

無理に代わりの人に戦わせてしまえば、必ずティアの機嫌は悪くなるな。


「分かったよ。気の済むまで戦いな。」


ティアが嬉しそうに微笑むとギュッと俺に抱き着いた。


「ありがとう・・・、ご主人様、いや、旦那様・・・」


そしてゆっくりと離れた。


「ふふふ・・・、旦那様成分をフルチャージしたぞ!これで我は無敵だ!」



バサッ!



背中の煌びやかな翼を大きく広げ、一気に奴の方へと飛び立った。


「あいつの足止めは我が行う!旦那様達は先に行ってくれ!すぐに追い付くからな!」


グングンとティアが奴へと迫っていく。


「レンヤさん・・・」


アンが心配そうに俺を見つめた。


「心配するな、ティアは必ず勝つさ。それも圧倒的な勝利でな。」


グッと親指を立てると、不安そうな顔のアンが嬉しそうに微笑んだ。


「そうね、ティアは強いわ。その強さは私達が良く知っているからね。」


「そういう事だ!だから俺は心配していないし、すぐに追い付いてくると信じているさ。」


チラッと奴へと向かって飛んでいるティアを見つめる。


(ティア、すぐに来いよ。待っているからな。)


「よし!みんな!魔王はもう目の前だ!さっさと終わらせてこの国に平和を取り戻すんだ!」


俺の言葉にみんなが頷き、再び王城へ向かって飛んで行く。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






ティアマットが男の前に浮いている。

お互いの距離は50メートルくらい離れているだろうか。

その男がニヤリと笑った。


「そんなに死にたいのか?たった1人で俺に立ち向かうとはな・・・」


「別に・・・」


ティアマットも同じように不敵に笑った。


「いくら神竜だろうが、この小さな世界での進化の頂点ごときが、神の世界にいた真の竜である俺に勝てるはずがないだろうが!戦いに参加せず巣に籠もって縮こまっていれば少しは長生き出来たのになぁ~~~」


「まさか?貴様は?」


ピクッとティアマットの眉が上がった。


「そう!俺様は神界生まれの竜神王だ!またの名を『毒竜帝ニーズヘッグ』!何が因子だぁあああ!俺様が元の体を乗っ取ってやったよ!原生生物が神を宿そうとするとはおこがましいにも程がある!魔王のバックにあの邪神ダリウスがいるから渋々従っているがな。今の俺は魔王の側近の中でも最強の4人の1人!『死天王』のニーズヘッグだ!それにな、この世界を破滅させる話は俺も賛成だ!破壊!混沌!弱者の悲鳴!最高だよぉおおおおおおおおおおおお!」


「ニーズヘッグ・・・」


ティアマットがボソッと呟いた。


「何だ?神にもなれない名前だけの田舎神竜が俺様の名前を知っていたのか?」


ニーズヘッグが大口を開けて笑っている。


「いや・・・、単にチラッと聞いただけだ。先日、神界からこの世界に住み始めた神竜からな。」


「ほほぉぉぉ、神界からと?」


「そう、単細胞のバカな奴だとな。同じドラゴン族の中でも特に恥さらしの奴だと言っていたぞ。」



ビキッ!



「な、何を!ふざけるなぁああああああああああ!」


ニーズヘッグの全身から濃い紫色のオーラは湧き出した。



「「「GAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」」」



そのオーラを浴びたワイバーン達が説教を上げ、ボロボロと体を腐らせながら落ちていく。


「ほぉ~、これが『毒竜帝ニーズヘッグ』の毒と化した瘴気とはな。伊達に『毒竜帝』と呼ばれていないか。その『瘴気は吸い込むだけでなく、触れただけでも体が腐り即死させるまでにと・・・、聞いた以上だな。」


ニヤニヤとニーズヘッグが下品な笑い顔をティアマットへ向ける。


「どうだぁあああああああ!俺様の毒は神界でも最強の毒だ!例え神だろうが俺様の毒に抵抗する事は出来ん!俺がその気になればこの帝都くらいならばなぁ、一瞬で毒沼にして未来永劫、不毛の地に変える事も可能なんだよ!」


「そうなのか?だったら何故そうしない?」


「決まっているだろう!そんな一気に人間を殺して何が楽しい!俺様はなぁ・・・、1人1人づつなぁ、少しずつ毒で蝕まばれ絶望の中で死んでいくのを見るのが好きなんだよ!ぎゃはははぁああああああああああああ!」



「ゲスが・・・」



「何がゲスだと?俺様は神だ!神が下界の原住民に何を遠慮する必要がある?この世界に顕現出来て心から良かったと思ったぜ!こんなにオモチャがいるからなぁあああああああああああああああああああああああああ!」


ニーズヘッグの毒々しいオーラが更に周りに広がる。


しかし!


そんな状況でもティアマットがニヤリと笑った。


「貴様は力だけは我の前に立つ資格はあるようだ。だが、それだけのようだ。その姿さえ我の視界に入るだけでも不快よ。」



「ほざけぇえええええええええええええええええええええ!」



ニーズヘッグが絶叫し、全身のオーラが巨大な球体へと変化し、ティアマットへと飛んでいく。



ボシュ!



