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180話 王都ローランド⑤

「マーガレットがシュメリア王国の王族の関係者だと?」


俺の前にあるテーブルの上には、ナルルースさんが置いたペンダントが輝きを放っている。

金色のメダルに豪華な彫刻を施され、真ん中にはマーガレットの瞳と同じ色の薄い青色の宝石がはめ込まれている。

チェーンも金色だし、このペンダントは全てが金で作られているのでは?と思う。

パッと見でもこのペンダントはとてつもなく価値のある物だと分る。

そんな物を孤児であるマーガレットが持っている事自体が不自然だと、いくら俺でも分るよ。


「マーガレットは確か?」


俺の言葉にナルルースさんが頷く。


「そうです、彼女は7年前、ザガンの街の孤児院の前で捨てられていたと聞いています。その際に彼女の首にはこのペンダントが掛けられていたと司祭様からお伺いしました。このペンダントはただのペンダントではない、とても高貴な方が身に着けるペンダントに違いないと、司祭様とヘレン様はそう判断し大切に保管しました。マーガレットさんが5歳の時に『いつかはあなたの両親がお迎えに来るでしょうね。』と言って渡し、彼女は宝物として常に身に着けていました。」


(そうなんだ・・・)


確かにマーガレットは他の孤児院の子供達の中では別格と言える程に可愛い。まるで小さなシャルの様に気品を感じられた。今ではミニシャルと化した子供フランがマーガレットと並ぶと、確かに雰囲気が似ていると感じる。


「そうなると、マーガレットはその国の王族の関係者かも?」


「状況から考えると、その可能性は高いと考えられます。」


再びナルルースさんが頷いた。


「それにですが、彼女、マーガレットさんが生まれただろう7年前に、あのシュメリア王国で1つの噂を耳にしています。」


(どんな噂だ?)


「あの国の国王には2人の妻がいるのですが、正妻と妾ですね。その2人がほぼ同時に子供を出産し、どちらかの子が死産だったとの噂を聞いています。そして、正妻の方は出産の無理がたたり、産後程なくして亡くなられたと・・・、しかし我らエルフの暗部からの話では、死産として死んだはずの子供というのは忌み子であり、内密に処分されたとの事です。」


「忌み子とは?もしかして、その子が?」


「申し訳ありません、我らエルフの暗部でも詳細は確認出来ませんでした。もし忌み子としてもああやって生きて他の国に捨てるものでしょうか?しかも、明確な身分をも示すものを一緒に置いていたのです。実際に何があったのか、何も分からずじまいで申し訳ありません。」


深々とナルルースさんが頭を下げた。


「まぁ、あの国に行けばマーガレットの事は分るかもしれんな。」


そう言ってラピスへ視線を移すとラピスも頷いた。


「マーガレットちゃんにとって良い話なのか悪い話なのか、今の段階では微妙なところね。あんな事をしてまであの子に関わりを残そうとしているのも、調べてみないとね・・・」


「場合によってはマーガレットには言えない話になるかもな?あの子がショックを受ける姿を見たくないよ。真実を知る事が幸せだと限らないしな・・・」


「今の段階ではそっちの可能性が高いわね。」


ラピスの言葉にナルルースさんが頷いた。


「ナルルース、このペンダントは私が持っているわね。2日後にはローランドに着くし、私も情報を集めてみるわ。場合によってはローズの力を借りるかもね。」


「その方が良いかと思います。それでは、我々も微力ながら情報収集に努めます。」


「ありがとう。それじゃ、よろしく頼むわね。」


「はっ!」


返事をしたナルルースさんの姿が消えた。

転移魔法で移動したのだろう。



ガチャ!



「あれ?ナルルースお姉さんは?」


ナルルースさんがこの部屋からいなくなってしばらくすると、フランがマーガレットと一緒に部屋に戻ってきた。


「ナルルースは用事があるって言って先に帰ったわよ。明日に迎えに来るって言っていたわ。」


ラピスがパチンとマーガレットにウインクをすると、マーガレットがとても嬉しそうにしているよ。


「そ、それじゃ・・・」


「そうよ、今夜はレンヤと一緒に眠れるわね。」



「お兄ちゃぁああああああああああああああああああああああああああああん!」



ズン!



