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173話 ドラゴンの山⑤

「あなただけには本当の事を話すわ。今までの話はこの世界に来る口実だけど、本当は違うの。」


美冬さんが今までとは全く誓う雰囲気で話してきた。


(どんな裏事情があるのだ?)


「私達の世界から逃げ出した3柱の魔神の事は知っているわね?」


「えぇ・・・」


「その内の1柱は既にあなた達が倒した事は知っているわ。その事は私の旦那が予知していたの。かなり極端な未来の分岐が見えたって言っていたけど、結果的に最適な未来へと進んだ事でホッとしていたわ。」


「予知ですか?あのヴリトラとの戦いを?」


「そうよ。かなり大変だったみたいね。でも、あなたは勝てた。だけど、今度はそういかないみたいなの。」


「どういう事です?」


「今のままではあなたは勝てない。いえ、勝つには代償が大き過ぎる事になるの。それこそ国一つを滅ぼすまでの激しい戦いになってね。」


「そ、そんな事が?」


「そう、あなたの力はもうそこまで強大になってしまったの。今度の相手はそれだけの力を出さないと勝てない、いえ、相手はそれを見越してあなたを勇者から文字通り『破壊神』にさせようとしているのよ。この世界を守る勇者は実は全てを破壊する者だと、この世界の人間に知らしめる為にね。勇者の社会的抹殺、それが奴等の目的よ。そして、その準備も済んでいるようだわ。」


(マジかい・・・)


「あなたを助ける為の鍵が冷華と雪なのよ。実はもう1人いるけど今回は別の用件で手が離せないから、代わりに私が来たって訳よ。まぁ、彼女と私が入れ替わっても未来は変わらないから安心して。私達は手助けはするけど、決着はあなた達の仕事だからね、それは忘れないでよ。私達3人はフローリア達ほどには神界の制約を受けないから、当分は一緒にいても大丈夫だからよろしくね。」



(いやはや・・・)



今回はティアの故郷であるドラゴンの山に来たのだが、まさかのまさか!フローリア様に会うし、ソフィアの師匠や知り合いに会ったりと・・・、しかもだ、こうして会ったのも例の魔神絡みだったりで、話が急展開し過ぎてちょっと頭の理解が追い付いていないぞ。


だけどハッキリしているのは、奴等が俺を狙って本格的に動き始めた事だ。

俺達はダリウスの使徒でもある魔王を倒すのだから、相手も俺達に黙って倒されるのを待っているはずが無い。

それどころか、俺達を排除しないとあいつらの都合の良い世界には出来ない。

かつての戦いは女神様と邪神の代理戦争みたいな勇者と魔王の戦いだったが、今回はそういう訳ではない。

文字通り神と神との最終決戦になるのだろう。

お互いの陣営の存亡にも関わってくるので、相手も一切の妥協が無いのが分る。

前回のヴリトラとの戦いは辛うじて俺が勝てたが、次も必ず勝てる保証もない。いや!相手は腐っても神だ!正直、俺達の方が分が悪いだろう。


(しかもだ!)


美冬さんの話の中でもあったが、俺の勇者としての立場を地に落とす計画もあるって・・・

正直、予知で未来が分かっているなら、神様なんだし完璧な対処法を教えて欲しかったよ。

例え神様でも全てが完璧なのは無理なんだろうな。


まぁ、神様に頼りっきりにならず、自分達の世界の事なんだから、自分達の力で道を切り開けって事なんだろうな。


(世の中、そんなに甘くない事は実感したよ。)


それでも、美冬さんの冷華さん、雪さんの協力がいただけたのには感謝しかない。

ソフィアと同等のレベルの2人だろう、俺もしっかりしておかないと、失望されソフィアに恥をかかす訳にいかない。

何か妙なプレッシャーを感じるよ。




バサッ!


