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169話 ドラゴンの山①

翌々日の朝・・・


「レンヤ君、もっと楽にしていいのよ。」


ソファーでマナさんに膝枕されていて、そのマナさんが嬉しそうに俺に微笑んだ。

マナさんの掌が俺の髪を優しく撫でている。


「最近はギルドが忙しかったからレンヤ君成分が枯渇して大変だったのよ。」


(俺成分って・・・)


マナさんだけでなくアンやシャルもよくこの単語が口から出てくる。

おっと!テレサもそうだ。フランも・・・、それに、ローズもラピスも・・・


(おいおい、全員のような気がする。)


みんなが言っているから気になるし、ちょっと確認してみたくなった。


「マナさん」


「何?」


「マナさんがよく言っている俺成分って何だ?そんな変わったものは放出していないはずだけど。」


「もぉ!」


クスクスとマナさん笑っている。


「そんな事は気にしなくて良いのよ。私達のやる気のバロメーターみたいなものだし、レンヤ君は変なところで真面目ね。まぁ、そんなところも私がレンヤ君が好きな理由の1つだけどね。」


今後はムニムニと頬を揉まれた。


「本当にレンヤ君は可愛いわ。誰にも渡したくないほどにね・・・」



ゾクッ!



いかん!マナさんの目がマジだ!

マジというより、マナさんの目の奥に真っ黒などす黒い闇よりも深い漆黒な嫉妬の炎が見るような?


(気のせいか?)


しかし、そう思った瞬間、マナさんの目のハイライトが元に戻る。


「ふふふ、冗談よ、じょ・う・だ・ん・・・」


パチンと可愛くウインクされた。


(いや・・・、今のは絶対に冗談じゃないと思う。)


朝食まで時間があったから部屋にいると、マナさんがコッソリと俺のところへ来ていた。部屋に入るなりマナさんが俺に甘えてきた。2人っきりになるといつも俺を膝枕して、頭や頬を撫でたりしてとても嬉しそうだ。俺を膝枕する事がマナさんにとっては最高に嬉しいのだろうな。

しかし、どちらかというとだ、俺の方がマナさんに甘えさせてもらっているのが正解だ。

マナさんは俺をとことん甘やかさせてくれるんだよな。かつての弟さんと俺を重ねているのは間違いないけど、もう俺は18だぞ!あと数ヶ月で19歳になるし・・・

俺がそんな歳になっても関係なく甘えてくるのが本当に嬉しいみたいだ。


(しかしなぁ・・・)


マナさんは俺に幼児みたいな事をさせようとしてきた時は焦った。

そんな事をされる(俺限定に限るが!)と庇護欲が最高に燃え上がるとの事だが・・・

世間では幼児プレイをしたがる変態貴族がいるとローズから聞いた事があった。娼館の客の中でそんな性癖の人間は1人か2人は確実にいるってな!俺はそんな事は絶対にしない!そんな事をすれば羞恥で確実に死ねる!


「2人っきりの時は私の事はお姉さんでなくママと呼んで欲しいな・・・、レンヤ君を赤ちゃんと思えば本当におっぱいが出るかも・・・」


とまで言われているんだぞ!


俺ってマザコンに見える?


いやいや!そんな事は無い!


いくらマナさんでも幼児ママプレイだけは勘弁だよ!



そんな訳でマナさんの膝枕で俺が甘える事で満足してもらっている。

マナさん希望の幼児プレイはさすがに拒否するぞ!



(だけど・・・)


こうしてマナさんの膝枕も最高に気持ちがいいんだよな。

ラピスの次に気持ちよくいられる。そして、俺の顔や髪をスリスリしてくすぐったいけど、マナさんの愛情が伝わってくるのでなすがままにされてしまっている。


「ホント、マナさんと2人っきりだとダメ人間にされそうだよ・・・」


「いいのよ・・・、あの時言ったわ。レンヤ君は何もしなくても良いの。私が養ってあげるってね・・・」


「そんな事があったな・・・、あの時は俺がマナさんに勇者と鑑定してもらった時だった。今でも忘れないよ。マナさんの弟になって欲しいと言われた事はね。」


「恥ずかしいな・・・、でも、レンヤ君は私を家族にして欲しいと願いを叶えてくれたわ。私はレンヤ君の姉として・・・、妻として・・・」


マナさんが屈んで顔を近づけてくる。



チュッ!



