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196話 双子の天使③

「「マーガレット・・・」」


国王と王妃がジッとマーガレットを見つめる。


「姉様・・・、なんて美しいのかしら・・・」


ブランシュがうっとりとした表情で見つめていた。


結界で守られている貴族が全員膝をつき祈りを始める。


「女神様が人の身にご降臨なされた・・・、我々はこの目で奇跡を・・・」



「ふふふ・・・、凄いわね。」


天使ガーベラがとても嬉しそうにマーガレットを見ている。


「天使様、どうしたのですか?」


横にいるブランシュがガーベラの態度の変化に気付き訪ねた。


「ここまでサクラの力を引き出せるなんて予想外だったわ。まさか神器まで召喚するとは・・・、今の状態でコレなんだから将来が末恐ろしい程の才能よ。」


「そ、そんなに凄いのですか?」


「そうよ、でもね、双子でもあるあなたも潜在能力は凄まじいものを感じるわ。あなたはどうする?このまま見ている?それとも?」


ガーベラがジッとブランシュの目を見つめていた。


「私も・・・」




「私も姉様のようになれますか?」




「あら、それはどういう意味かしら?」


真剣な表情でブランシュがジッとガーベラを見つめた。


「私も戦います!王族として生まれたこの身、国の危機に何もしない訳にはいきません。姉様のように戦う力があるなら私も戦います。私は逃げません!姉様が戦いに赴くなら私も戦いに身を置く覚悟は既に出来ています!」


「もちろん、私も力を貸すつもりだったわよ。」


パチンとウインクをする。


「さぁ!あのクソ野郎共にあなたの力を見せつけてやろうじゃないの!誰に喧嘩を売ったか?死ぬ程後悔させてやろうじゃない!ふふふ・・・、楽には殺さないわよ・・・」


「天使様、素が出てますよ。でもなぜかその口調が似合いますね。」


クスクスとブランシェが笑う。


「いいのよ。この口調が本当の私だし、猫を被るのはあまり得意じゃないのよ。それとね、あのバカ達があなたを舐めるとどうなるか?まぁ、人の道を踏み外した連中を許すつもりは元々無いからね。徹底的に恐怖を刻み込んであげるのよ。その方法は私と一緒になれば自ずと頭の中に浮かぶわ。分かった?」


「はい!そのようにします!」


次の瞬間、ブランシュの全身が輝いた。



バサッ!



マーガレットとは違う色の真っ白な大きな翼がブランシュの背中に生えた。

額に大きなサファイアが浮かび、その宝石が金色の金属の枠に包まれ始める。

その枠が後頭部へと伸び、色とりどりの宝石が埋め込まれ輝いていた。

まるで女王のような威厳のあるサークレットがブランシュの額で輝いている。


「これは?」


天使ガーベラの姿は見えなくなってしまったが、声だけがこの場に響いた。


『私からのプレゼントよ。あなたの高潔な心、その心と私の力が具現化したアーティファクトなの。この世界にある聖剣と同等の存在よ。この国の女王の証として代々受け継いでいきなさい。』


「私が女王?」


『そう、あなたは神の力を得たわ。でも、その力を正しい事に使える心、目の前にいる欲望に堕ちた者達とは違う。私があなたを気に入ったの。そして、このサークレットがあればいつでも私の力を使えるわよ。これからもよろしくね。』


「はい!このご恩は一生忘れません!」


『さぁ、この国に巣食う害虫退治よ。遠慮はしなくてもいからね。』



ザッ!



マーガレットとブランシュが2人並び前に出る。


「ブランシュ・・・」

「姉様・・・」


2人が見つめ合う。



「えぇええええええええええい!こんなガキに何が出来る!」


アシュレイが2人を睨みながら騒いだ。


「魔導士部隊!一斉にやつらへと魔法を放て!跡形も残さず灰にしろぉおおおおおおおおお!」


アシュレイの後ろにいた騎士達がザッと左右に分かれると、後方から十人ほどのローブを纏った男達が現れる。

その男達の手には宝石がはめ込まれた杖を握っていた。

その杖を高々と掲げる。


「ファイヤーボール!」

「ストーンブラスト!」

「ウィンドカッター!」

「アイスジャベリン!」


呪文を唱えると無数の火の玉や不可視の風の刃、鋭く尖った石などが2人へと目がけて飛び出す。



スッとブランシュが右手を前にかざした。



「クリスタル・シールド」



キィイイイイイイイン!



2人の前に透明な壁が浮かび上がった。


ズドドドォオオオオオオオ!



