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14話 アンジェリカの実力

(昨日はよく寝たなぁ~~~)


とても気持ち良く目が覚めた。これだけ快適に眠れたのは本当に久しぶりだよ。極上のベッドの恩恵は計り知れない。


昨日は色々とあり過ぎの1日だった。

肉体は化け物クラスまで強くなったけど、メンタルはさすがに普通だと思う。


多分・・・


肉体的な疲れはほとんど無かったけど、2人に抱きしめられて目を閉じた瞬間から記憶が無い。

すぐに眠りに入ったみたいだし、それだけ精神が疲れていたのだろうな。

それか、今までの3年間の苦労が報われた安堵からかもしれない。


それと、2人とこうして一緒にいると安心しているのだろう。




「レンヤァァァ~~~、良かった、目が覚めたのね。」

ラピスにいきなり抱きしめられてしまう。


「どうした?急に抱きつくなんて・・・」


そう言いながらラピスへ顔を向けたが、言葉が詰まってしまった。


ラピスの目が潤んでいて、今にも泣き出しそうな雰囲気だった。


「本当にどうした?」


「目が覚めて眠っているレンヤを見ていたら、あの時みたいにずっと目を覚まさないかと思って・・・、そう思ってしまったら、どんどん心配になってしまったの・・・」


そうか・・・


ラピスの心の傷は俺の想像以上に深いみたいだ。俺が眠っているだけでも当時の俺が死ぬ光景がフラッシュバックしてまうとは思わなかった。

それに俺は誤解していたみたいだ。

ラピスは確かに強い。当時の俺達のパーティーでも攻撃の要だったからな。それに、弱いところは俺達に見せなかった。昨日も堂々としていた態度だった。

こうやって見ると、ラピスも普通の女性だった。ハイエルフ、女神様の巫女、大賢者などの肩書きを持っているから強い女性だと、俺がそう勝手に思っていただけだったのかもしれない。

しっかり女性として扱わなくちゃいけないな。


「ラピス・・・」

抱きついているラピスの頭を軽く撫でてあげる。泣きそうな表情だったけど笑顔になってくれた。


「レンヤ・・・」


「ラピス、俺は絶対に戦いでは死なない、寿命が来るまで絶対に死なないよ。だから安心してくれ。」


「ありがとう・・・、約束よ。」

ラピスがゆっくりと顔を近づけキスをしてくれた。



(ん?)


右腕が強く抱きしめられた。

振り向くとアンが唇を尖らせていた。

仕草が可愛かったのでそのまま見ていると・・・


「おはようのキスは?」


ジト~~~~~~~とした目で見られてしまった。


(マズイ、これ以上はアンが怒ってしまう!)


慌てて顔を近づけると再び唇を尖らせてきたのでキスをしてあげた。

「おはよう。」


にへらぁ~~~と、アンの表情がだらしなくなっていたけど、これはこれで可愛いな。


(本当に・・・、俺には勿体ない過ぎる美少女だよ。)


アンがギュッと俺の腕を抱きしめているから、俺の腕がアンの大きな胸に挟まれている感じだ。

いかん!ちょっとムラムラしてしまう。


(煩悩退散!俺の心よ、無になるんだ!)




イチャイチャ過ぎる起床から何とか起きて、今はリビングでゆっくりしている。

さすがに今朝は別々のソファーに座っているよ。24時間ずっとベッタリもちょっと困るからなぁ・・・


アンは昨日の事もあって、俺達の食事を全て任せる事になった。

「うふふ、任せてね。ここには色んな調味料もあるし、私も思う存分腕が振るえるからね。」

そう言って、今朝もウキウキしながら朝食を作ってくれている。


ラピスはというと・・・

「料理以外は大丈夫だから、掃除、洗濯は任せなさい!」

そう言っているが、生活魔法のクリーンを使えば大概はキレイに出来るので、そこはあまり突っ込まないようにしよう。

まぁ、魔法使いの最高峰である【大賢者】だから、魔法で掃除、洗濯を完璧にこなせるのは朝飯前なんだろうし、ここまで出来る魔法使いはいない。


正直、この家(そう呼んでも間違いないだろう)では俺の出番は全く無い。

ゆっくりとさせてもらう事にしよう。



アンの作ってくれた朝食はとても美味しかった。

こんな料理を毎日食べられるなんて本当に幸せだと思う。

あのラピスでさえ食事中は黙って食べる事に集中しているくらいだからな。


「レンヤさん。」


「どうした?」


「人間の町に行く事があったら、色々と案内して欲しいな。城の外の世界には憧れていたし、それにね、色んな食べ物や食材も見てみたいの。そうすれば、レンヤさんにもっともっと美味しいものを食べさせられるからね。」

