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23話 冒険者アンジェリカ

「サブギルドマスターはいるか!」


「はい!ここに!」


理事長が大声で呼ぶと、スキンヘッドで体格の大きい男が現われ、理事長の前に立った。


(う~ん・・・、この人の方が見た目的にもギルドマスターっぽいよなぁ~)


「悪いが、しばらくは君がここの責任者だ。少し混乱するかもしれんが、すぐにセンターから新しい人員を用意する。だから頼んだぞ。」


「はい!分かりました。女神様に誓って恥じないよう努めます。」


直立不動の姿勢で元気よく挨拶してるよ。

彼ならこのギルドの運営は大丈夫だと思う。それにしてもフローリア様効果は凄いな、まぁ、悪い事は全て筒抜けだし、グレン達の末路も見ているから真面目に頑張らないと怖いのだろう。


理事長がマナさんの前に立った。

「君がマナ君か?」


「はい、そうですが、何か?」


「実は、ラピス様から君に関してお話を受けたのだよ。悪いが少し2人で話がしたい。少し時間をもらえないだろうか?」


「分かりました。」


マナさんが返事をして、理事長と一緒にギルドマスターの執務室へ2人で行ってしまった。


(どんな話だ?ラピスが何か言っていたと聞こえたが・・・)



サブマスターが俺のところへやってきた。

「勇者様、この度は私達ギルドが本当にご迷惑をおかけして・・・」


「いや、別に謝らなくてもいいよ。全然怒ってないからな。」

サブマスターの言葉を無理矢理切った。ずっと謝罪されてもなぁ~


「何と寛大なお方で、このガイズ、大変感服しました。」


「はぁ・・・、正直、この言葉使いは勘弁して欲しい。こうして持ち上げてばかりだと気持ち悪い。出来れば普段通りに接して欲しいんだけど・・・、あんまり謙っていると変に勘ぐってしまうからな。」


またもや直立不動の姿勢でサブマスターが返事をする。

「これは失礼しました!以後、気を付けます!」


(だからぁあああああ!)



(もう好きにして・・・)


アンが俺を見ながらニコニコしている。

「そんな困った顔のレンヤさんて・・・、ふふふ、面白いものが見られたわ。」




「ところで、あの魔王城はどうなりました?やはり黒の暴竜の報告通り、変異デスケルベロスが最大の脅威だったのでしょうか?」

サブマスターが顔をグッと近づけて話してくる。


(ち、近い!アンやラピスならともかく、こんなおっさんに迫られるなんて、どこかの罰ゲームか!)


「デスケルベロスは倒した。まぁ、アレは魔王の魔剣が変化したものだったから、普通のデスケルベロスとは比べものにならないくらい強かったんじゃないか?SSランクは確実にあっただろうな。それに4階にはアースドラゴンもいたけど倒したよ。2階からはリビングアーマがゾロゾロと出てきたけど全部粉々にしておいた。それにオークキングやミノタウロスもいたな。あっ!バシリスクは気を付けないと危ないぞ。まぁ、倒してしまったけどな。」


「・・・」


何だ?サブマスターが黙ってしまっているぞ。それに顔が青くなっているが・・・


「レンヤさん・・・」


「どうした?」


「勇者ってどんな化け物ですか?たった1人でほぼSランクに近い魔物を倒しているなんて・・・、アースドラゴンはSSランクですし・・・」


「いや、俺はそんなに倒していないぞ。倒したのはデスケルベロスとアースドラゴンくらいかな?ほとんどがアン1人で倒していたなぁ~」


アンもにっこりと微笑んでいる。


「ひっ!」

サブマスターがアンを見て小さく悲鳴を上げた。


「こ、こにも化け物が・・・、勇者様と一緒におられるから、もしやと思いましたが・・・」


うん?サブマスターがボソボソ言っているけどよく聞こえない。


俺達の後ろでラピスがニヤニヤ笑っている。

【レンヤ、強くなり過ぎて感覚がちょっと変になったみたいだね。それにアンの強さも規格外だからねぇ・・・、かつての魔王戦でアンも一緒に敵対されていたらヤバかったわ。】


