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201話 双子の天使⑧

「それでは、私の方も情けない姿を見せられません。ガーベラ様より授かったお力、その力を開放し決着としましょう。」


グッと神器を構え先端をアシュレイへと向けた。


そのアシュレイは股間を押さえながら、何とかヨロヨロと立ち上がったが、憤怒の形相と血走った目でブランシュ達を睨みつけている。


「こ、こ、殺してやる・・・、この世界の覇王となる俺様に何たる無礼を・・・」


全身の筋肉がボコボコと更に膨れ上がった。

更に身長が伸び3メートル以上あったものが、倍近くまで大きくなった感じだ。



フュシュ~~~



口から紫色の煙を吐き出しながら爛々とした目で眼下の騎士達を眺めていた。


「貴様等ぁぁぁ・・・、俺の餌になるがいい・・・」


ブン!と右手を振ると、その手にはさっきよりも更に大きな真っ黒な刀身の魔剣が握られている。



「「「ひぃいいいいいいいいいいいいいい!」」」



ブオン!



「「「ぎゃぁあああああああああああああああああ!」」」


騎士達が悲鳴を上げたが、その瞬間、真っ黒な刀身を横たわっていた騎士達に振り下ろした。

大剣に巻き込まれた騎士達は胴体を真っ二つにされるが、そのまま刀身に吸い込まれてしまった。


「ふぅぅぅ、やはり男共の血肉は不味いなぁ。」


ニチャッとした粘着質な嫌らしい笑顔をブランシュに向ける。


「ぐふふふ・・・、貴様のような柔らかそうなメスガキは特に美味そうだ。グラトニーも喜びそうだぞ。」


ギラっと魔剣を大きく振りかぶった。


ブランシュが後ろをチラッと振り返る。


「女神様と聖女様がいらっしゃるから万が一は無いとは思いますが、お二方のお手を煩わせる訳にはいきませんね。」



ブワッ!



翼を広げアシュレイへと飛び出した。

アシュレイの頭上まで飛び上がると神器を振り下ろす。


「もらいました!」


「ガキめぇええええええええ!」



ガキィイイイイイイイイイ!



「くっ!」



アシュレイの漆黒の大剣がブランシュの神器を受け止めた。


「軽いなぁ~~~~~~」



ギャリィイイイイイイ!



「くっ!」


アシュレイが剣を振るうと、ブランシュが木の葉のように軽々と飛ばされてしまう。

しかし、クルクルと空中で回転し、音も立てず床に着地をした。

だが、その光景にアシュレイがニタリと笑うと、ブランシュのの表情が厳しくなった。


「さっきは面喰らって情けない姿を晒したが、冷静に対処すれば何でも無かったな。王女よ、貴様との体重差がこれだけあるんだ、冷静に打ち合えば俺が勝つのに決まっているに間違いないんだよぉおおおおおおおおおおおおお!」


「そう思いますか?」


今度はブランシュがニヤリと笑う。


「多少は驚きましたが想定内の戦闘力ですね。」


グッと神器を構えた。


「あなた自慢の体格とその質量から放たれる斬撃の自信、この私が粉々に砕いて差し上げましょう。」



プチッ!



何かが切れる音がする。




「ふざけるなぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」




アシュレイの絶叫が響き渡った。


「このガキが何をほざいている!この俺様の筋肉ぅううううううう!それに最強の魔剣であるグラトニー!この俺様に負けは無いんだよぉおおおおおおおおおお!」



ブォン!



ズバァアアアアアア!



「はっ!」


アシュレイがまたもや間抜けな声を出してしまった。

その視線の先には・・・


ブランシュが神器を軽く振り下ろしただけで衝撃波が発生し、床がザックリと裂けている。


「ご託は結構です。おしゃべりな男はモテませんよ。戦いは結果のみ・・・、強い者が勝ち、弱い者は負ける・・・、ただそれだけですよ。」


左手を上げクイ!クイ!と手招きをする。


「さぁ・・・、かかってきなさい。改めて言いますね。あなた自慢のパワーと魔剣、その両方を粉々に噛み砕いてあげましょう。このキング・クラッシャーでね。」



「舐めるなぁあああああああああ!」



アシュレイが絶叫を上げブランシュへと魔剣を振り下ろした。


ドォオオオオオオオオオオオオン!


