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134話 バンパイア達との対決②

「あまりにも弱くて手応えが無さ過ぎたわ。」


テレサがそう言って俺に微笑んだ。


(すげぇ~)


あの神の剣技である『無蒼流』を完璧に使いこなしている。

さすが『剣神』の称号を持っているだけあるよ。

俺もここまでの剣捌きは無理だろう。


「しかしなぁ・・・」


今のテレサは騎士団を辞めて俺の専属メイド兼護衛となっているからメイド服を着ているんだよな。

以前に騎士団にいた時は騎士団の制服を着ていて、見た目からも凛々しく騎士の佇まいだったけど・・・

戦いで動きやすいようにスカートは普通の長さよりも短い。ミニスカートまでではないけど、テレサのスラっとした足が見えているが、不思議といやらしさが無いんだよな。

何だろう?騎士服よりもメイド服が似合うって思う俺は変なのか?


(まぁ、これはこれでテレサの可愛い姿を見れたからいい事だと思っていよう。)


さっきのヤンデレが表に出てこない事前提の話だが・・・

やっぱりヤンデレテレサは怖いよ!


「兄さん、何をジッと見ているの?」


(いかん!テレサに俺の視線がバレてしまった!)


何だ?テレサが嬉しそうに俺を見ているぞ。


「ふふふ、私に見惚れていたの?」


ドキッ!


「いや、テレサがこうしてメイド服で戦う姿を始めて見てちょっと驚いただけだよ。前の騎士服とは違ってギャップが激しくてな・・・」


「それって、私が可愛いって事?そう思うの?」


いかん!テレサがグイグイと迫ってくる!


「ま、まぁ、確かに・・・、今のテレサは可愛いかも・・・」


「兄さん!嬉しい!」


ギュッとテレサが俺の腕に抱きついてきた。

そのまま腕に頬をスリスリしている。



「あ、あのぉぉぉ・・・」



(ん?)



「すみません・・・」



俺もテレサも硬直してしまった。


声のした方を振り向くと・・・




・・・




・・・




(やってしまった・・・)


さっきまで重力魔法で床に押さえつけていた女バンパイア達が恥ずかしそうに見ていた。


「ははは・・・」


バンパイアロードのリーバーをテレサが倒してしまったし、俺も安心して魔法を解いてしまっていた事を忘れていた。

重力の拘束から解放されたから今は普通に動ける。

そして、俺とテレサは彼女達の目の前でイチャイチャしてしまったのだよなぁ・・・



(穴があったら入りたいよ。)



俺の腕を抱いているテレサも、顔を真っ赤にして更に腕をギュッと抱きしめている。


既に立ち上がっていた彼女達がペコリと頭を下げた。


「お、お2人のお邪魔をしては申し訳ないと思って、コッソリと出て行こうと思っていたのですが・・・、せめてお礼でもと思い・・・」


うわぁ~~~~~、みんなすっげぇ申し訳無さそうな顔だよ。

彼女達の様子からどんだけ俺とテレサがイチャイチャしていたのか分るくらいだ。


(うぅぅ・・・)


とても気まずい空気が流れていた。






SIDE ラピス



レンヤ達と別れ案内の男の後ろを歩いていた。

とても大きな扉が開くと更に長い通路が続き、ラピスと男が黙々と言葉も交わす事もなく歩いていた。


(さて、だいぶレンヤ達と引き離されてしまったわね。ここまで予想通りとはねぇ・・・)


長い通路の行き止まりに扉があった。

その扉が開きラピスが先に部屋に入り、案内をした男が続いて入ってくる。


「へぇ~、熱烈な歓迎ね。嬉しくて涙が出そうよ。」


ラピスが目の前の光景を見てニヤリと笑った。


屈強な十数人の男達がズラッと部屋の中で待ち構えていた。


バタン!


誰も扉の場所にいないのに勝手に扉が閉まった。

ラピスの後ろには先程まで案内してきた男が立っている。正面には男達がニヤニヤ笑いながら立っている。


正面の男達の中央に立っている1人だけ上半身裸の男が口を開いた。


「ようこそ大賢者、こうして伝説のお方にお会い出来るのを心待ちにしておりました。」


深々と頭を下げ、しばらくしてから頭を上げると・・・


「そしてサヨウナラです。」


真っ赤な目がギラッと輝いた。



「それで?」



しかし、ラピスはいつのも不敵な表情で腕を組みながら佇んでいた。


「「「な、何だと!」」」


初めて男達に動揺が走った。


「バカな・・・、我の邪眼が通じない?エルフごときが我の力を跳ね返す?」



「正体を表わしたわね。」


ラピスがニヤリと笑うと後ろに立っていた男がラピスへと飛びかかろうとした。



「うぎゃぁああああああああああああああ!」



ボシュゥウウウウウウウウウウウ!