「くっ!」



巨大な球体にティアマットが呑み込まれてしまう。


「ぐはははぁああああああああああああああああ!何が神竜だぁあああ!たかが下っ端のくせに生意気なんだよ!毒と混沌を司るこの俺様!『毒竜帝ニーズヘッグ』に楯突くなんてな!骨も残さす腐り果てて死ねぇえええええええええええええ!」


ニーズヘッグがティアマットと呑み込んだ巨大なオーラの塊を見ている。

その顔は険しく、明らかに不審なものを見るような目だった。



「おかしい?」



ボソッとニーズヘッグが呟いた。


「腐り果ててしまえばあのオーラも消え去るはずだ。あの大きさなら一瞬で消え去るはずぞ。だが・・・、いつまで経っても消えないだと?」




「くくくくく・・・」




ティアマットの笑い声が響く。



バン!



「ば!ばかなぁあああああああああああ!」


禍々しい紫色のオーラの塊が勢いよく弾けた。


しかも!

ティアマットの姿は呑み込まれる前と全く変わっていない。

いつもの不敵な笑い顔でネーズヘッグを見ていた。


「ふはははははぁあああああああああああああああ!貴様のような瘴気や毒なんぞ我には効かんわ!我が名は神竜アメジスト・ドラゴンのティアマット!この世界の守護者の1人だ!それにな、元々の我は混沌を司るカオスドラゴンだぞ。貴様ごときが我に混沌というものを説くな!」


ブワッ!


ティアマットの全身からどす黒いオーラが噴き出す。


「な!何だ!この圧倒的な!俺が・・・、俺が・・・、こんなクソ竜に怯えるだとぉおおおおおおおおお!」


ニーズヘッグの顔面に大量の汗が噴き出し、ジリジリと後退を始めた。


「ふん!だから貴様はバカの単細胞と呼ばれるのだ!」


ティアマットが両手を広げる。


「貴様は神々の戦いというものを知らないのか?神とは不老の存在、そんな存在が無秩序に神界にいれば、いつかは神界もパンクする。だが、何故そうならない?貴様は知らないようだが、神々の世界では数百万年のサイクルで神々の全面戦争が起こるのだよ。それこそ数億の単位で神々が日々死んでいく。まるで神々が淘汰されていくようにな。」


「何故、その話を貴様が・・・」


「だから貴様はバカと呼ばれるのだ。聞いていないかったのか?我らの後ろには神界最強七神がいるとな・・・、そんな存在に我は鍛えられたのだぞ。そして、神々の戦い、『ラグナロク』となるものも教えてもらったのだ。」


更にティアマットのオーラが広がる。


「そして、上位の神々の戦いというのも教えてもらった。神は普通に戦うのではない!お互いの存在を賭けて戦っているのだ。下位の神々は普通に戦えば死ぬが、上位はそう簡単に死なん、いや、存在が残っていればいつかは復活する。そうさせない為に、神々はお互いの存在を食い合うのだ。」


右手をスッと前に突き出すと、漆黒のオーラがニーズヘッグの左腕に巻き付いた。



シュゥゥゥ・・・



「ぎゃぁああああああああああああ!腕が!俺の腕がぁあああああああ!」


ニーズヘッグが左腕を押さえ叫んでいる。

その左腕は肘から先が無かった。


「くそ!再生しないだと!邪神の加護が!」


「そう、これが神々の戦いだよ。貴様の左腕の存在は我が喰った。まぁ、その力は旦那様の力だけどな。邪神ダリウスを完全に消滅させる力を!」


ガタガタとニーズヘッグが震えている。


「だが、どうしてその存在がこの世界に現われた?」



「はっ!」



「どうやら気が付いたようだな。単細胞にしては少しは頭が回るようだ。」



「まさか・・・、そのラグナロクが・・・」



両手を広げていたティアマットが胸の前で手を合わせ、掌をニーズヘッグに向けた。


「貴様等邪神達はな、この世界に干渉し過ぎたのかもな。神よりも高次の世界にある意志がこの世界にラグナロクを起こそうとしているのかもしれん。だから、旦那様が存在を消す力に目覚めたのも・・・」


ティアマットの全身を纏っていたどす黒いオーラが掌へと集中する。


「おしゃべりは終りだ!貴様の存在!我が塵一つ残さず喰らい尽してやろう!」



カッ!



竜闘気ドラゴニック・オーラ!牙竜掌波ぁあああああああああああああ!」



オーラが巨大なドラゴンの頭部に変わった。

そのまま勢いよくニーズヘッグへと飛んでいく。



「う!うわぁああああああああああああああああああああ!」



「恨むなら身の程を知らずに我に挑んだ自らの愚かさをな・・・」




「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!」




巨大な黒竜の頭がニーズヘッグを呑み込んだ。



スゥゥゥ・・・



黒竜が消え去った後には何も残っていなかった。




「弱すぎる・・・、つまらん戦いだったな。」


そしてティアマットがジッと中央の巨大な城を見つめた。


「さて、我も追い付くか。もう終わってはいないだろうな。」


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