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199話 双子の天使⑥

時間は少し戻る


大人となったマーガレットと公爵の戦いが始まり、少し遅れてからブランシュの方も戦いが始まった。


我に返ったアシュレイが大人の姿となったマーガレットへと駆け出そうとする。


「あんな極上の女!絶対に俺の女にしてやる!奴隷としてずっと可愛がってやるぅうううううううううううううううううう!」



ドカッ!



「ぐほぉおおおおおおおおお!」



下品な声を出しながらアシュレイが後ろへ吹っ飛んだ。

ゴロゴロと無様に転がり騎士達に受け止められる。


「だ!誰だ!俺を突き飛ばした奴はぁああああああああああああ!」


プルプルと震えながら真っ赤な顔で自分の正面にいる人物を見ていた。


そこには・・・



グッと腰を少し屈め、ソフィアと同じ様な構えをとっているブランシュがいた。


「姉様には手出しさせません。あなた達の相手は私がしましょう。」



「こ、このガキがぁあああああああああああああああ!」



その瞬間、ブランシュの姿が煙のように消えた。



ズン!



「おご!」



一瞬で翼を広げたブランシュがアシュレイの目の前に移動し、腹の前に浮いていた。ぐっと右腕を引き、一気に右拳を鳩尾に突き立てた。


「こ、このガキめぇぇぇ・・・」


プルプルと震えブランシュを掴もうと両手をブランシュへと伸ばしたが、彼女はニヤリと笑った。


「甘いです!」


瞬時に右腕を引き、翼を再び広げ一気に上昇する。


ドカッ!


膝を曲げそのまま顎へとぶち当てた。



「げひゃぁあああああああああああ!」



あまりの威力にアシュレイの体が上へと打ち上げられ、錐もみ回転をしながら頭から床へと落ちた。


グシャァアアアアアア!


無様に床でうつ伏せに倒れピクピクと痙攣している。

その一方で、ブランシュはスタッと優雅に床に降り立ち、背中の翼を畳んでアシュレイを見下ろしていた。


「ガーベラ様からあなた達の変貌の理由を教えてもらいましたが、薬に頼ってもこんなザマなのですか?あなたも含めて騎士団の騎士全員の根性を叩き直さないといけないようですね。貧弱・・・、あまりにも全てが貧弱過ぎるわ。」


口から大量の血を吐きながらアシュレイがヨロヨロと立ち上がった。


「貴様等ガキは・・・、何でガキがこんなに強い・・・、俺は最強なんだよ・・・」


横にいる騎士から剣を奪いグッと構えた。


「もう手加減せんぞ・・・、いくら強かろうが、素手では剣に勝てん。上級剣士の称号を持つ俺はこの国で最強の騎士なんだぞ。そして、魔人となって更にパワーアップしているんだ!俺は最強おぉおおおおお!ガキに負ける訳が無いんだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


アシュレイが絶叫しながら剣を上段から思いっきり振り下ろした。

しかし、ブランシュは慌てる事もなくニヤニヤしている。


「たかがこの程度で最強とは・・・、笑わせます。」


スッと右足を後ろに引き、体を少しだけ横にずらした。



ヒュン!



紙一重でブランシュの前を剣が通り過ぎる。



バキッ!



「うぎゃぁああああああああああああああああ!」


アシュレイが握っていた剣を手放し手首を押さえている。

剣を握っていた右手の手首が逆方向に曲がっていた。


「こ、こんなの・・・、いつの間に?」


「別に難しい事でもありませんよ。」


冷や汗をかいて呆然としているアシュレイに対し、ブランシュは落ち着いて拳を構えていた。


「剣が通り過ぎた瞬間にあなたの手首に当て身をしただけですよ。剣とはいえ結局は手の延長ですからね。避けるのはそんなに難しい事でもありませんし、当たらなければ何の事もありません。それ以前にあまりにもお粗末な剣術でしたから手加減するのも大変ですよ。」


折れた手首を握ってブルブルと震えている。

あまりの怒りなのか、視線だけでブランシュを射殺せるのでは?と思えるほどに鋭い目付きになっていた。


「このガキがぁぁぁああああああああああああああああ!」


しかし、急に目付きが冷静になって大きく息を吐いた。


「ふぅ・・・、いかんな。すぐに熱くなる悪い癖が出てしまった。こうして最強の力を手に入れたのに冷静さを欠いては意味が無い。」


ニタリと笑いブランシュを見つめた。


「ぐふふふ・・・、冷静になった俺に貴様のようなガキは勝てないんだよ。見せてやろう、神の力を得て新たに生まれ変わった俺の力をなぁああああああああああああ!」



ブワッ!