ブランシュが神器で魔剣を受け止めると、激しい衝撃と炸裂音が響いた。



「どうだぁああああああああああああああ!粉々になって跡形も無く消し飛んだかぁああああああああ!」



アシュレイの大声が響いたが、突然黙り込んだ。



「そ、そんなバカな・・・、俺は夢でも見ているのか?」



アシュレイの視線の先には・・・


右腕だけで神器を握り頭上に掲げ、アシュレイの魔剣を正面から受け止めているブランシュがいた。



ピシ・・・



神器と打ち合っていた魔剣の部分に細かいヒビが入った。


「ば!バカなぁあああ!グラトニーが打ち負けるだと!」


信じられない表情のアシュレイとは正反対に、ブランシュがニヤリと笑った。


「この状況が信じられないのですか?このキング・クラッシャーを舐めてもらっては困ります。」


そのまま神器を横薙ぎに振るうと、魔剣を弾きアシュレイがよろけた。


「信じられない顔をしていますね。鳥のように小さいと思われるあなたの脳にも分かり易く説明した方がよろしいですね。」


スチャ!と神器の先端をアシュレイへと向けた。


「神器や魔剣などの特殊な武器や防具は、基本的に使用者の魔力を吸い取り力に変えますわ。あなたの魔剣も同様でしょう。でもね、このキング・クラッシャーはちょっと違うのですよ。戦い、特に攻撃に特化したこの神器に魔力は必要ありません。」


「だったらどうやって・・・」


「それはですね、私の闘志!悪を滅ぼそうとする気持ち!そしてみんなを守ろうとする気持ち!想いを力に変える事が出来るのです。私が強く想えば想うほどに際限なく攻撃力が上がるのです。」


「そんな武器など存在する訳がぁあああ!」


「だから神器と呼ばれるのです。神が創造された武器、使い手を選ぶのはそういう訳です。神も分かっていたのでしょう・・・、人が持っている想いの力、人の想いは無限大だと・・・、その想いが不可能を可能にする、それを奇跡と呼ぶ事を・・・」


ブランシュが説明の最中に視線を神器に移す。その一瞬の隙を突いてアシュレイが魔剣を上段に構え振り下ろそうとした。


「かかりましたね。」


ブランシュの視線が鋭くなった。



キン!



「ぐぉぉぉぉぉ・・・」


一瞬にしてブランシュがアシュレイの後ろに回り込んでいた。

神器を右手に持ち高々と掲げている。

ブランシュの余裕な態度とは対照的に、アシュレイは剣を上段に構えたまま股間を庇うように内股になって立っていた。

冷や汗もダラダラと流れている。


「き、貴様ぁぁぁああああああああああああああああ!」


「熱くなってはダメだと、さっきは自分で言っていたじゃないですか?おかげで足元がお留守になっていましたので、潜り抜ける際にちょっとジャンプしましたけど、打たれてやっと私の行動に気が付いたのですか?まぁ、あなたは無駄に大きいので小さい私なんか見えなかったのかもね。」


ニヤニヤとブランシュが笑っている。


「聖女様必殺のこの攻撃は本当に効きますね。男子だけにしか効果はありませんが、相手のダメージはとてつもないと実感します。それ以上に屈辱感で頭の中が一杯でしょう?私の必殺技の一つにしたいほどです。」



「ブランシュ!そんなはしたない真似は止めて!あなたは王女なんですから、人様の股間を殴って喜ぶ性癖は絶対にダメよ。」


王妃がブランシュへと叫ぶと、ブランシュはとても残念そうな顔をしていた。


「母上、やっぱりダメですか?」



「絶対にダメです!」



王妃がギロッとブランシュを睨むと、悪戯を叱られた子供のようにブランシュがしょげてしまった。



「まぁ、誰も見ていないなら、たまにはね・・・」



王妃の呟きにとても満足した顔になったブランシュだった。




「ぐぬぬぬぅぅぅ~~~」



アシュレイの顔は屈辱で今まで以上に真っ赤になり、あまりにも歯を喰いしばってしまったのか、口の端から血が滴り落ちている。


「どこまでも俺様を虚仮コケにしやがってぇえええええええええええええええええ!」


「ふっ!」


ブランシュの片側の口角が吊り上がる。


「散々、私に遊ばれているのがまだ分かっていないのですか?私とあなた、どれだけの力の差があると分かっていないとは・・・、だからですね、分も弁えずこうやって反乱を起こすのですからね。あなた達公爵家を唆した黒幕はとても楽だったでしょう。ここまでバカなんですから、向こうもさぞかし嘲笑っているでしょうね・・・」


「う、うるさぁあああああああああああああああっい!」



ガキィイイイイイイイイイ!