軽くキスをされてしまった。


俺の顔のすぐ近くでマナさんがにっこりと微笑んでいる。

とても優しい笑顔で、まるでフローリア様の微笑みのように慈愛に満ちている笑顔だ。

こんな笑顔をされたら、俺もドキドキしてしまう。



「私を幸せにしてくれてありがとう・・・」



「いや、お礼を言うのは俺だよ。あの無能と呼ばれた時はどれだけマナさんに元気づけられたか・・・、マナさんがいなかったら多分、俺は勇者の試練を乗り越えられなかったかもしれないよ。マナさんおかげで今の俺がいると思うよ。」


「ふふふ・・・、そう言ってくれるとお姉ちゃんに冥利に尽きるわね。嬉しいわ・・・」


再びマナさんの唇が近づいてくる。




バン!


「お~~~い!ご主人様ぁああああああ!」


ドアが開きティアが飛び込んできた。


ジト~~~~~~~~~~っとした目でティアが俺達を睨んでいるよ。


(ははは・・・)


「我が早起きして主と一緒に朝食の用意をしていたのに・・・、それをご主人様はぁぁぁ・・・」


ズカズカとティアが俺達のところまで近づいて来る。



「マナよ、我にも膝枕を頼む!」



「ふふふ・・・、ティアも甘えん坊ね。」


俺は起き上がりマナさんの反対側のソファーに座った。

そのままティアがマナさんへとダイブし、頭をマナさんの太腿に乗せ幸せそうな顔をしている。


「マナよ・・・、極楽じゃ・・・」


「お疲れ様。もうすぐ朝食だからそんなに長く休めないけど、出来るだけ甘えてね。」


マナさんがティアの頭を優しく撫でている。


うっとりとした表情のティアをマナさんが優しく見つめていた。




何故、俺の目の前でこんな事が起きているのかというと・・・


ティア自身はドラゴンが本当の姿なので、今のような人の姿となって生活するには常識というものがかなり欠けている。

その事はティア本人もよく分かっていたのが、さて?誰がティアの教育をするのかになった訳だ。

そんなティアの教育係として立候補したのがアンだった。

ティアはアンを『主人』として絶対的に服従しているし素直に言う事を聞くだろう。それと、メイド服も気に入って普段着としているから、アン専属のメイドとして頑張る事になった。


さすがにいきなりメイドは無理だったので、俺の妻として家事はアンとマナさんか教える事になった。

料理はアンの独断場みたいなものだから、ティアがアンから料理を色々と習っている。

エメラルダもアンの専属メイドとして頑張っているし、ティアとエメラルダが仲良く仕事をしているから安心だよ。

残念なキャラのティアだけど、基本的にはかなり真面目な性格だったと分った。

おかげで変なプライドも無くみんなとすぐに打ち解けて、仲良く生活しているのは助かるよ。

昨夜のアンは俺と一緒に寝ていたが、朝食の当番だったので先に起きて部屋を出て行き、ティアはアンと一緒に朝食の準備をして、俺を呼びに部屋に来た訳だったりする。


(まさか、マナさんとイチャイチャしているところを見られるなんてなぁ・・・)