突然、男の足下の床が輝き光の柱が立ち上がる。

その光の柱に男が飲み込まれ、絶叫を上げながら消滅してしまった。


いきなりの出来事に男達が呆然としている。

どうやら今の状況が理解出来ていないのだろう。


「レム・・・」


静かになった部屋にラピスの声が響いた。


「へへへ・・・、来ちゃった。」

直後に鈴が鳴ったような澄んだ女の子の声が響いた。

「ラピスお姉ちゃん・・・」


いつの間にか彼女の横に全身が仄かに光輝いている女の子が立っていた。

見た目は8~10歳くらいの金髪・金瞳の女の子が嬉しそうにラピスを見ている。

フランやユア達にも負けない程の美少女だった。


「貴様・・・、誰だ?ここには誰も入る事が出来ないはずだ・・・」


男達の喉が緊張でゴクリと鳴った。


「ラピスお姉ちゃん、誰なのあの筋肉ダルマのむさい男は?シヴァお姉ちゃんが精霊界から出ていっちゃったから淋しくて・・・、つい出てきちゃった。」


「精霊界だと?それでは貴様は?」


女の子の顔が突然不機嫌になった。


「貴様って、私はそんな名前じゃないわ!私にはレムってちゃんとした名前があるのよ!この筋肉ダルマ!」


「な、何だと!この生意気な・・・」

一瞬、男から殺気が溢れたが、すぐに額から汗が流れ始め、女の子を凝視している。

「精霊界?レム?」



「・・・、もしや・・・、レムとは光の上級精霊?」



「あら、よく分かったわね。」


レムが嬉しそうに男を見ていたが、急に視線が鋭くなり全身の輝きが強くなった。


「たかがバンパイア、この私に不敬な態度を取るなんて命知らずね。しかも、私が慕っているラピスお姉ちゃんに何をしようとしているのかしら?どうやら禄でもない事みたいだし、私が消し炭にしてあげようか?」


「レム」


ラピスがレムの頭を優しく撫でた。


「私の事で怒ってくれてありがとうね。でもね、この喧嘩を売られたのは私だから、私自身がキッチリと利子を付けて返してあげるのが筋よ。だから私がお仕置きをするわ。」


「うん!分った。でもね、私にも手伝わせてよね。」



「がはははぁああああああああああああああああああああああああ!何をめでたい事を言っている!」



筋肉ダルマのバンパイアが大声で笑っている。


「貴様らには分らんのか?相手が貴様だと最初から分っていたからな、この部屋に入ったが最後!貴様に勝ち目は無い!おい!もっと出力を上げろ!」


「何で?とても自信満々ね。」


ラピスが再びニヤリと笑った。


「我が名は序列6位のカーク!貴様を葬り去る男の名前だ!ふはははははぁあああああああああああああああ!いくら大賢者の貴様でもこの部屋では単なるひ弱なエルフの女でしかない!」


「へぇ~、その部屋の四隅にある魔道具が切り札なのかな?」


「ふはははははぁあああああああ!よく気が付いたな!この魔道具は封魔の魔道具!それも世の中に出回っているがらくたとは違い、最強の出力を誇る我ら教会の自信作だ!この魔道具の結界の中では我らのようにキャンセラーを装備していなくてはどんな魔法も使う事が出来ん!魔法しか使えない貴様にはどうにもならんだろう?」


今度はカークがニヤリと笑った。


「だが、貴様の美しさは別格だ。エルフというのも差し置いてもこの世に2人もいない程の極上の美しさだ。我の牙を受け入れ、我の眷属となり永遠に我の所有物になるのなら殺さずに生かしてやろう。」



「お断りね。」



「な、何だと・・・」


カークのこめかみが怒りでピクピクと動いている。


「ふふふ、久しぶりにこんなゲスな視線を見たわ。まぁ、私は美しいのは当たり前だし、私を手に入れようとした男は星の数ほどいたわね。でもね、私を好きにしていい男はレンヤただ一人なのよ。だから、アンタはお呼びじゃないの。存在自体が不快だからさっさと消し去るわね。」


「ふ!ふざけるなぁああああああああああ!魔法が使えない貴様なんぞ単なる女!徹底的に、女として生れた事を後悔するまでいたぶってやる!」



「誰が魔法を使えないって?」



ラピスが人差し指を顔の前に立てた。


ポゥ


青白い小さな火の玉が出来上がる。


「ば、バカな!」


カークが驚きの顔でその火の玉を見ている。


ヒュン!


