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154話 邪竜強襲⑥(ラピス&エメラルダ)

ラピスの手に握られていた武器は・・・


「あんな化け物武器、使える事自体が異常だわ・・・」


エメラルダが驚きと呆れを一緒にしたような表情でラピスを見つめていた。


「あれだけ馬鹿デカいモーニングスターってあり得るの?それを軽々と振り回しているなんてね・・・」


持ち手の部分は今まで使っていた杖と同じ程の長さなのに対し、先端の鉄球部分の大きさが異常だった。

そんな物をどうして振り回すことが出来るのかと思うほどに、先端の鉄球部分が大きい。ラピスの身長以上に大きな鉄球に無数の鋭いトゲが付いている。

そんな凶悪な武器をラピスが片手で軽々と持っていた。


ブオン!


片手で軽く振り回し感触を確かめている。


「これを使うのは久しぶりね。最近はソフィアが肉体派になったものだから、同じことをしても仕方ないから使っていなかったのよね。」



「でもね・・・」



グシャ!


「GA・・・」


一瞬でラピスがドラゴンの前まで移動し、巨大な鉄球を頭に叩き付けた。

叩き付けられたドラゴンは短い悲鳴を上げたが、頭を潰されゆっくりと地面へと落ちていった。


「このミョルニルにかかれば、ドラゴンの頭もスイカみたいなものよ。なるべく苦しまないようにしてあげるわ。」


ラピスがゆらりとハンマーを肩に置いた瞬間、ドラゴン達がジワリとラピスから離れ始めた。



「何なの、アレは?」


エメラルダが呆れた感じでラピスを見ている。


「あの杖があんな凶悪な武器になる事自体が異常だってのに、それを予想よりも遙かに軽々と振り回すって・・・」


自分額に指を当てた。


「さっきのアイアンクローの破壊力・・・、あの腕力なら納得よ。本気で握ったら確実に私の頭が破裂するわ。意地を張らなくて正解だったと、今更ながら鳥肌が立っているなんて・・・」



「逃がさないわよ!」


ギャリィイイイイイイイイン!


「は?」


またもやエメラルダが変な声を出してしまう。


「ハンマァアアア!ブースト!」


柄を左手に持ち換え右手で巨大な鉄球をガシッと握ると、思いっきり鉄球をドラゴンへと投げつけた。

鉄球から鎖が伸び、凄い勢いでドラゴンへと飛んで行く。



グシャ!



またもやドラゴンの眉間に鉄球がぶち当たり、頭頂部がベコっと陥没し力なく落ちていく。

今の一撃で確実に息の根を止められた感じだ。


「振り回すだけじゃくて投げる?」



「ははは・・・、化け物の中の化け物よ・・・」



柄をグイっと引っ張ると、鉄球が勢いよくラピスの方へと戻って来る。

そのままグルグルと鉄球を振り回していた。


「エメラルダ、何を呆けているの?でないと、勝負はあっという間に私の勝ちになってしまうけど良いのかな?」


「ふふふ・・・、そうね・・・、勇者パーティは元々が非常識な強さだったわ、今更ビビっても情けないだけね。」


ジャキ!


青白い氷の剣を両手に握りドラゴンへと飛び出す。


「せいぜい足掻いてみるわ!少しでもあなた達に近づく為にね!」


「ふふふ・・・、その意気よ。さっさと終わらせてレンヤの応援に行かないとね。」


ブオン!


グルグルと振り回していた鉄球をドラゴンへと投げつける。


「ハンマー!乱れ打ちぃいいいいいいいい!」


ブワ!


1個だった鉄球がいくつもの数に分身した。


「「「GYAAAAAAAAAAAAAA!」」」


何体ものドラゴンが鉄球に潰されたり貫通されたりし、次々と落ちていった。


「負けられない!」


ズバババァ!


エメラルダの華麗な剣技により、ラピスの時と同じように次々と死体となって落ちていった。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






(おいおい・・・)


「アレってどう見ても大虐殺だぞ・・・、しかも、あのラピスの武器は何だ?」


あの2人の無双ぶりに声も出ない。


「確かいつものあの杖が変化したものだよな?事ある度にソフィアの頭を殴っていた杖だったけど、間違った使い方じゃなかったとはなぁ・・・、やっぱりあの杖は鈍器で正解だったか。」


チラッとアンを見ると、アンも少し引き攣った笑い顔になっていた。


「ラピスさんの引き出しってどれくらいの非常識が入っているのかしら?ソフィアさんの白狼神掌拳の破壊力も異常だったけど・・・、あんな勇者パーティーと対立した父には同情するわ。」


「アン・・・、何か色々とスマン・・・」


「レンヤさんのせいじゃないから謝らなくてもいいのよ。まぁ、これくらいでないと神とは戦えないのかもね。」


そう言ってアンがヴリトラへと視線を移した。


そのヴリトラはいまだに腕を組みながらカオスドラゴンの頭の上でニヤニヤと笑っていた。



「くくく・・・、今回はあの聖女の女はいないのか?俺の見立てではあの女くらいしか俺とまともに戦えないと思っていたが・・・」



(くそ!舐めやがって・・・)


確かにソフィアの強さは別格だ。神から直々に指導を受けただけある。


だけどな・・・


俺だってアイツに負ける気は無い!


ヴリトラが人差し指を立てた。


「少しだけチャンスをやろう。」

フワッと宙に浮いた。

「カオスドラゴンよ、あの原住民どもと戦え。」


そして再び俺達を見てニヤリと笑った。


「このカオスドラゴンと戦って、万が一お前達が勝てたら相手をしてやろう。まぁ、原住民のお前達がこの世界最強のカオスドラゴンに勝てる確率はゼロだがな、くはははぁああああああああああああああああ!」


(この野郎!舐めやがって!)



