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143話 マルコシアス公爵家①

「出発されましたね。」


「そうね、これからは忙しくなるわ。」


ドットとナブラチルが大きなテーブルを挟んで椅子に座っていると、ナブラチルがフッと微笑んだ。


「まさか私が聖女なんてねぇ・・・、今でも信じられないわ。」


「そんな事はありませんよ。」


ドットもナブラチルの微笑みに合わせて一緒に笑った。

彼の斜め後ろに立っているエマも嬉しそうだ。


「あなた様は本当に変わられた。今のあなた様なら信者を幸せに導く事が出来ます。」


「ふふふ・・・、ありがとう。ずっと誰一人信用してこなかった私だったけど、人の温かさを知ってしまうと、自分が今までどれだけ愚かだったか・・・、恥ずかしいわね。」


「私もその気持ちは分りますよ。私は妻のお陰で変わる事が出来ましたからね。」


そう言って横に控えているエマを見つめると、エマも微笑みながら頷いた。


「あぁあああ!見せつけてくれるわね!そんなのを見せつけてくれると、私も早く独り身から卒業したいと心から思うわ!」



コンコン



ドアがノックされ、ナブラチルが許可の返事をするとドアが開いた。


「あら、ユウ君達じゃないの。」


部屋に入ってきたのはユウ達3人だった。

しかし、今の姿は16歳くらいの姿に見える。


「ナビ姉、神殿騎士団の編成は粗方終わったよ。この国は元々暗部が優秀だったから・・・、て、ナビ姉、どうしたの?」


ナブラチルとドット夫婦がユウ達を見て硬直しているのに気付いた。


「い、いやね・・・」


ナブラチルが真っ赤になっている。


「ユウ君達って元々の姿だとさすがに幼すぎるから、成人になった歳の姿に偽装の魔法をかけたと聞いたけど、ちょっと格好良すぎよ。しかも、ユアちゃんもアズちゃんも美人過ぎ!」


「さすがは真祖様だけあります。私のようなハイロードでは、あなた達の足下にも及びませんね。」


ドットは感心した顔でユウ達を見つめている。


「そうかな?ナビ姉の方がもっと綺麗だと思うけどなぁ・・・」


「ちょ、ちょっと!ユウ君!何を言っているのよ!」


いきなりユウに綺麗と言われてしまったものだから、ナブラチルが慌ててしまった。


「ユアもアズもそう思うよな?」


ユウがユア達に話を振ると、2人もうんうんと頷いている。


「そうよ、姉さん。少しは自覚した方が良いと思うわ。」

「母さんも言っていたわよ。今の姉さんならソフィア義母さんに負けないよ、ってね。」


「ちょっと!あんた達もぉおおおおお!年上をからかうものじゃないのよ!」


更に真っ赤になったナブラチルが両手を顔に当てて悶えていた。


「ふふふ・・・、あのナブラチル様がこれほどまでに・・・、いやはや、意外と乙女だったのには驚きでしたよ。ですが、このようなナブラチル様なら好感度が爆上がりですね。良いものを見させていただきました。」



「あぁああああああああ!ドットまで何を言っているのよぉおおおおおおおおお!私の威厳がぁあああああああああああああああああああああああああ!」



顔だけでなく全身を真っ赤にして悶えているナブラチルを、全員が微笑ましい目で見つめていた。



「勇者様・・・、ありがとうございます。こうしてこの国に笑顔が戻りました。全てはあなた様達のお陰です。」



ドットが天井を仰ぎ微笑むと、エマも嬉しそうにドットに寄り添っていた。



まだ真っ赤になっているナブラチルだったが、何とか冷静な態度になり、ユウ達を見つめた。


「ユウ君達、本当に良いの?」


ユウ達3兄妹がゆっくり頷く。


「ナビ姉、心配しなくてもいいよ。僕達はナビ姉と一緒にいる事を決めたからね。フラン姉は父さんにベタベタだし、こんな見た目でも僕達の精神年齢は十分に大人なんだから、父さん達から独立するのも悪くないと思ったんだよ。それに、僕達は父さんから受け継いだ転移魔法と収納魔法を使えるからね。いつでも父さんと母さんに会えるから問題ないよ。」


ユアとアズがニヤニヤと笑っている。


「ユウも素直じゃないね。本当はナビ姉さんが気になって仕方ないんじゃないの?」

「そうそう、正直に言いなさいよ。まさかユウが年上好みだったってねぇ~」


2人の言葉にユウが真っ赤になってしまった。


「おい!お前ら!いい加減な事を言うな!」


しかし、ユウとナブラチルがお互いにチラッと目が合ってしまうと、更に真っ赤になってしまった。



「青春だね。」


ドットがエマに微笑むとエマも微笑んだ。


「そうですね。あの頃を思い出しますわ。真っ赤な顔であなたが私にプロボースされた時をね。あなた・・・、ずっと愛してます。」


「今となっては恥ずかしい思い出だな。でも、エマは私の全てだよ。エマ、愛しているよ。」



「こら!どさくさ紛れに惚気ない!私に対する当てつけなの?」


ナブラチルが2人に怒鳴っていたが、その場にいた者は全員が笑っていた。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






「ねぇ!シヴァ、あんた実家に結婚する話はしているの?」


フォーゼリア城内のとある部屋でラピスがシヴァに尋ねていた。


「じ、実は・・・、まだ・・・」


申し訳なさそうにシヴァがラピスに頭を下げていた。


「まぁ、仕方ないわね。魔族が人族と結婚するし、しかも相手がこの国の王族だしね。なかなか言いにくいのは分からなくもないわ。だけどね、婚約式も終わったし、あと3ヶ月後には正式に結婚する事になるのよ。」