「ぐえっ!」



またもやマーガレットミサイル(フライング頭突き)が俺の鳩尾に炸裂した。


「のぉぉぉぉ・・・」


だけど、そのままヒシっと俺に抱きつき、顔をスリスリする姿を見るとなぁ~~~


「えへへ・・・、お兄ちゃん、大好き・・・」


(何も言えないよ。)


そんな光景をフランが生温かい目で見ているよ。


「ホント、パパったらねぇ・・・」


ちょっと恥ずかしいからラピスへ視線を移すと・・・


・・・


何だ?ラピスもフランと同じような目で見ている。


【レンヤ、マーガレットちゃんをしっかり守ってあげなさいよ。あの国でどんな結果になってもね。】


【そうだな、この子も俺以上に大変な目に遭ってきたんだ。それなのに俺達の前ではいつも明るく振る舞っているしな。子供なのに立派だよ・・・】


【そうね・・・】


幸せそうに抱き着いているマーガレットの頭を優しく撫でてあげると、更にギュッと抱き着いてきた。

7歳にしてはスキンシップがとても激しい気がするが、気のせいにしておこう。

いつまでもこうしてベッタリって事はないだろうし、いつかは俺から離れるだろうしな。


(それまでは俺が兄貴代わりでも構わないだろうな。)




そう思っていた時期もありました。


あの歳でマーガレットがとてつもなく重い女の子だと想像もしていなかった。


年々、それを実感していった。

ある意味、テレサ以上にヤンデレな子だった・・・






「パパも大変ね。」


ベッドの中でフランがニコニコしながら俺を見ている。

俺の反対側にいるマーガレットは遊び疲れてしまったのか、もう既に夢の中にいた。

だけど、時々だが、「お兄ちゃんのエッチ・・・、えへへ・・・」とか寝言を言っている。


(一体、どんな夢をみているのだ?俺ってロリコンか?)


「私ならパパには何をされてもOKよ。」


5歳児とは思えない妖艶な笑みを浮かべるフランであった。


「フラン、勘弁してくれよ・・・、俺はロリコンじゃないからな。」


「分かっているわよ。だからね、私がちゃんと大人になった時は・・・」


フランがとても嬉しそうに俺を見つめているが、その時、俺は心に誓った!



(フランが大人になるまでに絶っ対!!!にフランの彼氏を作る!)






しかし・・・





それは無駄な努力に終わったと、10数年後に気付くのだった・・・






ヒスイちゃんはティアと一緒に寝るみたいだな。

最近のこの2人はとても仲が良い。


そして、美冬さん達も一緒に例の家で寝泊まりしている。


「これは懐かしいわね。あの時を思い出すわ。」


と言って、とても嬉しそうに家の中を見ていた。


2軒の内、1軒が美冬さん達お客様用に使用している訳だ。

エメラルダやマナさん、ローズ達はもう1軒の方で寝泊まりしている。これだけのメンバーがいるので、俺達も一緒にいると入りきれない。というか、ベッドの大きさが全然足りない。そんな事で俺達(シャルとフラン、テレサ、ソフィア、ラピス)はフォーゼリアの王城に毎日日帰りで戻り泊まっていた。


ほとんど気付く事はなかったが、エキドナさんもしっかり俺のストーキングをしているのには驚きだった。何気に背中に視線を感じたら、後ろに彼女がいる!というのは当たり前だったし・・・

彼女は親友でもあるテレサの部屋に寝泊まりしていたのだが、ホント、神出鬼没なドラゴンだとは驚きを通り越して呆れるしかなかったけどな。


「さて・・・、明後日は王都ローランドに入る予定だな。」


「そうね、新婚旅行みたいな感じね。」


フランを間に挟んでシャルがニッコリと微笑んでいた。


シャルにはまだマーガレットの事は話していない。もう少しマーガレットの事が落ち着いてから話すつもりだ。ただでさえ魔神の事もあるのだ。これ以上、負担をかけたくない。

シャルはローランドの事は観光に行く気持ちが強いからな。変に気を遣わせては可哀想だろう。

出来るだけあの街で楽しんでもらいたいものだ。


俺とシャルの間に横になっているフランが交互に俺達を見ている。


「フラン、どうした?」


「うん・・・、ずっとこうしていたいな・・・、ありがとう、私のパパとママになってくれて・・・、幸せよ。」



(うわぁぁぁぁぁぁぁ!フランが可愛い過ぎる!)



