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18話 グレン達の末路①

昨夜もよく眠れた。

本当にここが難関ダンジョンの中?と思えないくらいに平和で快適な夜だった。

野営でここまで快適に過ごせるなんて、世界でも俺達だけではないだろうか?


ラピスに会うまでの俺の冒険者の苦労って・・・


ラピスには本当に感謝しないとな。


昨日の夜も3人で一緒に寝たけど、単なる添い寝で一晩過ごした。


やっぱり両親にしっかりと報告してからでないと、俺の中での気持ちの整理がつかないのもある。

2人もその事を分かってくれているので、無理に俺を誘うような事はしなかった。


相変わらずスキンシップは激しいけど・・・



隣に眠っているラピスは、俺の方を向いて気持ち良さそうに眠っている。

そういえば、じっくりとラピスの顔を眺めた事は無かった。こうやって間近で見ると本当に凄い美人だよな。ハイエルフだから成長が遅いのか、大人の色気と美少女の中間のような美しさかな?超絶美少女が大人になり始めて少し成長した感じだと思う。


(歴史では俺とラピスは夫婦になっていたな。アレックスめ、余計な事をしやがって・・・)


だけど、こうやって幸せそうに眠っているラピスを見ていると、俺も自然と嬉しくなってしまう。前世の時に見ていたラピスはとても男を警戒して嫌っていた。そんなお前がこんなにも俺に心を許して尽くしてくれている。


(俺もラピスの想いにしっかりと応えないとな。)


眠っているラピスのおでこに軽くキスをした。


「いやぁ~ん、レンヤのエッチ・・・、うふふ・・・」


(げっ!起してしまったか?)


しかし、もぞもぞと動いていたけど、そのままニヤニヤしながら眠り続けている。


(良かった・・・、今のは単なる寝言か・・・、だけど、ラピスの夢の中に出ている俺は何をしているのだ?ちょっと気になる・・・)


反対側を見るとアンもスヤスヤと眠っている。

アンは美人というよりも可愛いな。目がクリッとしていて俺から見ると、美少女の中の美少女と思えるくらいに可愛い。だけど、時折見せる大人びた表情にドキッとさせられてしまう。ラピスもそうだけど、俺には勿体ない過ぎる程の美人揃いだよな。

この時代のアンはもう誰も身寄りがいないし、俺がしっかりと支えてあげなくてはいけない。


見つめていると、アンがパチッと目を覚まし、ニコッと微笑んでくれる。この笑顔を見れるだけで俺は幸せになれると思う。それくらいアンの笑顔は素敵だ。


「レンヤさん、おはよう。」


「すまん、起こしてしまったか?」


「大丈夫、ちょうど目が覚めただけだよ。」


「そうか、おはよう、アン。」


そう言って軽くキスをすると、アンが俺の掌をギュッと握ってくれた。

アンの温もりが俺に伝わり、とても心地良い。

お返しとばかりに、アンの方からもキスをしてくれた。


これはもう完全に夫婦だよな?


それにしても・・・


昨日は夕食前にアンが倒した魔獣とアースドラゴンの解体をしたけど、アンが率先して解体したなぁ・・・

いつの間にか黒い細剣を握ってスパスパと解体していった。

手付きがとても手慣れていて、解体慣れしていると思うくらいだ。

アースドラゴンのとてつもない固い鱗も全く意に介していない感じで、あっさりと解体していたし・・・

お姫様が魔獣の解体なんて普通するか?

しかも、「今夜はご馳走よ!」と言って、とても嬉しそうだったし・・・


この黒い剣はどうした?って聞いたけど、『うふふ・・・』って微笑んで『乙女の秘密よ』と言って教えてくれなかったな。多分、アレはアンの魔剣だろう。戦いではなく料理に使うなんてアンらしいって言えばそう思うな。


夕食はアンが歓喜していたドラゴンの肉を使ったステーキだった。

アンの言う通り、食べると言葉を失うくらいに美味しかった。味付けは塩と胡椒だけでシンプルだけど、焼き具合がとても絶妙で肉本来の旨味を全て引き出しているのでは?前世で食べていたドラゴンの肉は偽物?と思ってしまう程に美味しかった。