空から大きな音が聞こえた。


音の鳴った方へ首を向けると・・・


「おぉおおおおおおおおおおお!」


ティア以外のエンシェントドラゴンが浮いている。

いや、1体は3体が浮いている下にある草原にいた。


かつて遭遇した事のあるシルバードラゴンにゴールドドラゴン、そして少し小さい個体だがホワイトドラゴンの3体が浮いていた。


草原にいるのは・・・


文献の挿絵でしか見た事は無かったが、ドラゴンというよりもとても長いヘビのような透き通る青色のドラゴンがいた。


(これはリヴァイアサン?)


初めて見たが、とてつもなく長い胴体だ。

体中にはヒレのようなものがあって、海竜と呼ぶに相応しい威厳を感じる。


そんなエンシェントドラゴンが勢揃いとは・・・

あまりの迫力に思わず身構えてしまう。



「ご主人様、心配するな。奴らは挨拶に来ただけで戦う意志はないぞ。」



ティアが俺を見てニッコリと微笑んだ。

その腕に抱かれているヒスイちゃんもニコニコと笑っている。



カッ!



4体のエンシェントドラゴンが輝き、光が収まると・・・


4人の男女が立っていた。


上半身裸の筋肉モリモリ金髪刈り上げの男。

何だろう?とっても庶民的でまさにお母さんと呼べるようなふくよかでニコニコしている女性。街中でどこでもいるようなおばちゃん姿だ。

ヒスイちゃんよりも少しお姉ちゃんぽいけど、胸だけがティア並みにあるロリ巨乳な女の子。

男?女?中性的な美しい顔で空色の長髪をなびかせた人。


そんな4人が俺達の前に立っていた。


4人が一斉に片膝を着き頭を下げた。


「「「「神龍様にお会いする事が出来まして、これ以上の幸せはありません。」」」」


キレイにハモった。

しかし、当のヒスイちゃんは何がどうだか訳が分からない顔をしていたが・・・



・・・



「がはは!これは失礼いたしました!」


金髪刈り上げのマッチョマンが豪快に笑っている。


「それにしても、ティアマット様が無事に戻ってきてくれて本当に良かったです。あの竜神王に誰も逆らえなかったもので、彼女が私達をこの山から逃がす為に、あえて竜神王に従うフリをして時間を稼いでくれました。おかげで、我々エンシェントドラゴンはこの山から一時的に逃げられたのです。」


「バハムートよ、我のいない間の管理はご苦労だった。だがな・・・」


ティアがギュッと俺に抱きついた。


「我は番を見つけたから、もうこの山にはおられん。だからな、バハムート、これからは貴様が竜王だ。ドラゴン族の事は任せたぞ。」


「はぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~」


バハムートと呼ばれたマッチョマンがとても変な顔をしているよ。


「ティアマット様、本当に番を見つけたのですか?冗談ではなくて?いくら何でも今まで女らしい事を全くしてこなかったあなた様が?」



グイ!



ティアがバハムートの肩をグッと鷲掴みにして、真っ黒なオーラを出している。


「あ”あ”!誰が女らしくないって?」


バハムートさんの全身から大量の冷や汗が流れていた。



ズルズル・・・



バハムートさんがティアに引きずられ神殿の中に消えた。


・・・


何かこの世のものでない悲鳴が聞こえたが、気のせいだろう。

みんな入り口から目を逸らしていた。



「主人は本当に脳筋でバカだから・・・、おほほほ・・・」


ファフニールと自己紹介を受けたシルバードラゴンが俺に引きつった笑い顔で対応してくれた。

バハムートさんとファフニールさんは夫婦なんだ。

エンシェントドラゴンも人間と同じように夫婦の概念があるのだな。

そうだよな。でないとティアも俺と結婚しようとは言わないよな。


「へぇ~、あんたが例の勇者なんだ。」


ロリ巨乳な女の子が俺の顔をまじまじと見つめている。

この子はエキドナと自己紹介を受けた。

ホワイトドラゴンが人化したらこうなるとはギャップが激しい。

シルバードラゴンのファフニールさんもギャップに関しては似たような感じかもな?

