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200話 双子の天使⑦

ブランシュが騎士達を滅多打ちにするのにそんなに時間はかからなかった。


光の檻は消滅したが、誰1人この場から逃げ出す人影は無かった。

そこにはブランシュ1人だけが立っている。

騎士団の騎士全員がブランシュに叩きのめされ床に這いつくばっていた。


「うぅぅぅ・・・」

「し、死ぬぅぅぅ~~~」

「ごめんなさい・・・、ごめんなさい・・・、生きていてごめんなさい・・・」


辛うじて生きてはいるようだが全員が瀕死の状態だった。

血にまみれた神器を肩に担いだブランシュがその光景をジッと見つめている。


「これしきの覚悟でよく謀反を起こせたものです。やはり甘言でこの者達を惑わせた黒幕がいるのは間違い無いですね。」




マーガレット達の方は戦いが終わり、女神サクラの憑依が解け、今は2人で並びながらフランシュの行った惨状を見ていた。


「うわぁ~~~、死屍累々って言葉はこんな状態なんだ。ブランシュの方が私よりも天使様の力を引き出しているんじゃない?もっと頑張らないと・・・」


「そんなに気にしなくてもいいわ。」


「女神様」


サクラの言葉でマーガレットがサクラの方へ向くと、サクラが可愛くウインクをする。

その姿を見て生き返った公爵派の貴族達は「はう!」と言いながら真っ赤な顔で胸を押さえていた。

その光景を国王達は呆れて見ている。


「あのバカ共が・・・、あれだけの目に遭ってもまだ女の尻を追いかけるような事をするのか?いくら女神様のお力で悪さは出来なくなったとはいえ、あまりにもだらしないぞ。」


「まぁ、テオ、あれだけの美貌のお方ですからね。男の人が魅了されてしまうのも仕方ないと思いますよ。」


王妃がクスクスと笑っている。


「そうか?私としてはフィー、君の方がもっと美しいと思うけどな。私の中の女神は君なんだから。」


真顔で国王が王妃へ話すと、王妃の顔どころか首までが真っ赤になっている。


「テ、テオ・・・、いきなりみんなの前でこんな事を言わなくても・・・」


恥ずかしさが天元突破してしまったのか、王妃は両手で顔を隠してしまった。



「ふふふ・・・、仲の良いお二人ですね。見ていて羨ましい関係ですよ。夫婦とはこうであるとの見本です。私も見習らないといけないですね。」


サクラが羨ましそうに国王夫妻を見つめていた。


「女神様って結婚しているのですか?」


マーガレットがとても驚いた顔でサクラを見ている。


「そうよ、私とガーベラ、それにまだ他にもね。みんな1人の男の人と結婚しているのよ。」


「え~~~!天使様も一緒ですか!だから一緒なんですね。」


「まぁ、狙って一緒に来た訳じゃないけど、あなた達に憑依出来るのは私達だからというのが1番の理由かな?」


「そうなんだ、それにしてもブランシュはあれだけの力を出しても大丈夫なの?」


「大丈夫よ。」


そしてジッとブランシュを見つめている。


「ガーベラとあの子の魂の相性は最高みたいね。ガーベラの力を完璧に引き出しているみたいよ。天使化の反動も無さそうだし、ここまで完璧な依り代は珍しいわね。私とマーガレットさんも似たような感じだし、父と私しか使えない時魔法も使えたのよ。選ばれた者しか使う事が出来ない神器まで使えるし、あなた達は特別な存在だと思うわ。それにしてもガーベラの昔を思い出すわね。今の戦い方なんて昔とソックリよ。」


「そうなんですか・・・」


「私は魔法による遠距離の戦いは得意だけど、肉弾戦に関しての戦いは彼女の方が上だしね。だから気にしない。魔法使いには魔法使いの戦い方があるんだから、その事に関しては将来ラピスさんに教えてもらいなさい。そういうのはラピスさんが得意のはずよ。」


