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195話 双子の天使②

「くっ!ここまでか・・・」


国王が目の前の騎士団の変貌にギリギリと歯を鳴らす。


「まさか、騎士団が人ならぬ者となってこの国に、いや、この世界に牙を剥くとは・・・」



「国王様!」



国王の前にいた護衛の騎士達が国王へと振り返った。


「ここは我々にお任せ下さい!王妃様と王女様を連れて後ろにある隠し通路から脱出を!例えこの身が殺されそうが必ずお時間を稼ぎます!」


「ならん!お主達にも家族がいる!無駄死には私が認めん!」


「し、しかし!国王様!」


国王が王妃と王女を見て微笑み、腰に掛けてある剣へと手を伸ばした。


「私はこの国の王だ!例えここから逃げようが、この目でこの国が滅ぼされる光景は見たくない!ここは私が時間を稼ぐ!だからお前達は我が妻ジョセフィーヌ、娘ブランシュとそして宰相の護衛を任せる。お前達共々必ず逃げ切るのだ!そして再起の為にも身を隠せ!これが私の最後の王命だ!違える事は認めんぞ!」



「テオ・・・」

「お父様・・・」

「「「国王様・・・」」」



王妃達がポロポロと涙を流していた。



「ふっ・・・、まさか私の最後がこんな事になるとはな・・・、だが、最後にもう一人の我が娘マーガレットに会えたのだ。女神様が私の最後の後悔を汲んでくれたのかもな?もう心残りはない・・・」



「ぐはははははぁあああああああああああああああああ!惨めだな!貴様はすぐには殺さん!こうして信頼していた者に裏切られる気持ちはどうだ?殺す前にもっと絶望を与えてやる!」


アシュレイがサッと左手を上げると、左側の貴賓席にいる貴族達へ兵が剣を突き出した。


「貴様の忠臣だった貴族が俺達の手で殺されるところを見てるがいい!貴様は誰一人助ける事も出来ない!目の前の光景に無力感と絶望に沈むが良い!」


左手を振り下ろした。


「やれぇえええええええええええええええええええええええええ!皆殺しだぁああああああああああああああああああああああ!」




『クリスタル・シールド!』




ピキィイイイイイイイン!



ガキィイイイイイいいイイイイイッン!



