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198話 双子の天使⑤

「タイムリープ起動!」


天井付近に巨大な黄金の魔法陣が浮かびすぐに消えた。


「な、何が起きた?」


公爵が天井で展開されていた魔法陣のあった場所をキョロキョロと見渡してる。


「あんなに大きな魔法陣だと?そんなものが存在する訳が・・・」


しかし、マーガレットは微笑みを絶やす事なく杖を公爵に向けていた。


「もうあなたは終わりよ。」


その言葉を聞いた公爵が目を血走らせマーガレットを睨んだ。


「な、何を言っている!このゴーレムは不死身なんだぞ!どんなに攻撃を受けても瞬時に再生しているのを見ているだろうが!魔力が無限だろうが貴様はただそれだけだ!体力が尽きたその瞬間、貴様は俺の手によって生きた屍になるんだよ。ぎゃはははははぁああああああああああああああああ!」



「本当に不快ね・・・」



微笑んでいたマーガレットだったが、心底嫌そうな表情になっている。


「いくら不死身だろうが無駄な事よ。」


杖を掲げた。




「リバース!」




しかし、公爵の身には何も起きない。

その事で安心したのか、公爵がニタニタと笑い始めた。


「何だ?あの巨大な魔法陣はこけおどしだったのか?ふはははぁああああああああ!」


両手の掌をマーガレットに向けた。


「今度は両手のポイズン・ウイップだ。今度は絶対に逃げられん!俺に楯突いた事を悔やみながら死ねぇええええええええええええええ!貴様の無限の魔力は俺が有効に活用してやる!ふはははぁああああああああ!俺が最強!俺がこの世の覇者なんだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」



しばらくゴーレムが両手を突き出した体勢になっていたが、それ以上の事が起きていない。



「ど、どうした?ゴーレムよ!何で動かん!」


公爵が驚きの表情で自分の眼下にあるゴーレムを見つめている。

次の瞬間、四肢が縮み始め胴体へと戻っていく。


「な、何が起きたぁああああああああああああああ!」


胴体もみるみると縮み、最初の肉塊の姿に戻った。

公爵は反動で外に飛び出し、唖然とした表情で目の間の光景を見ていた。


「そ、そんな・・・、俺は夢を見ているのか?」


その肉塊も段々と人々の姿に戻り、肉塊と化していた貴族達が次々と元に戻っていく。

浅黒い紫色の皮膚も元の肌色になり、床の上で気を失っていた。


「ま、まさか・・・、本当に時間を・・・」


ワナワナと震え、怯えた顔で公爵がマーガレットを見ている。


「タイム・リバース」


マーガレットがニヤリと笑った。


「あなたの想像通りよ。お仲間は全員、魔人になる前に戻ってもらったわ。時間を巻き戻してね。魔人に関しては私の中のサクラ様から教えてもらったわ。神の下位互換の更に下位互換の更に更に最低の下位互換のくせに、神に匹敵すると勘違いする傲慢な態度は笑わせてもらったと言っていたわよ。」


再び杖の宝玉を公爵に向けた。


「いくら魔法防御力が高くても、時間を操る私には無意味な事・・・、この神器の本当の力はこのように時間を操る事なのよ。神の中でも最上位の力をこの神器は備えているのね。どんなに強い存在だろうが、時間に逆らう事なんて不可能なんだから。」


公爵がガックリと膝を折り項垂れている。


「チェックメイトよ。分不相応な事を考えず真面目にこの国の為に頑張っていれば、こんな最後を迎える事は無かったのね。」


「貴様は神以上の存在なのか?時間を操る魔法は見た事も聞いた事も無い。だが、その力を俺が手に入れてしまえば・・・」


縋るような視線でマーガレットを見つめていたが、ギラっと視線が鋭くなる。


「まだだぁああああああああああああああ!俺は負けん!最後に笑うのは俺なんだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」



再び立ち上がり、空中のマーガレットへと魔法を撃ちこもうとしている。

両手を前に突き出すと、そこに真っ黒な巨大な玉が出来上がった。



「往生際が悪いわね。ここまで見苦しいとは思ってもいなかったわ。悪人は大体みんなそんなものかもね。でもね、私は言ったよね?チェックメイトだって・・・、あなたはもう終わっているの。」