アンが目をキラキラさせて話をしてくれる。


「任せてくれ。ずっと底辺の冒険者だったけど、これでも色んな町に行っているからな。楽しみににていてくれ。」


「うん!楽しみ!」



「レンヤ、2人で盛り上がっているところ悪いけど、黒の暴竜の事は落とし前を付けないといけないわよ。間違いなく、あなたを死亡扱いにしてギルドに報告すると思うわ。家族のいる身元のはっきりしている死亡した冒険者にはギルドから遺族見舞金っていうお金が出るけど、色々と調べたら、あの連中は遺族に一切お金を渡さずに自分達のものにしているみたいね。これだけでも十分なギルドの規約違反だし、叩けばいくらでも埃が出てきそうね。」

ラピスが神妙な顔で話をしてくれる。


(おい!いつの間にそんな事まで調べている。)


そういえば、昨日、寝る前に何かしていたよな?どうやら単なる重くて痛いだけの女ではないようだ。


「レンヤ・・・」


ギロッとラピスが俺を睨んできた。

「何か失礼な事を思っていなかった?昨日も言っていたけど、レンヤの考えは全て分かるからね。」

そしてニヤッと笑った。

「まぁ、今は気にしないでおくわ。」


(鋭い・・・、鋭過ぎるよ・・・)


「あの連中はどこに戻るのかしら?」


「多分、ザガンの町のギルドに駆け込むと思うぞ。そこのギルドで依頼を受けたからな。」


「う~ん・・・、そんな町の名前は記憶に無いわね。私が眠っていた400年の間に出来た町のようね。この町までどれくらいかかるの?」


「来る時には馬車で4日かけていたよ。今のあいつらは大急ぎで戻っているはずだから、3日で帰るんじゃないか?明日の昼には着く感じだな。」


「分かったわ。あいつらがギルドに着いたら連絡が入るようにしておくわ。私とレンヤは転移魔法が使えるから一瞬で戻れるからね。」


(はいぃぃぃ?)


「おい!また俺のスキルを調べたな。お前、もしかして、俺の個人情報の全てを知っているのか?」


にやぁぁぁ~~~とラピスが笑った。

「もちろんよ。大好きな人の事を全て知りたいのは当たり前じゃない。昨夜、レンヤが眠ってから隅々まで調べさせてもらったわよ。とんでもないスキルの量には驚いたわ。あなたがその気になればこの世界の支配者になる事も可能よ。ついでにあなたのスリーサイズもチェックしておいたわよ。代わりに私のスリーサイズを知りたければ教えてあげるわよ。」


「それは結構・・・」

ラピスがショックを受けた感じになっているが無視だ。ストーカーにも程があるよ・・・、完全に病気だぞ。


「ラピスさん!レンヤさんの情報、全部買わせて!お金ならいくらでも払うわ!」

アンがキラキラした目でラピスを見つめていた。


お前等ぁぁぁ~、ここまでくると変態だぞ!


(ホント、勘弁してくれ・・・)


「それじゃ、私はちょっと出かけてくるわ。夕食までには帰ってくるわね。」


ラピスの足元に魔法陣が浮かび姿が消えた。


(転移魔法でどこかに行ったみたいだな。)



ポツンと2人っきりになった。

ラピスがいなくなったら急に静かになった感じだ。


(確かにアイツは騒々しかったな。)


「ねぇ、レンヤさん、ちょっと聞きたいけど、この玉座の間の外はどうなっているのかな?」


「外か?この城はダンジョンと化しているよ。500年の年月が経っているから、モンスターや魔獣が住み着いて、この部屋から出ればかなり危険だな。しかも、出てくるモンスターのレベルが高い。最低でもBランクだし、Aランクなんてザラだよ。」