アシュレイの右手に大きな黒い霧が発生する。

その霧が細長く集まり剣の形に変わって実体化した。


「どうだ!俺の最強の武器!暴食の剣、グラトニーは!」


折れた手首もいつの間にか回復している。

魔人化した事により骨折くらいなら瞬時に回復が出来るようだ。

両手で巨大な黒い剣を握りしめている。その剣先には大きな牙のある口があった。


「ぐふふふ・・・、この剣はなぁ、単に切るだけじゃないんだよ。生きたまま喰われる地獄も味わえるのだ。喰えば喰う程にパワーが増す俺自慢の魔剣だ!こんなガキに使うには勿体ない剣だけどな、お前に中にいる天使を喰らえばこの剣はどれだけパワーアップするか?もう俺に敵う者はいないだろうな!」



キシャァアアアアアアアアアアアア!



剣先がまるで生き物のように口を開け牙を剥き出しにしながら叫んでいる。


「まるで生き物のような剣ですね。気持ち悪いったらありゃしないわ。」


「ほざけぇええええええええええええ!」



ブオン!



剣を振り抜くと刀身だけが真っ黒なヘビのように伸びブランシュへと襲いかかる。



ドォオオオオオオオオオオオン!



ブランシェの立っていた床が爆発した。

剣の口がブランシュに噛みつこうとしたが、その攻撃を飛んで躱しそのまま床に喰い付いた為であったからである。


ゴリゴリと床を咀嚼してから、ゆっくりと口がブランシュのいる空中へと向き直った。


「床だろうが口にはいるものは何でも食べてしまうの?気持ち悪いよ・・・」


心底嫌そうに見降ろしていた。


「ぐひゃひゃひゃぁあああああああああああああ!どうだ!このグラトニーの威力はぁああああああああ!しかしなぁ、飛んで逃げるとは卑怯だな。」


「あなたにそんな事を言われるのは心外ですね。あなたの方が卑怯に関しては専売特許なのでは?」


「ほざけぇええええええええええええ!」


ワナワナとアシュレイが震えていたが、急にニヤリと笑った。


「空を飛んで逃げる貴様は確かに捕まえるには骨が折れそうだ。だが!」


視線が国王達へと向いた。


「あそこの国王達はどうかな?単なる人間が俺の攻撃を避けられるか?」


「くっ!卑怯な!」


今度はブランシュの方がギリギリと歯を鳴らす。


「そうだ!貴様のそんな顔が見たかったんだよ!お高くとまった王女が俺に為す術も無く蹂躙される!ガキでも見た目は極上だしな、親を庇いながらどこまで頑張れるか?綺麗なものが俺の手でぐちゃぐちゃにされる。ぐはははははぁあああああああああああああああ!最高に気持ち良いぞぉおおおおおおおおおおおおお!]



「ぐ、ここまできて・・・」



とても悔しそうにブランシュの顔が歪む。


「そうだ!その顔だよ!ふはははぁああああああああ!最高だ!」




「な~んてね。」




ニコッとブランシュが微笑んだ。



「はぁ?」



ブランシュの場違いな笑顔にアシュレイの顔が歪んだ。


「やれるものならやってみなさい!あなたはまだ私の力の全てを見ていないわ。」


スタッと床に降り立った。


「少しだけ本気でお相手をしてあげましょう。後ろの騎士達も一緒にね。本当の地獄がどんなものなのか?二度と私達に歯向かう気持ちが起きないくらいに徹底的に教育して差し上げましょう。」


右手を前に突き出した。


「我が内にいらっしゃるガーベラ様!あなた様の真のお力をお借りします。」


掌に金色の光が集まる。


「出でよ!神器!キング・クラッシャー!」


ブランシュの手には金色に輝く棒のようなものが握られていた。

この世界の人には全く馴染の無い形で、野球のバットのような形状の細長い黄金の棒だった。


「はぁああああああああ!」


アシュレイが素っ頓狂な声を上げた。


「何なのだ、その棒きれは?ただ金ピカに輝いているだけの役立たずか?」


そんな言葉を無視し、ブランシュは両手で握り素振りを数回行った。

その行動を見たアシュレイがゲラゲラと笑っている。


「そんな棒遊びで俺と対等に戦うつもりか?そんなおままごとに・・・」



ドカッ!



