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170話 ドラゴンの山②

「それにしても、いつ見てもご主人様達は我を驚かせる事しかしないな。」


ドラゴンマウンテンを背にティアが俺達を見ている。

その後ろには俺達の家があった。


「移動は転移魔法をホイホイと使うし、あの巨大な家さえも収納魔法で軽々と移動させる。我にも使えない伝説の魔法をここまで手軽に使う感覚が理解出来んわ。主やご主人様も含めここにいる連中は、もうこの世界では敵なしではないのか?あの竜神王さえも倒してしまったからのぉ・・・」


まぁ、このドラゴンマウンテンは前世の時に来たこともあるから、麓までの移動は転移で軽々と出来た。フォーゼリア王国の王都からだと、まともに馬車で移動するものなら2ヶ月近くはかかるだろう。

ティアのドラゴン形態でも飛び続けて1週間はかかると言っていた。

それを一瞬で移動だしな。驚くのも無理はない。


それに、あの携帯式移動家はティアが一番驚いていたな。

あのいつも強気のティアがあんぐりとした顔で家を見上げていたのにはな。その時の顔を思い出すとちょっとにやけてしまう。


そんなティアだったが、驚いたのは最初だけで、すぐに転移魔法と収納魔法を教えてくれとラピスに懇願していたな。

この魔法はかなり高度な魔法だけど、元々が魔法に関しても規格外のティアだ、そんなに時間をかけずに覚えると思う。

そして、俺に報告して褒めてもらおうとしてくるのだろうな。

そんなティアを見ていると可愛いと思う。何かテレサのような妹が1人増えたような感じだよ。実年齢はみんなの中では最高齢だけど、精神年齢は以外と低いかも?

だからといって幼稚な訳ではない。以前の生活ほとんどがドラゴンの山に引き籠もっていたから、少し世間知らずなだけだろう。

そんな問題は妻連合の協力で何とでもなると思う。


(みんな頼りになるな。)



「さて、馬鹿正直に足で登る事はしないぞ。我の背に乗せて一気に頂上まで行くとする。」


確かにそうしないと無理だろうな。

いくら時間がかかっても徒歩で登り切りたいと思う変態は俺達の中にはいない。


(いたらいたで、とっても困るだけだけどな。)


チラッとソフィアと目が合ってしまったが・・・


「残念・・・、最近は運動不足だったから少し鍛えたいと思っていたのに・・・」


そんな事をブツブツ言っているよ!


(マジかい!ここに変態がいた・・・)



「それでは出発するぞ。」


ティアの全身が輝き光が収まると、そこには巨大なドラゴン姿のティアがいた。


俺とアン、ラピスの3人がティアの背に乗る。

今のドラゴン姿のティアならソフィアにシャルやテレサ、マナさん達が一緒に乗っても十分に余裕のある大きな背中だけど、最低限の人数で行く事にした。

いきなり大人数で押しかけても相手に迷惑になるだろうし、それに俺達には転移の魔法がある。一度行って座標さえ確定出来れば、いつでも何人でも行く事は可能だからな。



しかし・・・



「レンヤさん、私だけ走って登ってみたいけど良いかな?」


(おいおい・・・)


ソフィアがとんでもない事を言い出したぞ。


「大丈夫か?」


「大丈夫よ。」


そう言ってソフィアがウインクをする。

まぁ、ソフィアに関しては万が一も無いと思うが、それ以上に心配な事がある。


「やり過ぎるなよ。」


「大丈夫!大丈夫!ちょとマラソンの感覚で走ってみるからやり過ぎないわよ。本場のドラゴン達に私の力がどこまで通用するか試してみたい気もあるのよ。」


何だろう?この山に住むドラゴンやワイバーン達に申し訳なさそうな気がしてきた。


(絶対に何かやらかす予感がぁぁぁ・・・)


そんな俺の気持ちに気付かず嬉しそうに準備運動をしていた。


「それじゃ先に行くわね。」



ドン!



ソフィアが一瞬で俺達の視界から消えた。どんなスピードで走っているんだ?

