表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

162/335

162話 邪竜強襲⑭

「「「へっ?」」」


俺達の眼下にいた3人の口からとても間抜けな声が出た。


「ふふふ、ドッキリ成功ね。」


エメラルダがとっても嬉しそうに微笑んでいるよ。


「エメラルダ、ちょっとやり過ぎじゃないかな?絶対に本気で怒られるわよ。」


アンが心配そうにエメラルダを見ているが、俺もそう思う。

こんなのは悪戯ってレベルじゃない気がする。


「まぁまぁ、アンも心配性ね。大丈夫だって!う~ん・・・、多分ね・・・」


(おい!何だ!この自信の無さは!)


何か嫌な予感がする。


「取り敢えず、アニー達と合流しましょうね。これ以上心配させると、さすがにマズいと私でも思うからね。」



俺達3人はティアマットの背から飛び降り、ゆっくりと地上へと降りた。


「お祖母様!」

「勇者殿!」

「アンジェリカ様!」


カイン王子が俺に近寄りがっしりと手を握った。


「よくぞご無事で!」


そして上空に浮いているティアマットをジッと見つめた。


「勇者様、アレってまさかのエンシェントドラゴンですよね?しかも、最強のカオスドラゴンでは?」


「やっぱり分るか?」


「分る分らないの話ではありませんよ!エンシェントドラゴンは戦いに関する者全てが知っている存在ですよ!しかも最強のカオスドラゴンが目の前にいるのです!そのドラゴンから気軽に背中から降りてくるなんて・・・」


そうだよな・・・

カオスドラゴンっていえば、普通ならビビるどころか確実に死を覚悟するような存在だよ。

それがあんな痴女に・・・

想像も出来ない事実だよ。



「お~い!ティアマット!お前も降りてきて挨拶くらいしたらどうだ?」



そう声をかけると・・・


カッ!


ティアマットの全身が輝き、光が収まると背中にドラゴンの翼を生やし、例の紐ビキニアーマー姿のティアマットが浮かんでいた。

やっぱりあの姿はティアマットの標準装備なのか?

人前なのに恥ずかしくないのが不思議だ。


(羞恥の基準が人間とは違うのだろうが、俺には理解出来ん。)


「ド!ドラゴンが人間に!」


3人の顎が今にも地面に届きそうなくらいに呆気に取られた表情でティアマットを見ている。

そんな3人を全く気にせずに俺の隣に降りてきた。

地面に降りると背中の翼が消えた。

出し入れ可能とは便利な翼だと思う。


「ご主人様~、我の事は『ティア』と呼んで欲しいのだ。主からもそう呼んでもらっているから、ご主人様もお願いだ。」


そう言って俺の腕に抱き着き、大きな胸の谷間に俺の腕をグリグリと挟んできた。

とても柔らかい極上のマシュマロに挟まれている気分だ。

あまりの気持ち良さに思わず顔がにやけてしまいそうになってくる。


(おいおい・・・、あまり見せつけると・・・)



ゾクッ!



背中に殺気がグサグサと刺さった。

物理的に刺さっている訳ではないはずなのに、痛みを感じるとは何故?


「あら・・・、ティア・・・、一体何をしているのかな?」

「レンヤ、まさかと思うけど、そんな事をされて嬉しいって思ってはいないよね?」


「げっ!」


アンとラピスから物理的ではない別の意味での絶対零度の空気が放たれている!

この冷気は肉体的に凍りつかせるのではなく、精神を凍らせる感じだ!


(ヤバい!ヤバい!確実に2人に殺される!)


「「ティア・・・」」


(はい?)


2人がティアの名前を呼んだ?

呼ばれたティアの方はガタガタと震えている。


ガシッ!


