187話 7年ぶりの家族の団欒③
シャワーも終わり用意された服に着替えましたが、ここでもまた驚きの連続です!
下着もビックリ!
こんなのって有り?と思う程に機能的な下着です。
(こんなに手が込んでいるなんて・・・)
ただ裸を隠すだけでなく、ゴムと呼ばれる繊維を織り込んで締め付け過ぎる事も無く、かなり激しい動きでもズレる事はありません、胸の大きい私にはとってはまさに、ゴニョゴニョ・・・
(恥ずかしくて口に出せません)
だけど、このブラジャーとか言う下着はブランシュ達にはまだまだ早いですね。
あと4~5年は私が独占かもね。
そして、服も1人で簡単に着れるのに、とても機能的で肌触りも最高!です。
マイさんに直談判して、私とブランシュの分を数着、下着も含めてお土産としてもらえるよう交渉に成功しました。
テオの分?
そんなのは知りません!
男の人の分はそんなに必要ありませんからね!公式の場でなければ適当に布でも巻いていれば良いのです!
女性には下着も含めて色々とあるのですよ。ふふふ・・・
(とっても良いモノをGETしましたよ!)
そして、私達が眠るベッド!
「「「はぁ?」」」
マーガレット以外の私達親子が間抜けな声を出してしまいました。
(何て大きさなの。)
10人が一緒に寝ても余裕があるほどに大きなベッドです。
どんな意味でここまで無駄に大きいのでしょうか?
まぁこれだけ大きいと私達4人が一緒に眠っても大きさには全く問題はありませんけどね。
私の隣にマーガレット、その隣にブランシュ、テオと4人が並んで横になっています。
いやはや・・・、このベッドもマイさんが言われた通り極上過ぎる柔らかさです。
体は沈みますが、適度な硬さに寝返りも楽です。
それ以上にシーツからは花のような落ち着く香りがします。
香水みたいな派手に香る事も無く、あくまでも自然に漂う香りです。
服もタオルもこのシーツも、どんな洗剤で洗っているのでしょうか?
シャワールームに置いてあった石鹸やシャンプーみたいなものなのかもしれません。
こんなベッドを覚えてしまうと、もういつものベッドで安眠するのは無理かも?
我が国の職人総出でもこの寝心地に近づけられるかどうか?
(出来る事ならずっとここで暮らしていたい!)
そう思う程に快適に過ごせます。
王族として庶民とは比べ物にならない生活をしているのに!
何度も言いますが!
神様・・・、恐るべし!
色々とドタバタしてしまいましたが、やっとみんなで横になりました。
マーガレットもブランシュもかなり眠いのか、目をゴシゴシと擦っています。
(こらこら、こんなに目を擦ったら駄目ですよ。)
そして、ジッとマーガレットを見つめます。
「ねぇ、マーガレット・・・」
「何?お母さん?」
「あなたは女神様って信じている?」
ずっとここで驚かされている私が質問するのも変ですが、実際にマーガレットはどう思っているのでしょうか?
「うん!もちろんだよ!だって、私は女神様と約束したんだからね!」
(えっ!)
信じられない話です。
マーガレットが女神様にお会いした?しかも約束まで?
でも・・・
私もあの光景は忘れません。
あの方は間違い無く女神様でしょう。
私もこの目で女神様を見ました。
マーガレットの言葉は本当だと信じます。
「マーガレット・・・」
「何?」
「どんな約束をしたのかな?」
「私ね、大人になったら魔法使いになりたいってお願いをしたんだ。でもね、ただ願うだけじゃなれないって言われたの。」
「そうなんだ。」
「だからね、私、頑張って勉強しているの。魔法使いは色んな知識が必要だからってラピスお姉ちゃんにもナルルースお姉ちゃんにも言われているんだ。だからね、とっても勉強を頑張っているんだよ。魔法使いってたくさん覚える事あるから大変だけど、ちゃんと頑張ればなれるって約束したんだ。」
「ふふふ・・・、頑張り屋さんね。お母さんも応援するわよ。」
「ありがとう!お母さん!」
「それとね・・・」
何?マーガレットが真っ赤になってモジモジしているわ。どうしてかな?
「私ね、魔法使いになる以上にね・・・、レンヤお兄ちゃんのお嫁さんになるのが1番の夢なんだ。」
「あら!でも、勇者様にはもう奥さんがたくさんいるのよ。」
「そんなの関係無いの。私、レンヤお兄ちゃんの事が大好き・・・、とっても・・・、だから、お兄ちゃんにお嫁さんがいっぱいいてもね、私もその1人になりたいの。お兄ちゃんと結婚したマナお姉ちゃんも幸せそうだし、私もね・・・、お兄ちゃんと一緒なら絶対に幸せになれるの。みんなと同じになりたいの。それだけ、レンヤお兄ちゃんが好き・・・、大好きなの・・・」
「そうなんだ。大丈夫よ、私もあなたに会いたい夢が叶ったのよ。あなたの夢も絶対に敵うわ。必ずね・・・」
顔を真っ赤にしながらモジモジしているマーガレットが可愛い過ぎるわ!