土煙を巻き上げながら走っているみたいなので、ソフィアの場所がすぐに分った。


(おいおい・・・、あれが人間の走る速度か?)


あっという間に麓に広がる森の中に入っていき・・・



GYAAAAAAAAAAAAAAA!



KUEEEEEEEEEEEEEEE!



GAAAAAAAAAAAAAAAA!



等々と・・・


ドラゴンやワイバーンが悲鳴を上げながら次々と森の中から飛び出している。


(あいつは何をしているのだ?)


そのおかげでソフィアが森の中のどこにいるか分けるけどな。

森の中でも相当に深い場所まで辿り着いているみたいだ。


「ソフィアさんも豪快ねぇ~~~」


アンが呆れた感じで森を見ている。


「どうやら、進路上にいるドラゴンやワイバーンを蹴散らしながら走っているみたいだな。本当に人間かと疑いたくなるよ。」


「それをレンヤさんが言うの?」


アンがクスクスと笑っている。


『ご主人様よ、我もそう思うぞ。ご主人様が1番規格外の人間だと思うからな。』


ティアにも言われてしまったよ・・・


本来、ドラゴン姿のティアとの会話はティアが上手く喋られない感じだった。それをラピスが流暢に喋る事が出来る魔道具をティアに渡してくれたおかげで、今は普通に会話も出来るようになった。


(ラピス様々だね。)


話を元に戻すが、俺自身はそこまで人間離れしてないと思っていたが、どうやらアンとティアは違うと思っているみたいだ。

ティアの上から家の前にいるみんなを見て、そんな事は無いだろうと目で訴えたが・・・


サッと全員が俺から目を逸らしたよぉおおおおおおおおおおおおおお!


「そこまで俺って規格外なのか?」


全員がうんうんと深く頷いた。






バサッ!


ティアが翼を大きく広げ空に飛び立った。


「それじゃ、私達は迎えに来るまで中で繕いでいるわね。」


マナさんがみんなの先頭に立ちニコニコと手を振っている。

みるみるとみんなの姿が小さくなった。



『ご主人様よ、ソフィアがもうあそこまで進んでいるぞ。』



しばらく飛んでいるとティアが俺に話しかけてくる。

まさか?と思いティアの首が向いている方へ視線を移すと・・・


・・・


「マジかい?」


麓の森林地帯を抜け、既に中腹の岩場地帯を走っている光景が確認出来た。

ソフィア自身を見かけた訳ではないが、想像以上のスピードで土煙が頂上へと向かって進んでいるのが見える。


「予想以上のスピードだよ。」


「そうね・・・、このままだと本当に1人で頂上まで行くかも?」


「あっ!」


思わず声が出てしまったが、ソフィアの快進撃は止らない。

ソフィアの前に5メートル以上のアースドラゴンがいるのが見えた。そのアースドラゴンを跳び蹴りの一撃で空中に放り投げてしまった。


『アレじゃドラゴンスレイヤーではなく、ドラゴンジェノサイダーじゃな。我との模擬戦もあれで本気では無かったようだ。我の世界最強の称号が霞んでしまうわ。』


ドラゴン状態のティアの表情は普段は分らないが、今のティアの表情は呆れているとすぐに分ったよ。

ただ強いだけじゃなくて、ドラゴンをも軽く凌駕する身体能力、一体、どれだけの事をすればここまでになるのか?


(俺の為にここまで頑張ったソフィアはずっと大切にしないといけないな。)



気が付いたらソフィアはいつの間にか6合目の辺りまでさしかかっていた。

ここから先が万年雪地帯だし、さすがにソフィア1人で行かせる訳にいかない。あんなスピードで走っているのだから、速攻で雪崩が起きて巻き込まれてしまうだろう。


いや?


ソフィアなら雪崩さえも拳圧で真っ二つに裂いてしまうのでは?


(あり得る・・・、いや!絶対にやるぞ!)