「うぎゃぁああああああああああああああ!」


カークの後ろにいた男の1人が悲鳴を上げた。

ラピスから放たれた青白い小さな火の玉が高速で飛び、その男に命中し全身が青白い炎に包まれていた。


「こ、この魔法はメギド・フレイム・・・、なぜ上級魔法が使える?」


「何でかな?」

ラピスがニヤニヤと笑っている。

「蚊の羽音のような耳障りな音が聞こえるけど、私の魔法を妨げる程でもなかったわね。こんなもので私をどうにか出来ると思ったら大間違いよ。」


「そ、そんなの・・・、あり得ん・・・」


「鬱陶しいから、悪いけど壊すわ。」


瞬間、ラピスから大量の魔力が溢れ出す。


ボン!


部屋の四隅から小さな煙が立ち上った。


「ふぅ、これで耳障りな音も消えたわね。さて・・・」


ギロッとバンパイア達を睨んだ。


「ねぇねぇ、お姉ちゃん。」


クイクイとレムがラピスのローブを引っ張っている。


「レム、どうしたの?」


ニコッとレムが微笑んでいる。


「折角この世界に具現化したから何もしないで帰るのも嫌だし、私を使って欲しいな。ダメ?」


「分かったわ。久しぶりにアレをしようか?」


「嬉しいぃいいい!お姉ちゃん!それじゃよろしくね!」


レムが嬉しそうに飛び跳ねていたが、しばらくすると全身が強く輝き光の玉と変化した。

その光の玉がラピスの掌へと移動する。

グッと光の玉を握ると細長く変化し、金色の光を放つ剣へと変化した。


「ライトブレード、あんた達にとっては最悪の属性の剣ね。」


ジャキ!


ラピスが片手で剣を構え、切っ先をバンパイア達へと向けた。


「バ、バカな・・・、魔法使いが剣だと?」


「別にいいじゃない?魔法使いは剣を使えないって誰が決めたの?私は天才だから何でも出来るのよ。まぁ、師匠の春菜様は剣も魔法も神界トップクラスだし、そんな師匠の指導も大変よ。何度も殺されて生き返らされたか・・・、地獄っって言葉はアレを差すのでしょうね。」



剣をゆっくりと横に構えた。


「シャイン!スパーク!」


水平に剣を振るうと剣から真っ白な衝撃波が飛び出す。


「「「うぎゃぁあああああああああああああああああああ!」」」


バンパイア達の断末魔の悲鳴が響き渡った。


「あら?」


たった1人、カークだけが全身血だらけの姿でヨロヨロと立っていた。


「こ、こんな・・・、我らバンパイアの精鋭部隊が、たった一撃で消滅?不死の我らが・・・」


ラピスがその姿を見ても表情は変わっていなく、相変わらず汚いものを見るような目つきだった。


「へぇ~、少しは根性があったのね。でもね・・・」


一瞬にしてカークの前に移動する。



斬!



「オーバー!ブレイク!」


カークの頭頂から股間まで一気に光の線が走った。その光が徐々に強くなり、カークの全身を飲み込む。


「そ、そんな・・・、我が・・・、不死の我が滅ぶ?嫌だぁああああああああああああ!」


全身が光に包まれ、しばらくするとスッと消えた。

カークがいた場所には何も残っていなかった。


ラピスは構えていた剣を下げ、鋭い視線から元の柔らかい目に戻った。


「ふぅ・・・、久しぶりに気持ち悪い視線を見たわ。思い出すとサブイボが出てしまうし、レンヤ成分を補給してリフレッシュしようかな?」


人差し指を額に当て目を閉じた。


「レンヤを見つけたわ。どうやらあっちも戦闘が終わったみたいね。」



スッ



ラピスの姿が消え、部屋には静寂だけが残った。






「何なのよコレは?」


転移で移動したラピスだったが、目の前の光景に唖然としている。



「「「勇者様、お慕いしています。私達は一生あなた様についていきます。」」」



「「「テレサ様ぁあああ!その凛々しさに惚れてしまいましたぁあああ!女の私達ですが愛して下さい!」」」



目がハートになっている数十人の女性に困れて大変困った顔のレンヤと、数人の女性に追っかけられ逃げ回っているテレサの姿がラピスの目に入った。



「ははは・・・、私帰るね・・・」



真っ青な顔をしたレムだったが、足元が輝くとその姿が消えた。


ラピスが下を向きプルプルと震えている。

全身から真っ黒なオーラが沸き上がり、右腕を頭上に掲げ人差し指を伸ばす。



「エクスプロードォオオオオオオオ(お仕置きバージョン)!」



チュドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッン!



「ぐはぁあああああああああ!」「いやぁああああああああああ!」「「「きゃぁあああああああああああ!」」」


レンヤにテレサ、女性たちの悲鳴が部屋中に響き渡った。



「何で俺達がラピスにお仕置きされなくてならん・・・、理不尽な・・・」



レンヤがそう呟いて気を失ってしまった。

テレサも女性達もレンヤ同様に目を回し気絶していた。



「ふぅ、スッキリ!」



とても晴れ晴れした表情のラピス1人だけが部屋の中で佇んでいた。


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