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136話 バンパイア達との対決④

【こ、こちらアルファ・ファイブ!】


「どうした?アルファ・ワンは何をしている!」


【エッジ様!アルファ部隊は私を残して全滅に・・・、部隊長は真っ先に滅ぼされれしまい、このままではデルタ部隊と同様にぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!】


「アルファ・ファイブ!どうした!何が起きているのだ!」


通信の魔道具から男の切羽詰まった声が聞こえる。


【ひっ!く、来るなぁああああああああああ!エッジ様!我々は決して手を出してはいけない存在に手を!】


「だからどうしたのだ!」



【あ、悪魔が!白い悪魔がぁああああああああああ!や!止めてくれぇええええええええええ!うぎゃぁあああああああああああああああああああ!】



【ジジジ・・・】



魔道具からはノイズだけしか聞こえてこない。


「一体、何があったのだ?」


エッジと呼ばれた男が目を閉じ、ここまでに至った経緯を思い出していた。


(確か・・・)






「聖女様、どうぞ私に付いてきて下さい。お会いしたいお方がいますのでこちらへ。」


俺はそう言って聖女を勇者達から引き離し孤立させる事に成功した。

いくら聖女だろうがたかが人間の女、序列四位の俺の敵ではない!しかもだ!俺はこの教会の暗部の頂点に君臨している。序列は四位となっているが、魔法以外の戦闘能力では法王様の次だと自負出来る。


(ふふふ、こんな簡単に聖女が1人で俺に付いてくるとはな。)


ちょろい!


勇者パーティーとはどれだけ甘い集団なのだ?

相手の実力も分からず、分断されている事にも気付かないのか?

ここに来るまでにも我らバンパイアの襲撃はあっただろうに、この街に来てからはパレードにもホイホイと付き合っていたし、勇者パーティーには緊張感の欠片もないのもちょっと拍子抜けだった。



3ヶ月前にフォーゼリア王国にいた聖女を攫おうと暗部を送り込んだが、全て返り討ちにされ首だけが送られてきた時は侮れないと思った。

しかし、あの時に送り込んだのは我らみたいな精鋭と違い、人間だけの部隊のカスみたいなメンバーだった。

法王様がこれで良いと言われたから命令に従ったが、やはり我々バンパイア、特に精鋭を送り込めば良かったと後悔している。


(おかげでこんな二度手間をする羽目にならずに済んだのに・・・)


まぁ、今回は聖女を攫うのではなく抹殺との指示が出ているから、遠慮せずに俺達は仕事を出来るから楽しみだ。


(それにしても・・・)


ここまで聖女が美しいとは思わなかった。

俺の憧れのナブラチル様よりも美しく気品がある。

殺すのは勿体ないが、殺して死体になってからでも俺の力なら眷属として奴隷にする事も可能だろう。

俺の操り人形の聖女として、この国以外の教会を取り込むのも出来るはずだ。

俺の眷属になれば死体だろうがあたかも生きているように見えるからな。誰にも気付かれないだろう。


俺の後ろにいる聖女をチラッと見たが、これだけ無防備に歩いているとはな。

そろそろ例の場所に差し掛かる。


ジッとタイミングを待った。


(今だ!)


俺が通過した廊下の床を聖女が通った。



バン!



いきなり床が割れ、真っ暗な暗闇が覗く。


聖女は声も出さずに落とし穴へと落ちて行った。

危惧していた聖女の浄化魔法も使う暇すら無かったようだ。


「ふふふ・・・、あまりの事で驚く間もなく落ちていったか・・・、さて、地下は魔物が溢れているし、我らの精鋭も待ち構えている。それ以上に10m以上の深さの落とし穴に落ちたのだ。たかが『普通の人間の女』、運が良くても落下の衝撃で重傷には間違い無い。どこまで生き永らえるのかな?この世の地獄を味わって死ぬがよい。」


バタン


落とし穴の蓋が閉まり、元の通路に戻った。

こうして見るとどこに落とし穴があるか分からない程に普通の通路になっている。


「だが・・・」


あまりにも呆気なさ過ぎた。

500年前の魔王との戦いを生き延びた者とは思えない程に簡単過ぎる。


エッジの背中に言いようのない不安が押し寄せていた。






SIDE  ソフィア


(まさかこんな手を使うとはねぇ・・・)


落とし穴に落とされ真っ逆さまに落ちている最中なのね。

このまま頭から落ちてしまえば確実に死んでしまうでしょう。


「まぁ、こんな罠で私を殺すなんて無理だけどね。」


スタッ!