「レンヤさん・・・」


アンが少し引き攣った感じでじっと俺を見ている。


「そろそろソフィアさんをここに戻さない?アレは走る環境破壊よ。ドラゴン達が怯えてあの山から出て行ってしまうと思うわ。」


俺もそう思った。


【ソフィア?】


念話で呼びかける。


【レンヤさん、どうしたの?】


【やり過ぎだ、そろそろ戻って来い。】


【えぇぇぇ~~~、これから本番だったのにぃぃぃ~~~】


ブーブーと不満たらたらの声が聞こえる。


【止めてくれ!これ以上やったらこの山から出入り禁止にされてしまうぞ。】


「なぁ、ティア?」


そうティアに声をかけるとうんうんと頷いていた。


【分ったわ。それじゃどうするの?】


【大丈夫だ。ソフィアの場所は分かっているから、今からそっちへ行く。すぐ上を飛ぶから、そのまま飛び乗ってくれ。問題無いな?】


【もちろん大丈夫よ。それじゃ待っているわね。】


【OK!了解!】



「そうい事だ、ティア!頼んだぞ。」


『ご主人様、任せろ!』


ティアがグッと高度を下げソフィアのいる場所へと向きを変えた。

そのままソフィアのところへと飛んで行く。

すぐ近くまで辿り着いた。



スタッ!



俺達の後ろにソフィアが立っている。


(相変わらずの身体能力だよ。)


それにしても・・・


ソフィアってかなりの脳筋キャラになっってしまったよなぁ・・・


だからといって、教会では昔のように聖女として完璧に仕事をこなしているんだよな。

静かに佇んで微笑むと、THE・聖女そのままだ。

500年前の1年間の旅でのソフィアのイメージが強いから、ソフィアが肉弾戦が得意なのは今でも少し違和感があるんだよな。


そんなお転婆なソフィアもソフィアには変わらない。

そして、安心して俺の背中を任せられるよ。


ジッとソフィアを見ていると・・・


「ん?レンヤさん、どうしたの?」


「いや、昔のソフィアの事を思い出していた。あの時も美人だったけど、今は比較にならないほどに綺麗になったって改めて思っただけだよ。」


ボン!とソフィアの顔が真っ赤になる。


グイッと急に耳を引っ張られた。


「レンヤさん・・・」


少しどす黒いオーラを放ちながらアンが俺の耳を引っ張っている。


「隣に私がいるんですよ。レンヤさんには少しばかりデリカシーってものを教えた方が良いかしら?」


ギリギリと耳を引っ張る力が強くなってくる。


「い、痛い!アン!ギブ!ギブアップ!」


アンがすぐに耳を離してくれたけど、まだヒリヒリする・・・


「次は私の事を褒めね。」


そう言ってアンが俺へウインクをしてきた。



『主にご主人様よ・・・、痴話喧嘩するなら我の背の上では勘弁してくれ。気が付いたら我が消し飛ばされていたらシャレにならん。』



「す、すまん!」

「ご、ごめん!」


俺もアンも真っ赤な顔になってしまっている。

そんな俺達をソフィアがニヤニヤした顔で見ていた。



『そろそろ雲の結界に入るぞ。しばらく周りは何も見えないが心配するな。』



(お!もう頂上近くなのか?)


そう思った瞬間、視界が真っ白になった。

とてつもない濃い霧に覆われている感じで、すぐそばにいるアンとソフィアが辛うじて見えるくらいだ。

1、2メートル先も全く見えない。


(コレが人間が誰一人入れない結界か?)


確かにここまで濃い霧だと真っ直ぐに歩いているかも分らない。、

しかも、この霧には方向感覚を狂わせる魔力を感じる。

誰も頂上に辿り着けない理由が分ったよ。



『そろそろ出口だ。』



その瞬間、白一色の世界が開け、目の前には真っ青な青空が広がっていた。



その眼下には・・・



「何て綺麗な景色なの・・・」


「まるで海の中に浮かぶ島のようね、」


2人がうっとりとした表情で目の前の景色を眺めていた。



眼下には一面真っ白な雲が広がり、まるで海のよう見える。

これが『雲海』というものか?

その雲海の中にドラゴンマウンテンの頂上が、まるで島のように浮かんでるように見えた。


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