「はい!分かりました。」


大きくマーガレットが頷いた。


「それにしてもガーベラのかつての通り名である殺戮ジェノサイド・天使エンジェルの姿を久しぶりに見させてもらったわ。結婚して落ち着いたかと思ったけど、更に凶悪な攻撃力になっているなんてね。さすが、美冬母さんに今でも鍛えられているだけあるわ。でも、まだ序の口・・・、あの騎士団長の地獄はこれからよ。」


サクラがニヤリと微笑んだ。




「このガキがぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」



壁に上半身がめり込んだまま静かだったアシュレイが、ヨロヨロと壁から這い出し大声で叫びながらブランシュへと叫んだ。

どうやら少しの間気を失っていたようだ。


「このこのこのガキが!俺様を殴りつけるなんて生意気なんだよ!さっきはちょっと油断しただけだ!」


魔剣をグッと構え一気に振り下ろした。


「喰らえぇえええええええええええええええ!全てを喰らい尽くす暴食の剣をぉおおおおおおおおおおおおお!」


真っ黒な刀身が数十メートルも離れているにも関わらず、一気に伸びブランシュへと迫った。


「「「うぎゃぁああああああああああああああああ!」」」


途中にいた騎士達が魔剣の牙の犠牲になり体のいたる場所を喰われ絶命していた。



「暴食の名前の通り、本当に底無しの胃袋ですね。」



ブランシュが神器を両手でグッと構えた。

目の前まで刀身が迫ってくる。

神器を後ろへ引き左足を少し上げそのままダン!と床に下ろす。


「このぉおおおおおおおおおおおおおお!」


鋭く腰を捻りながら神器を振り切った。



カキィイイイイイイイイイン!



シギャァアアアアアアアアアアアアアアア!



真っ黒な刀身にあった口から耳を裂くような悲鳴が上がった。


そのまま180°方向を変え、刀身の牙がアシュレイへと戻っていく。



「く、くそがぁぁぁあああああああああ!」



慌ててアシュレイが目の前に転がっていた騎士を持ち上げ、刀身へと放り投げた。



「い、いやだぁあああああああああああああああ!」



騎士が刀身に喰われ、その直後、霧のようになって魔剣が消滅していく。


「ふぅ、やっと満足したようだな。こいつの食欲は底無しだし、満足させるのも大変だな。だが・・・」


ブランシュを見てニタリと笑った。


「いくらこの棒きれが強力でも、俺様の魔剣を壊す事は出来なかったようだな。ぐふふふ・・・」


両手に魔剣が握られた。


「貴様の武器はその棒きれが1本のみ。しかし、俺様の魔剣の力はこれだけじゃないぞ。」


剣の刀身が縦にいくつも分かれた。1本の刀身から5本もの刀身が枝分かれし、まるで5匹の蛇のように蠢いている。2本の剣を握っているので、両手で10本ものヘビのような真っ黒な刀身がウネウネと動いていた。


「うわ!もっと気持ち悪くなった!」


ブランシュが心底嫌そうな顔をしている。


「いけないです。ちょっと言葉遣いが悪くなりましたね。でも、それでも私には勝てないですよ。」


ニヤリとブランシュが笑った。


「このぉおおおおおおおおおおおおおお!」ガキがぁあああああああああああああああああ!」


馬鹿にされたアシュレイがまたもや絶叫する。

ダン!と右足を踏み込み、両手の魔剣を振りかぶった。




ボコ!




アシュレイの足元の床が盛り上がる。


「ん?どうした?」


足元の変化に魔剣を振りかぶっていたが、その動作を止め何気なく足元に視線を移した。




ドオォオオオオオオオオオオン!