「そ、それは分かっていますが・・・」



「そんな時は私達の出番ね。」



シヴァの後ろから声が聞こえたので、シヴァが慌てて振り返った。


「何で?あなた達が?」


エミリアを先頭にして後ろに彼女の両親が立っていた。

ニコッとエミリアが微笑んだ。


「アスタロト家のバカ息子は倒したし、主立った公爵家の実力者もラピス様が倒したからね。もうあの家は終りだから、私達ダンタリオン家を再興する事にしたのよ。私はダーリンと一緒に過ごす事になるけど、いつでも魔族領に戻る事が出来るようになったの。」


そう言ってエミリアが左手の薬指の指輪を見せた。


「アンジェリカ様達と同じ指輪よ。転移魔法と収納魔法がエンチャントされているの。だから、だからいつでも帰る事が出来るし、ダーリンと一緒に冒険者を続けられるのよ。しかも、収納魔法はとても役に立つから、みんな感謝してくれているわ。」


「カイル様にディアナ様、おめでとうございます。」


慌ててシヴァが席を立ちカイルへと頭を下げる。


「そんなに謙遜しなくてもいいよ。私達が公爵家を再興するのはアンジェリカ様のお役に立とうとするだけさ。我々の先祖はかつてアンジェリカ様の世話係だった。そしてアンジェリカ様は甦られた。我々もお世話が出来るよう準備をしないといけないからね。」


カイルが話し終えると、今度はディアナが話し始める。


「それにね、アンジェリカ様が甦られたとみんなが知ったら、魔族領が大混乱になってしまうわ。いつかは甦られると伝説となったアンジェリカ様だしね。我々ダンタリオン家がお世話すると宣言した方が少しでも混乱を回避出来ると思うの。」


「確かにそうねぇ・・・」


シヴァがうんうんと頷いている。


「我がマルコシアス家も大騒ぎするのは目に見えているわ。」


「そういう事だよ。まずは君の両親に挨拶をしようと思って、一緒に付いていく予定なのさ。」


「確かに、カイル様達が生きていらっしゃった事が分れば、どれだけ喜んでくれるか分りますが・・・、私は家族から祝福される自信が・・・」



「そこは心配しなくても大丈夫よ。」



「こ、この声は!」


シヴァが慌ててラピスの方へ振り向くと、ラピスの後ろにアンジェリカが立っていた。


「ア、アンジェリカ様!」


慌ててシヴァが床に膝を付く。

エミリア達も同様に揃って膝を付き臣下の礼をとった。


「みなさん、そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ。今の私は単なる魔族の1人ですからね。」


ニッコリとアンジェリカが微笑んだ。


「い、いえ・・・、それはさすがに・・・」


「まぁ、楽にして下さい。これは私からのお願いですよ。」


「アン、それってお願いじゃないわよ。命令って言うの。」


ラピスがニヤニヤしながらアンジェリカを見ていた。




全員がテーブルに座り寛いでいる。


「まさか、こうして私達の前にアンジェリカ様がいらっしゃるとは想像しませんでしたね。ご先祖のセバス様からの口伝でアンジェリカ様の事は伝えられていましたが、私達の代でこうしてお遣い出来るとは、本当に感激です。」


カイルが離している間、隣のディアナは感激で目を潤ませている。


「それに、かつての敵同士だった者がこうして一緒にテーブルに並んで寛いでいるとは・・・、ご先祖様も喜んでいらっしゃるでしょうね。」


「まぁまぁ、そう焦らないで下さい。」


2人の言葉にアンジェリカが苦笑いをしている。


「まだ帝国の問題が終わっていませんし、その話は魔王と邪神を倒してからですよ。私がマルコシアス家にお邪魔するのは別の目的ですからね。」


「も、申し訳ありません!先走った真似を!」


2人が深々と頭を下げる。


「それにシヴァさんも心配しなくても大丈夫です。」


「それは?」


「私が誰と結婚したと?神話の頃から仲違いしていた魔族と勇者が手を取り合ったのです。文句を言う人は私が許しませんよ。それに、私があなたの実家に訪問する目的は別にありますからね。」


「やはり祖母の事ですか?」


アンジェリカがニッコリと微笑んだ。


「そうです。あなたのお祖母様であるエメラルダは『負け犬』と言われ冷遇されていたのですよね?」


「は、はい・・・」


「私は彼女の名誉を回復させるためにお邪魔するのです。私との約束を守っての仕打ち・・・、あなたの家族にお灸を据えるのが目的ですよ。まぁ、1番の目的はエメラルダに会う事ですけどね。」


再び微笑むと、シヴァが涙を流した。


「あ、ありがとうございます・・・、これで祖母も報われます・・・」


「あらあら、いつも気が強いあなたがこんなにしおらしくなってしまうとはねぇ~、カインにもこんな態度をしているのかしら?」


「ラ、ラピス様!」


ラピスの言葉でシヴァが真っ赤になる。


「ふふふ、泣いたり照れたりと忙しいわね。それにね、聞いているわよ。カインとあなたとのイチャイチャぶりをね。堅物のカインがあんただけにはデレデレだって、城内では有名な話よ。」


「ラピス様ぁぁぁ~~~~~、これ以上はぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~」



ラピスとシヴァの会話をアンジェリカとカイル夫婦がニコニコと見ている。


「これがアンジェリカ様の目指している世界・・・、一日でも早く世界がこのようになる事を願います。」


「ありがとうございます。邪神の呪いから解放された父もきっと望んでいると思いますよ。」





「それが私の魔王としての使命・・・」



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