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236話 為政者とは?

おいおい・・・


俺の出番が全く無かったぞ。



アン、ラピス、ソフィア・・・



この3人は俺の妻達の中でもトップ3に間違い無いだろうな。

俺の見立てでは、さっきの魔人はかなりの強さだと思う。

見た目から巨人族のトロルをベースにしているだろうし、あの屋敷の壁を吹き飛ばすくらいだからパワーはとんでもないはずだ。


しかし!

そんな改造魔人をソフィアは更に上回るパワーで圧倒していたし、ラピスも蠅を叩き落とすように魔法を行使していた。

2人に全く手が出ず、情けなく命乞いをしていたよ。


まぁ、奴等がこの街でしていた事を考えれば、絶対に許す訳はないけどな。


そして、アンの魔剣も以前と比べて細かい制御も出来るようになっていた。


あの魔剣は空間を切断出来る最強チートの魔剣だ。攻撃力に関しては俺のアーク・ライトやテレサのミーティアを遙かに陵駕している。

アンの技量があるから上手く使いこなせているが、下手な腕の者が使えばところ構わず周囲を滅多切りにしてしまうだろう。

最強過ぎて使い手を選ぶ、そんな剣だ。


しかし、例の里で核である漆黒の宝玉を装着してからは、任意の空間を切断出来るようになった。

以前のような射程内に味方がいると断空が出来ない事は無くなった。

今回のように魔人を傷付けず斬撃をすり抜けさせ、後ろの空間だけを切る事も出来るようになった。

そういう事は、間に味方がいても味方は切る事なく、敵だけを切る事も可能になった訳だ。


まぁ、流石に魔剣だけの力では出来ないし、アンの剣の技量もあってだけどな。


強化されていた魔人を3人は片手間のように瞬殺してしまった。

3人で連携して倒したように見えるが、実際は1人でも軽く倒してしまっただろうな。


ホントにアイツらの強さはどうなっている?


かつての500年前の戦いの時とは比べ物にならない強さだな。

アンに関してはここまで強いとは予想外だったよ。


しかし、彼女達の規格外の強さを人々はどう見ているか?



・・・



・・・



ははは・・・



心配する事は無かったな。


この街の魔人が一掃された事を街の人達全員が分ったようだ。

通りには嬉しそうな表情の街の人達が次々と家から出て、手を取り合って喜んでいた。


そして・・・


(おいおい・・・)


リーゼロッテ様が走って俺達の方へ向かっている。

それにしてもだ、あのプラチナ・クイーンを装着しているのだぞ、通りを土煙を上げながらとんでもない速度で走っている。

その後ろに馬に乗ったアーヴェル様や騎士達が追いかけている状態だよ。


(馬より速く走るなんてな。)


その光景をアン達も苦笑いの表情で見ているよ。



「アンジェリカ様ぁあああああああああああああああ!」



皇女様がアンの名前を叫びながらアンに抱き着いた。


お互いに嬉しそうに笑いながらクルクルと抱き合い回っている。


「ありがとうございます!ありがとうございます!」


そして涙を流しながら何度も何度もアンにお礼を言っていた。






そして、その夜・・・



「アンジェリカお姉ちゃん!このケーキ美味しぃいいいいいいいいいいいい!」


ビアンカちゃんが口の周りにクリームをたっぷりと付けて、とっても嬉しそうにアン手作りのケーキを頬張っていた。


「こらこら、こんなに一気に食べたらお腹を壊すわよ。」


アンがニコニコしながらビアンカちゃんの口の周りに付いているクリームを拭き取っている。


「だってぇぇぇ、とっても美味しいし、いくらでも食べられちゃうよ。」


「ふふふ・・・、嬉しい事、言ってくれるわね。でもね、食べた後は寝る前にちゃんと歯磨きしないと虫歯になっちゃうわよ。虫歯になったらお菓子は食べられなくなっちゃうしね。」


「うん!分かっているよ!虫歯になったら食べられないのは嫌だし、ちゃんと歯磨きするよ!」


その言葉にアンも嬉しそうに微笑んだ。


そんなニコニコ顔のアンの周りには子供達が集まっている。


「お姉ちゃん、私もちゃんと歯磨きするからぁぁぁ、もう少し食べちゃってもいいかな?」


何人もの子供達がアンの服を引っ張りながら、ケーキやお菓子をおねだりしているよ。


そして、その光景をリーゼロッテ様も微笑んで見ている。

彼女の隣にはシャルが転移で連れてきてくれたアベル王子様が、リーゼロッテ皇女殿下様と腕を組んで立っていた。


その2人が俺と目が合うと深々と頭を下げてくる。

いやぁ~~~、俺はほとんど何もしていないのになぁ・・・


そう思っていると2人が俺の前まで歩いてくる。


「勇者様、この度は何とお礼を申せば・・・」


アベル王子様が深々と頭を下げると、続いてリーゼロッテ様も頭を下げた。


「いえいえ、俺は大した事はしてませんよ。どちらかといえば、彼女達が美味しいところをみんな持っていきましたからね。」


「そうですね。」


俺の言葉でリーゼロッテ様がクスッと笑った。

まぁ、本当の事だしなぁ・・・


思わず苦笑いをしてしまったよ。


そんな俺の態度にリーゼロッテ様が慌てて首を横に振った。


「い、いえ!そう意味で言った訳ではなくて・・・」


「分ってますよ。」


俺はニコッと微笑んだ。


「申し訳ありません。」


リーゼロッテ様がペコリと頭を下げ頭を上げると、ゆっくりとアン達の方へと顔を向け微笑んだ。


「アンジェリカ様にソフィア様、そしてラピス様と・・・、伝説の方々がこうして私達の前にいらっしゃるのですよね。正直言いまして、いまだに実感が湧いていないのですよ。あっ!もちろろん勇者様もですよ!」


「いえいえい、俺は生まれ変わりですし、厳密にはあの3人と違いますからね。それに堅苦しい事も嫌いなもので、普通に接して頂ければ助かります。」


「そうですね・・・」


彼女がうんうんと頷いている。


「みなさんが周りからとても好かれているのが分りました。」


(ん?どういう事だ?)