いきなり床が爆ぜ、辺りが土煙に覆われる。



「うぎゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」



煙の中でアシュレイの絶叫が響き渡った。


「何が起きたの?」


マーガレットが不安そうに土煙を見ているが、サクラはニコニコした顔で見ていた。


「マーガレットちゃん、大丈夫だから安心して。」


「大丈夫って?」


その瞬間、土煙の中から人影が天井へと飛び上がった。


「え!アレってぇええええええええええええ!」


マーガレットも絶叫している。



「きょへぇええええええええええええええええええええええええええええええ!」


情けない悲鳴を上げながらアシュレイが天井へと飛んでいた。

それ以上にこの場の全員を驚かせていた存在が・・・


「白狼!飛翔覇王撃ぃいいいいいいいいいいいい!お返しよぉおおおおおおおおおおおおおおお!」


右手を高々と掲げ、拳をアシュレイの股間にめり込ませながら上昇しているソフィアの姿があった。



錐揉みしながらアシュレイが天井へと飛んで行き、その天井へぶち当たって跳ね返り床へと落ちてきた。


ポテ・・・



「はひぃ・・・、はひぃ・・・」



うつ伏せになって腰を浮かせ、両手で股間を押さえ悶絶している。


「うわ!痛そう・・・、女の私でもこれはないわぁぁぁ・・・」


完全にドン引きしているサクラと、その言葉に激しく頷いているマーガレットとブランシュだった。

そして、その場にいる男達は全員、股間を押さえブルブルと震えている。



スタッ!



ソフィアが優雅に床に着地をした。

その横には大きな穴が床に開いている。


「ソフィアお姉ちゃん!」

「「聖女様!」」


マーガレットや国王達が叫んだ。


「ソフィアさん、相変わらずデタラメですね。さすが美冬母さんの弟子だけありますよ。」


ニッコリとサクラが微笑んだ。

その表情にソフィアも微笑んでいる。


「女神様、ソフィアお姉ちゃんを知っているの?」


不思議そうにマーガレットがサクラを見ていた。


「そうよ、彼女の修行で知り合っていたのよ。そしてね、あのガーベラの姉弟子でもあるのよ。」


「へぇ~~~、ソフィアお姉ちゃんて凄いんだ。」


「そうよ、さっきも言ったでしょう?この世界でソフィアさんに勝てる人間はいないってね。まぁ、対等に戦えるのはレンヤさん達くらいしかいないでしょうね。それに、この城の丈夫な床を下の階からぶち抜いて登場するデタラメさは彼女くらいでしょうね。」


そう言って手を穴の方にかざすと、床の大きな穴がみるみると塞がる。


「ほぇ~、魔法って何でもありなんだ・・・」


修復している穴を感心した顔で見ていた。



「聖女様・・・」


ブランシュがソフィアへと床に膝を付き頭を下げた。


「よくぞご無事で・・・、私の中のガーベラ様が仰っていました通り心配ご無用でした。」


「あら?ガーベラさんがあなたの中に?」


嬉しそうにソフィアが微笑んだ。


「はい、聖女様に手を出すなんて、こんな命知らずなバカは救いようが無いとも仰っていました。」


「こらこら、ガーベラさん、私は普通のか弱い女性なのよ。まるで化け物のように言わないの。でもね、あの時の修行は懐かしいわね。師匠にどれだけ死ぬような目に遭わされたか・・・」


お互いにかつての地獄を思い出しのか、2人揃って遠い目になった。



「おっほん!」



ソフィアが咳ばらいをする。


「私はさっき騎士団の宿舎で襲われたから、そのお返しに来たのよ。騎士達全員の玉は潰したけど、こいつはギリギリ潰すか潰さないかの状態で痛めつけたから、今は最高に死にそうな状態でしょうね。お返しはこれで終わったし、後はよろしくね。あなた達の戦い、見届けさせてもらうわ。」


そう言って、サクラの隣に立った。


その言葉に股間を押さえていた男達は更に青くなってブルブルと震えていた。

もちろん国王も一緒に・・・

その隣の王妃は呆れた顔になっていたが・・・


「お返しとはいえ、十分過ぎるほどでは?さすがはガーベラ様の姉弟子だけあります。」


ブランシュが立ち上がりアシュレイへと向き直った。


「それでは、私の方も情けない姿を見せられません。ガーベラ様より授かったお力、その力を開放し決着としましょう。」


グッと神器を構え先端をアシュレイへと向けた。


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