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175話 シュメリア王国へ

「勇者殿!」


シャルの父親である国王様が急いで俺『達』の部屋に入ってきた。

今はフォーゼリア城にある俺に当てがわれた部屋にいる。


まぁ、元々はシャルの部屋なんだけどな。

俺とシャルはまだ婚約までの状態なんだけど、シャルの希望もあって、俺が王城で滞在する時はシャルの私室は既に夫婦の部屋として使っている。

フランが一緒にいるから家族が一緒にいるのが当たり前だとシャルが頑張っていた。もう完全にこの城では夫婦の扱いになっているんだよな。


そして、フランの横にはヒスイちゃんも一緒にいたりして・・・


ヒスイちゃんもかなり俺にくっついていたからフランとはどうかな?と思っていたが、実際にフランと会ってみると心配する事は全く無かった。

あ互いに気が合うのか、すぐに仲良くなって今では夜は一緒に寝るまでの仲になっている。


フランに「大丈夫か?」と尋ねたけど、とても嬉しそうに


「ヒスイちゃんは可愛い妹みたいだから大丈夫!ユウ達はちょっとおませで生意気だからね。」


そう言って、それ以外にもヒスイちゃんの事をべた褒め状態だったな。


そんな様子を美冬さんがほのぼのとした目で見て、「みんなとすぐに溶け込んで味方になってもらえるのは完全に母親の血ね。」としみじみしていたな。


まぁ、あんなに仲良くなっているんだ。悪い事ではないだろう。


だけど・・・


時々2人で熱っぽい目で見られる気がするのだが・・・


フランはファザコンは確定しているが、ヒスイちゃんも何だ?妙に距離がとっても近い時があるんだよな。

滞在は一時的だよな?


(まさかずっと居座る事はないと思うが・・・)


嫌な予感ほど当たると言われているし、俺の嫌な予感は外れた事が・・・


(いかん!いかん!気にしたらダメだ!)



こうして俺達家族が部屋でのんびりしているところに国王様がいきなり入って来た訳だ。


基本的に部屋には鍵は掛かっていない。

扉の前に護衛の近衛兵が常に扉の前に立っているし、簡単には部屋に入れないようになっている。もし、不審者が強引に入ろうとすれば衛兵に取り押さえられるだろうし、すぐ近くには兵の詰め所があるから最悪の事が起きない限りは戸締まりの必要は無いからな。

そんな状態だけど、この国で1番偉い国王様が相手だとちょっと事情が違う。

国王様はシャルはとても大切にしていたし、その娘であるフランに対してはメロメロだ。事ある度に部屋に押しかけフランに会おうとしているんだよな。

相手は国王様だし、兵の権限で国王様を止める事は出来ない。いつもいきなり入ってくるからかなりビックリするよ。

まぁ、流石に夜などの非常識な時間に突撃する事は無いけど・・・



「父様!急に入ってこないで下さい!いくら急用でも女子がいる部屋なんですからね!」


こうしてシャルが怒るけど、最初の2、3回は注意して先触れを出したり護衛の許可を取ってから入って来るが、すぐにいつものようにいきなり入ってくるんだよな。


変に生真面目過ぎても逆に気を遣う事にもなるし、シャルも本気で嫌がって怒っている訳でもないからな。

フランもヒスイちゃんも嫌がっていないどころか、「おじいちゃ~~~ん」と言って抱き着くものだから、国王様が更にデレデレになって威厳も何も無い姿になっているのは黙っていよう。

フランは分るけど、ヒスイちゃんまで国王様をおじいちゃん認定している?

本格的に俺の子供としてずっと一緒にいるつもりなのか?


(まさかねぇ~~~)



「父様、それで今回はどのような用件で来たのですか?」


シャルがジト~~~~っとした目で国王様を見ているよ。


そんなシャルの態度でフラン達に抱き着かれてデレデレしていた国王様だったが、急に真面目な表情になって俺に視線を移した。

確か、俺の名前を呼んで入ってきたはずだよな?


「勇者殿、すっかり忘れていたわ!」


ちょっと照れ臭そうに頭をポリポリしているのだが、忘れるって事はそこまで重要な話ではないのでは?


「そうそう、やっとシュメリア王国の入国許可が出たぞ!」


(おい!)


とっても重要な話だろうが!

忘れて良いレベルじゃないぞ!


「あの国はかなり閉鎖的な国だからなぁ・・・、観光客や冒険者相手にはそう厳しくいないのだが・・・、我が国との交流はあまり無かったから、国の関係者の入国に関しては予想以上に時間がかかってしまったな。すまない。」


申し訳なさそうな顔で国王様が俺に頭を下げた。


「うちのシャルと婚約してしまったから勇者殿もこの国の王族の関係者になってしまったからのぉ・・・、大賢者様の仰る通り勇者殿は冒険者ギルド管轄の方が良かったかもしれん・・・」


「レンヤさん、私の我が儘で・・・」


シャルも一緒になって頭を下げてしまった。


「国王様、気にしないで下さい。元はと言うと、俺が1番悪いのですから・・・、お互いに合意とはいえ、大切な娘さんを俺が・・・」



「レンヤさん!ストップ!」



シャルが突然慌て始めた。


「あ・・・」


じ~~~っとフランとヒスイちゃんが俺達を見ている。


いかん!目の前には子供がいたんだ!