貴族達と騎士団達の間に透明な結晶のような壁が一瞬で出来上がった。

魔人と化した騎士達の剣が壁を切りつけるがビクともしない。

傷すら入っていなかった。



「「な、何が起きた?」」



国王とアシュレイが同時に呟いた。



『悪に栄えはありません。天は見ていますから・・・』



「誰だぁああああああああああああああ!」


アシュレイが周りを見渡しながら絶叫する。


ブランシュの横の空間に光の玉が浮かび上がった。

その光の玉にブランシュが気付く。


「これは?とても温かい光・・・」


その言葉に国王も王妃も光の玉に気付いた。


「これは?」

「ブランシュ、知っているの?」


しかし、ブランシュは首を振っている。


「いえ、私も分かりません。ですが父上、母上、この光は何故か知っています。まるで姉様みたいな温かさです。」


「そ、そんな事が?」



「えぇええええええええええい!」


またもやアシュレイが絶叫する。


「そんな茶番がどうした!あの忌々しい壁がどうした!ならば・・・」


騎士達が一斉に剣を壇上へと向けた。


「国王よ!先に貴様らをなぶり殺しにしてやる!」



『それは認められませんね。』



またもやどこからか声が聞こえる。


「クソ!一体誰なんだぁああああああああああああ!忌々しい奴めぇえええええええええ!」



『お望みでしたら姿を見せましょう。』



次の瞬間、ブランシュの横に浮いていた光の玉が激しく輝く。


「「「な、何が?」」」


あまりの眩しさに国王達も目を開けられなくなっていた。

しばらくすると光が消える。


そこにいたのは・・・



「皆さま、初めまして。」



1人の女性が微笑みながら佇んでいた。

あまりの美貌に周りにいる人全てが魅了されているように、呆気に取られて放心状態になっていた。

アシュレイや魔人となった騎士達も剣を握ったまま呆けている。


「ま、ま、まさか・・・、女神様ですか?」


我に返った王妃がやっとの状態で声を出した。

この場にいる全員が驚くのも無理はない。

その女性は普通の人間の女性ではなかった。

この世の者ではない程に整い、全ての男が魅了されるのでは?と思われる美貌。

少しウエーブのかかった金髪をなびかせ、深い青色の瞳がブランシュを見つめていた。

そして、人間とは決定的に違うのは背中に真っ白な大きな翼が生えている。


しかし、王妃の言葉にゆっくりと首を振った。


「残念ですが、私は女神ではありません。私は女神に仕える天使であるガーベラと申します。ただ、階級が大天使級アークエンジェルですから、女神とほぼ同等の権限をもっていますけどね。」


そう言って、悪戯っぽい笑顔を浮かべ王妃にウインクした。


「大天使様・・・」


「そうですよ。本物の女神はそろそろですかね?ちょっと寄り道をしたものですから。」



カッ!



「「これは!」」


国王と王妃が同時に声を上げた。

大天使ガーベラの隣の空間が突如輝きだす。



「な、何なのだ!あの光はぁああああああああああああ!くそぉおおおおおおお!俺をとことん不快にさせるあの光は何なのだぁあああああああああああああ!」


アシュレイがブルブルと震え絶叫する。



光が徐々に収まると、2人の人影が見えた。

大人の女性と手を繋いだ子供の2人だ。



「そ、そんな・・・、何であなたがここに?」


王妃がポロポロと涙を流しながら2人を、いや、小さな子供の方に視線が止っている。



「何なのだ?あの女は?父上、何が起きたのだ?」


アシュレイが呆気に取られた表情で今現われた女性に視線が釘付けになっていた。

同じく、父親である公爵もポカンと口を開けて放心状態のようになっていた。

剣を構えた魔人と化した騎士団も我を忘れて凝視している。


その女性は・・・


腰まである真っ直ぐなピンク色の髪をなびかせ、桜色の瞳を眼下の騎士団達へ向けていた。

勝ち気の印象のあるガーベラと違い、少し目尻が下がり憂いのある表情で、完璧な美といえる姿の美女が佇んでいる。

その背には瞳と同じ桜色の翼が生えていた。



「マーガレット・・・、どうして?」



ワナワナ震えながら王妃が口を開く。

ダッとマーガレットに駆け寄り抱きしめた。


「マーガレット、何で?何でここに来たのよ?こんな危険なところに・・・」


ギュッとマーガレットが王妃を抱きしめる。


「お母さん、私はねぇ・・・、みんなを助けに来たんだよ。お母さん達は私が絶対に助ける。いえ・・・、私が助けなくてはならないの。大切な家族を守るのに理由は必要無いの。お母さんが私を守る為にヘレンお母さんに私を預けたようにね。」


王妃から離れ騎士団へと体を向けた。


「今度は私が母さん達を助ける!」


キッと騎士団長達を睨んだ。



呆気に取られていた公爵が我に返った。


「いかん!思わずあのピンクの髪の女に見惚れてしまった。それにしてもだ!王妃が抱いているガキは王女にソックリだぞ!そうか・・・」


ニヤリと公爵が下品な笑いを浮かべた。

騎士団の右側にいた公爵の後ろにいた貴族達もニヤニヤとしている。


「まさか噂は本当だったとはな。忌み子である双子を隠していたとは!忌み子はこの国に不幸を呼ぶ!ふはははははぁあああああああああああああああ!だからかぁああああああああ!国王よ!自らの不始末でこの国に不幸を呼んだのだ!その伝承通り、この国が滅びる様を見ながら絶望しろぉおおおおおおおおお!」




「黙りなさい!」




凜とした王妃の声が響いた。

その声に下品な笑い声を上げていた公爵も笑いが止った。


「双子の何が忌み子ですと?そんなのは関係ありません!そのような伝承はあなた方貴族の醜い覇権争いの言い訳に過ぎないだけでしょうが!何も知らない小さな子供を祭り上げて自分達の傀儡にしようとした結果、都合が悪ければ双子のせいにし、自分達は関係無いと!そんな歴史はもうたくさん!大人の都合に子供が振り回される!」