それに、正直、アンの料理の腕は神レベルだと思う。そんな料理を食べさせてもらえるなんて、本当に幸せだよ。

ラピスが出かけた際にエルフの里に寄って野菜や果物も大量に持ってきてくれた。

おかげで、昨夜の夕食は豪華だった。こんな贅沢をして良いのだろうかと思うくらいだったけど、どれも美味しかったので満足して食事を終えた。

ホント、こんな野営なんかしてるって他の冒険者が知ったら涙を流して悔しがるだろうな。完全にピクニック気分で泊まっているし・・・



朝食を済ませ、今はゆっくりと寛いでいる。

ラピスがお茶をいれてくれて、3人がソファーに座っている。

お茶もラピスがエルフの里から持ってきてくれた最上級のものだ。さすがハイエルフ、エルフの里では崇拝されているだけあって、高級品が簡単に手に入るみたいだ。

料理は全くダメなラピスだけど、お茶を入れるのだけは上手い。かつての魔王討伐の旅の時もラピスがお茶いれ当番だったし、ラピスのいれてくれたお茶は気分が落ち着くよ。


そうやって寛いでいたが、ラピスが立ち上がった。

「レンヤ、予想通りだったわね。ザガンの町の近くににグレンと魔法使いの女の2人が現われたと連絡があったわ。かなり疲労しているみたいだけど、そのまま町に入ってギルドに向かうのでしょうね。」


「そうか、現われたか・・・」


「レンヤさんに酷い事をしたんだから、私が代わりにお仕置きしてあげてもいい?徹底的にいたぶって最後は骨も残さずに・・・、ふふふ・・・」

アンがニヤッと笑っている。


「待て待て、アンの実力ならアイツら相手だと過剰戦力でシャレにならん。言葉通りに出来るだろうけど、今度は俺達がお尋ね者になってしまう。いくら相手が悪いといっても、俺が被害者になった証拠が無い。一方的な虐殺は逆に俺が悪者になってしまうからな。」


「そうか・・・、ゴメン、レンヤさんを殺そうとした連中だったから、殺すのは当たり前なんだけどね。その仕返しには婚約者の私も殺すのに参加するのも可能だから、私も徹底的にいたぶりたかったな。簡単に仕返し出来ないなんて、人族の社会って意外と面倒くさいのね。」


殺されそうになったから殺すってか?目には目をっていうのは分かるけど、当事者だけでなく身内まで参加出来るなんて一種のリンチじゃないか?魔族の仕返しの概念は恐ろしいよ。


「レンヤ、それなら、私がサクッと転移で行ってここまで攫ってきてあげましょうか?あの2人が町に戻らなければ、行方不明が2人増えるだけだからね。ぐふふふ・・・」

ラピスの目が怖い。


お前等、どうしてもあの2人を物理的に消したいのか?

いくらデスケルベロスの餌にされそうになって死ぬ寸前の目に遭ったけど、殺してやりたいほどあの2人には恨みは持っていないぞ。


俺が絡むとちょっと怖いぞ。


「まぁまぁ、落ち着け。確かに殺されそうなったのは確実だけど、俺自身が殺そうとまで仕返ししたいと思っていないからな。もうあの2人には関わりたくないのが本音だ。多分、お前達2人が一緒にいてくれたから、もう俺の心の中での区切りはついたのかもしれない。そんな奴等に構うよりもお前達と一緒にいたいからな。」


ポッと2人の顔が赤くなった。

「そこまで私の事を・・・」

「レンヤ、嬉しいわ。」


しかし、ラピスがちょっと不満そうな表情に戻った。

「だけどね、落とし前だけはしっかりと付けないといけないわ。冒険者は舐められると終わりだからね。レンヤが周りから腰抜けと思われるのは絶対に嫌だし、ここは私に任せてちょうだい。」


「分かったよ。ラピスに任せるよ。」


「ふふふ、ありがとう。」

そしてニヤリと笑った。

「プラン虐殺ジェノサイドからプラン社会的抹殺に変更するわ。バカな黒の暴竜よ、見てなさい・・・、死んだ方がマシと思えるほどの地獄を味あわせてあげるからね。誰に喧嘩を売ったのか骨の髄まで教えてあげるわ。」


(怖い!怖いぞ、ラピス!)


「ラピスさん、お手並みを拝見しますね。」

和やかにアンが微笑んだ。


(おいおい、アンも怖いよ。普通に和やかにする話じゃないだろう?)


