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164話 ティアマットとエメラルダ②

「ご主人様ぁあああああ!ここまで頭を下げても無理かぁあああ!我も夜伽にぃぃぃ~~~」


ティアが俺の前で土下座をし、必死に訴えるような目で俺を見ている。


みんながいる前で何て事を・・・

ティアは俺の事を羞恥で抹殺したいのか?


(完全に公開処刑だ・・・)


「ダメよ。今夜は私がレンヤさんの相手なんだからね。そして、エメラルダも一緒なのはティアが一緒になる前から決まっていたのよ。」


アンは腕を組みながら俺の横で立っていた。

少し離れた場所にエメラルダがいたけど、俺と目が合うと「ポッ」と頬を赤らめて目をそらした。


(うわぁ~、すっげぇ可愛い!)


あの気の強いイメージのエメラルダだけど、こんな乙女の部分もあったなんてな。


アンはエメラルダの隣に移動し、2人で嬉しそうに見つめ合っている。

ティアと比べると勝者の余裕って感じだ。



「分ったわよ。」


ラピスが土下座をしているティアの隣に立ち彼女を立たせた。


「明後日は私の番だから、ティア、あんたも一緒にいる事を許すわ。2人で頑張ろうね。」


そう言ってパチンとティアにウインクをした。


「ラ、ラピス・・・」


ティアが嬉しそうにラピスを見つめている。

いやぁ~、美女2人が嬉しそうに見つめ合っている光景はとても絵になるよ。


それにしても・・・

いつの間にこの2人は仲良くなったのだ?

それよりもだ!

ラピスの裁量でティアが正式に俺の妻に決定してしまったよ。

俺の意見って?


「ティア・・・」


「何だ?ラピスよ・・・」


「あなたの願いを聞いてあげたのだから、あなたも私の願いを聞いてよね。」


「わ、分った!我が出来る事なら何でも聞いてあげるぞ!」


その瞬間、ラピスがニヤリと笑う。


「それじゃ教えてくれない?」


「な、何をだ?」


「あんたのその胸!どうやったらこんなに大きくなるのよ!その秘密を教えて!」


「は、はぃいいいいいいいいいいい?」


ティアが素っ頓狂な声を上げたけど、周りのみんなも微妙な表情でラピスを見ていた。


「ラ、ラピスよ・・・、そう言われても、我が人化をマスターした時からこうだったのだぞ。秘密やコツと言われても・・・」



「あんた達はいいわよね・・・、最初から持っている勝者なんだから・・・」



あぁ~~~~、ラピスが拗ねてしまったよ。

俺は気にしていないけど、ラピスにとってはコンプレックスなんだよな。本人は胸の大きさをとても気にしているよ。

俺の口からはそんな事は言えないし、言って変に意識されても困るんだよな。


拗ねているラピスの隣にアイ、マイ、ミイの3姉妹メイドが寄り添った。

アイがラピスの手を握った。


「ラピス様、私達3姉妹も母に似て胸はとても慎ましいものなので、お気持ちはとても良く分かります。奥方様達のあのボリュームは何と羨ましい事・・・、私も妹達も『母のような美しい顔立ちを受け継ぐ事は嬉しかったけど、ここだけは似たくなかった』と、どれだけ思ったか・・・、なので、私達もシャルロット様と同じように同盟に参加させて頂ければ・・・」


「あんた達ぃぃぃ~~~」


ラピスがガバッと3姉妹に抱き着いた。


「私達ペッタンコ同盟でレンヤを籠絡しようね!」


(何だ?)


アイ達が一瞬だけどニヤリと笑った気がした。


「あの子達も考えたわね。」


シャルが「はぁ~」とため息をしながら俺の隣に来た。


「どういう事だ?」


「アイ達もレンヤさんのお嫁さんになりたいと思っていたのよ。ラピス様に認められたから、そう遠くないうちに彼女達は承認されるんじゃないのかな?」


「マジかい?」


「えぇ、間違い無いわ。レンヤさんは知らないと思うけど、この国の騎士団にことわざがあってね、


『将を射んと欲すればまず馬を射よ』


なのよ。」


「どういう意味だ?」


シャルが俺を見てニコッと微笑んだ。


「何かを手に入れようとするときは、まずは周囲から狙っていくのが上策である事を言っているのよ。馬に乗っている人をいきなり撃つのは難しいでしょ?だから、まずは馬を射殺して機動力を削ぎ、人を射るのが楽だからね。まぁ、大きな目的を達するには、それに直接あたるより、周辺のものから片付けていくのが早道だという事よ。」


「それでラピスに取り入る事から始めた訳か?」


「そうよ、アイ達は私達と違って戦闘も出来ないし、一緒にいる理由もないの。身の回りの世話をするだけのメイドだし、それこそ勇者となったレンヤさんに直接求婚をするのは立場的にも難しいからね。いくら彼女達がレンヤさんの事が大好きでもね・・・」


