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145話 マルコシアス公爵家③

街中は俺達人族の街とあまり変わらないな。

ただ、住民は魔族だけあって色んな種族がいる。


魔族と一括りにしているが、アンやカイルさん達の種族は悪魔族と呼ばれており、魔族領の中では1番多い種族だろう。

シヴァはダークエルフ族だ。ダークエルフ族はラピスと一緒にいるエルフ族と起源は同じと言われているが、神棒する神が女神様か邪神かの違いだと聞いている。

ただ、長い年月と環境で両者の特性はかなり変わったと言われている。

見た目の肌が褐色系で髪も銀髪が多い。

対してエルフ族は透き通るような白い肌に金髪が1番多い感じだな。

ラピスはハイエルフだから、両種族とはまた違った見た目だ。

ただ、見た目はどちらも美男美女ばかりには変わらない。


それ以外には聖教国で戦ったバンパイア族も魔族の種族の1つだし、獣人族やサキュバス族など多種多様な人種がいる。


そんな魔族を纏めている公爵家の1つがこのマルコシアス家である。



「それにしても、よくこれだけの種族を纏めているな。これだけの種族を纏めるのは大変だろう?」


思わずシヴァに質問してしまったが、俺の質問に対してにこやかに微笑んでくれた。


「強さが基準の魔族だからね。代々続く我が家系は魔族領の中でも最強の一角を担っているのよ。悪魔族の中でも魔王様を除けばアスタロト公爵家が一番だったし、次はダンタリオン公爵家だったのよ。そして悪魔族以外の種族のまとめ役が私達マルコシアス公爵家なの。」


こうしてシヴァが話をしている間にも、すれ違った人はシヴァに深々と頭を下げている。

表情から見ると決して恐れからではないな。

シヴァも挨拶には手を上げて対応しているし、彼女はこの街では意外と人気があるかも?


「それにね、ダークエルフ族はエルフ族と違い戦闘民族だから、基本的に戦闘能力が高いし、私達に対等に戦える人は少ないのよ。だからなのかな、ずっと昔から私達マルコシアス家が公爵を名乗っているのね。そして、最強の存在であったかつての魔王様に忠誠を誓っていた訳よ。そして魔王様のご令嬢であられたアンジェリカ様にも忠誠を誓っていたの。」


そしてチラッとアンに視線を移した。


「眠りに入られているアンジェリカ様がいらっしゃるのに、私達が他の人に忠誠を誓う事はあり得ないわ。いつ目覚められるか分からないとはいっても、私達は主君を変えるつもりは無いし、二君にも仕える気はないの。だからずっと私達はどの派閥にも入らなかったわ。アスタロト家が私達を傘下に入れようと圧力をかけていたけど、決して私達は屈しなかった。だからかな?祖母が負けて家に戻ってきた時は、それは大騒ぎだったみたいね。強さを第一に考えていた我が家だったからね。祖母はアンジェリカ様との約束は決して口外しなかったし、私にも口止めしていたわ。そんな事もあって祖母の立場を守りたいと頑張ってシヴァの名前を受け継いだの。」


「その名前を継ぐのも大変だっただろう?」


カイン王子がそっと手を握った。

手を握られたシヴァは少し顔が赤くなったけど、往来のど真ん中だしキリっとした表情は崩さなかった。


「確かに大変だったわ。シヴァの名前・・・、それは一族で最強の魔法使いにしか名乗れない称号みたいなものだったしね。祖母の名誉を守りたい一心で頑張ったわ。私がシヴァになって祖母を守るってね。」


「やっぱり君を選んで正解だった。君のひたむきな気持ちに私は惚れたのだろうな。」


「ちょっと!いきなりの不意打ちは勘弁よ!」


さすがにシヴァの顔が真っ赤になり、表情もアワアワしている。

そんな光景をアンとラピスが微笑ましく見ていた。






「ここか・・・」


目の前にあるのは屋敷ではなく城だった。

魔王亡き今の魔族領は、公爵家が各々独自で領地を治めている。


(この街は今のところは新しい魔王の出現の影響は無いみたいだな。)


