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135話 バンパイア達との対決③

SIDE  シャルロット


「やっぱりこうなったのね。」


シャルロットが「はぁぁぁぁぁぁ~~~~~」と深いため息をしている。

その隣のフランも同じようにため息をしていた。


シャルロット達の前にはレンヤやラピス達と同じようにバンパイア達がズラッと並んでいた。


「ねぇ、ママ・・・、部屋に入るなりこうして待ち構えているなんて、こいつ等って他に芸が無いのかな?」


げんなりした顔でフランもバンパイア達を見つめている。


並んでいるバンパイア達の中から1人の男が前に出てきた。

ニタニタ笑いながら深々と頭を下げる。


「私は序列七位のドットと申します。はて、あなた様はフォーゼリア王国第3王女のシャルロット様ではございませんか?確か勇者様とご婚約されたばかりで?隣のお嬢様はどなたの子で?」


ジッとフランを見つめている。


「ママ・・・、この人、何か気持ち悪いよ。」


ギュッとフランがシャルロットの腕にしがみついた。


「ママとは?」


ドットと名乗ったバンパイアが考え込んでいる。

そして、ハッと我に返った。


「まさか、王女様とあろうお方が婚約前に子供を作られたと?何て破廉恥な王女なんでしょうね。くくく・・・、まぁ、そんな事はどうでも良いのです。私はこの子にお話がありますからね。」


「破廉恥って!失礼ね!」

シャルロットがフランの前に立ち、キッとドットを睨みつけた。

「フランは確かに私の子供よ。でもね、この子はレンヤさんと婚約してから出来た子なのよ!」


「まさかたった3ヶ月で生まれ、このように成長された子とは・・・、くくく・・・、益々興味が湧いてきましたよ。」


まるでフランを舐め回すようにじっとりとねっとりとした視線でドットがフランを見つめている。


「いや・・・、ママ・・・」

フランが更にギュッとシャルロットに抱きついてしまった。

「ダメ、あんな気持ち悪い目付き・・・、生理的に受け付けないよ。」


「フランを困らせるなんて・・・、フラン、ちょっと離れていて。」


フランがシャルロットから離れた瞬間、シャルロットの背後に赤い魔法陣が浮かぶ。


「召喚!バトルドレス!」


魔法陣の中から真っ白に輝く甲冑が浮かび上がる。


「装着!そしてぇえええ!出でよ!グーングニル!」


甲冑が分離しバラバラになってシャルロットの体へ飛んで行く。



ガシャァアアア!



シャルロットの全身に真っ白な女神の鎧が装着される。

アイスブルーの瞳が徐々に黒く変化し、背中には鎧と同じ真っ白な翼が生えた。

そして、その手には鎧と同じ純白の槍が握られていて、その槍から青白く稲妻が放電していた。



「「「おぉおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」



バンパイア達が一斉に声を上げた。

間髪を入れず一斉に全員が床に膝を付き深々と頭を下げてしまった。


「何が起きたの?」


いきなりの出来事にシャルロットもフランも理解が追い付かず、困惑した顔でバンパイア達を見つめている。

しかし、何が起きるか分らないので、槍を構え身構えていた。


「女神様!落ち着いて下さい。私達は戦う意志はありません。」


先頭のドットが頭を上げ、先程とは違い真剣で真面目な視線でシャルロットを見つめていた。


「どういう事?それに私の事を女神様って?」


「ここにいる我々は敬虔な女神教の信者でございます。この教会の法王達は教会を隠れ蓑にし人間を支配しようと画策していますが、我々はそのような考えは一切ありません。バンパイアであろうが、我々は女神様を信望し、真っ当な活動を行っている者達なのです。」


「その話を信用しろと?」


槍を構えているシャルロットの表情が険しくなる。


「我々が信用出来ない事は重々分かっています。みなさまはメルボンの街、エタッドの街と我々バンパイアの襲撃を受けております。この状況で我々を信用して欲しいと言う事自体が虫が良すぎる話だと・・・、ですが、我々は黙ってチャンスを待っていました。こうして女神様が我々の前に現れる時を!そうでもしないと、我々が法王に滅ぼされてしまうからです。」