まぁ、最近は俺の意志は関係無しにみんなの意志で結婚が決まっているようなものだからな。

みんなと仲良くなれる。これが俺と結婚する第一条件だろう。

アイ達はこの条件はクリアしている。


「そういう事か・・・、ラピスの後押しで俺との結婚を認めてもらおうとしているとは・・・」


「レンヤさん、正解よ。まさかあの子達も増えるとはねぇ・・・、私としてもあの子達は問題ないと思うわ。でもね、これ以上は増やさない様に少しは自重して下さいね。」


シャルが少し不機嫌そうな顔で俺を見つめている。


「このままどんどんと増えてしまうと、私に構ってくれる時間が減ってしまうので淋しいの。」


そっと俺の腕に抱き着いてきた。


「アンジェリカ姉様達も同じ気持ちよ。」


「そうか・・・、そんな気持ちにさせていたなんて、すまん・・・」


シャルの腕を組む力が強くなった気がして、シャルの顔を見つめるとニコッと微笑んだ。


「いいのよ、レンヤさんは優しいし、みんな平等に愛してくれるって分っているからね。私も我が儘を言ってゴメン・・・」


シャルがとても可愛く見えてしまい思わずキスをしてしまった。

少し照れたシャルも最高に可愛いよ。


「レンヤさん、私は幸せです・・・」


うっとりした表情でシャルの俺に抱き着く力が強くなった。

幸せそうに俺の腕に寄り添っていた。


「ご主人様、我にも少し幸せを分けてくれ・・・」


ティアが呟きながらシャルが抱き着いている反対側の腕に抱き着いてきた。

そのまま頭を俺の肩に乗せる。


「不思議だ・・・、こうしていると心が落ち着く・・・」


うっとりとした表情でティアが呟いた。


「これが恋という感情なのだろうか?」


「そうよ」とシャルがティアに微笑んだ。


「間違いないのだろう・・・、そして心が満たされるという感情も・・・、ご主人様、感謝するぞ。我に愛という感情を目覚めさせてくれてな。そして、我を受け入れてくれて・・・」


ティアの俺の腕を組む力が強くなった。




「愛しているぞ・・・、ご主人様・・・」




そして俺を見つめペロッと舌なめずりをする。


「今夜は無理だったが、明後日の夜は覚悟しておけ・・・、我の本気の姿を見せてやろう。我のご主人様への愛がどれだけ深いか・・・、徹底的にその身に刻み込ませるからな。」



(おいおい、それは勘弁しくれ・・・、それ以前に表現が変だよ。一体何をするつもりだ?)






その夜・・・



「勇者様・・・、いえ、これからは旦那様と呼ばせて下さい。」


寝室に入るとアンと一緒にエメラルダがベッドの上で正座をしていた。


「不束者ですが、末長くお願いします。」


エメラルダが深々と頭を下げてお辞儀をしている。

その隣でアンがニコニコしていた。


「レンヤさん、エメラルダをよろしくね。」


「もちろんだ、アンの親友だしな。アンと同じくらいに大切にするよ。」


アンがエメラルダの手を取り頭を上げさせると、2人が見つめ合う。


「アン・・・」


「エメラルダ・・・、これからはずっと一緒だね。今日の主役はエメラルダ、あなたなんだから、もっと堂々としていないとね。」


「そうね、アン・・・、ありがとう。」



エメラルダが立ち上がりベッドから下りて俺の前に立った。


「旦那様・・・、本当に私で良いの?」


心配そうにエメラルダが俺を見つめる。

しばらくしてから恥ずかしそうに目を逸らした。


「だって、いくら若く見られても私はもうお婆ちゃんと言われて当たり前の歳だし、実際に孫もいるのよ。しかも、かつて夫もいた身・・・、いよいよとなったら何か申し訳なくて・・・」


(駄目だ・・・、こんな彼女が可愛すぎるよ・・・)