「ぶへりゃぁああああああああああああああああああ!」


ブランシュがまたもや目に見えない程の動きでアシュレイの前に現われ、フルスイングで腹に神器を叩き込んだ。

情けない悲鳴を上げ、体をくの字に折り曲げながら壁へと吹き飛んでいった。

アシュレイが吹き飛ばされている軌道上にいた何人かの騎士も次々と吹き飛ばされていた。



ドォオオオオオオオオオオオオン!



上半身を壁にめり込ませピクピクとしているだけで、それ以上の動きは無かった。

その光景を見て騎士達がザワザワと騒ぎ始める。


「冗談だろ?あれだけの距離を水平に飛んで行ったぞ。どんなパワーなんだ?」

「お前、あの動きは見えたか?」

「あれだけの打撃でもあの棒は全く曲がっていないぞ。」

「それ以前にだ、ブランシュ王女があそこまで強いって・・・」

「公爵様の方も何かヤバそうだぞ・・・」



「ジャストミートね。気持ち良く吹っ飛んでいったわ。これでしばらくは大人しくなっているでしょうね。」


神器を片手で握り肩に乗せ騎士団の連中を睨んだ。



「「「ひぃいいいいいいいいいいいいいいいい!」」」



騎士達が情けない悲鳴を上げた。


「これが我が国の精鋭が集うと言われた騎士団の姿?魔人化していようが本質は変わっていない烏合の衆とは・・・」


ニヤリとブランシュが笑った。


「ガーベラ様も仰っていますよ。腑抜け過ぎたあなた達には少し教育が必要ですって。」


肩に乗せていた神器の先を今度は騎士達へと向けた。


「この私がガーベラ様に代わってお仕置きをして差し上げます。なぁに、例え死んでも女神サクラ様が生き返らせてくれると仰ってくれました。ふふふ、遠慮無しにあなた達の根性を鍛え直せそうですね。」


左手を頭上に掲げる。


「ライト・ランス!」


数100本もの光の槍が騎士達の上に現われた。どの槍も長さが5メートルは下らない。


ドスドスドス!


そその光の槍が騎士達を囲うように床に刺さった。

まるで檻のように・・・


「これで私のように空を飛べない限り、この檻から逃げることは出来ません。あなた方に心の準備は必要ありません。私があなた方を一方的に蹂躙しますので・・・、それでは覚悟は宜しいでしょうか?」


神器を下げゆらりと動き始めた。


「さぁ!いい声で鳴いて下さいよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」



ダン!



ブランシュが翼を広げ飛び上がり、一気に柵を飛び越え檻の中へと飛び込んだ。



ドカ!



「うご!」


上空から1人目の騎士の頭に神器を振り下ろした。

騎士は剣で受け止めたが、あっさりと剣が真っ二つに折れ、そのまま頭に神器が食い込む。


ゆっくりと糸が切れた操り人形のように床に倒れ込んだ。


「次ぃいいい!」


グシャ!


「へぎゃぁああああああああ!」


頭を割られた騎士の隣にいた騎士が次に殴られる。

庇った腕ごとへし折られ、胴体に神器が食い込み吹き飛ばされた。


神器を片手で握りながらブランシュが周りを見渡す。

誰もがブランシュを恐れ檻の方へと後ずさりしているが、檻のおかげで外へと逃げる事は出来ない。


「あなた方は私達王族に反旗を翻したのですよ。その行動に対しての責任を取らなくてはなりません。私も王族の1人として精一杯あなた方への対応を、責任をもって行っているのですよ。これは遊びではありません。正真正銘の戦争なんです。私は覚悟を決めてこの場に立っています。ですから、遠慮は一切しませんので・・・」


ドォオオオオオオオオオオオオン!


「「「うぎゃぁああああああああああああああ!」」」


神器を両手で握り1人の騎士を殴り飛ばすと、吹き飛ばされた騎士が何人もの騎士を巻き添えにし錐揉みをしながら飛んで行った。



「さぁ!蹂躙よぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」



ブランシュの声に続き、騎士達の悲鳴が響き渡った。


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