かなり恥ずかしかった。


マナさんはティアの掃除や身の回りの世話を教えているんだよな。

ちなみにだ、ラピスもティアの教育係をしている。そちらの方は知識の教育だ。

元々が人間よりもハイスペックなドラゴン族だけあって、みるみるうちに知識に礼儀作法、家事などを覚えていった。


そんな中で、ティアはマナさんに甘える事を覚えてしまったのだよなぁ・・・


最強と言われずっと孤独な生活をしていたティアだった。

そんな生き方からいきなり俺の妻としてみんなと生活を始めた訳だが、好奇心旺盛だし何でもそつなくこなせる器用さも持っている。

そんな中で、ある日、俺がマナさんに膝枕されているのをティアに見られてしまったのだよな。

知識の中でティアは膝枕の事は知っていたが、実際にされたこともしたことも無かったので、マナさんがティアを膝枕したら・・・



「こんな気持ちになるとは・・・、我の人生でご主人様と添い寝する次に心が落ち着く・・・」



そんなティアをマナさんが優しく撫でていたけど、その時にティアがポロっと涙を流していた。


「我には家族の記憶が無い・・・、生まれた時から孤独だった・・・強くなれば強くなるほどに更に孤独になった。」


そんなティアの手をマナさんが握ってにっこりと微笑んでいる。


「ティア・・・、私の事はお姉ちゃんと思っていいからね。あなたと私達はもう家族よ、だから甘えたくなったらいくらでも甘えてちょうだいね。」


コクンとティアが頷く。


マナさんのお姉ちゃんパワーにティアが陥落した瞬間だった。


それからだよな、ティアがみんなとの仲がとても良くなった気がする。

まだ俺達と一緒になって数日しか経っていないが、完全に俺達の中に溶け込んでいるよ。



2人と一緒にダイニングへ行き、みんなと朝食を食べた。


「あぁあああああああ!ソフィア!貴様ぁあああ!我の楽しみにしていたオムレツを!」


「何を甘い事を言っているの?さっさと食べなかったあんたが悪いのよ!」


「それなら!」


ティアがソフィアの皿に乗っていたウインナーにフォークを伸ばした。


ザク!


ソフィアのフォークがティアのフォークごと皿にくし刺しにした。


「甘いわ!」


「ぐっ!やるな・・・」


バチバチとソフィアとティアの視線の火花が飛ぶ。



スッ・・・



パク!



「「あぁああああああああああああああ!」」


2人が睨み合っている隙にラピスがソフィアの残り1本のウインナーをフォークに刺し口に入れた。


「みっともないから静かに食事をしてくれない?今のは騒がしかった罰よ。」


ラピスがニヤリと笑った。


「「ラピスゥウウウウウウウ!」」


ソフィアとティアがワナワナと震えた。



「あなた達・・・」



ゾクッ!



辺り一帯が氷のように寒くなる。


マナさんがプルプルと震えている。

バキッと音を立てフォークが折れる。フォークは金属製なのに、何故か2つに折れていた。

折れた断面がまるで鋭利な刃物で切ったような感じになっている。どうやらマナさんの例のアレのようだ。


俯き加減だったマナさんがゆっくりと顔を上げる。

ニコニコと笑っているが、目は全く笑っていなかった。

俺には見える!マナさんの全身から絶対零度の殺気が放たれているのが!



「食事中は静かによねぇぇぇ?いい加減にしないと・・・、本気でお仕置きよ・・・、簀巻きが良い?それとも輪切り?」



・・・



「「「すみませんでしたぁああああああああああああああああああ!」」」



3人がマッハの速さで土下座をする。


「はぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~」


俺はため息をしながら2人の皿にウインナーを1本づつ乗せた。



(仲が良すぎるのもなぁ・・・)



頼むからマナさんを怒らせるような事はしないで欲しいよ・・・






朝食も済んで一休みもしたし!


家のドアを開けると・・・



目の前には世界一高い山がそびえ立っていた。頂上は常に雲に隠れていて山の全貌は見えない。



「あれが霊峰ドラゴンマウンテン、500年前は麓までしか行った事は無いが、エンシェントドラゴン達は頂上にいるんだよな?」


横にいるティアが頷いた。


「そうだ、案内は任せるのだ。頂上は変わった環境だから驚くなよ。」


そう言われるとワクワクするな。

ドラゴンマウンテンの頂上は前人未踏の地、どんな世界が広がっているのか楽しみだ。


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