大きな爆発音が辺りに響き煙が充満する。

その煙が2人を包み込んだ。


「どうだ!」


ニヤリとアシュレイが口角を上げる。


「覇王に逆らうとこうなるんだよ!ガキだろうが容赦はせん!あれだけの数の魔法だ、いくら障壁があっても役に立つはすが無い!障壁ごと骨も残さず吹き飛んだろうな!げひゃひゃひゃぁあああああ!」


下品な笑いを上げていたが、急に笑い声が止まった。


「はぁ?」


煙が晴れたが、2人はまったくの無傷で立っている。

それどころか、あれだけの爆発と煙が立ち上っていたが、2人には何一つ汚れが付いていなかった。


「そ、そんな・・・、何があった?」


「シールド魔法で『完璧』に防御しましたが、何か問題でも?それにあなたが言うほどに大した魔法ではありませんでしたね。単に埃を巻き散らかすだけのレベルとは・・・」


ニヤリとブランシュが微笑む。

その余裕のある態度とは正反対に、騎士団の魔導士達がワナワナと震え絶望の表情になっていた。


「ブランシュ、凄いよ!魔法が使えるだなんて!しかもあんなにたくさんの魔法を受け止めてビクともしないなんてね。私も魔法が使えるかな?」


マーガレットが嬉しそうに目の前に展開されている障壁を見ている。


「姉様なら大丈夫ですよ。私よりも凄い魔法をどんどんと使えると思いますよ。」


黄金の杖を頭上に掲げると障壁が消えた。


「それなら私も・・・、あ!頭の中に魔法が浮かんでくる!」


杖の宝玉を騎士団へと向けた。


「お返しよ!」


マーガレットの周りに白い魔法陣が無数に浮かび上がった。


「レイ!ストーム!」



ズバババァアアアアアアアアアアアアアア!



無数に浮いている魔法陣の中心から真っ白な光の光線が放たれ、数十本もの光線が魔導士達へと飛んで行く。


「「「マジック・シールド!」」」


薄い青白い障壁が何重にも魔導士達の前に展開した。



ガシャァアアアアアアアアアアアン!



しかし、まるでガラスを砕くかのようにあっさりと光線が障壁を粉々にする。


「「「がはっ!」」」


光線により無数の穴が体中に開き蜂の巣にされた魔導士達が棒立ちで佇んでいた。


サァァァ・・・


全員が砂となり崩れ去った。


「そ、そんなのは・・・、俺の最強の魔導士部隊が・・・、それに詠唱も無しで上級魔法を軽々と放つなんて・・・」


ギリギリと歯を鳴らしながらアシュレイが魔導士達がいた場所を見つめていた。



「すごい・・・」


マーガレットも信じられない表情で立ち尽くしていた。


「わ、私・・・、本当に魔法使いになれたんだ・・・」



『こらこら、気が早いわよ。』



「あ!その声はサクラ様!」


『今は私が力を貸しているから魔法が使えるのよ。ちゃんと魔法使いになりたいなら成人まで待つの。それまで頑張ったら、その時は私もあなたの力になるわ。それまで待っていてね。』


「は、は、はい!頑張ります!絶対に魔法使いになります!」


『ふふふ・・・、頑張ってね。その時を楽しみにしているわ。今は期間限定だけど、思う存分魔法を使いなさい。今のあなたに並ぶ魔法使いはラピスさんだけでしょうからね。この力でみんなを助けなさい。』


「はい!」


右手に握っている黄金の杖をアシュレイへと向けた。


「あなたがこの争いの元凶みたいね。私の家族を害しようとした事は絶対に許さない!女神サクラ様に代わり、あなた達を成敗します。」


ブランシュもマーガレットの右隣に並び左手を突き出す。


「大天使ガーベラ様も同様にお怒りです!そして、私の怒りはガーベラ様以上です!」




「「覚悟しなさい!」」




「くそが!くそが!くそがぁああああああああああああああ!」


口から泡を吹く程に興奮したアシュレイが地団駄を踏んでいる。


「貴様らは何なのだ!もう少しで俺達がこの国を掌握出来たのに!何で俺の邪魔をする!俺は世界の覇者になる男なんだぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」



「「はぁ~」」



マーガレットもブランシュも特大のため息をしている。


「何、あのバカは?何でも自分の思う通りになると思っていたの?」


「姉様、申し訳ありません。アレでもこの国の国防の最高責任者なんですが、あそこまでバカとは想像もしていませんでした。かつての勇者様が平和にしてくれた世界でしたが、平和ボケがあのような愚か者を生み出したのかもしれません。」