アシュレイがまたもや魔剣をブランシュへと振り下ろしたが、ブランシュは涼しい顔のまま神器を片腕だけで握った状態で魔剣を受け止めていた。


「さっきの説明の続きでしたが、キング・クラッシャーの攻撃力の話は本当ですよ。」



ピキ・・・



魔剣のヒビが更に増えてくる。


「私も父上や母上と同様にこの国が大好きです。その父上と母上の気持ちも、このキング・クラッシャーの力になっているのです。私達家族3人の想いが!あなたの独りよがりの欲望に負ける道理はありません!そして、この国に巣くう悪は決して許しません!私達の想いを舐めるなぁああああああああああああああああああああ!」



バキィイイイイイイ!



魔剣の刀身が真っ二つに折れ、黒い霧となって消えた。



「バ!バカな!俺様のグラトニーがぁあああ!」



アシュレイが叫んだがニヤリと笑う。


「ぐはははぁああああああ!これで勝ったと思ったか?魔剣は俺様の魔力が物質化したものだ!貴様の言う通り俺様の魔力を込めれば込めるほどに強力になる!」


再びアシュレイの右手に漆黒の闇のような霧が立ちこめる。


「これが魔剣グラトニーの最強の姿だぁああああああああああああああああああ!」



ブォン!



アシュレイの右手には自分の身長と同じくらいの巨大な真っ黒な刀身の剣が握られていた。

漆黒の刀身には牙の生えた口以外にも真っ赤な血のような目が付いていて、その目がギロリとブランシュを睨んでいる。

軽く剣を振るっただけなのに、禍々しいオーラが辺りへと撒き散らされた。


しかし、ブランシュは全く動じていない。


「ただ大きくなって瘴気を巻き散らかすだけの存在ですか・・・、お話になりませんね。」


「ふ!ふざけるな!俺様は最強なんだ!この世界を支配する覇王になる男なんだよ!」


「それでは、私が最強というものをご覧に入れましょう。」


神器を頭上へ掲げた。


「このキング・クラッシャーは単なる打撃武器ではないのです。一点集中の突破力では神器最高の攻撃力を誇るこの力!この目に焼き付け!黄泉の国への土産話としなさい!」


黄金の光が神器から放たれ始めた。


「神器解放!キング・クラッシャァアアア!破壊の王よ!真の姿を現せ!」



とてつもなく眩い光がブランシュを包み込んだ。



その光が消え、ブランシュの姿が露わになる。


ブランシュのその姿は・・・


彼女の右腕には身長よりも巨大な黄金のパイルバンカーが装着されていた。

そのパイルバンカーには基部よりも更に大きな先端にドリルが装着されている杭がセットされている。


「そんなのこけおどしだ・・・、俺様が最強なんだよぉおおおおおおおおおおお!」


アシュレイが叫び魔剣を構えた。

同時にブランシュも右手を後ろに引きグッと腰を屈めた。



ヒュィイイイイイイイイ!



杭の後ろの部分から炎が噴き出すと、ブランシュが一気に飛び出した。


「さぁ!突貫よぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


「負けるかぁああああああああああああああああああああ!」


まるで黄金の矢のようにブランシュがアシュレイへと飛んで行く。

目の間に迫った瞬間、後ろに引いていた右手を前に突き出し、一気にドリルを魔剣にぶつけた。



ギィイイイイイイイイイイイイイイイイイン!



黄金のドリルと漆黒の魔剣がぶつかり合う。



「何が自慢の神の武器だ!俺様の魔剣が貴様ごと真っ二つにして、存在そのものまで食い尽くしてやるぅううううううううううううううう!」


勝ち誇った顔のアシュレイだったが、ブランシュの方もニヤリと笑った。


「何を勘違いしているのですか?本番はこれからですよ。」


杭の後ろから出ている炎が更に大きくなり、先端のドリルが高速回転を始めた。


「ドリル・アンカァアアア!ブースト!」



バキィイイイイイイイイイイイッン!



「バ!バカなぁああああああ!グラトニーがぁああああああああああああああああ!」



漆黒の魔剣が真っ二つに折れる。

しかし、ドリルの前進は止っていなかった。



「ドリルハンマァアアアアアア!インパクトォオオオオオオ!貫き突き通せぇえええええ!」



ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオン!



「ぐぎゃあああああああああああああああああああああああ!」



魔剣を砕いたドリルの先端がアシュレイの胸の中央に刺さった瞬間、その部分が爆ぜ巨大な胴体に大きな穴が開いた。

その穴をブランシュが一瞬で通り抜けた。



ズザザザァアアアアア!



右手を前に突き出した姿勢のまま床に着地し、しばらく滑り止った。

クルッとアシュレイへと振り返り、パイルバンカーを構える。


「ふっ・・・、私に貫けないモノは無いのよ。」


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