【あぁ、俺もそう思った。】


「そちらのお嬢様は冒険者ではないのですね?」


「そうですよ。」

アンがにっこりとサブマスターに微笑んだ。サブマスターが真っ赤になってオロオロしてるよ。

アンの笑顔の破壊力は凄まじいからな。一発でサブマスターも撃沈か・・・


チラッと横を見てみると・・・


冒険者の男どもが集まってアンを見ているし・・・


「尊い・・・、あの笑顔に癒される・・・」

「やっぱり俺の天使だ。一生ファンでいるぞ!」

「可愛いだけでなくて、強さも勇者並だとは・・・、アタックしようと思ったけど無理だ・・・」

「勇者!死ね!」


ラピスの言った通り、一気にアンに男が寄ってきたな。

変な虫が付かないよう気を付けないと・・・

それと、死ねって言ったヤツ!後で簀巻きにして川に流してやるから覚悟しろ!


後ろで見ていたラピスが俺の隣に来た。

「サブマスター、それなら、この子も冒険者として登録する?私と彼女はレンヤと一緒にいるから、冒険者としてなら一緒に活動もしやすいからね。」


【ラピス!大丈夫なのか?】


【問題無いわ。偽装の魔法はステータスプレートに対しても偽装可能よ。魔族だとバレないわ。それにフローリア様の加護も受けたから、称号も授かっているみたいね。】


【そうか、なら大丈夫だな。】


「アン、どうだ?冒険者になってみるか?」


「うん!」

アンが大きく頷いた。

「もちろんよ。だって、その方がレンヤさんと一緒にいられるのでしょう?レンヤさんと一緒にいて、色んなところを見たいの。私だけが留守番なんて嫌だからね。」


そうか、アンは外の世界に憧れていたんだよな。その願いを叶えるにも冒険者になった方が良いな。


「それじゃ、登録を頼む。」


「ありがとうございます。ギルドとしては1人でも多く強者は欲しいのです。どうも、帝国の動きが不穏で戦争になるのかも?との噂も出ているので・・・」


(やっぱりそうか・・・、ラピスの予感が当たらなければいいのだが・・・)


受付嬢が書類とステータスプレートを持ってサブマスターのところにやってくる。


「書類は私が書いておくね。」

ラピスが書類を受け取りスラスラと書き始めた。


「それでは・・・、あっ!あなたのお名前を聞いていませんでした!誠に申し訳ありません!」


「アンジェリカと申します。」

アンがニコッと微笑む。

「さっきからドタバタしてましたからね。うっかりしてしまうのも仕方ないですよ。気にしないで下さいね。」

再び微笑むと・・・


「はう!」

サブマスターが胸を押さえてプルプルしてるよ。


「天使だ・・・、本物の天使が降臨した・・・、女神様に天使様・・・、この目で直接見られるとは、なんて私は幸せなんだろう・・・」


(サブマスター!頼む!しっかりしてくれ。)


周りを見てみると・・・


何人かの冒険者の男どもがサブマスターと同じように胸を押さえてプルプルしていた。


(はぁ~、こいつらもアンに陥落されてしまったか・・・)


使い物にならなくなったサブマスターを無視して、受付嬢が俺の前にステータスプレートを差し出してくれた。

「うちのバカな男連中が使い物にならなくなって申し訳ありません。」


プレートを受け取ろうとしたら、受付嬢が俺の手をギュッと握ってきた。

「勇者様、今度、一緒にお食事でも?」

艶っぽい視線で俺を見つめている。


「「あ”あ”っ!」」


「ひぃいいいいいいいい!」


アンとラピスに睨まれてしまい、悲鳴を上げながら腰を抜かしてしまった。


「ホント、油断も隙もないわね、ここの雌豚共は・・・」

「そうね、レンヤさんに色目を使うなんて・・・、そんな奴らは消し炭にしようかしら・・・」


(頼む!それは止めてくれぇぇえええええええええええ!)