空中でクルッと回ってちゃんと足から着地したし、私の体には何一つダメージは無さそうね。

落下時間から計算すると10m程の高さから落ちたみたいね。

これくらいの高さなら音も立てずに、問題無く着地は出来るわ。


(私の身体能力を舐めないでもらいたい。)


落とし穴のトラップによくある針山や毒池も無かったし、単に私をこの地下に落とすのが目的だったのかしら?


「ここは?」


グルッと周りを見渡したけど、どうやらホールのようね。

嬉しい事に真っ暗な暗闇ではなかったわ。天井に所々がほんのりと輝いている部分がある。そのお陰か、薄暗いけどある程度視界が確保出来るので助かるわね。


そしてこの部屋に落とされてから感じる気配・・・



ズル!



何か重い物を引きずるような音だわ。

そして圧倒的な存在感を感じる。


目が慣れてきたのでどんなものか分るようになってきた。


「これは大物ね。」


血のような赤黒い鱗でびっしりと覆われている大蛇がいた。

しかも、この大蛇の頭は私の体くらいあるなんて・・・、

私なら簡単に丸呑みにされそう。

ここまで規格外の蛇なんて初めて見たわ。しかも頭はこの一つだけではない!胴体から何本も、十本以上の首が生えているのが確認出来るわ。


「まさか教会の地下でヒュドラを飼っているなんて予想外よ。」


10本以上ある全ての首が私をジッと見つめていた。どうやら私を餌としてロックオンしたようだわ。


「私を食べればお腹を壊わすよ。もちろん食べる事が出来たらね。」


そう言っても言葉が通じる訳もないわね。

こんなところで時間をかける訳にいかないし、さっさとこの部屋から出ていく事にするわ。


ヒュドラがジリジリと私との距離を詰めてきている。

一気に襲いかかってこないのは私を警戒しているのかしら?


ヒュドラ・・・


かつてレンヤさん達と一緒に戦った事があったわ。

あの時は私は後方で状態異常無効のバフをかけていたわね。ヒュドラの毒攻撃は厄介だったしね。

レンヤさんとアレックスさんで何とか倒した記憶が蘇ってきた。

しかも、目の前にいるヒュドラはあの時よりも遥かに大きいわ。


確か、あの何本もある頭は一気に切り落とさないとすぐに再生するはずね。

そのおかげで倒すのに苦労したのよ。


今は私1人・・・


ヒュドラに向かって構えます。


「かつての私と違うわ。もう1人でも戦える!」


瞬歩で一気に距離を詰めます。いきなり私が目の前に現れたような状態なので、ヒュドラが慌てているわね。

その隙を見逃しません!


「はぁああああああああああああああああああああ!」


無数の突きがヒュドラの無数の頭に突き刺さります。


ズドドドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


パァアアアン!


「白狼千手拳!」


突きのラッシュが終わり残身をとりました。



・・・



「あれ?ヒュドラは?」


目の前にいたヒュドラが消滅していました。


(そんなに強く攻撃をしていないのにねぇ・・・)



「むっ!」



近くに気配を感じます!


(これは?)


どうやらバンパイアっぽいわ。


ホールの壁に手を添えます。

軽く壁を叩くと厚みが分かりました。大体50㎝ほどかな?

気配のするバンパイアはどうやらこの壁の向こう側にいるみたいね。


(しかも3人!)


だけど相手は私には気付いていないみたい。


(そうなれば・・・)


先手必勝!ね。


壁に拳を添えます。

グッと下半身に力を込め、足首から膝、腰へと体の螺旋運動のエネルギーを拳へと集中させました。


「覇っ!」


ドオォオオオオオオオオオオン!


白狼神掌拳基本の発勁です。

マグナムやファントムほどまで力を込めていないから、地下が崩れる事は無いと思いますが・・・


「それでもかなりの大穴が出来ちゃったわね。」


開いた穴から通路を覗き込むと・・・


「あらら・・・」


気配察知で確認したバンパイア3人が吹き飛んできたがれきで大怪我をしていました。

だけどバンパイア、怪我の部分から白い煙が出てみるみるうちに傷が塞がっています。この大穴を開けたのが私と認識したみたいで、とても鋭い視線で私を睨んでいました。


(さすが、そう簡単に倒されないようね。)


「この聖女めぇええええええええ!何をしやがったぁああああああああああ!」


3人が激昂しながら私に襲いかかってきました。


だけど・・・


「遅い!」


しかも!同時に襲いかかろうとしているのでしょうが、連携が上手くとれていないです。

こんなにタイムラグの大きい連携では簡単に個別撃破されますよ。

右足を踏み込み、右腕を突き出すと1人目の鳩尾に拳が突き刺さりました。


ドン!