「さて、そろそろ出発するわよ。レンヤが何食わぬ顔で現れたら、あいつ等どんな顔をするかな?ふふふ、楽しみね、アン。」


「そうね、こんなに楽しみなのは初めてね。本に出ていた『ざまぁ』がこの目に見れるなんて。ふふふ・・・」


(お前達、その笑顔が怖いよ・・・)






「はぁはぁ、もう少しで町に着くぞ。何で俺が御者の真似事までしなきゃならん。むかつくぜ・・・」


グレンとリズは休み無しで魔王城からザガンの町まで馬車で戻っていた。


「くそ!あの無能がいれば俺が馬車なんて動かす事なんて無かったのに。無能の割には色々と器用だったけどな。まぁ、今頃はヤツの腹の中か、最後に一番役に立ってくれたな。」


「そうね、無能の割には色々と雑用は出来たから楽だったけど、結局は無能だったからね。でもねぇ~、あの無能の最後の顔、『どうして?』って本当に情けない顔だったわ。今まで餌にした連中の中じゃ最高に面白かったわ。きゃはははぁあああ!」


「お前なぁ・・・、俺がどれだけ大変な思いで帰っていると思っているんだ。それをお前はずっと馬車の中で休んでいただけだぜ。覚えてろよな、後で足腰が立たなくなるまでヤッてやるからな!」

グレンがリズを見ながら舌なめずりをしていた。


リズも舌なめずりをする。

「いいわよ、私もアンタとしたくてウズウズしてるからね。アンタに抱かれると思うと体が火照ってくるわ。」


「まぁ、今はギルドに戻って、無能の見舞い金をもらわないとな。普通はすぐに出ないが、あのギルマスは昔っからの付き合いだからすぐに出るぜ。それに、死んだあいつらも結構ため込んでいたからな。全部俺が有効に使ってやるよ。当分は遊んで暮らせそうだぜ。」


2人はニタニタ笑いながら町に向かって馬車を走らせた。




「ギルマス!大変だぁあああああああああああ!」


グレン達が慌ててギルドに駆け込んできた。


「これはグレンさん、どうしたのですか?」


「あの魔王城はヤバイ!デスケルベロスが出た!しかも普通のデスケルベロスじゃねえ!メンバーが2人やられた!」


「何ですと!」

ギルマスが慌ててグレンのところまで走っていく。


「あれは普通じゃねぇ!魔剣がデスケルベロスに変化した。しかも、でか過ぎる!」


「そ、そんな化け物がいたなんて・・・、それじゃ、今まで帰って来なかった者は・・・」

冷や汗をかきながらギルマスがグレンの話を聞いている。


「あぁ、多分な・・・」


ギルマスがグレンの手をガシッと握った。

「だけど、君達は何とか戻って来た!魔王城の情報を持って帰ってきてくれてご苦労だった!報酬は弾むよ。」


グレンがニヤリと笑う。

「おぅ、頼むぜ。」


「レンヤさんは!レンヤさんはどうしたのですか!」

マナが慌ててグレンのところに駆け寄った。


「あぁ、あの無能か?あいつは死んだよ。デスケルベロスに食われてな。」


「そ、そんな・・・」

マナがフラッとよろけた。

「必ず帰ってくると約束したのに・・・、どうして・・・」


「アイツは俺達を逃がす為に自ら囮になったよ。無能はこんな事しか出来ないからと言ってな。俺は忘れないよ。あいつの勇敢な姿にな。」

「なぁ、リズ。」


「そうよ、無能とは思えない最後だったけど、よくやったわ。おかげで私達は生き残れたからね。」

リズも泣きそうな顔でマナに話しかけた。


「そんな、レンヤさん・・・」

マナが涙を流しながら崩れ落ちてしまった。


「グレンさん、彼は身元がハッキリしていますから、ギルドから家族へ遺族見舞金が出ますよ。お渡しするので、あなたから彼の家族に渡してくれませんか?」


泣いていたマナが突然険しい表情になった。

「ギルドマスター!それはおかしいですよ!普通は家族が住んでいる町のギルドの職員が持っていくのでは?冒険者に渡す話なんて聞いた事もないですし、それは規律違反では?」


グレンが苛立つようにマナの前に立った。

「ねえちゃん、これは特例なんだよ。ギルドマスターが決めたんだからな。受付嬢ごときが俺達に指図するな。」

そしてニヤッと笑った。

「よく見ると、あんた受付嬢にしておくのは勿体ないくらいのいい女だな。どうだ、俺の女にならないか?あんな無能のことなんか忘れて俺の女になれよ。」


「何を言っているのですか!」


「無能は死んだんだ。デスケルベロスに食われて無残にな。そういう事だ・・・」

グレンもリズもギルドマスターもニヤニヤしていた。


「あなた達、まさか・・・」


「無能はどんなに頑張っても無能だよ。俺の役に立てて本望じゃないのか?がはははぁあああああ!」


「レンヤさん・・・」

マナががっくりと崩れ落ち、再び涙を流した。




「ほぉ~、俺が死んだって事でえらく盛り上がっているなぁ~」




マナが慌てて声のした方へ振り向いた。


「レンヤさん!」


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