思わず頭を撫でてしまいました。
「えへへ・・・」
そんな仕草のマーガレットも尊い!
本当に可愛い!!!
マーガレットの隣にいたブランシュも微笑んでいる。
「お姉様、頑張って下さい。私も応援してます。」
「ありがとう!ブランシュ!」
嬉しそうにマーガレットがブランシュに抱きついた。
「おい・・・、私だけが除け者か?」
私達の会話に入れないテオが少し拗ねていました。
(ふふふ・・・、そんな大人気ないテオも可愛らしいわ。普段の威厳のある態度とは正反対ね。)
「だから・・・、ごめんなさい・・・」
ブランシュから離れ私へと向き直ったマーガレットがとても悲しそうに私を見つめています。
そして涙が流れ始めました。
(やっぱり・・・、そうなのね・・・)
「明日、私は教会に戻るの。みんなが待っているし、司祭様もヘレンお母さんもとっても忙しいから、私がしっかりとみんなの面倒を見なくてはいけないの。私はみんなのお姉ちゃんだからね。」
ギュッと私に抱きつきます。
「だから・・・、今はこのままでお願い・・・、朝まではね、お母さん・・・」
そんなマーガレットの背中にブランシュが抱きつきました。
「お姉様、安心して下さい。私達はずっと一緒です。これからの私達は会いたい時はいつでも会えるのですから・・・、先ほどララノア様と色々お話をして、会いたい時はこうしてこっそりと連れて行ってくれると約束してくれたのですよ。その為の通信の魔道具もいただきました。だから、今度は私達がお姉様が過ごされた教会にご挨拶しようと父上とお話していたのです。もう私達は2度と離ればなれになることはありません。」
「そうだ。今度は私達がお前を守るのだよ。」
テオもこちらを向き真剣な表情でマーガレットを見ています。
「勇者殿と比べれば私達は頼りないかもしれないが、私はお前を愛している。双子?そんなのはもう関係ない。そんな悪習なんかはもう終わりにする。だからな、これからは堂々と私達のところに遊びに来ても良いんだよ。」
「お父さん・・・」
マーガレットがギュッと私に抱きつき泣いています。
(今度こそは・・・)
あの時はこの子を守る事が出来なかった・・・
今でもこんなに小さいのに・・・
ずっと頑張っていたのね。
テオとブランシュを見ると2人がゆっくりと頷いてくれたわ。
ブランシュもマーガレットを受け入れてくれただけでなく、一緒に守ってくれるのね。
(ブランシュ、あなたも最高の娘よ。)
だから・・・
私達3人が絶対にこの子を守ります。
(私の命を懸けてでも!)
しばらくするとマーガレットから寝息が聞こえてきます。
どうやら落ち着いて眠ったみたいですね。
この子の寝顔は・・・
「ふふふ・・・、赤ちゃんの時と全く変わっていないわね。あなたはエレノアでなく、マーガレットとして生きていくのね。でも、私の子には変わらないわ・・・」
柔らかい頬をツンツンします。
くすぐったいのか眠っているのにむにゃむにゃしています。
そんな仕草がとても可愛い!
だけど、テオとブランシュが心配そうに私を見ています。
そうですね、2人からだとマーガレットの表情が分かりませんね。
さっきまで泣いていたので心配しているのでしょう。
「安心したみたいね、幸せそうに眠っているわ。愛しているわ、ずっと・・・、私の可愛いマーガレット・・・」
私がそう言うと2人はホッとした表情になりました。
マーガレットにお休みのキスをしていなかったので、おでこにチュッと軽くキスをしました。
翌朝
目を覚ますとマーガレットとブランシュが私に抱きつきながら眠っています。
そんな私の姿をテオが微笑ましく見ていました。
「あなた、仕事は大丈夫なの?」
その言葉にテオがクスッと再び微笑みます。
「折角エレノア・・・、いや、マーガレットと一緒にいるんだぞ。この子を優先しなくてどうする?帰るまでは一緒にいるつもりだよ。私がいなくても代わりに仕事をしてくれる連中はたくさんいるからな。」
「そうですね、でも、あなたの代わりだと少し同情しますよ。いくら分担してもあの仕事量ですからね。ふふふ・・・」
「まぁ、君もいないし、その点では私も同情するけどな。」
マーガレット達が目を覚ますまでのしばらくの間、私とテオは2人の頭を優しく撫でていました。
そうしているとマーガレットが目を覚まします。
「あ!お母さん!」
いきなりマーガレットがガバッと起き上がります。
その行動でブランシュも目を覚ましてしまいました。
「い!いけない!寝坊しちゃった!」
「マーガレット、そんなに慌ててどうしたの?」
私が声をかけるとピタッと動きが止まりました。
「へへへ・・・、ここは教会じゃなかったんだね。朝のお仕事のお手伝いをしなくちゃって思っていたの。」
そんなマーガレットも可愛いわ。
(いけない!マーガレットが尊い・・・、鼻血がぁぁぁ!)
