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157話 邪竜強襲⑨

不思議だ・・・


目の前にいる男は間違い無く俺よりも圧倒的に強い。

俺1人で立ち向かうのは確実に無謀だろう。


(そんな事は分かっているのにな。)


だけど、ここで奴を食い止めなくてはシヴァやエメラルダの故郷が滅ぼされてしまうだろう。


(故郷が滅ぼされてしまう思い・・・、そんな思いは・・・)


俺1人で十分だ!

彼女達にはそんな思いをさせたくない!


そう思うと不思議と体の奥底から力が湧いてくる。

500年前の戦いでは感じることが無かった力だと思う。

あの時の俺は単なる復讐者だったし、パーティーメンバー以外の人の為に戦うのは基本的に意識してなかった。


今の俺は・・・


アンを始め、ラピス、ソフィア、テレサ、シャル、マナさんにローズに、そして新しく家族になった人達に、俺の両親・・・

こうしてみると本当にたくさんの人に愛されている。


(生まれ変わった今の俺は幸せ者だよ。)


グッと拳に力を込めた。



「だからこそ、この戦いは絶対に負けられない!」



「たかが人間、どれだけ頑張ろうが蟻のようなちっぽけな原住民が俺に敵う訳がないのだよ。」


ドン!


「ぐはっ!」


くそっ!

一瞬で俺の懐に入って顔面を殴られた。


(奴の動きが見えない・・・)


異常なほどの防御力のおかげか、あれだけの打撃でもすぐに戦闘不能にされる事がないのは幸いだった。


「どうした?自慢の聖剣を使わないのか?せめて攻撃力だけでも上げておかないと俺との勝負にはならないがな。がはははぁああああああああああ!」


ふざけるな!

聖剣だけが俺の全てではない!

ソフィアとの手合わせで、俺の体術レベルも相当に上がっているんだ!


グッと拳を突き出す。


「聖剣は使わずにこの拳で戦う。お前なんぞ、これで十分だと証明してやる!」


そう言ってもかなりしんどいのは変わらない。


(だけど・・・)


今はこの拳で勝負しないといけないと思っている。なぜか分からないが、もう少しで何かが掴めそうな気がしていた。


「負けるかぁあああああああああ!」


ブンッ!


紙一重で俺の拳が躱されてしまう。

くそ!当たらない!

奴のニヤニヤ顔が目に入った。


(くっ、紙一重に見えるけど、余裕で躱されているのと一緒だ!)


ワザとあのような躱し方をしている。

俺との実力差を見せつける為だろうが・・・



ズン!



「ぐほっ!」


カウンターで奴の拳が俺の腹にめり込む。


「弱い、弱いなぁぁぁ・・・、さっきの威勢の良かったパンチはどうした?あれが最高だったのか?」



ガシッ!


(がっ!)


くっ!奴の攻撃がどれも重い!いや!重すぎる!

何とか堪えているけど、一瞬で意識が持っていかれそうだ!


「どこまで耐えられかな?」


ズドドドォオオオオオオオ!


奴の数十発の拳が俺の全身に喰い込んだ。


「ぐはぁああああああああああああ!」



「く、くそぉぉぉ・・・、手も足も出ないなんて・・・」



「つまらん・・・」


奴が俺をつまらなさそうに見ている。


「デミウルゴスに言われた事はやはり眉唾物だったな。かつての屈辱・・・、あいつに圧倒的な強さで負けた屈辱を・・・、それを晴らせると思ったが期待外れだよ。」


(かつての屈辱?あいつとは?俺と関係しているのか?)


あの時のデミウルゴスも何かそれっぽい行動をしていた気がする。


ジロッとヴリトラの視線が鋭くなった。


「それとも貴様を追い詰めるのではなく、女達が死ねば真の力を出すのか?」


(女達だと?)


アンは?

カオスドラゴンと戦っている最中だ。

凄い、あの最強のドラゴンと互角に戦っている。

そして、あの構えは?

アレを使うのか?カオスドラゴンはそれだけの相手だったのか。

だけど、今のアンなら必ず勝つだろう。



ラピス達は?

もうドラゴン達は数体までになっている。

あちらの方はもうそろそろ片が付きそうだ。



「決めた・・・、あのエルフ達を殺すとするか?」


ニヤリとヴリトラがラピス達を見て口角を上げた。


「そ、そんな事・・・」


「ふはははははぁああああああああああああああああああああ!今の貴様では俺を食い止める事すら出来ん!そのまま指を咥えて女どもが死ぬのを見ているんだな!」


(何だ?)