気を取り直してアンにプレートを渡すと手を置いた。

ほのかに輝き文字が浮かび上がる。


「ほぉぉぉ~」

ラピスも覗き込んでいたが、感心した声を上げてアンを見ている。

「アン、すごいよ。あなたは【魔剣士】だって。剣技も魔法も上級以上を極めないとなれないレアな称号ね。まぁ、あなたの強さなら納得するわ。」


「ラピスさん、ありがとう。これでレンヤさんと一緒に並んで戦えるね。」


魔剣士かぁ~

魔法に関しては一緒にいたから分かる。多分、ラピスのレベル近くはあると思う。

剣技は・・・

あっ!魔物の解体は凄まじいスピードで解体していた。あれは剣技に入るのか?多分、そうなのかな?



「いやぁ~、これは凄いですね。こんなレアな称号なんて驚きです。」


サブマスターが何食わぬ顔でプレートを見ていた。


(おい、いつの間に復活した?)


「一つお願いがあるのですが・・・」

申し訳なさそうな顔でサブマスターが俺を見ている。


「どうした?」


「勇者様達の力を我々に見せて欲しいのです。」


「断る!俺達の力は見世物じゃない!」


「気分を悪くさせて申し訳ありません。決してあなた方の力を見世物として見たいとは思っていません。このギルドは辺境にあり、しかも、この町はまだ新しいのです。ほとんどの冒険者がCランク以下で高ランクの方々の指導なども満足に受けた事が無いのです。久しぶりのAランクはあの黒の暴竜でしたし・・・」


「レンヤ、そういう理由なら見せても良いじゃないかな。若手には良い刺激になるかもね。」

ラピスが嬉しそうにしている。

「それによ、あれだけみんなにバカにされていたあなたが、ここまで凄いっていうのもの見せるのも悪くないと思うわよ。勇者っていっても本当に信じていないヤツもいるでしょうし・・・」


「分かったよ。参考になるか分からないけど、みんなの刺激になるならな。」



そして、ギルドの建物の横にある修練場へ移動した。

修練場といっても、ただの広い空地みたいなものだ。まだ新しいギルドだから設備が整っていないのもあるだろう。それでも最低限の事は出来るようになっている。

空地部分は模擬戦をしたり、魔法の練習として的が立ててあったり、剣技の練習で打ち込み用の鎧も立っていた。


それにしても・・・


サブマスターや冒険者だけかと思ったら、受付嬢達職員もいるし、一緒に緑の狩人までいる。


『ラピス様が惚れ込んだ勇者様のその力、是非とも我々にもお見せ下さい。』って言われたしなぁ~


(やっぱり見世物じゃない?)


「まぁ、レンヤ、仕方ないよ。伝説の勇者の力を見れる機会なんてまず無いからね。でも、どうせならアンと模擬戦でもしたら?その方がお互いの力を見せつけるのに丁度良いかもね。」


「アンもどう?」


アンがニヤッと笑った。

「ラピスさん、良い提案ね。私も今の力を試したいのよ。フローリア様の加護の力がどれくらいか・・・、レンヤさん、遠慮はしないわよ。」


「おいおい、それは勘弁してくれ。アンが本気で力を使うと、この辺りが焼け野原になってしまう。程々に真剣にで頼む。」


「分かったわ。」



まさか、アンと模擬戦を行うとは思っていなかったよ・・・

アンの服装はさすがに最初に会った時のドレスではない。そんな服で普通に街中に出られないよ。旅なんてもっての外だ。

旅がしやすいようにパンツスタイルで、胸や肩などに皮鎧のパーツを使った防具を取り付けている。

いつの間にかラピスが用意していたんだよな。

ホント、ラピスは優秀だよ。料理以外は・・・


(あれだけ優秀なのに、何で料理だけはダメなんだろうな?最大の謎だぞ。もしかして、フローリア様にネタにされている?)


アンの強さはよく分かっているつもりだ。気を抜くとあっという間にアンのペースになって押し切られる可能性は高い。

全身を覆う闘気は間違いなく強者だ。

今回は模擬戦との事で、お互いの剣は木剣を使っている。さすがに聖剣なんて持ち出したらシャレにならんからな。

俺は普通の片手剣タイプの木剣を使っているが、アンはレイピアの形状の木剣を握っている。どうやら打突が得意そうに見える。しかも、魔法も使いこなすのでどのようにして連携してくるか予測もつかない。


(恥ずかしい真似だけは出来ないな・・・)


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