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151話 邪竜強襲③(シヴァ達)

「さて!行くわよぉおおおおおおおおおおお!」


ブワッ!


シヴァが叫ぶと背中の氷の翼を大きく広げた。


「アニー!任せたわ!」


「任された!」


エミリアがウインクをするとシヴァがグッと親指を立てた。

グッと顔を上空のワイバーン達へ向けると、氷の翼が青白く輝いた。


バサッ!


一気に急上昇を行い、あっという間に1体のワイバーンの前で止り、そのまま宙に浮いていた。


「さて、精霊女王様からいただいた力はどれだけか?あなたで試してみるけど恨まないでね。」


ペロッとシヴァが舌舐めずりする。

シヴァからそう離れていない場所にワイバーンも浮いている。


「しかし、こうして間近で見るとかなり大きいわね。頭だけで私の何倍もあるなんてね。」



【ワイバーン】


翼竜と呼ばれるドラゴンの亜種である。

腕は無く2本の足と大きな翼で空を飛ぶが、ドラゴンのようにブレスを吐く事は無い。

野生で生息している個体が殆どだが、まれに人間に飼い慣らされ移動手段となっている個体もいる。

背中に数人の人を乗せて運ぶ事が出来るほどに大きく、通常は空中にいるのでまともに戦う事は難しい。

攻撃方法が上空から一気に急降下し、鋭く強靱な足で相手(餌)を鷲掴みにし上空へと持ち上げてしまう。

一度掴まって持ち上げられてしまうともう助かる術は無い。上空から落ちてしまえば、空を飛べない限り地面に激突し確実に死ぬ。

通常、ワイバーンを討伐する方法は、相手を掴みに地面に下りた瞬間を狙うしかない。しかし、その巨体と想像を絶する急降下の速度により、簡単に討伐する事は不可能だろう。

もし遭遇してしまった場合は物陰や岩陰に隠れてやり過ごすしか方法はない。



それだけの強敵が相手なのにシヴァはニヤッと笑う。


「デスガイアを使う前にフロスト・ウイングの力を確認しましょうね。」


両手を左右に大きく広げた。



ピキピキピキ・・・



氷の翼が更に大きくなっていく。

翼の外側に展開している氷の羽が一斉に弾けた。


パキィイイイン!


そのまま空中を漂っていたが、しばらくするとシヴァの周囲を回り始めた。

数百枚の氷の羽がグルグルと回っている。


「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」


目の前のワイバーンが咆哮を上げた。

鋭い牙が並んでいる口を大きく開け、翼を大きく広げた。


「ふふふ、どうやら私を餌と認識したようね。だけど・・・」


にやぁ~とシヴァが不敵な笑みを浮かべた。


「どちらが捕食者か分らせてあげるわ。」


スッと右手を前に突き出した。



「サイクロン!エッジ!」



大量の氷の羽が渦を巻きながらワイバーンへと飛んで行く。



ズガガガガガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!



「GUGYAAAAAAAAAAAAAA!」


青白く輝く渦に飲み込まれたワイバーンの断末魔の声が響いた。



ズバババババァアアアアアアアアアア!



ワイバーンを飲み込んだ渦は、そのまま後ろにいたもう1体のワイバーンをも飲み込んだ。



ズザザザザザァアアアアアアアアアアア!



渦が拡散し、1枚1枚の羽が再びシヴァの翼に戻り青白く輝いている。


「うわぁぁぁ・・・、たったの一撃でワイバーンが消え去っちゃったよ!しかも2体一気に・・・」



「こ”ら”あ”あ”あ”ぁあああああああああああああああ!」



地上にいたエミリアがシヴァへと叫んだ。


「アニィイイイイイイイイイイイ!何て事してくれるのよぉおおおおおおおおおおおおおお!」


怒りの表情でデスブリンガーを振り回している。


「ワイバーンを落としてくれって頼んでいるのに、何で!肉片と血の雨を降らすのよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!辺り一帯がスプラッタよ!」


「あっ!」


眼下の惨劇を見てシヴァが申し訳なさそうにしていた。


「エミリア、ごめぇ~~~~~~~~~~ん!技が思った以上に強化されちゃってた!まさか!あの巨体が細切れミンチになってしまうなんて想像もしていなかったわよ!」


「ホント、気を付けてよ!次からはちゃんと頼んだからね!」


「分ってるわよ!私だってグロいのは嫌なんだから!」


お互いに距離が離れているので大声で会話をしている。

その光景を見てカイン王子がヤレヤレといった感じで首を振っていた。


「この2人の前で私は必要なのかな?」



「むっ!」


エミリアの後ろにいたカイン王子が急に剣を構えた。

剣の切っ先を上空に向ける。


「ディフレクト!」


その瞬間、剣の前に光の盾が浮かび上がった。


ガキィイイイイイイイイイン!