だからだろうな、力を見せつける為にもこんな立派な城も必要なんだろう。

ある意味、一国の主みたいな感じだな。


先触れがあったのか、門が既に開いており護衛の者だろうか?ズラッと奥まで並んでいた。


(いやぁ~、こんな光景を見ると、シヴァって本当に良いところのお嬢様なんだな。)


シヴァが先頭になって先に進もうとしたが、シヴァが先に進んだ時に、俺達の前に兵士らしい服装の魔族数人が前を塞ぐ。

ギロッと蔑んだ視線で俺達を見ていた。

その1人がズイッと前に出てきた。


「お嬢様だけしかこの先は許可出来ん。部外者は帰れ!」


いやはや・・・、こうも嫌われるとは、さすがは魔族領だ。予想通りで涙が出そうだよ。

そんな状況はシヴァも予想していたみたいで・・・


「ベック!」


ギロッと鋭い視線で兵士を睨んだ。


「お嬢様、どうしました?」



キィイイイン!



いきなり兵士の足元が凍りつく。


「 ! 」


「何を勝手な真似をしてるの?先触れから話は聞いていなかったの?『彼らは私の大切な人、失礼の無いように』と言ってあるけど・・・」


「そ!それは・・・」


兵士の顔には大量に冷や汗が流れていた。

少しずつ足元から膝、そして下半身全体と凍り始めている。


「どうやら死にたいらしいわね?このまま氷の像になって門の前に飾っておく?」



「そこまでだ!」



奥から大声が聞こえる。

視線を移すと、そこにはダークエルフの男女が立っていた。


(あの2人は?俺達とそんなに見た目は変わらないけど、多分・・・)


「お父様!お母様!」


シヴァが叫ぶと2人がゆっくりと彼女に近づいた。


(やっぱりか。エルフだけあってとても若く見えるよ。)


「ご苦労だった。アスタロト家からの要請でお前1人だけで向かわせたが、無事に帰ってきて何よりだ。さすがは今世のシヴァの名を受け継いだだけあるな。しかも、ここから出て行く時よりも遙かに魔力が高いとは・・・、さすがは我ら自慢の娘だけある。」


男性の方(父親だろうな)はシヴァを見つめながら満足そうに頷いている。

しかし、隣の女性は俺達の方を驚きの表情で見ていた。


「ま、まさか・・・、あなたはディアナなの?」


ディアナさんがゆっくり頷くと、その女性から大粒の涙が流れ始めた。

そして、ディアナさんからもポロポロと涙が流れた。


「そうよクレア・・・、今までゴメンね・・・」


2人が駆け出し抱き合った。

そのまま泣き崩れてしまった。


男性の方もカイルさんを見てガクガクと震えていた。


「やはりカイルだったのか・・・、老けたから最初は分らなかったぞ。」


「サイロス、お前達と一緒にするな。あれから20年も経ったのだ、それくらいの年月で見た目が変わらないお前達と違って、俺はしっかりと老けるからな。」


「その言葉使い、変わってないな、」


サイロスと呼ばれた男がカイルさんの前に立ち右手を差し出した。

その手をカイルさんが力強く握った。


「よくぞ無事だった、親友よ!」


2人がニヤリと笑ったが、お互いの目には薄らと涙が浮かんでいた。



「あらあら・・・、サプライズにと考えていたのに、すぐにバレてしまうなんてねぇ・・・」


エミリアがニヤニヤしながら両親達を見ている。


「もしかして、エミリアちゃん?」


ディアナさんと抱き合っていた女性がエミリアをジッと見つめた。


「そうよ、クレアおばさん、お久しぶりです。」


エミリアはそう言って優雅に頭を下げた。


(こんなところはアンと同じでお嬢様なんだな。)