ティアも美人だし、エキドナさんも見た目は幼いけどとんでもなく可愛い。多分リヴァイアサンさんもとても整った顔だ。

今はティアにしばかれて神殿の中で瀕死になっているだろうバハムートさんとファフニールさんは、美男美女との組み合わせではないけど、とても親しみやすいカップルだと思うな。

ギャップでいえば、この2人が1番激しいかもしれん。


(おっと!ちょっと考え込んでしまった。)


ジッとエキドナさんを見つめたようになったから、彼女の顔が少し赤い気がする。

マズいな、もしかして誤解されたかもしれん。


「私を見つめてくれるって、もしかして私に気がある?」


(いやいや!それは無いです!)


「ティアマット様が気に入った男なら私も気になるわ。ついでに私も一緒にどう?見た目はこれでもちゃんと子供は産めるからね。人間の一生くらいの時間なら私にとって一瞬のようなものだし、それまでは人間の暮らしも悪くないかと思っているのよ。」


そう言ってウインクされたけど、正直、これ以上はもう妻を増やす気は無い。


「申し訳ないけど・・・」


そう言いかけた瞬間、


「パパは渡さないからね!」


ヒスイちゃんが俺の腕に掴まった。


「はい?」


思わず変な声が出てしまう。


(俺がパパ?)


ヒスイちゃんをジッと見つめると、彼女はとても良い笑顔で微笑んだ。


「うん、ここにいる間はパパと思っているからね。だって・・・」


「ちょっと待ったぁああああああああああああああああああ!」


ラピスがダッシュで接近し、いきなりヒスイちゃんの口を塞ぎ連れ去ってしまった。


(何があった?)


かなり離れた場所でラピスがヒスイちゃんと何か話をしている。

そのヒスイちゃんはラピスの言葉にうんうんと頷いているが、どのような話なのかここまでは聞こえてこない。

だけど、時折、ヒスイちゃんが俺の方に向いて手を振ってきた。

その度にラピスが頭を抱えていたが・・・


(何かあの2人を見ていると母娘に見えるよな。ラピスも良い母親になるだろう。)



しばらく2人が話をしていたが、それからは仲良く手を繋いで俺の方へと戻ってきた。

特にヒスイちゃんは嬉しそうだ。


「ねぇ・・・」


少し照れくさそうにヒスイちゃんが上目遣いで俺を見ている。



(う!こ、これはヤバい!)



あまりの可愛さに思わず鼻血が出そうになったが、鉄の意志で流血を阻止した!

我ながらとても良くやったと自分自身を褒めてやりたい。


そして、俺は決してロリコンではない!


そう自分に言い聞かせている。


「パパ、大丈夫?」


(まただ、俺をパパだなんて・・)


「だ、大丈夫だよ。でも、何で俺がパパなんだ?」


「それは私が説明するわ。」


ズイっとラピスが俺の隣に立って腕を組んできた。


「ヒスイちゃんも美冬様達と一緒にしばらくこの世界に滞在する事になったのよ。神竜としてそろそろ外の世界を学ぶ段階になったからというのもあるけどね。」


「だからって、お前が何で俺にくっつくのだ?」


「それはね!」


ラピスが嬉しそうにヒスイちゃんと目を合わせると、2人が頷いた。


「ヒスイちゃんがいる間は、レンヤと私がヒスイちゃんのパパとママになるのよ。」


(はい?)


「うん!そうだよ!」


そう言ってヒスイちゃんが俺とラピスに抱き着き、嬉しそうに頬をスリスリとしている。


まぁ、こんな小さな子だし、実の親から離れるのはしばらくの間でも淋しいだろう。

ここにいる間くらいなら親代わりになっても良いかもしれん。


でもなぁ~、フランからヤキモチを焼かれそうだよ。

いや!あの子なら確実だ!


(頼むからヒスイちゃんと仲良くしてくれよ。)



ズゥゥゥンンンンン・・・



う!ある一角だけがとてつもなく暗い!

既に瘴気でも発生しているのではないか?と思う程に空気が淀んでいる。



そこには・・・



アンとソフィアの2人がこの世の終りのような顔で拗ねていた。


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