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130話 序列二位④

(う~ん・・・)


この光景はどうなんだろう?


気絶した女バンパイアだけど、目が覚めたみたいでアズに連れられて家から出てきた。

失禁して服も濡れていたのでローズの服を着て出てきた。

あのスタイルだ。ローズかソフィアの服以外は着られないだろう。

しかし、出てきた瞬間、俺達の顔を見てマッハの速さで俺達へ土下座をしてきた。

ジャンピング&スライディング土下座なんて初めて見た。


「も、も、申し訳ございません!何卒!何卒ぉおおおおおおおお!お許しをぉおおおおおおおおおおお!」


どうやら完全に心が折れたみたいだ。

まぁ、あのドラゴン姿のミドリさんを間近で見ればこうなるだろうな。

俺達全員が束になって戦ってもミドリさんには勝てる気がしない。



ポゥ



何だ?ローズと女バンパイアの2人が仄かに輝いたぞ。


「あら?」


ローズが呟いてから女バンパイアを見つめた。


「そう、あなたの名前はナブラチルと言うのね。でも本当に良いの?」


「はい!」


そう叫んで女バンパイアが頭を上げ、ジッとローズを見つめている。


「私を!あなた様の使い魔にして下さい!私は思い上がっていました!みなさま方にお会いするまでは私は最高の存在だと思っていました。ですが、今!ハッキリと自覚しました!みなさま方の神のごとく存在に私は何てちっぽけなものだと・・・」


「私にティムされるという事は、あなたはバンパイア一族を裏切る事になるのよ。それでも私の使い魔になりたいと思っているかしら?」


「構いません!私はあなた様を殺そうとしました。ですが、こうして返り討ちに会い、しかも!そんな私を殺すどころか助けてくれました。私は殺されても当然のはずなのに・・・、そんな慈悲深いあなた様に仕える事が私の最上の喜びです。」


ローズが腕を組んで「う~ん・・・」と考え込んでいる。

女バンパイアが完全に降伏してローズに従う意志があるから、ティムの情報がローズへと流れていったのだろう。そのままローズが承諾すればティムが完了するはずだ。


「あなたの意志は分かったわ。だけどティムはしないわ。」


「ど、どうしてです?やはり私は滅ぼされるのですか?」


真っ青な彼女に対してローズはニッコリと微笑んだ。


「あなたは私の部下として雇う事にするわ。ナブラチルさん、あなたは使われるよりも人の上に立つ事の方が向いているみたいだしね。」


「はい?どうして?」


「そういう事よ。細かい事は考えない!後は頑張るだけよ!」


「は、はい!誠心誠意頑張ります!」


こうして彼女はローズの部下になってしまったけど・・・

どんな意図があるのだ?


そんな光景をミドリさんは楽しそうに見ていた。




「さて、私は戻りますから、送還の魔法をお願いします。」


ミドリさんがぺこりと頭を下げた。この人は全ての動作が優雅だよ。

この優雅な仕草のコツを、今は俺専属のメイドとして頑張っているテレサに教えてあげたいな。テレサも頑張ってはいるけど、少しガサツなところがあるからなぁ・・・


(いやいや、そんな事はテレサに言えない!)


そんな事を言ってしまうとアイツに何をされるか堪ったものじゃない!


「あ、あなた様は?もしかして?あのドラゴンですか?あなた様の魔力には覚えがあります!」


ナブラチルさんがミドリさんを驚きの顔で見ている。

再び土下座をしてしまった。


「も、申し訳ありません!神のような存在のお方に何と失礼な事を!ほ、滅ぼさないで下さいぃぃぃ・・・」


ミドリさんが彼女の前でしゃがみ、手を取って立ち上がらせた。


「そんなに畏まらないで下さい。あなたは心を入れ替えて頑張ると言いましたね?フローリア様はちゃんと見ています。そう遠くないうちに良い事があるかもしれませんよ。頑張って下さいね。」


「は、はい!頑張ります!」



「ミドリ様、そろそろ・・・」


ラピスが恐る恐るミドリさんに声をかけると、ミドリさんがニッコリと微笑んでくれた。


「分かりました。ラピスさん、とても頑張っていると旦那様にお伝えしておきますよ。旦那様も色々と準備をしていますので、一緒に戦える日を楽しみにしていますね。」


(一緒に戦う?どういう事だ?)


「あなたがレンヤさんですね。本当に旦那様と・・・、あっ、これは内緒でした・・・、ふふふ・・・」


ニコニコ笑っているけど、何を言いかけたのだ?

あの時のフローリア様もそうだし、テレサも何か言っていたよな?

ラピスもそうだ・・・


(俺の秘密って?神の魂と関係があるのか?)


「あまり深くは考えなくてよろしいですよ。」


(はっ!)


ミドリさんの言葉で我に返った。


「レンヤさんは心の赴くままでよろしいです。それが世界を救う事に繋がっているのです。それに難しく考えるのは苦手でしょう?その為に周りにいる彼女達がサポートをしていますから安心して下さい。」


「は、はぁ・・・」


だ、ダメだ!余計に頭が混乱してくる。


(よし!)