「やはり、お前達は生きていたのだな。こうして再び会えるとは・・・」


サイロスさんが周りの使用人達をグルっと見渡す。


「全員を客間に案内しろ。ここにいる人族達も同じように丁寧に扱え!」


そしてシヴァを見つめた。


「詳しい話はそこで聞こう。お前もそう思っているのだろう?」


「はい、父上・・・、その通りでございます。とても重要な話が・・・」


ゆっくりとシヴァが頷いた。






「では、話を聞こう。」


とても広くて立派な部屋に俺達は通された。

ここまで豪華なのには驚いた。フォーゼリアの王城にある迎賓館並みに立派な部屋だ。

ダンタリオン家がこうして生きていたと分かったからだろうな。カイルさん達をもてなす為にこの部屋を用意したと思う。

先程の様子を見ても両家の関係はとても良好だったのだろうな。

無事に再び会えて本当に良かったと思う。


部屋の中央にある大きなテーブルに俺達も座っている。


向かい側にはシヴァの両親とカイルさん家族が並んで座っている。

俺達にはカイン王子の隣にシヴァが座っているのだが・・・

やはりこの配置にはサイロスさんも察知しているようだ。


「シヴァ、いや、今はアニーと呼ぶが問題ないだろう。アニーよ、何を私に言いたいのか?」


カイン王子とシヴァが同時にゴクリと喉を鳴らした。


「父上・・・、報告は色々とありますが、まずは・・・」


シヴァが話し始めると、おもむろにカイン王子が立ち上がった。


「この度はこうしてお話の場を設けさせていただき、誠にありがとうございます。」


挨拶をすると深々と頭を下げた。


「で、殿下・・・」


シヴァの言葉にサイロスさんが反応した。


「殿下だと?アニーよ、一体誰を連れてきたのだ?」


「ご挨拶をさせていただきます。私はフォーゼリア王国第二王位継承権を持つカイン・フォーゼリアと申します。」


「なんだと!」


驚きの表情でサイロスさんが立ち上がった。


「あのフォーゼリアの・・・、先代魔王様を亡き者にした勇者パーティーの1人を輩出した、あの憎き国の王子だと・・・」


ギロッとシヴァを睨む。


「なぜだ?お前がそんな人間と一緒にいるのだ?」


「私は彼女との結婚を認めてもらいにここに来ました。」


「結婚だとぉぉぉ?貴様のような男が我が娘とだと?」


真っ赤な顔でシヴァが俯いてしまったよ。

うわぁ~、父親であるサイロスさんが目を吊り上げて、今にもカイン王子を締め上げそうな顔で睨んでいる。


(おや?)


隣の母親であるクレアさんがニコニコしているよ。


(もしかして?)


「ダメだ!ダメだ!ダメだぁあああああああああああ!我ら魔族が人族との結婚は認められん!さっさと帰れ!」


「いえ!認めてもらうまでは私は絶対に帰りません!」


カイン王子も負けじとサイロスさんを睨みつけた。


「アニー」


クレアさんがシヴァを見つめた。


「母上・・・」


「あなたはどうなの?人族と結婚するという事は、もうこの地には2度と足を踏み入れる事は出来なくなるのよ。多分、長老会から追放処分を受ける事になると思うわ。折角シヴァの名を貰ったのに、お父さんはあなたの名誉を傷つけたくないのよ。私の母のように一族からバカにされないよう、あなたの為を思って反対しているのよ。」


「母上!それなら、私はおばあ様のように汚名を被りながらでも想いを貫きます!」


「その覚悟はあるのね?」


「はい!私は彼と一緒になるなら一切の後悔はしません!」


「あなたも頑固ね・・・」


シヴァとクレアさん、カイン王子とサイロスさんが睨み合っている。



(弱ったな・・・)


ここまで反対されるのは予想通りだったけど、この問題はあくまでも当事者の問題だし、俺達が口を出すことが出来ないと思う。

アンとラピスに視線を移したが、やはり2人も弱った表情になっていた。



『ふふふ・・・、懐かしい光景よのぉ。』



部屋の中に誰か分らないが、女性の声が響くと、その瞬間、シヴァの体が青白く輝いた。



(何が起きた?)


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