2人がそれぞれにティアの肩を掴んだ。


「あなたには慎みって言葉を一番最初に教え込んだ方がいいですねぇ・・・」

「それとも、今夜はあんた自身がドラゴンステーキになってみる?食材としてみんなに美味しく食べられてみたい?」


そのまま2人に連行され、建物の陰へと消えた。


直後に



「うぎゃぁあああああああああああああああああ!」



ティアの断末魔の叫びが響いた。

あの場所で何があったのか想像するのも怖い。


「世界最強のドラゴンでもあのお2人には勝てないのですか?」


そうカイン王子が俺に聞いてきたので、無言でゆっくりと頷いた。


「女の嫉妬には神でも勝てないと思うぞ。」


「それは私も思います。」


カイン王子も心当たりがあるのだろう、額に汗をかきゆっくりと頷いた。




「そういえば・・・」


3人のインパクトが強過ぎてエメラルダの存在を忘れていた。


(彼女はどこに?)



・・・



(やっぱりか・・・)



エメラルダはシヴァの前で正座をし、ペコペコと頭を下げていた。



「お祖母様、いたずら好きも程々にして下さい!今回は本当に死を覚悟したのですよ!旦那様の私をとても大切にしてくれる気持ちを再認識出来たのはちょっと嬉しかったのですが、だからといって、やり過ぎには変わりません!」


「ア、アニー・・・、本当にゴメン!ちょっとした悪戯心からなんだから・・・」


「あれはちょっとでは済みません!街をも一瞬で壊滅出来る至高の存在のお方なんですから、そんなお方を悪戯の道具に使おうと考える事も不敬極まりないのですよ。もう、自分の立場というものを・・・」



(う~ん・・・)



まだまだ説教が続きそうだ。

あっちも大変な状態だよ・・・


(自業自得だから助け船も出せん。)




最後は何とも締まらない終わりとなってしまったけど、一応、この街での要件は終わった。


「勇者殿、母をお願いします。」


俺達の目の前にはマルコシアス家の家臣がズラッと並んでいる。

その中からシヴァの両親が前に出て丁寧に頭を下げられた。


その後、アンが俺の横に立った。


「マルコシアス家の皆様、私は帝国に出現した新たな魔王ガルシアを必ず討ちます。そして、この世界に平和をもたらす事を約束します。」


「「「ははぁあああああああああ!」」」


目の間にいる人々全員が深々と頭を下げた。


「今はアスタロト家に弱体化された残りの公爵家の再興を最優先にして下さい。今は途絶えてしまったダンタリオン家もこうして当主が戻ってきたのです。ダンタリオン家の再興に魔族領の復興!我々も帝国に立ち向かえるよう力を合わせようではありませんか!」


「「「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」


「「アンジェリカ様!」」


カイルさんとディアナさんが涙を流しながらアンを見つめている。

その隣にはとても嬉しそうに微笑んでいるエミリアがいた。


「何とお礼を申せば良いのか・・・、念願のダンタリオン家の再興が叶うとは・・・」


アンはいつもの優しい笑みで3人を見つめていた。


「私の爺やの家ですからね。手伝わない選択はありませんよ。それに、私はあの邪神の巣窟となった帝国の未来を託されました。帝国を邪神から解放したらもう終わりではありません。その後がもっと大変ですからね。その為にもみなさんに手助けしてもらわないと・・・、だから、今はみなさん、力を蓄えて下さい。その時が来たならとことん頼りにさせていただきますからね。」


「ご心配無く!我ら全員が命をかけてお遣いさせていただきます!」



「そ、そんなに大袈裟に言わなくても・・・」



カイルさんのあまりの迫力にアンがちょっとビビっていた。


(う~ん・・・、そんなアンも可愛らしいよ。)






「ふぅ、やっと戻ってきたな。」


ラピスの転移でフォーゼリア城へと戻ってきた。

エミリア一家はマルコシアス家との打ち合わせがあったのでそのまま残った。

まぁ、エミリアは転移の魔法が使える指輪を持っているから、帰るには困らないだろうな。


「まさか、殿下とシヴァの婚約報告がここまで大事になってしまったなんて・・・」


本当に大変だったな。

街に到着してから一度に色んな事があり過ぎたよ。


「勇者殿、本当に申し訳ない!」


カイン王子が深々と頭を下げたけど、別にカイン王子が悪い事をしていないのに・・・

まぁ、シヴァの両親に結婚を認めてもらったのだ、結果的には訪問して正解だったのだろうな。

今まで以上に2人の心の距離が近くなったように見える。

言い方を変えれば、人目を気にせず『イチャイチャし過ぎ!』だよ。


テレサに聞いた話だと、カイン王子はかなりの堅物なんだろう?