もうこれ以上は考えないでおこう!多分だけど、考えても答えが出ないと思う。


ミドリさんの足元に魔法陣が浮かぶと姿が徐々に薄くなってきた。


「それではご機嫌よう、また会える日を楽しみにしていますね。」



ス・・・



「行ったわね。」


ラピスがガックリとして地面に座り込んだ。


「はぁぁぁぁぁぁ~~~~~、疲れたわぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~」


ここまでラピスが緊張していたなんてな。

確かに彼女から感じる力はあのデウス様と同様に底が知れない。

女神様もとんでもない力の持ち主だし、神の世界の女性陣ってどうなっているのだ?あまりにも規格外過ぎる気がする。


(まさか、例の超越神って神は尻に敷かれている?)



『ぶえっくしょぉおおおおおおおおおおん!』



(ん?どこかでくしゃみが聞こえた気が・・・)



「ふぅ・・・、精神的にとっても疲れたから今日はもう休むわ。」


そう言ってラピスが家へと入っていった。


(おいおい、仕事はどうした?)


まぁ、ラピスに文句を言う奴はいないだろうし、ゆっくり休めよ。


ガチャ!


(はい?)


ラピスがドアを開けて出てきたぞ。


「レンヤ、あんたも一緒よ。テレサじゃないけど、今の私もレンヤ成分が必要なの!今日はずっと一緒にいてもらうからね。ローズマリー!後は任せたわ!」


そのままラピスに連れていかれてしまった。


相当のストレスが溜まっていたのか、ずっと甘えられてしまっていたよ。

今日のラピスはいつもと違うラピスで少し新鮮な気分だった。






SIDE ナブラチル


良かったぁああああああああああああああああ!


(死なずに済んだわ!)


もうバンパイアのプライドなんか関係ない!

彼らに敵対する事=全滅は確実よ!

部下達には悪かったけど、この世には絶対に逆らっていけない存在がある事を理解したわ。

しかもよ!危険なのは勇者だけではないわ!ただの人間が神をも使役するって、聞いた事が無いわよ!

フェーデも滅ぼされたのも頷ける。

それによ!この目の前にある家は何なのよ!

伝説の収納魔法をこの目に見れたけど、こんな一軒家が収納出来るなんて・・・

先ほど、あの家の中で目を覚ましシャワーや着替えをしたけど、どんな高級ホテルよりも豪華で立派な内装と家具に声も出なかったわ。


(まるでこの世のものではない感じよ。勇者パーティーって神々の集団なの?そうとしか思えない・・・)


「ナブラチルさん・・・」


(ローズマリー様の声だわ!)


「は、はい!何でしょうか?」


「そんなに畏まらないも・・・」


いけない!ローズマリー様が困っている!

だけど、どう対応したら良いのでしょうか?


「まぁ、この事はおいおい考える事にしましょう。ところで、ナブラチルさんはあのエダットの街を治めていたの?」


「はい、そうです。ですが、もう私以外のバンパイアは誰もいなくなりました。」


「それじゃ、引き続きあの街を治めてもらって欲しいのよ。あなたなら聖都のバンパイア達に気付かれずにいられそうだしね。私達が聖都を解放するまでの時間稼ぎもお願いしたいの。」


思わず片膝を付いて頭を下げてしまいました。

こんな私をすぐに信頼してくれて、重要な役目まで任されてしまうなんて・・・


(感謝しかありません!)


「分かりました!この身がどうなろうが、与えられた役目!必ず全うします!」


「う~ん・・・、ここまで真面目にならなくても・・・」




その後、私は街の教会に戻り人間達と一緒に街を治めていました。

まぁ、私がバンパイアだという事は街の人は誰も知らないし、今までも人間に対しては基本的にはお淑やかなシスターを演じていたので、誰も私を疑いませんでした。


数日経つと・・・


「嘘でしょう?」


あの『聖女』ソフィア様がこの街へと訪れました。

そして正式に私はソフィア様の侍女としてソフィア様にお仕えする事になり、一緒に街の為に頑張りました。

聖都の法王様からの使い魔には


『聖女を含む勇者パーティーに潜入し、パーティーの人員、戦闘力などを内密に調査中。詳細が分り次第追って連絡する。』


と伝えました。


まさか私が二重スパイみたいな事をするなんてね。

もちろん!勇者パーティーの事はかなり下方修正して報告をしました。


ユウ様達はもちろんの事、聖女様と一緒に紹介されたフラン様も私と同じバンパイアでしたが、お目にかかってすぐに分りました。

同じバンパイアでも私とは次元が違うって・・・、お聞きしましたが、やはり神の領域にお入りになられている神祖様だったと教えていただきました。

ユウ様達は真祖様、フラン様は神祖様・・・

私は誰に忠誠を尽くすのかは考える間もなく決意しました。

あっさりと法王様を見切って、このお方達に忠誠を尽くします!