フランはもう大人の知識を持っているだろうが、ヒスイちゃんは間違い無く子供だ。そんな子供の前で話す内容では無いな。


しかしだ!


フランがニヤニヤしている。


「パパは男としてちゃんと責任を取ったんだから、私としてはそんなパパは偉いと思うよ。ママとそんな関係になって『お互いに知りません』って言えないよね?ママは私と同じでパパの事が大、大、大、大好きだから、遅かれ早かれ既成事実は作っただろうし、ママとしては婚約は願ったり叶ったりのはずよ。」


(あぁああああああああああああああああああああ!恥ずかしいぃいいいいいいいいいいいいいいいい!)


フランの奴!シャルの知識をまるっとコピーしているから、既に大人の知識はバッチリだよ。

しかもだ!

王族ってのは成人前の教育段階から男と女の性教育も行っているんだぞ!

そんな知識をフランが知らない訳がない!

子供の姿でこんな事を言われたら恥ずかしいったらありゃしない!


ヒスイちゃんだけは何がなんだか分らない顔をしているな。


フランよ!

頼むからヒスイちゃんには変な事は教えないでくれよ!


切に願う!!!



この話題は終り!

ちゃんと仕事の話をしよう!



シュメリア王国・・・


この国は帝国が歴史上1番弱体化した300年前に聖教国と同時に帝国から独立した国だ。

帝国の重鎮であった公爵家が、自分を王と宣言し領地を独立国にした。

その領地は帝国の穀倉地帯であり、とてもとても豊かな地域であった。しかも、巨大な湖もあり水源にも困ることも無く、帝国の搾取に我慢出来なくなり、独立するのも時間の問題だと当時の各国の王達は思っていたみたいだな。

そうして独立した国だったが、決して楽な独立ではなかった。


帝国にとっては国内でも特に豊かな地域だったし、そう簡単に独立は許すはすがない。

何度も戦争を仕掛けられたが、豊富な資金と反帝国の国々の協力で帝国の攻撃を凌ぎ切った。

フォーゼリア王国は当時から大陸一の国となっていて、下手に軍事介入してまうとマズいとの判断から中立の立場を取っていた。

この事がシュメリア王国にとっては気に入らなかったみたいで、帝国とは和解した今でもこの国とは仲が悪いみたいだよ。


そんな訳でこの国の王族の身内となった俺もなかなか入国に手間がかかってしまった。


本来なら馬車か徒歩でしか移動手段はないのだが、俺達にはティアという存在がいる。最悪の場合はティアに頼んで空を飛んでもらってシュメリア王国を横断する事も可能だが・・・

だけど、この方法は勝手に無断で相手国の領土を通過した事になるので、バレた場合は下手すれば国際問題になる可能性もあることから、今回はしっかりと手続きをとり、堂々と入国するつもりだ。



それに・・・


シャルがうっとりとした目である1冊の本を眺めている。


「レンヤさん、私ね、あの国の王都ローランドへは1度は言ってみたかったの。」


今では王都となってしまったが、500年前の時は公爵家の城が立っていた都市だった。

湖の中にある大きな島に都市があって、美しい湖と白亜の城との対比がとても美しく、当時から観光地で有名だった。今でもかなりの観光客が王都に訪れている。


シャルも憧れの場所だったし、それに・・・


この世界の観光に(表向きは)お邪魔した美冬さん達も連れて行きたいと、ラピスとソフィアが言っていた。俺もあの都市なら見た目も料理も一級品だし、絶対に満足する場所だと思う。

ちゃんと訪問して滞在するから、王族のシャルも一緒だから正式な入国手続きを行った訳で、許可が出るのに時間がかかってしまった。


「レンヤさん、とっても楽しみよ。転移の座標さえ確定させられれば、次からは面倒な入国手続きもしないで遊びに行けるし、転移であっという間に街中だしね。」


「おいおい、シャルよ・・・、仮にも儂の娘なんだし、国王である儂の前で不法入国の話をするとマズいぞ。」


国王様の立場だとさすがにこれは認められないだろうな。


だけど、そんな国王様の腕にフランとヒスイちゃんが抱き着いた。


「ねぇ、おじいちゃんも今度一緒に行こうよ。おじいちゃんと手を繋いで一緒に並んで観光したいな。」

「うん、私もお姉ちゃんと一緒に行きたいよ。もちろん、おじいちゃんも一緒だよ。」


「そうか・・・」


国王様がデレッとした顔になったぞ。


「そ、そうだな・・・、お忍びでお前達と一緒に行くのも悪くないな。バレなきゃいい訳だし、それならいつでも好きな時に遊びに行けるな。がはははぁああああああ!」



(おいおい・・・、国王様、チョロ過ぎないか?)



国王としての立場よりも、孫と一緒に遊びに行く事が優先か?



「ふ・・・」



あのフランとヒスイちゃんの笑顔を見れば、どんな人でも断れないな。


(ある意味、最強の2人だよ。)




ちなみに美冬さん達は・・・


ラピスとソフィアの案内で、この国の王都を連日絶賛観光中だったりする。


(観光って確か表向きの理由だっただろ?でもなぁ、本気で楽しんでいるみたいだ。)



まっ!楽しんでいるから良しとするか!


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