まぁ、かつてはテレサに求婚もしていた事もあるし、好きになったら一直線のタイプなんだろうな。

シヴァも一途っぽい感じだし、お似合いのカップルだな。


そして・・・


アンとエメラルダが楽しそうに話をしている。

俺にとってのラピスやソフィアのように、500年前の知り合いがいた事はアンにとっても1番の事だろうな。


(まさか、俺の妻になるとは予想外だったけど・・・)



「「「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」



部屋にいたシャルの護衛騎士達から感嘆の声が上がった。


彼らの視線の先には・・・


シャルと手を繋ぎゆっくりと隣の部屋からティアが出てきた。

彼女の後ろにはアイを始めいつもの3姉妹が付き添っている。


男達の声からさっきのやり取りを思い出してちょっとにやけてしまった。



城に着いた時はシャルと3姉妹メイドが俺達を出迎えてくれた。


ティアの事は俺とラピスが念話でシャルに先もって連絡してあったので、いきなり連れてきても慌てる事は無かったけど、さすがに世界最強最悪のカオスドラゴンが正体だとは、今はシャルだけに伝え口外しないように頼んだ。

今の人化したティアの見た目は頭に角が生えているだけだから、普通に魔族に見えるから騒ぎになっていないけどな。

まだ来ていないソフィア達には後で紹介ついでに正直に話すつもりだ。


シャル達がティアを見た瞬間、『破廉恥過ぎます!』と言って、慌ててティアの服を準備していたよ。

確かに城の中では絶対にありえない見た目だろう。

人外ともいえる美貌もあって、城中の男性の視線を集めていたと過言ではないだろうな。

アイ達が何とかティアに合いそうなドレスを彼女の前まで持ってきて、隣の部屋で着替えをさせようとすると・・・


まさかのまさか!

その場で一瞬にして素っ裸になってしまった。


「服とは面倒だな。ほれ、裸になったぞ。さっさと着せてくれ。」


あのビキニアーマーなどの身に着けていた防具は、ティアの鱗が変化し防具に見えていただけだったとは・・・


ただでさえ人外の美しさを誇るティアなんだよ、そんなティアが無防備に全裸で堂々と仁王立ちの姿で立っていたらどうなる?スタイルも妻の中ではNo.1のローズよりも更にメリハリのあるスタイルだ。ビキニアーマーの時でも注目されていたのに、そんな視線の中でいきなりの裸だぞ!シャルの後ろに控えていた護衛の騎士達が一斉に鼻血を噴き出してしまった!女性に対する免疫の少ない若い男達には刺激が強すぎたみたいだ。


彼らは


「我が人生に悔いなし!」


と雄叫びを上げながら鼻血スプラッシュで気を失っていたよ。

気絶した全員の顔がとても満足そうだったけど、その気持ちは分かる。



「たかが我の肌を見て何を興奮するのだ?人族はよく分からん。」


と、ティアが不思議そうに気絶した男連中を見ていた。



俺も騎士達と同じように危うく鼻血スプラッシュになりそうだった。普段から美人な妻達と一緒にいるから、周りの連中よりはかなり耐性が付いたみたいだな。

慌ててアイ達がティアの裸を隠して急いで隣の部屋に移動したけどな。


俺以外の男性陣(カイン王子も含む)は全員が鼻血の海に沈んでいた。

知らない人がこの場に遭遇したら、何の虐殺現場だと勘違いしたかもしれない。


(ティアの色香はもう兵器だな。恐るべし・・・)


それにしてもだ!

あのビキニアーマーもそうだけど、ティアの貞操観念はどうなっている?

アン達に頑張って教育してもらうしかないな。


その事に関しては早急に何とかしてもらわないと思ったのはそのすぐ後だった。


(まさか・・・、いきなり爆弾を落とすとは・・・)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