公爵の体がみるみると萎み始める。

打ち出そうとしていた黒い巨大な玉も霧散してしまう。


「な、何だ!俺の体に何が起きているんだぁあああああああ!」



「タイム・アクセル」



とても冷めた目で公爵を見つめていた。


「あなたの体の時間を一気に進めたわ。数100年単位でね。あなたの自慢の体が老化するだけじゃなくて、その先はどうなるか分かっている?いくら魔人になっても、神と違って不老ではないでしょう?」



「い、嫌だぁぁぁ・・・、か、体が・・・、力が入らない・・・、俺は死にたくない・・・」



一気に全身が皺だらけになり、そのまま倒れピクリとも動かなくなった。

その体がミイラとなり、ポロポロと崩れ砂となり消え去った。



「いくら救いようの無い魂でしょうが、サクラ様は見捨てていません。あなたの死を悲しみ弔ってくれました。悪しき思念を浄化し再び人間として生まれ変わる事が出来たのなら、次は人を思いやる気持ちを忘れずに生きて下さい・・・」



マーガレットが憂いのある表情で僅かに残った公爵だった砂の塊を見つめていた。




「「「はっ!」」」


倒れていた公爵の取り巻きだった貴族達の目が覚め、ゆっくり起き上がりマーガレットを見つめた。

その姿をマーガレットがジッと見つめると、全員が土下座をする。


「ゆ、許して下さい!女神様!」

「私は無理やりに仲間にされて・・・」

「もう2度とこのような事は・・・」


等々と口々に弁解や謝罪を始めた。



「貴様等ぁああああああああああああああ!」


国王が怒鳴ると、その貴族達は今度は国王へと土下座をする。


「これが公爵派の貴族とは・・・、情けない・・・」


この姿に国王がこめかみに手を当て深くため息をした。



「お父さん」



マーガレットが国王の隣に降り立つ。


「マーガレット、いや、今は女神様か?」


そんな言葉にマーガレットがゆっくりと首を振った。


「私はお父さんの娘、マーガレット・・・、それ以外に何者でもないわよ。もうそろそろ私も元の姿に戻るだろうし、だからね、普段通りに話して欲しいな。これからもずっとね。」


「そうか・・・、分かったよ。お前はもうこの国の王女だしな、いつでも私達のところに戻ってきなさい。4人で一緒に暮らそうではないか。」


その言葉にマーガレットは嬉しそうに微笑んだが、またもや首を振った。


「確かに本当のお父さんとお母さんに会えたけど、私の居場所はね、あの教会なんだ。ヘレンお母さんや司祭様と一緒に孤児院で子供達と一緒にいるのが好きなの。それにね、ブランシュがいるからこの国は大丈夫だよ。私はレンヤお兄ちゃんと一緒になりたいから、この国の王女の肩書はいらないの。」