「げふぉおおおおお!」


蛙が潰れたような悲鳴を上げましたが、そのまま肘を曲げ顔面に肘を叩き込み吹き飛ばします。

すぐ後ろから2人目が爪を伸ばし私を切り裂こうとしました。


スッ・・・


体を90°捻ると鋭く長く伸びた爪が私の目の前を通り過ぎます。

軽く相手の手首に手を添えそのまま下へと腕を下げると、相手は何も抵抗出来ずにバランスを崩し、顔面から床へと倒れてしまいました。


ズン!


そのまま後頭部を左足で踏みつけ、頭部を床にめり込ませ大人しくさせます。


「こ、このぉおおおおおおおおおおお!」


3人目が剣を振りかぶりながら私へと切りかかってきました。


ビタッ!


「う、嘘だ!」


男が驚愕の目で私を見ています。

相手の剣を私の人差し指と中指で挟んだだけなんですけどね。ここまで驚く事?


パキン!


そのまま手首を捻ると剣が刀身の真ん中から折れてしまいました。


(脆い剣ね。)


驚きで硬直している隙に軽くジャンプし、踵を頭へと落とします。


「ぎゃ!」


短い悲鳴を上げましたが、そのまま引き倒し顔面から床にめり込ませました。

相手はバンパイア、人間よりも遙かに高い耐久力に、異常ともいえる再生能力を持っています。

やるからには遠慮せずに叩きのめさないとすぐに復活されても面倒なだけです。


「ふう~」


3人揃って灰になって消滅してしまいました。


「あと何人いるのかしら?私の気配察知では残り7人と確認したけど、他にもいるのかしら?」



「この化け物めぇえええええええええ!」


通路の奥から叫び声が聞こえてきました。


キラッ!


「む!」


声の聞こえた通路から何かが光った気がします。


パシッ!


咄嗟に左手を前に出し、飛んで来た物を掴みました。


「ナイフ?これだけ小ぶりだと暗器ね。」


気配を感じ咄嗟に飛び上がりました。

天井が高いのでかなりの高さまで飛んでも問題ないのは助かります。

クルッと回転をし、天井に両足を付け一気に下へと飛び出しました。


「そこ!」


高速で私へと飛んで来た男の後頭部を鷲掴みにし、そのままの状態で床に叩きつけました。


「うごっ!」


顔面が床にめり込んだまま、男がピクピクと痙攣し、さっきの3人と同様に塵となって消えてしまいます。



「聖女がここまでの化け物だって聞いていなかったぞ。」



直前に消滅させた男が飛んで来た通路の奥からまた声が聞こえてきました。

すぐに薄暗い通路の奥から人影が出てきました。

しかし、私の事を化け物って呼ぶなんて失礼ですわ。

だけどその男はニヤニヤと笑っていますね。


「先程まで動きを見ていたが、俺の敵ではないな。」


(へぇ~、大した自信家ね。)


「もしかして?今までのバンパイアって、私の実力を確かめるための捨て石なのかしら?」


「そうだ、俺は慎重な性格なものでな。たかが人間の女とはいえ、聖女の肩書きは侮れん。万が一の事もあるからな。」


「へぇ~、そうなの。」


男はまだまだニヤニヤしている。


「つい今言ったが、貴様は俺の敵ではないな。貴様には2つの選択をさせてやる。1つはこの俺、デルタ・ワンの奴隷になり、血を吸われて生きる屍となって俺のコレクションの1つになるか?2つは今、俺に殺され全ての血を抜かれグールに堕ちるか?」


「何?どっちも血を抜かれて死ぬ選択しかないじゃないの?」


そんなのどっちもお断りよ!


(それにね・・・)



ザッ!



相手が瞬きをした瞬間に一気に距離を詰め前に立ったわ。


「油断し過ぎよ。」


ふふふ、面白いわね。こんなに慌てているなんて、今までの強気な態度は何だったの?


グッと腰を屈め超低空のアッパーを放ったわ。



ズドン!



「あ”あ”あ”あ”あ”・・・」



何とも言えない顔になっているわね。それもその筈・・・




私の右拳が深々と股間に突き刺さっているしね。

男にとっては最低最悪の攻撃よ。




(ご愁傷様・・・)




そのまま拳を振り抜くと錐揉みをしながら天井へと飛び上がり、



ゴシャァアアアアアアアアア!



派手な音を立てながら天井にめり込んで、



サァァァァァ・・・



他のバンパイアと同じように砂となり消え去ってしまいました。




「あなたは私の敵にもならなかったようね。相手は残り5人、少しは楽しめるかしら?」




いつもの聖女らしい優しい微笑みのソフィアはここにいなかった。

肉食獣のようなどう猛な笑みの狩人と化したソフィアの姿がここにあった。


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