「えっ!」


自分の後ろで起きた大きな音にエミリアが気付き、慌てて振り向いた。


エミリアの目に映っていた光景は・・・



ギギギ・・・



カイン王子がワイバーンの足の爪を剣で受け止めていた。


「ふっ、不意打ちを狙ったようだけど甘かったな。」


カイン王子がニヤリと笑った。



「パリィ!」



ゴシャ!


剣をグルッと回転させると、ワイバーンが一回転し地面へと頭からめり込んだ。


「ドドメェエエエエエ!」


ドオォオオオオオオオオオ大オオオオオオン!


エミリアが高く飛び上がり、デスブリンガーを地面に横たわっていたワイバーンへと叩き付けた。

あまりの威力に地面に深い割れ目が出来てしまい、ワイバーンも真っ二つになっていた。



「なかなかやるわね。」


エミリアがカイン王子へ不敵に笑った。


「お飾りの王子と呼ばれたくないし、それに彼女の強さに釣り合うよう努力しているからな。」


「惚気られるなんてご馳走様よ。それにしても・・・、あなたも大概ね。ワイバーンの急降下を受け止めただけでなく、その攻撃の力を受け流すなんて、化け物に片足を突っ込んでいない?」


「勇者殿達の生きるか死ぬかのギリギリを見極めた訓練という名の地獄に比べれば、こんな魔獣など可愛いものだよ。慣れとは恐ろしいものだ・・・」


どんな過酷な訓練なのか分らないが、その話をした瞬間、カイン王子の顔が蒼白になった。

その話を聞いていたエミリアも「その気持ち分るわぁぁぁ・・・」と言いながら遠い目をしていた。



「こらぁあああ!エミリア!私の婚約者に馴れ馴れしいわよ!」


シヴァが上空でエミリアに向けて文句を言っている。


「アニー!大丈夫よ!私はダーリン以外はその気もないしね!ただねぇ~、あんたの彼氏も例の地獄を見ていたなんて、ちょっと同情していただけよ。」


「あぁ・・・、アレね・・・、私も思い出すだけで心が病んでしまうわ・・・」


3人が遠い目になり、「はぁぁぁぁぁ~~~~~~~~」と長いため息が出ていた。



「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」


「「「むっ!」」」


ワイバーンの咆哮に3人が我に返る。


カイン王子が剣を構えると、エミリアが興味深そうに剣を見ている。


「王子様、この剣ってとんでもない業物じゃないのかな?私が今まで見た剣では最高だと思う。どこで手に入れたの?」


「あぁ、この剣か?」


カイン王子が手に握っている剣を見つめる。

普通の剣よりは少し刀身が長いが、その剣は先程のワイバーンの急降下を受け止めていたにも関わらず、全く欠けや歪みは無かった。

惚れ惚れするような銀色の鏡面のような刀身に、いくつもの波打った刃紋が印象的な剣だった。


「勇者殿に紹介してもらった鍛冶士に打ってもらった剣だ。ドワーフ族のクロエという名の女性だよ。勇者殿の聖剣に匹敵する剣を打つと目標を持った素晴らしい女性だな。その渾身の一振りを私が譲り受けたのだよ。本人はまだ満足していないみただし、「まだまだ精進しなければ!」と頑張っているけどな。」


「ドワーフが本気で打った剣なんて・・・、羨まし過ぎるわ。」


「確かにな・・・、私が勇者殿から信用されている人間だからと打っていただいたが、ドワーフ族は特定の個人だけに鍛冶をする事はあり得ないくらいに気難しい種族だからな。それだけ彼女は勇者殿にべた惚れなんだろうな。そのまま押しかけて勇者殿の妻の1人になるかもしれん・・・」


「あり得るわね・・・、レンヤさんって気付いていないみたいだけど、女性達からモテモテよ。年々ハーレムが大きくなっていくと思うのは間違いじゃないかも?」


「それは私も思う・・・。シャルのメイド達も勇者殿の妻の座を狙っているのでは?と思うような行動を時々見かけるからなぁ・・・」



カイン王子の予想通り、数年後にはクロエもレンヤの妻連合の1人となっていた。



「エミリア!おしゃべりは終わりよ!」


「そうね、そろそろ本気で相手をしましょうか・・・、ねっ!」


シヴァがデスガイアを、エミリアがデスブリンガーを構えワイバーン達へと体を向けた。


「スプラッタは勘弁だしね・・・、このデスガイアなら!」



ヒュン!