「あんなバカだから、どこかに黒幕がいるんじゃないのかな?でないと、あのバカだけでここまで用意周到な事は出来ないわ。最後まで気を抜いたらダメよ、ブランシュ。」


ブランシュが頷く。


「はい、姉様。黒幕がいるなら、その黒幕が表に出るしかない程にかき回してあげましょう。」



2人の会話を聞いて国王と王妃がため息をしている。


「フィーよ・・・、先日の事以上に驚きだよ。私の中の子供達への常識が・・・、あまりにも優秀過ぎて、私はもう王として続ける自信が無くなったよ。」

「テオ・・・、元気を出して。こうなったらあの子達に全てを託しましょう。神に愛されし私達の子・・・、この国の未来を託しましょう。」


2人が見つめ合い頷いた。



「このバカ息子がぁあああああああああ!」



公爵がアシュレイへと怒鳴った。


「これしきの事で何を狼狽えている!我々は最強の力を手に入れたのだろうが!落ち着いて対処すればあんなガキどもに後れを取る訳がない!何の為にこれだけの人間を眷属と化したのか忘れたか!」


ハッとアシュレイの血走った目が冷めてくる。


「父上、お見苦しいところを申し訳ありません。」


「ふふふ、分かれば良いのだよ。戦うのはお前だけでは無い、私もいるんだからな。私はあのピンクの羽根のガキを、お前はあの白い羽根のガキを殺せ!兵隊はどれだけ潰しても構わん。いくらでも兵は補充出来るからな。死人ほど扱いやすい兵はいない・・・」


ニヤリと公爵が笑った。



「「「が!がぁあああああああああ!」」」


公爵の後ろにいた貴族達が突然苦しみだす。


「何が起きたの?」


マーガレットが怪訝な表情で貴族達を見ていた。


「ふはははははぁああああああああああああああああああああああああああ!ガキよ!大人を舐めるなよ!」


公爵の体が更に大きく膨れ上がると、後ろにいた貴族達の四肢だらんとし、夢遊病のように虚ろな表情で公爵へと集まった。


「そ、そんなの・・・」


組体操のように貴族達が積み重なり溶け合う。

大きな肉塊となった貴族達の上に公爵が立った。


「うわ!気持ち悪い!」



ゴゴゴゴゴ・・・



肉塊から手足が伸び巨大な人型が立ち上がった。

高さは10メートルはあるだろう。

とても天井が高いホールなので、ゴーレムの頭から天井まではかなりの余裕はあるが、それでも見上げてしまわなければならない程に巨大な姿だった。

その頭部に該当する部分に公爵がいた。


「どうだ!死人で出来たゾンビゴーレムは!いくら貴様が女神の力を借りようが、このゴーレムの前では手も足も出まい!何せ不死のゴーレムだからな!」


マーガレットが杖を目の前に構えた。


「死の尊厳をも踏みにじる行為・・・、教会にいる私の前でよくもそんな事をしましたね。絶対に許さない!あなたの犠牲になった貴族も元々があなたの仲間でしたから同情はしませんが、それとこれは別問題です。死者は死者らしく黄泉に旅立つのは自然の摂理、遺恨を残さず埋葬するのが慈悲というもの。それを阻み人が神の真似事をするとは・・・」


女神サクラの声がマーガレットの口から聞こえる。


『もう遠慮はしません!マーガレットさん!本気で相手をして下さい!』


ゆっくりと杖を頭上に掲げた。


「はい!女神サクラの名にかけて、救いようの無いこの者の魂を消滅させます!」




「神器解放!エターナルよ!その力を開放し、我に力を示せ!」




カッ!



黄金の杖の先端にあった赤い宝玉に細かいヒビが入る。

いや、ヒビではない!

まるでバラの花が咲くように宝玉がゆっくりと開いた。

宝玉が取り付けられていた台座も開き、翼の姿になり真っ赤なバラの花となった宝玉を包んだ。



ピキィイイイイイイイン!



宝玉が黄金の光を放つ。

その光がマーガレットを包み変化が起きる。

光のシルエットが徐々に大きくなっていく、まるで子供が大人の姿に変わるように・・・


マーガレットを包んでいた光が消え、そこにいたのは・・・



「「マ、マーガレットが・・・」」



国王も王妃も同時に呟いた。




「「マーガレットが大人になった・・・」」




そこにいたのは・・・


20歳くらいに成長したマーガレットが目を閉じ佇んでいた。

美しい金髪は足元まで伸び、先端が薄く桃色にキラキラと輝いている。


そしてゆっくり目を開けると・・・


右目が桜色の瞳、左目が金色の瞳のオッドアイとなったマーガレットが辺りを見渡した。


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