「私が女神だと知っていたの?」


「いえ、シャルロット様が女神様だとは最初は思っていませんでした。こちらのお嬢様が女神様の生まれ変わりだと全員がついさっきまで思っていたのです。」


「どうしてそう思っていたのかしら?」


「実は3ヵ月前に起こったあなたの国での騒動の事は、既に我々教会も調査を行っていました。その時に王都の教会地下で封印されていました聖女様が復活された事も分っていました。」


「そうね、あたながたの教会の刺客がソフィア様を攫おうとした事もあったわね。まぁ、その時はレンヤさんが返り討ちにしたはずよ。」


ジト~とした目でシャルロットがドットを見ていた。

その視線にとても申し訳なさそうに頭を下げている。


「そ、それは・・・、確かに我が教会の法王直属の影が勝手に行った事です。誓って我々教会の意志ではありません!そして、我々は聖女様以外の情報も掴んでいました。」


「それが女神の降臨って事?」


「そうです!あの戦いの最中に女神様が降臨された情報は掴んでおりました。聖女様と女神様!お2人がこの時代に降臨されたと分って我々穏健派は歓喜しました。ですが、それ以上の情報が手に入らず、女神様の正体は分らずにいました。まさか王女様が女神様の生まれ変わりだとは思わず大変なご無礼を!そのお姿はまさにこの教会に伝わっています女神様のお姿で間違いはございません!」


全員が再び深々と頭を下げた。


「「「女神様の御尊顔を拝見出来るとは、これ以上の幸せはございません!」」」



身構えていたシャルロットが槍を下ろした。


「まさかこんな展開になるなんてねぇ~~~」



「「「我ら一同!生涯、女神様であるシャルロット様に忠誠を誓います!」」」



「まぁまぁ、ママ。無駄な戦いをしないで済すむから良いことじゃないかな?」


フランがニッコリとシャルロットに微笑んだ。


「そうね、女神様の降臨の事はちょっと違うけど、まぁ、私も一応女神様の力を使える事だし、あながち間違っていないか・・・」



「申し訳ありませんが・・・」


ドットが頭を上げとても申し訳なさそうにしている。


「何か他にも?」


「い、いえ・・・、お隣のお嬢様も只者ではないと思われますが?初めてお会いした時から神聖なる力を感じておりました。お子様と言われましたし、やはり女神様のお力を受け継いでいらっしゃるのですか?」



カッ!



フランが輝き、光が消えると大人の姿に成長したフランが佇んでいる。

しかも、背中には真っ黒な大きな翼が生えていた。



「「「こ、これは!」」」



男達が再び驚愕の声を上げる。


「この魔力は我らバンパイアと同じ魔力・・・、ですが、あまりにも桁が違い過ぎる・・・、我らバンパイアを遥かに凌駕する力に、色は違えど女神様と同じ翼・・・、あなた様は何者ですか?」



フォン!