思わす彼女を抱きしめると、「あっ・・・」と声をあげた。

そのまま彼女の唇にキスをしてしまう。


ゆっくり唇を離すと潤んだ彼女の瞳が俺を見つめていた。


「そんな事を気にする俺じゃないからな。エメラルダ、君はとても綺麗だよ。アンと同じくらいにな。」


「アンよりも綺麗って言って欲しかったな。」


「それは駄目だ。アンと同じくらいに愛すると言ったからな。もしかして嫌だったのか?」


「ううん・・・、冗談よ。」


ゆっくりと首を振った。


「そんな事無いわ。こんな私がアンと同じように愛してくれるなんて・・・、嬉しくて・・・」


今度は彼女からキスをしてきた。



唇が離れると、上気し蕩けるような瞳で俺を見つめている。


「キスだけでここまで幸せな気持ちになれるなんて・・・、でも、これ以上イチャイチャしてるとアンが怒ってしまうわね。」


エメラルダを抱き上げると「きゃっ!」と可愛い悲鳴を上げた。

そのままベッドまで彼女を運ぶ。


アンが両手を広げエメラルダを抱きしめた。


「レンヤさんのお姫様抱っこって凄いでしょう?一度されちゃうと癖になってしまうのよ。」


「うん、本当にお姫様の気分になっちゃうわ。アンの好きになった人とずっと一緒・・・、もう一度幸せになるわ・・・、ありがとう、アン・・・」



「私の親友・・・、ずっと一緒よ。」






翌朝・・・


目が覚めると・・・


俺の胸に頭を乗せているエメラルダが微笑んで見つめていた。


「夢じゃないのね・・・」


そのまま顔を近づけキスをしてきた。


唇が離れ、俺の右腕に抱き着き、幸せそうな顔で見つめている。

反対側に目を向けると、同じようにアンが俺の左腕に抱き着いていた。

アンはまだスヤスヤと眠っている。


みんな裸で抱き着いているから、お互いの体温をダイレクトに感じられる。それがとても心地良い。


「旦那様、好きよ・・・」


エメラルダと再びキスをした。



その瞬間、左腕がギュッと締めつけられた。


「レンヤさん、エメラルダばっかり・・・」


ちょっと拗ねた感じのアンが俺を見ている。

だけど、こんなアンも可愛いよ。


そんなアンにキスをすると、とても嬉しそうに微笑んでくれた。






・・・ おまけ ・・・


2日後の夜


「ご主人様ぁあああ!待ちわびたぞ!」


ギラギラした目のティアが寝室に飛び込んできた。

ティアの後ろにいるラピスも何か様子が変だ。


「レンヤ・・・」


「ど、どうした?」


「ううん・・・、レンヤがね、あのヴリトラと戦った時、私、レンヤがまた死んでしまうかと思ってしまったの・・・、あんな化け物の神に勝てるのかって・・・」


「確かにアイツは強かったよ。あの力が覚醒しなければ、本当に死んでいたかも・・・」



ガバッ!



ラピスがいきなり俺の胸に飛び込んできた。


「ラピス・・・」


「レンヤが私の前からいなくなるのが怖い・・・、だからお願い・・・、絶対に・・・、あの時の悲しみはもうたくさんよ・・・」


「すまん・・・」


今の俺はこの言葉しか言えない。

あの戦いでラピスのトラウマが甦ってしまったのか?


(もっと強くならなくては・・・、ラピスが心から安心出来るように・・・)


「ありがとう、レンヤ・・・、気持ちは分ったわ。」


おいおい・・・、また俺の心を読んだのか?


「これで先日の事は一区切りがついたわ。」


ニヤリとラピスが笑った。


(へっ?)


「おかげで私にはレンヤがどれだけ大切な存在なのかを、改めて認識する事ガ出来たわ。レンヤ、好き・・・、好きよ・・・、大好き・・・」


(何だ?ラピスからどす黒い感情が流れ込んでくるぞ!いかん!)


「ダメよ・・・、今夜は私の好きにさせてもらうわ。レンヤを隅から隅まで堪能するの・・・」


直後にラピスが叫ぶ。


「ティア!」


「ラピスよ!我も同じ気持ちだぞ!」



「「ふふふ・・・」」



どうした?2人揃って変になっている!


ガシッ!


「うっ!」


胸に抱き着いてるラピスが離れない!いや、それどころか更に抱き着く力が強くなっている!


ヒシッ!


「ティア!」


ティアが俺の後ろから抱き着いてきた!

何て力だ!ビクともしない!


「ふふふ・・・、ご主人様、無駄だよ。今、恋に燃えている我は無敵。決して逃がしはしないぞ・・・、諦めるのだな。」


「レンヤ、夜は長いわ。朝まで頑張ろうね。」

「ご主人様、ドラゴンの愛情表現は激しいぞ。絶対に忘れる事がない夜を過ごそうではないか。徹底的に絞って絞って絞り尽くしてやろう!」


だ、駄目だ!

こいつらはヴリトラよりも危険だ!


「レンヤ・・・、最高の夜にしようね・・・」

「ふふふ・・・、楽しみだよ・・・」



「う、うわぁあああああああああああああああ!」



翌朝・・・


俺は2人から念入りに、それこそ徹底的にこれ以上ないくらいに絞り尽くされ、肉体的にも精神的にも干からびた状態でベッドの上で瀕死になっていた。

意識を失う直前に俺の目に映ったのは、とても艶々な肌で満足そうに俺へ微笑むラピスとティアの顔だった。


「レンヤ、これまでの中で最高の夜だったわ。」

「ご主人様、我も満足だ。これからもよろしく頼んだぞ。」


(女って怖いよ・・・、ガクッ・・・)


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