「でも、今のレンヤさんなら問題ないよね?」


「多分な。」


アンがニコッと笑った。

「それなら付き合って欲しいな。ちょっと確認したいことがあるんだ。」


「分かったよ。アンの護衛は任せてくれ。」






「ダイヤモンド・ダストォオオオ!」


前に差し出したアンの掌から真っ白な波動が辺りを凍りつかせる。


「「「ブモォオオオオオオオ!」」」


俺達の目の前にいる十数体のオークの足元が凍りつき身動きが出来なくなっている。必死に体を動かしているが、凍ってしまった足元はビクともしなかった。


「ダーク・ニードル!」


アンの周囲に十数本の真っ黒な細長い針が浮かんだ。一斉にオークの群れに襲いかかる。


「「「ブヒィイイイイイイイイイイイイイイ!」」」


全てのオークの眉間に針が突き刺さり次々と絶命していく。


「ブモモモォオオオオオオオオオオオオオオオ!」


絶命したオーク達の後ろから、今までのオークの倍以上の大きさのオークが突進してきた。

あれはオークキングだ。巨大な斧を振り下そうとしている。


アンが静かにオークキングに掌を向けた。

「デス!」


「ブヒ!」

短い悲鳴を上げたと思った瞬間に、膝から崩れ落ちピクリとも動かなくなった。


アンが振り返り俺に微笑みかけた。

「はい、これで全滅よ。今夜のおかずがたくさん集まったわ。それと、レンヤさんの収入もかなりになるね。」



俺とアンは魔王城の中を歩いている。

アンがあのホールの扉に手をかざすと無事に開いた。

何で魔王城の中を歩いているかというと・・・


「ここを旅立つ前に私の部屋に行きたいの。色々と持っていきたい物があるからね。」


そうだ、この魔王城はアンの家でもあった。


さすが住んでいただけあって、城内を迷う事無く歩いている。

誰も足を踏み入れた事が無い2階へと上がっていった。

しかし、500年も放置されてしまっている城なので、内部は魔物やモンスターが住み着いていてかなり危険な場所になっていた。

エンカウント数は多くはないが、魔物のレベルが高い。

最初の戦闘はいきなりSランクのミノタウロスが出てきた。


アンが1歩前に踏み出すと魔法を打ち出した。


「エアロ・スライサー!」


円盤状の大きな風の刃が『スパッ!』とミノタウロスを縦に両断してしまった。


縦に輪切りにされてしまったミノタウロスの死体を、アンが嬉しそうに見ている姿にはちょっと驚いた。

「ミノタウロスのお肉って本当に美味しいのよ。今夜はステーキね。でも、どうやって持っていこう・・・」


「任せろ。」


俺は収納魔法でミノタウロスの死体を収納する。アンがとても喜んでいた。


「レンヤさん、すごい!この魔法って使える人族を見たのは初めてよ!これなら遠慮しないでどんどん倒せるわね。ふふふ、ここは食材の宝庫みたいね。さぁ、狩るわよぁおおお!」


アンに変なスイッチが入ったみたいで、ちょっと怖い・・・


しかし、高ランクモンスターを倒して収納していけば、ギルドに戻った時に一財産になるな。収納内は時間が止まっているから素材が劣化する事も無い。

よし!俺も頑張ってモンスターを倒すぞ!

アンとラピスを養えるくらいにはならないとな。昔の俺とは違う、これからはちゃんと冒険者として活動が出来るはずだからな。



こうしてオークの群れに遭遇したのだが、アンがあっという間に全滅させてしまった。


「俺の出番が・・・」


オークは単体ではB~Cランクのモンスターだけど、集団で戦う羽目になってしまえば一気にランクがAになってしまう。集団戦はやはりかなり危険を伴うものだ。しかも、一緒にいたオークキングはSランクに近いAランクだ。あの黒の暴竜だと間違いなく全滅だっただろうな。


それをアンは全く歯牙もかけずに瞬殺ときた。さすがは魔王の娘は伊達でないのを実感したよ。魔法に関してはラピスに匹敵するのでは?と思う。


オーク達の死体を収納し、アンと一緒に城の奥へと進んでいった。



「アン、あれは?」


「リビング・アーマーね。この城の防衛システムの1つね。食べらないし破壊しましょう。ギルドには?」


「いや、かなりボロボロだから売っても大した金額にならないな。」


「分かったわ。マジック・アロー!」


アンの掌から数十本の光の矢が打ち出される。


ドドドドドォオオオオオオオオオオ!


粉々になって消し飛んでしまった。



「あれはバシリスクね。肉も血も毒だから食べられないわね。」


(おい・・・、さっきから思っていたけど、アンの基準は食べられるか食べられないかなのか?まぁ、あれだけの料理の腕とラピスに匹敵する戦闘力だ。モンスターはどれも食材に見えるのかもしれない。)


バシリスクは危険度Sランクのモンスターだ。アンにとっては道端にある石ころの感覚にしか思っていないのでは?


「あれはギルドでもダメだ。あの素材は碌な用途にしか使われないから、流通禁止素材として認定されている。持っているだけで罪なるぞ。」


「そうなの。アレは切ったりして毒を巻き散らかすのも嫌だわ。ブラック・ホール!」


バシリスクの背中のすぐ上に黒い小さな玉が出現した。


バキバキバキ・・・


体が折り畳まれながら黒い球に吸い込まれてしまい消滅してしまった。


「これなら後始末もしなくていいから楽ね。」

『褒めて!褒めて!』の表情で、アンが嬉しそうに俺を見ている。


「アンの強さって予想以上だよ。」

そう言ってアンの頭を撫でてあげると、とても嬉しそうにアンが微笑んでいた。



しかし・・・


今回の俺って必要ある?アンが全部瞬殺しているんだが・・・


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