空中に浮いていたヴリトラの背中から真っ黒なドラゴンの翼が生えた。


(あいつはドラゴンなのか?まさか、あのミドリさんと同じ?)


「ふふふ・・・、あのダークエルフの方がいい声を出して死にそうだな。さっさと殺して貴様に絶望を与えるとするか?神に逆らう事はどれだけ不敬で重罪なのかをな・・・」



「己の力の無さを!無力さを!絶望をその心に刻み込めぇえええええええええええ!」



大きなドラゴンの翼を広げエメラルダへ向かって飛び出した。

エメラルダが・・・、俺のせいで殺されてしまうのか?



(そんなのは嫌だ!)



ドクン!



かつての前世の俺の記憶が・・・、勇者の里の惨劇が脳裏に浮かんだ。




ドクン!




あの時の俺は・・・


力が足りなかったばかりに・・・




誰も助けられなかった・・・


姉さん、ホムラ・・・、父さんに母さん・・・、里のみんな・・・




ドクン!




力を・・・




誰にも負けない力が欲しい・・・




【力が欲しいか?】




何だ?この声は?


【力が欲しいのか?】


俺の頭の中からこの声が響いてくる。

ヴリトラに視線を移すと、あれだけ素早い動きをしていた奴がスローモーションのようにゆっくりと飛んでいた。


(何が起きているのだ?)


だが、1つだけ分かった事がある。

この声は俺の中から聞こえている。いや、俺の心の中からだ!


(お前は何者だ?)


【そう警戒するな。俺はお前であり、お前は俺だ。遥か昔に分かれお前が出来た。大いなる魂の欠片がお前なのだよ。欠片と言っても最強と言われた俺の魂に間違いは無いけどな。】


(欠片?)


【確かに生まれた頃は小さな魂の欠片だった。だがな、数多くの試練を乗り越え、幾星霜もの月日と生まれ変わりを重ね、オリジナルの俺と同等となったのだよ。だけどな、あまりにも強過ぎる力で、この世界のバランスが崩れる事から今までは制限をかけていた。】


(もしかして?今までの勇者は?)


【そうだ、歴代の勇者の魂はずっとお前の魂が生まれ変わっていた。生まれ変わる度に記憶を失っていたが、今回は初めて前世の記憶を受け継いで生まれ変わった。大切な人を失う悲しみ、そして、大切な人の為に戦う心、前世の記憶があってこそ、お前の真の力を開放する鍵が揃った。】


(真の力だと?そんな力が俺の中にあったのか?)


【勇者の称号は俺の力を引き出す為のものだったのだよ。歴代の勇者が規格外だったのもそういう事だったからな。そして、俺がお前を認めた。俺もかつて好きな人を守る為に死んだ・・・、だけどな、残された者の悲しみを考えていなかった。お前も500年前はそうだったな。】


(確かに・・・、みんなには悪い事をしたよ・・・、俺の為にラピスもソフィアも500年も眠っていた。俺に再び会いたいが為にな・・・)


【そういう事だ。お前は失う悲しみと絶望を知っている。もう2度とそんな思いをしたくない、そして力に溺れあの堕ちた神どもとは違い、力の本当の使い方も分かっている。】


(うっ!体の中から・・・)


【本来の力を!守る為の力を!正しくその力を使う事!それが俺の願い・・・】




【その力をお前に託す!】




ドクン!




「す、凄い!今までの俺ではない力が溢れてくる!この力なら・・・」



【おっと!1つ言い忘れた。いきなり全力の力だとお前の肉体が保てず崩壊してしまうからな。今はまだ慣らし段階で力を開放しよう。だから、あまり調子に乗るなよ。】



(はい?何とも中途半端な気がするが・・・)



『ピコン!』


頭の中に例の音が鳴った。

この音が鳴ったという事は、もしかして称号が増えるのか?


『称号【破壊神(仮)】を獲得しました。』


「へっ・・・」


『神』は『神』でも『破壊神』とは?そんな物騒な称号なんてあったのか?

しかも『(仮)』って・・・


だけど、『破壊神』はどんな称号なのか見当がついた。

今までの俺とは全く違う。

とても静かだが桁違いの力が体の奥底から溢れてくるのを感じる。


(確かに・・・、圧倒的過ぎる暴力的な力を感じる。)


こんな力、確かに今の俺では制御が出来ない。リミッターをかけられて当然だな。


(だけど、いつかはこの力を全て制御出来るようにならなくては・・・)




ス・・・




突然、スローモーションになっていた世界が通常の時間の流れに戻った。


(奴は?)


慌ててヴリトラを目で追いかけたが、さっきまでと違い奴の速度に目が追い付いている。


(これは俺の戦闘力が上がったからなのか?)