「レンヤさん!」



ヴリトラに飛びかかろうとしたが、アンに呼び止められた。


「アン・・・」


真剣な眼差しで俺を見つめていた。


「レンヤさん・・・、カオスドラゴンは私1人で相手をするわ。」


「ば、馬鹿な!アン!そんな無茶を!」


しかし、アンが首をゆっくりと振った。


「大丈夫よ、あんなトカゲの親玉くらいで本気を出さないわよ。自分の強さと相手の強さ・・・、どれだけかは分かってるわ。」


スチャ!


漆黒の剣をカオスドラゴンへと向けた。


「虚無の力を使えばあっという間に片が付くから、今は私が身に付けた剣技と魔法だけで相手をするわ。それだけで十分な相手の筈よ。」


ニコッと俺へ微笑んだ。

確かに『虚無』の力を使えばどんな相手だろうが消滅させられる。

いくら最強のカオスドラゴンだろうが、その力を前にすれば無事に済まないだろう。


だけど・・・


『虚無』の力は体力も魔力も極限まで消費してしまう。

それだけの代償がなければ使えない技でもある。しかも、発動には溜めが必要だから、その隙が大きすぎて一対一の戦いにはあまり向いていない。

カオスドラゴンに勝ったとしても、後にはあのヴリトラが残っているのだ。

そんな状態で神とは戦えない。

奴との戦いに備えて体力を残さなければいけないのだろう。


だが・・・


「アン・・・、君がドラゴンと戦っている間は俺が奴と戦う。だから早く頼むな。」


「レンヤさん!それは無理よ!私が終わるまで力を温存しておかないと・・・」


「それこそ大丈夫だ。アンが頑張るから俺も頑張る。決して負けるつもりもない。いや・・・」


アーク・ライトを収納魔法へと収納し、拳をヴリトラに向ける。


「魔神ヴリトラ!お前の相手は俺で十分だ!原住民だと俺達を下に見ているが、そんな態度がいつまで続くかな?それこそ、俺を舐めるなよ!」



ギリギリギリ・・・



ヴリトラの目付きが険しくなり、真っ赤な髪が逆立っている。


「原住民が・・・、いや、下等な人間どもが俺に何をほざいた?余程死にたいらしいな・・・」


組んでいた腕を解き俺に殺気を飛ばしてくる。

この殺気だけでも普通の人間なら即死レベルだぞ!


「よかろう・・・、しばらくは遊んでやろう。俺に対する生意気な態度を後悔しながら死ね・・・」



「あいにく死ぬつもりはないさ。」



ドン!



ヴリトラの姿が消えたと思ったら、一瞬で俺の目の前に現れた。

無造作に右拳を俺の顔面へと振り下ろす。


「これで死ぬなら、貴様もそれまでだ。」



ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!



大きな破壊音が響いたが、直後に静寂が訪れる。


「何ぃいいいいいいいいいいいいいい!」


ヴリトラが大声で叫んだ。


(煩いな・・・、だけど・・・)


ガシッ!


俺の左の掌の中にヴリトラの拳が握られていた。


「痛ってぇええええええええええええええええええええええええええええええ!」


俺も思わず叫んでしまう。

それくらいの強烈なパンチだった。


「だけどな・・・」


グッと右の拳を握った。


ガシィイイイイイイイイイ!



「ぐはっ!」



俺の右拳がヴリトラの左頬に炸裂した。


「ソフィアに比べればまだまだだな。」


かなりの速度で後ろへと飛んで行く。

しかし、急ブレーキをかけたように止まり、ニヤリと笑って俺を見ていた。


「ふふふ・・・」


(何だ?)



「ふはははははぁああああああああああああああああああああ!」



(何が起きた?)


「面白い!面白いぞぉおおおおおおおおおおおおおお!この熱い拳は!とても懐かしい・・・」


(おいおい・・・、殴られて喜ぶってか?)


「デミウルゴスが言っていた通りだったな。あいつの言葉は信用していなかったが、まさか、貴様が・・・」



ブワッ!



「くっ!」


奴の全身から赤黒いオーラが噴き出してくる。


(ちっ!少し本気にさせてしまったか?)


「良かろう、俺も少しは本気で相手をしてやろう。」



ヒュン!



またもやヴリトラの姿が消えた。


ガシッ!


「ぐはっ!」


今度はガードしきれず、顔面を殴られた。

かなりのスピードで後ろへと飛ばされるが、何とか踏ん張り空中で止まった。


「ふぅ、このまま地面に激突はシャレにならん・・・」


ヴリトラに視線を移すとニヤニヤと笑っている。


「ほほぉぉぉ~~~、無傷とはな・・・、俺が軽く撫でるように殴っただけでも大抵の生物は死んでしまうのにな。少し評価を改めよう。多少は楽しめそうだ。くくく・・・」



(くそぉぉぉ・・・)


ソフィアに習った闘気のおかげで大したダメージを受けなかったけど、あれで撫でるレベルとは・・・



流石は腐っても神の1人だ・・・



グッと拳を構える。


(アンも頑張っているんだ。俺も頑張らなくてどうする!)


俺よりも遙かに強い圧倒的な強者との戦いなのに・・・




(不思議だ・・・)




俺もニヤリと笑ってしまう。


この戦いを心のどこかで楽しんでいる俺がいる。


何故かワクワクしている。


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