王妃が両手にマーガレットとブラッシュの手を繋いだ。


「もうそんな事は私は認めません!母親として子供を守るのは当たり前!双子だろうが、可愛い我が子を手放すとは自然の摂理にも反します!それが認められないなら・・・」


キッと王妃が公爵を睨んだ。


「私は戦います!この国の考え方を正常に戻す為に!2度とこのような悲しい別れをさせない為にも!」



パチパチ



王妃の隣から拍手が聞こえる。

全員の視線がその拍手をしている人物へと注がれた。


その人物とは・・・


女神サクラと大天使ガーベラが拍手をしていた。


「素晴らしいです。母親とはこれだけ強い者だと実感させられました。」

「ふふふ・・・、私達が加護を与えるに相応しい人物です。」


彼女達の拍手に合わせ、透明な壁で守られている貴族達も拍手を始めた。



「バ、バカな・・・、双子は忌み子、国が亡ぶ引き金になる存在だぞ・・・」


公爵がギリギリと歯軋りをしながら王妃達を睨んでいる。


「まだ分からないのですか!あなた達の分不相応なその考え!世界の支配者になるその考え!それがそもそもの間違いだったと!国とは何か?国民の幸せとは何か?それを放棄して、自分達の欲望に染まったその心が国を滅ぼす引き金になっている事に気付かないのですかぁあああああ!」



「五月蠅い!いくら強がろうがこの戦力差には敵うまい!ここにいる騎士団だけが進化した訳ではないのだぁあああああああああああああああああああ!」



ビキビキ・・・



公爵の額が割れ中から大きな1本の真っ黒な角が迫り出してきた。

その変化に合わせて、公爵の後ろにいる貴族達の姿も変貌を始めた。



「公爵よ・・・、貴様達もだったのか・・・」



国王が辛そうに公爵達を見ていた。


「世界の征服、世界の覇者・・・、その事に何の意味がある?貴様達貴族はどのようにして生きてきたのかも忘れたのか?我ら王族や貴族は国民の血税にて生かされているのだぞ。そして、国民が暮らしやすいように、幸せになるようにするのが我ら上に立つ者の使命なのに・・・」



ザッ!



国王が床に片膝をつき女神達へと頭を下げた。


「女神様に天使様、お見苦しいとこをお見せし大変申し訳ありません。このような事が起きたのは私の不徳が致した事です。私はもう王の資格はないでしょう・・・、ですが!今だけはお力をお貸し下さい!この国の膿を出す為にお力を!」



「頭を上げて下さい。」



「女神様!」


「私はあなた達を罰するつもりでお邪魔した訳ではありませんからね。この国の歪んだ考え方、それを正しに来ただけです。」


視線をマーガレットに向けた。


「それにです、この国の救世主はここにいるではないですか。小さな救世主が2人ね。」


両手を上に高々と掲げる。


「さぁ!この目に焼き付けるのです!この国が新たに生まれ変わる瞬間を!そして、神の奇跡を!」


女神がマーガレットの後ろに立った。


「マーガレットさん、準備はよろしいですか?」



「はい!私は戦う!レンヤお兄ちゃんのように!そしてお母さん達を守る!」



とても嬉しそうに女神が微笑む。


「フローリア母さんがこの子に加護を与えたのは間違いありませんでしたね。守りたい気持ち、この心があれば人はどれだけでも強くなれます。その力を私にも見せてね。」


フッと女神の姿が消えた。



カッ!



マーガレットの全身が金色に光輝く。


「「こ、これは?」」


国王と王妃が不安そうな表情で呟いた。



バサッ!



光が消えると、マーガレットの背中から大きな翼が生えた。

女神の翼と同じ桜色の翼で、頭の上には真っ白に輝く光のリングが浮かんでいる。



「マーガレットが天使になってしまった・・・」



王妃達が信じられない表情でマーガレットの姿を見つめている。


マーガレットの全身がソフィアのような真っ白で金の豪華な装飾が施されたワンピースを着ていて、右手には先端に赤く輝く大きな宝石が取り付けられている黄金の杖を握っていた。

左手には小振りだが、黄金に輝く盾が握られていた。


目を閉じていたが、ゆっくりと目を開けると、いつもの青い瞳ではなく桜色の瞳が輝いていた。


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