シャルが感激してフランを抱いているし、俺も抱こうとしたが・・・


「うっ!」


マーガレットがしっかりと俺の腕に抱き着いていて離れない。

泣く泣くフランの頭を撫でるだけしか出来なかった。


(ホント、天使な子供だよな。)






「うわぁ~~~~~~~、これが王都ローランド・・・、本当に綺麗な場所ね。」


シャルが感激して目の前の光景を見ていた。

その後ろにいるアン達もキラキラした目で、その風景に見惚れていた。


目の前にはまるで海かと思う程に大きな湖が広がっている。ここからでは対岸が見えない。

そして水の透明度も高く青く輝いていた。

そんな湖の中に小さな丘のような大きな島がある。その1番高い場所に白亜の城が建っていた。

丘は島の中央部分にあるので、城を中心にし放射線状に町並みが出来ている。その町並みの景色も、各々の家の屋根がカラフルで、真っ白な城に周りの青い透明な湖とのコンストラストがとても素晴らしかった。

俺でも思わず見とれてしまったが、女性陣は感動の視線ででこの風景を見つめていた。


「想像以上だな・・・」


「そうね、こんなに美しい場所があるなんて・・・、観光地として栄えているのは納得ね。」


アンもキラキラした目で見ていた。


「それにしても、あの橋を通らないと王都に入れないなんて、流石はあの帝国から独立を勝ち取っただけあるわね。まさに難攻不落の要塞の街ね。」


ソフィアも感心した顔で町並みを見ている。


この王都に入るには湖岸から橋を使わないと入れない。

王都に繋がる橋だから馬車を何台も横に並べても余裕がある程の幅だ。

基本的に石組みの大きな橋だが、湖岸側と街側に2箇所跳ね橋になっていて、有事の際には橋を上げ敵の侵入を防ぐ事も可能だな。

敵からすれば船以外では攻める手段も無いし、王都の周りに建てられている城壁もかなり高く、鉄壁な防御を誇るのは歴史も証明しているからな。


あくまでも人間同士の戦いにおいての防御だ。

魔神との戦いだとどうなるか?

逆にこの地形が仇となるかもしれないと思う。


(奴等がどんな手を使ってもこの街は守らないとな。)


みんなの顔を見ると、俺の気持ちが伝わったのか全員が頷いてくれた。



橋の前にある関所で王都への入場手続きを取った。

シャルの身元の確認、俺達の確認はすぐに終わった。


そのまま王城まで案内して貰う事になった。

今はシャルがいるからな。あまり国交が無いフォーゼリア王国とはいえ、その王族であるシャルがいるのだ。失礼な真似は出来ない。


道中、街中を通ったがとてもキレイな街だ。

しかも、とても活気があるし、観光で訪れるなら最高の観光地の1つになるだろうな。

みんなもそう思ったのか、とても楽しそうに馬車に乗って景色を楽しんでいた。


王城に着いたが全く待たされる事もなく接見の間に通された。


国王達の準備が整うまでしばらく控え室に待たされていたが、そう待たされる事もなくすぐに国王様との接見となった。



接見の間に入り国王達が入場するまで頭を下げ待っている。


しばらくすると俺達の前の壇上に数人の人の気配を感じた。


「遠路はるばるご苦労であった。シャルロット王女に勇者パーティーの面々よ。面を上げることを許す。」


顔を上げ壇上の玉座に座る国王様を見た瞬間、俺の思考が止ってしまう。


いや!国王様を見たからではない!


国王様はまだ若い感じだ。まだ30代になるかならないかだろう。

隣にいる王妃様も国王様より少し若い感じの美女だった。



俺が呆気に取られてしまったのは・・・





「マーガレット・・・、何でお前がここにいる?」




思わず声が出てしまった。


だが!見間違えるはずがない!

信じられない事に、あのマーガレットが桃色のドレスを着て黄金のティアラを頭に乗せ、国王様達と一緒に壇上にいた。


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