コンコン・・・
部屋のドアがノックされます。
入室の許可をすると1人の女性が入ってきました。
マイさんとは違う人です。
サラサラな銀髪に青い瞳、しかし!この人は何者です?
昨日お会いした大賢者様を始め聖女様にシャルロット様、そんな方と同等かそれ以上に美しい女性では?
まるで、昨夜お目にかかれた女神様と同じくらいに神秘的な美しさです。
「みなさま、朝食のご用意が出来ました。」
その女性がぺこりと頭を下げたのですが、部屋に入ってくる動き、それにお辞儀の動作、完璧な仕草です。
そして、私以上に優雅な仕草で・・・
(どこかのお姫様?)
そう思う程に気品に溢れていました。
「あ!アンお姉ちゃん!」
マーガレットが勢いよくベッドから飛び降り、彼女に抱き着きます。
ここまでマーガレットが慕うなんて、ちょっとヤキモチを感じますよ。
「もしかして、ご飯ってお姉ちゃんが?」
「そうよ。」
彼女がニッコリと微笑みます。
いけない!私もあの笑顔に吸い込まれそう!
だけど、あの笑顔を見た途端に涙が・・・
(あ、そうか・・・、あの笑顔は・・・)
クラリス様にそっくりなんだと・・・
「どうかしました?」
彼女が心配そうに私を見つめています。
「いえ、大丈夫です。知った人に似ていたもので、すみません・・・、ところであなたは?」
「私ですか?」
そう言ってとても美しいお辞儀をしました。
この方は間違いないです!どこかの国の高貴なお方に間違いありません!
「私は勇者レンヤの妻の1人、アンジェリカと申します。マイさんは本来の仕事に戻られましたので、お帰りまでの間、この私がお世話させていただきます。」
「アンお姉ちゃん、もしかして?」
マーガレットが嬉しそうにしています。
「そう、朝ご飯は私が作ったわよ。マーガレットの好きなものばかりね。でも・・・」
何かマーガレットが罰の悪そうな顔になってしまいました。
「嫌いな野菜もちゃんと食べるのよ。」
「えぇぇぇぇぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~」
ブーブーと言っていますが、そんな仕草も可愛い!
このお方の前ではマーガレットも素直になっているみたいですね。
何でしょうね、胸がムカムカする気が・・・
これってヤキモチなの?
「その代わり、レンヤさんのお店からアンパンもジャムパンもたくさん持ってきたし、いくつ食べても良いからね。」
「やったぁああああああああああああ!」
またもや嬉しそうに抱き着いています。
あれだけ喜ぶ料理って何でしょうか?
私も期待してしまいます。
甘かった・・・
ここまでの料理なんて・・・
テオもブランシュも感激しながら料理を食べています。
朝食なのでそんなに量はありませんし、軽い食事のはずですが、どの料理も最上級の味付けです。
それに・・・
普段の私達の料理はまず毒味役が試食を行い安全を確認してから食べます。その為、私達が食べる時はもう冷めてパサパサになったりと、お世辞にも美味しいと言える料理は少ないのです。ですが、今は出来立ての温かい料理が食べられる贅沢、心から食事を楽しめたのはいつぶりでしょう?
それに、このパンがとても美味しいのです。
ブランシュも王女のマナーを忘れてパンにかぶりついて食べています。
普段、私達が食べているパンはボソボソの触感でしかなく、あまり甘くないジャムやバターを塗って食べています。だけどこのパンはとても柔らかくもっちりした食感に、中には甘いジャムなどがふんだんに入っていて全く飽きる事がありません!甘く煮た豆(あんと呼ばれているみたい)、苺のジャムを始め、ジャムも何種類もあります。
そんなパンが美味しくない訳がありません!
これも要お土産案件ですね。
絶対に交渉させてもらいます!
とても満足した朝食を終え、とうとうマーガレットとお別れの時が来ました。
「マーガレット、これでお別れじゃないからね。会いたくなったらいつでも会えるのよ。」
「うん!お母さん!また一緒にね。今度はお風呂にも入ろうね。」
ニコニコと笑っているマーガレットの頭を優しく撫でました。
(この子は自分で生き方を決めたわ。)
だから・・・
私達はこの子のやりたい事を応援するの。
今のお別れは今生のお別れではない。
これからはいつでも会えるからね。
そして、私達は自分達の王城へ戻りました。
「テオ、ブランシュ、私達も頑張りましょう!マーガレットが喜ぶような国にしないとね。」
2人が頷いてくれました。
しかし・・・
数日後、この国が最大の危機に陥ります。
そして、この国を救ってくれたのは・・・
あの子、マーガレット達でした。