その場からシヴァの姿が消える。



ズバッ!



ワイバーンの両翼が肩口から切り落とされる。

いつの間にかシヴァがワイバーンの後ろに浮かんでいた。


「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」


雄叫びを上げながらワイバーンが落下していった。



「ナイス!いいポイントに落としたわね!」



エミリアが下段にデスブリンガーを構え、落ちてくるワイバーンに視線を定めた。


ダン!


勢いよくジャンプをし、頭から落下してくるワイバーンの肩口に剣を当てる。


ズバァアアアアアアアアア!


一気に剣がワイバーンを縦に真っ二つにし仕留める。2つに分かれ地面へと落ちていった。

エミリアはスタッと優雅に地面に着地しガッツポーズを決めた。


「よし!この連携ならワイバーンもあっという間ね!」


上空にグッと親指を立てると、その視線の先の上空にいるシヴァもグッと親指を立てた。


「やはり噂通り竜種は翼に魔力を纏わせて飛んでいるのは確実ね。翼を切り落とせば単なる大きなトカゲだし、地上にさえ落とせばエミリアならあっという間ね。」


デスガイアを顔の前に構える。


「エミリア!どんどん落とすわよ!」


「任せなさい!」



シヴァが次々とワイバーンの翼を切り落としていく。

翼を失ったワイバーンが次々と地面へと落ちていった。


「オラオラオラァアアアアアアアアアアアアアア!」


容赦無くエミリアが地面でのたうち回っているワイバーンを真っ二つにしてトドメを刺している。

カイン王子もエミリア程に豪快ではなかったが、首を切り落としていった。



「粗方終わったようね。」


シヴァが空中で額の汗を拭っていた。


「影?」


いきなり自分に影が覆い被さった。


「空中なのに、何故?」


顔を上に向けるとそこには・・・


「レッド・ドラゴン!ふっ、相手に不足は無いわね・・・」


ニタリとシヴァが笑った。


今まで倒していたワイバーンの倍は優に超える大きさのドラゴンが、シヴァよりも上空に浮いていた。

凶悪な瞳をシヴァに向け口を大きく開ける。

大きく開いた口の奥に赤く輝く光が見える。


「ドラゴンブレス?レッド・ドラゴンなら炎のブレス?」


シヴァの背中の翼から大量の冷気が溢れ出した。


「ふっ!炎なら私との相性は最高ね。遠慮はしないわ。」


ニヤリとシヴァが笑った。



ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオ!



ドラゴンの口から大量の炎が吐かれた。


「ウイング!シールド!」


氷の翼がシヴァの全身を包んだ瞬間、炎がシヴァを飲み込んだ。



ボシュゥウウウウウウウウウ・・・



ブレスが通り過ぎたが、シヴァは翼に包まれていた状態から全く変化が無かった。


バサァアアア!


翼が大きく羽ばたくと、そこには何一つ傷の無いシヴァが佇んでいた。


「無駄よ・・・、私の展開するフロスト・ウイングは攻防一体の翼・・・、あんたのショボいブレスくらでは羽根1枚すら溶かせないわね。」


「GUGUGU・・・」


ブレスが全く通用しなかった事を理解したのか、レッド・ドラゴンが少しづつ後ろへと下がり始めた。


「さすがは知性の高いドラゴン、誰に喧嘩を売ったのか理解したようね。どうやら私には勝てないって分かったのかしら?」



ジャキッ!



再びデスガイアを構える。


「だけど、もう遅いわ・・・、私に喧嘩を売ったが最後・・・、街のみんなのご馳走になりなさい。ドラゴンのお肉はとっても美味しいから、どれだけ喜んでくれるかな?」



「GA!GAAAAAAAAAAAAAAA!」



ドラゴンが慌てて振り向き、一目散に逃げようと飛び上がった。


「逃がさない!」


デスガイアを左右に広げる。


「伸びよ!デスガイアァアアア!一閃!クロス!ブレィドォオオオオオオ!」


シヴァの呼びかけにデスガイアの漆黒の刀身が一気に数十メートルの長さまで伸びた。



ズバァアアアアアアアアア!



「GA!GA・・・」



縦に両断された瞬間に横にも切れ目が入り、4つに分かれ地面へと落ちていった。




「これがデスガイアの真の力・・・、圧倒的なスピードに悪夢のような長射程・・・、私から逃げる事は不可能よ。」


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