1週間後・・・


聖都は解放されたとローズマリー様から連絡がありました。


すぐにソフィア様がお戻りになられて・・・



「聖女ソフィア様・・・、本当によろしいのですか?」



聖女様が私の目の前でニッコリと微笑んでいます。

そして私へと差し出された人差し指には傷が付けられ血が流れていました。


(手刀でスパッと傷を付けるなんて・・・、称号は聖女ですよね?考えられないですよ・・・)


だけど、先日見たソフィア様とフラン様の模擬戦を思い出します。


(ソフィア様って何者なんですか?)


拳を振れば空が裂け、地面を踏めば地割れが起きるなんて・・・

そのソフィア様と互角に戦うフラン様も化け物です!


ソフィア様へと差し出した私の掌には血が数滴したたりました。

以前はあれだけ欲しかったソフィア様の血でしたが、こうして私の掌にある血を見るととても神々しく、まるで黄金に輝いているように錯覚さえしてしまいました。


その血が掌の中で消えていきます。

皮膚から吸収するなんてあり得ません!バンパイアの吸血行為は経口のはずなのに?


「うっ!」


か、体中が熱い!


まるで体の中心に火の玉が現われたかのように熱い!

汗がダラダラと流れ意識が遠くなってくる!


(どなっているの?)


ソフィア様の血に耐えきれずに私は死んでしまうの?


(そんなの嫌!)


急に頭の中に声が聞こえてきました。



【ハイロードから真祖へと進化しました。】



(えっ!)


【称号『聖女』を獲得しました。聖魔法を取得しました。】


「そ、そんな・・・、魔物の私が称号なんて・・・、しかも、闇の眷属の私が『聖女』?」


信じられない言葉が頭の中をグルグルと回っています。私ってどうなったの?



「おめでとう。」



ソフィア様が私に微笑んでくれました。


「あなたもフローリア様から使徒として認めてもらえたようですね。」


「私がフローリア様の使徒ですか?」


体がガクガクと震えます。

こんな私がフローリア様の使徒と認められるなんて信じられません。


急にあの言葉が思い出されます。

とても優しい表情で仰ったミドリ様のお言葉でした。


『フローリア様はちゃんと見ています。そう遠くないうちに良い事があるかもしれませんよ。』


良い事どころの話ではありません!

聖魔法を使えるバンパイアなんて前代未聞でもありますし、しかも!私も真祖になったなんて・・・


(女神フローリア様・・・)


「ナブラチルさん・・・」


ソフィア様がとても嬉しそうに私を見つめています。


「私はレンヤさんと一緒に旅を続けなくてなりません。この国の事はお願いしますよ。」


「はい!」


私は聖女として!女神様の使徒として!これからの人生をみなさんの為に捧げます!

バンパイアの巣窟となって人々を不幸にしていた教会は私が建て直します!

これが生まれ変わった私の使命!




聖教国の聖女として人々に幸せを!






10年後・・・


「ふふふ・・・、よく眠っているわね。」


私の腕の中には赤い髪の赤ちゃんがいます。

そして私の隣には・・・


「ナビ、嬉しそうだな。」


「だって、この子イザベラはユウ君と私の子だよ。私もとうとう母親になるなんてね。」


そう、超絶イケメンな大人に成長したユウ君がいました。

ユウ君は私が聖女として聖教国の代表となった時に、神殿騎士団の団長として常に私の護衛として一緒にいました。

ユアさんとアズさんは副団長でしたけどね。


こうしてユウ君を間近で見ているけど、非の打ちどころが無い程にイケメンよね。

教会のシスターを始めこの国の貴族のご令嬢達からもかなりのプロポーズを受けたのに、最後は私を選んでくれた。

私は聖女だからずっと独身で生きていくと決めていたのに・・・


(まさかユウ君からプロポーズされるなんてね。)


「ユウ君・・・」


「何?」


「本当に私で良かったの?私は生れて200歳のおばちゃんなのに、もっと若くて綺麗な人もたくさんいたのに・・・」


いきなり唇を塞がれてしまいました。

突然のキスに顔が真っ赤になってしまいます。


「ナビ・・・、歳の話をするとマズいぞ。父さんの奥さんの中には500歳を越えている人がゴロゴロいるんだから、父さんも女性陣の歳の事は話題にしないようにしているくらいだしな。そんな人達に比べればナビなんてまだまだ若い方だよ。」


それはそうですが・・・


「それに、何度も言っているけど、母さんもナビを認めているんだよ。『ナビは頑張っているんだから、あんたがナビを幸せにしてやりなさい!』ってね。まぁ、俺はそんなナビをずっと見ていたし、母さんに言われるまでもなくナビと結婚するつもりだったけどね。」


ユウ君にプロポーズされてから何度も言われた言葉でしたが、何か実感が湧きませでした。

だけど、こうして私が産んだ赤ちゃんを抱いていると、私は結婚したのだと実感します。



「ユウ君・・・、私は幸せよ・・・」



「ナビ・・・、俺もだよ・・・」



イザベラが目を覚まし、ニコニコと私達を見つめ微笑んでいました。


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