「ふふふ・・・、まだ7歳なのにおませね。」


王妃が近くに立ち微笑んでいる。


「お母さん!」


「あなたの気持ちは分かったわ。あなたは自由に生きなさい。私達のように国や身分に縛られる事なくね。それがあなたの幸せなのでしょうね。でもね・・・」


「何?お母さん?」


「勇者様はもう何人も奥さんがいるのよ。その1人になるなんて大丈夫?」


「うん!それは大丈夫!レンヤお兄ちゃんはみんなに優しいし、アンお姉ちゃん達もみんな仲良しだからね。それにね、マナお姉ちゃんも一緒だから!」


「ふふふ・・・」


王妃が嬉しそうに微笑んだ。


「勇者様の奥さんはどの人も人格者なのね。あの大賢者様もそうだし、聖女様・・・」


急に王妃が黙り込んでしまった。


「お母さん、どうしたの?」


「そういえば、聖女様は?騎士団に何かされてしまったのでは?」



『問題ありませんよ。』



「この声は?」


マーガレットが輝き元の少女の姿に戻った。

背中の翼も消え、瞳も青色に戻っている。

その横には女神サクラが立っていた。


「女神様!」


国王と王妃が膝を付き頭を下げる。


「ソフィアさんは大丈夫ですよ。それよりも、襲った騎士団の人達の方が大変な事になっていましたね。死んだ方がマシと思えるような屈辱を受けてね。」


「そうなんですか?」


ホッとした表情で2人が頷いた。


「ソフィアさんに勝てる人間はこの世界にはいませんよ。あの状態のガーベラでも彼女に全く敵わないと思いますしね。」


チラッと全員がある一点を見た。


「「「あ、あれでも?」」」


その視線の先では凄まじい虐殺が行われている。


「そういう事ですよ。だから、彼女の事は心配しなくてもいいですからね。」


「「ははは・・・」」


国王と王妃の乾いた笑いが響いた。


「「あの可愛いブランシュがあんな姿に・・・」」



「ふふふ・・・、仲の良いお二人ですね。話すタイミングも言葉も同じなんて羨ましいですよ。」



場の空気と違う微笑ましい態度の女神だった。




「では?この者達はどうします?」



女神の視線の先には土下座をしている貴族達の姿があった。


ザッと国王が片膝を付き頭を下げた。


「本来なら国家反逆罪で一族郎党処刑が我が国の法律となっています。ですが、これだけの人数と一族の粛正になってしまうと、あちらに残っている貴族だけではこの国が回らなくなってしまうのは確実。主犯格の公爵は許す事はありませんが、心を入れ替え国に尽すなら、当主は仕方ないにしても一族全てを滅ぼす事はしないと・・・」


「ふふふ・・・、優しい王様ですね。ですが、これだけの目に遭っても法律を曲げてまで許すというのは、優しいのではなく甘いと言うのですよ。それを分っているのですか?」


「女神様の仰るように私は甘い男なんでしょう。だから今回のように邪な者に誑かされ忠臣が寝返ったのだと思います。ですが、私は信じたいのです。真に素晴らしい国とは?お互いに信じ合い手を取り合うような国にしたいのです。」


裏切った貴族達が涙を流しながら国王に土下座をしていた。

しかし、女神サクラの視線は鋭いまま国王を見ている。


「だけど、あなたの想いとは違い、国家転覆までの騒ぎになってしまいましたね。そろそろ騎士団の方も片が付きそうですね。あの者達も含めてどうするのですか?」


「それでも私は信じたいのです!私はこの国が好きです!そして!この国にいる国民もです!」


女神が急に微笑んだ。


「私はこんな甘さは嫌いではないですよ。むしろ好きです。私の父も夫も本当に甘いですからね。お互いに殺し合いまでしていたのに、そんな者までも妻に迎え愛し合うのですし・・・」


クルッと土下座をしてる貴族達へ体を向けた。


「国王が許すなら私は何も言いません。ですが・・・」


貴族達の頭に光のリングが浮かび、頭の中に吸い込まれてしまった。


「今のあなた達ならもう邪な事は考えないと思いますが、もし、また今回のような事を考えるようなら・・・」



ポゥ



「「「うぎゃぁああああああああああ!」」」



貴族達が頭を押さえ叫び始めた。

頭には光のリングが浮かび上がり、まるで頭を締めつけているように見える。


「このように反逆者の印が現われ、死よりも辛い激痛に苦しむでしょう。これだけの事をしでかしたのです。無罪という訳にはいきませんでしょうし、国王に代わって私がお仕置きをしましたよ。」


国王と王妃にウインクをした。


光のリングが消えた貴族達は全員がやっとの状態で息をしていろ。

再び土下座を行って深々と頭を下げた。



「国王様!誠に申し訳ありませんでしたぁあああああ!国王様の慈悲に感謝し、生まれ変わった気持ちになり!この国に身も心も捧げると誓います!」




「ふふふ・・・、これでこっちの方は終わったわね。」




女神がブランシュの方へ視線を移した。

そこにはまだ戦いが、いや、蹂躙が続いていた。



「やはりマーガレットさんと双子だけあるわね。私の力をあそこまで引き出せた力も一緒みたいね。憑依したガーベラの力を際限なく発揮しているし、彼らには少し同情するかも?でもね、後始末は私がちゃんとしてあげるから、遠慮せずに暴れても構わないわよ。小さな天使さん。」


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