「みなさんは世の中から敬われるほどの伝説の方々なのに、全く偉ぶっていないです。しかも、どのような身分の人達にも平等に接しています。特に子供達は喜んでアンジェリカ様の周りに集まっていす。」


「そうですね、まぁ、アンは子供が大好きなのもありますけどね。」


「いえ!それが重要なんです!」


キッと彼女が真剣な表情で俺を見つめた。


「私はアンジェリカ様にこの帝国の未来を託しました。父である魔王によって帝国民は虐げられているでしょう。この解放した街も私達が来るまでは人間にとっては地獄の街でした、ですが、今の街の方々は心から笑っています。そして子供はとても正直なんです。そんな子供達が楽しそうにアンジェリカ様達の周りに集まっているのです。私はこの光景を見て確信しました。」



「アンジェリカ様はこの帝国に再び光を取り戻してくれると・・・」



「もちろん、私達はそのつもりよ。」


(おっと!)


いつの間にかラピスが俺のすぐ隣に立っていた。


「ラピス様!」


「私もアンは上に立つ資質があると思っているわ。アンの周りにはいつの間に人が集まっているのよ。そして、どの人も笑顔になっているわ。今の子供達のようね。そして、その子供達の母親も一緒に楽しそうにアンと一緒にいるのよね。そこまでのカリスマは私やソフィアじゃ無理ね。」


確かに言われてみればそうだな。

今までそんな事は考えた事も無かった。


上に立つ者は色々と考えなくてはならないのだと・・・


「レンヤ!」


(何で俺の名前が呼ばれる?)


「あんたもそうよ。いつまでも勇者の肩書きだけに頼っての脳筋プレイばかりしている訳にいかないのよ。国の運営というのはそう簡単にはいかないからね。」


「それはよく分かりますよ。」


アベル王子様がニコニコしながら会話に参加してきた。


「今の王子の立場でもやる仕事は山ほどありますからね。父上を見ていると国王は本当に大変だとつくづく感じます。世間では国で1番偉くて贅沢な事ばかりで仕事はしていないイメージですけど、事務処理、決済処理、各省庁からの陳情書の精査に決済、国の予算の草案のチェックに、各地の視察等、そして外交もありますし、多分ですが、国で1番仕事をしている人が国王だと思いますね。」


(そうなんだ。)


初めて聞く国王様の実情・・・


(俺ってアンの役に立つの?)


「その点はご安心を!」


(はい?)


リーゼロッテ様の隣にアーヴェル様とメイナード様が立っていた。

そして俺に一礼をする。


「姫様よりアンジェリカ様の補佐として拝命を受けております。勇者様もこれからは国の重要人物のお一人になられるお方です。どんな状況でも恥ずかしくないよう、我々の全てを伝授しましょう。」


2人が深々と頭を下げてきたよ・・・



(何でこうなった?)






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






「魔王様!」


1人の魔人が玉座に座っている魔王の前に立ち片膝を付いた。


「何があった?」


ギロッと魔王ガルシアが魔人を睨んだ。

その視線だけで心臓麻痺を起こしそうな程の威圧を感じる。


「ド、ド、ドルフの街が陥落しました!勇者パーティーにより呆気なく・・・」



「放っておけ・・・、たかが辺境の街だ、我が帝国には何も影響は無い。」



「し、しかし!」



キラッ!


ゴト・・・


一瞬、何か光ったと思った瞬間、魔人の首が体から離れ床に転がる。



「見事な切れ味だな。」



ニヤリと魔王が笑った。


魔王の玉座の後ろから1人の女が現われた。

しかし、その女の手には何も握られていない。



スススゥゥゥ・・・



急に現われたかのように、女の後ろに3人の男も姿を表わす。


「どうやらお前達の出番が回ってきたようだな。」


魔王の言葉に4人が同時にコクッと頷いた。




「魔王様!」



またもや別人の魔人が慌てて魔王の玉座の前まで走り、その前で止まり膝を付く。


「どうしたのだ?」


「ゆ、勇者パーティーですが!ドルフの街を解放した後の動きが異常です!あっという間に次から次へと街を解放しています!まるで空を飛んでいるかの様な尋常ではないスピードで移動しています!勇者パーティーの動きはこの帝都目指して真っ直ぐに向かっています!このスピードで向かっているのなら・・・」



「数日中にこの帝都に辿り着きます!」



「そうか・・・」


にちゃぁ~と不敵な笑みを浮かべる。


「勇者パーティーよ、この前のような失態は繰り返えさんぞ。魔神ロキの残した研究の最高傑作!この『死天王』が貴様等の息の根を止めてやる!がはははははぁあああああああああああああああ!あのチンケな七将軍とは比べものにならん猛者達だぞ!この帝都を貴様達の墓場にしてやろう!」






「ふはははははぁあああああああああああああああ!」





魔王ガルシアの高笑いが辺りに響いた。


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