フランの周囲に大量の赤黒い結晶のような剣が浮いていた。


「何と!これは!」




「もしや・・・、血闘術ブラッド・アーツ・・・、しかも、これだけ大量に具現化されるとは・・・」



[は!私の記憶が確かなら・・・」


ドットの目から涙が止めどなく溢れてきた。


「ドット様!どうされたのですか!」


後ろにいた男がドットの変化に気付き、慌ててドットに駆け寄った。


「わ、私は何て幸せ者なのだ・・・、女神様だけでなく、我らの祖なるお方にこうしてお目にかかれるとは・・・」


「「「我らの祖?」」」


男達は一瞬何か分からないような感じだったが、一斉に我に返ったように土下座をしてしまった。

ドットも同様に深々と土下座を行っていた。


「「「神祖様のご降臨!心よりお祝い申し上げます!」」」


「よく分かったわね。」

フランがニヤリと笑う。

「あのデブは私の正体が分かったのにも関わらず、無謀にも私に歯向かったわ。あなた達は?」


「「「め、滅相もございません!」」」


男達が床にめり込むのでは?と思う程に更に深々と頭を下げている。


「まぁ、別に私はあなた達の上に立つつもりも無いし、この教会の指導者は他に適任者はいるからね。私はあくまでもパパとママの子供として生きていくの。面倒な事は嫌いだし、余計な詮索は無用って事で、あえてこうして私の正体を明かしたのよ。分かった?」


「「「ははぁあああああああああ!神祖様の御心のままに!」」」


「時々はちゃんと真面目にしているか様子を見に来るわ。もし、ろくでもない事をしていたら・・・」



ジャキッ!



宙に浮いていた剣の切っ先が一斉に男達へと向いた。


「私の血は単に武器になるだけじゃないわ。対バンパイア必殺の毒にもなるからね。消滅されたくなければ、ご先祖様の願い『戦いのない平和な世の中に生きていたい』を叶えてね。」


「「「そのお言葉!生涯お守りさせていただきます!」」」



「フラン」


呆れた顔でシャルロットがフランを見ていた。


「何、ママ?」


「あなたの方が私よりも上に立つ資質がありそうね。ここのバンパイア達はあなたに任せる?」


しかし、フランが首を横に振った。


「いいのよ。ソフィアママ達はナブラチルさんを代表に考えているし、そんな事をしたら私がパパと一緒にいる時間が無くなってしまうじゃないの。そんなの嫌、パパとの時間を一番優先するの!」


「ふふふ、フランらしいわね。」

優しくシャルロットがフランの頭を撫でている。

「あなたはレンヤさんの初めての子供だしね。今のうちに存分に甘えなさい。私が許すわ。」


「うん!ありがとう、ママ!」


そしてシャルロットがドット達の方へ顔を向けた。


「この教会の法王は私達が片を付けるから、みなさんはここで待っていてもらえるかしら?そう時間はかからないと思うから少しの辛抱よ。」


「「「ははぁああああああああああああ!」」」


男達が深々と頭を下げた。


「戦わなくて済んで本当に良かったわ。」


「そうだね、ママ。」


「それじゃお父さんのところに行こうか?多分、もう終わっているはずよ。」


「うん!」


フランが嬉しそうに返事をし、シャルロットの手をフランが握る。



フッ



掻き消えるように2人の姿が消えた。


「転移の魔法とは・・・、伝説の魔法を軽々と使えるとはさすが女神様です。ふふふ、やる気が出てきましたよ!」


ドットが嬉しそうに立ち上がり、後ろに控えていた男達へと振り返った。


「皆の者!我らの悲願がとうとう成就される時が来た!我々には女神様!神祖様がいらっしゃる!我ら穏健派を盛り上げていこうではないか!」


「「「おおおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」


ドットが拳を振り上げると男達も合せて拳を振り上げる。

妙な一体感で彼らの心が一つになった瞬間だった。






「何なの、これは?」


「どうやら修羅場があったみたいね。パパには同情するわ。」



レンヤのいる部屋へと転移したシャルロットとフランだったが、目の前の光景に唖然としている。


それもその筈、ボロボロの服に煤だらけの姿になって床の上で気絶しているテレサに、同様の状態で床に転がっている数十人の女性がいた。


レンヤは・・・


気を失っていてラピスの膝枕で介抱されている。

そのラピスは嬉しそうに微笑んでレンヤの頭を撫でていた。



「当分はラピスママがパパを独占かぁ・・・」


「仕方ないわね。どう頑張ってもラピス様とソフィア様にまだ勝てないしねぇ・・・」


「ママ、頑張って強くなろうね。ママと私でパパを独占しようね!」


2人がガシッと固く握手をしていた。

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