奴はニタリと笑いながらエメラルダへと飛んでいる。

さっきのエメラルダを殺すと言った言葉を思い出した。


(いかん!モタモタしているとエメラルダが!)


「やらせるかぁああああああああああああ!」


グッと全身に力を入れた。


「間に合えぇえええええええええええええええええええええええ!」



ヒュン!



「え・・・」


自分でも信じられない速度でエメラルダの前まで飛んで来た。


「勇者様・・・、いつの間に・・・、動きが全く見えなかったわ・・・」


エメラルダの驚きの声が聞こえた。



「どういう事だ!」



この声はヴリトラか?


先程と同じように圧倒的な速度で俺の正面へと迫って来た。


(いつの間に奴を追い抜いたのだ?)


少し混乱してしまったけど、今、俺がするべき行動は決まっていた。



「エメラルダには絶対に手出しをさせん!」



目前まで迫ってきたヴリトラの顔面に右ストレートを叩き込んだ。


グシャァアアアアアア!


「げひゃぁああああああああああ!」


右拳には奴の顔面にめり込んだ感触がハッキリと感じる。

そのまま拳を振り抜くと、情けない悲鳴を上げて吹っ飛んでいった。


(当たった!)


あれだけ躱されていた俺の拳が当たった。



「レンヤ!」



ん?ラピスの声だ。


ラピスへ振り向くとラピスが驚愕の顔で俺を見ている。


(お前、どうした?)


「レ、レンヤ・・・、その翼は何?」


「何って?」


(おい!これはどうなっているんだ!)


俺の翼は飛行魔法によって生み出された幻影の翼だぞ!

だけど・・・、今の俺の翼は・・・


薄い青色の実体のある大きな翼が背中から生えていた。


(俺は人間なんだよな?)


「とうとう目覚めたのね、レンヤ・・・」


驚愕の表情だったラピスの瞳から涙が流れた。

そのままクシャっと泣き笑いの表情に変わる。


「ラピス、お前は何か知っていたのか?」


「いえ・・・、私も全てはフローリア様からは教えてもらっていないの。」

ゆっくりと首を振った。

「でもね・・・、レンヤ、あなたの中にあった本当の力が目覚めた事は分かったわ。その力はね・・・」



「おのれぇえええええええええええええええええええええええ!」



「むっ!」



俺の後ろから高速で近づく気配を感じ、振り向きざまに人差し指を前に突き出した。


ガシィイイイイイイイイイ!


「ば!馬鹿なぁああああああああああああ!」


俺の人差し指でヴリトラの拳を受け止めていた。

その光景にヴリトラの目が驚愕で大きく開かれている。


あれだけ俺を痛めつけていた拳がたった1本の指で受け止めたなんて、さすがに俺自身も信じられなかった。

それ以前に、どうしてこんな止め方を思いついたのだ?


「これが・・・、あのお方と同じ力・・・、想像以上よ・・・」


ラピスも信じられない目で俺を見ている。


(一番信じられないのは俺なんだけどな。)



ギリギリ・・・



「こんなの!こんなのはぁあああああああああああああああああ!舐めるなぁああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


ヴリトラが力任せに止められていた拳を前に突き出し始めた。

しかし、俺の指はビクともしない。


「さっきまでのお返しだ!」


そう叫ぶと、俺の全身から青いオーラが沸き上がった。

今までの俺のオーラは金色のオーラだったのが、どうして青色に?

それ以上にだ!このオーラの力は今までの全ての力を凌駕している!



ドムッ!



「うぎゃぁあああああああああああああああああ!」



ヴリトラが腕を押さえ叫んでいて、よく見ると奴の肘から先が消失していた。

まさか、俺のオーラの放出だけで腕が消し飛んだだと?


(これが【破壊神】の力?)


神さえも凌駕する力・・・

確かにこの力は使い方を間違えると世界を滅ぼす事も容易だろう。



この力は守る為の力!



おれはこいつ等のように力に溺れない!



だから・・・



「ヴリトラ・・・、お前は俺の大切な人を殺そうとした。だけど、もうこの世界に干渉しないなら見逃してやる。だけど、引かないのなら・・・」



全身から先程とは比べ物にならないくらいの青いオーラが噴き出した。


この戦いから引くようにと警告したが、奴は絶対に引かないだろう。

神としてのプライド、絶対的強者としての地位、そんなところいた者が俺のような見下していた人間に情けをかけられるなんて、決してプライドが許さないはずだ。


俺はグッと拳を構えた。


(ここで奴との勝負を決める!)


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