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129話 序列二位③

SIDE レンヤ



それにしても・・・

ローズの使い魔になったキラーバット達も、俺とローズの血を与えたらバンパイアに進化するとは驚きだったよ。女神の魂を持つシャルの血で進化したフラン程ではないけど、あの3人も普通のバンパイアを軽く凌駕する存在になった。


ユウは男の子だけど、ユアとアズは女の子なんだよな。

ちっちゃい版のローズだけど、美少女のレベルでいえばフラン以上の美少女だと思う。

その男の子バージョンのユウは美少年どころではないだろうな。

どんな女の子でも虜にするほどではないか?


(ホント、羨ましいよ・・・)



「おっ!」


ユウ達がバンパイア達と対峙している。

ここから感じる魔力だけならユウ達が圧倒的に強いが、戦いは魔力だけでは決まらないしな。

まぁ、あの子達も初めての実践だ、好きなようにさせるか。


「あなた・・・」


ローズが心配そうに俺を見ているよ。


「どうした?ユウ達が心配なのか?」


「いいえ、その逆よ。」


ゆっくりとローズが首を振った。


「あの子達は私が予想していたよりも成長が早いのよ。やり過ぎてしまうかと思って心配なの。あなたもやり過ぎは日常茶飯事だし、あの子達もその血を受け継いでいるからねぇ~~~、この辺りの地形を変えるほどまで暴れるんじゃないかと思って心配しているの。」


(うっ!)


そう言われると・・・


いや!それに関しては俺よりもラピスやソフィアの方が過激だぞ!

確かにオーバーキル気味で戦う事は多いけど、環境破壊までするほどには・・・


(・・・)


心当たりが全く無い訳ではない・・・

『勇者王』の称号に変わってからはどの技もパワーアップしているし、いつもの調子で魔物を倒すと素材すら残さず消し炭にしてしまっている。かなり加減をしないと食材調達どころではなくなっているんだよな・・・


「おっ!」


相手のバンパイアの1人がユウに切りかかった。

だけど動きが遅い。


斬!


予想通りユウが自分の血を武器化して簡単に相手を切り払った。

レッサーバンパイアだと話にならないみたいだな。

ユアもアズも武器を手にして構えている。


俺の見立てでは、あの中央にいる女バンパイアが一番強いのだろう。

男達に指示を出しているし間違いない。

それでも、ユウ達の足元にも及ばないと思うが・・・


「お父さん!」


おっ!ユウが俺達の指示を仰いでいるな。

余りにもあっけないからちょっと戸惑っているのだろう。


「ユウ、あまりやり過ぎるな。ユアとアズにも相手を残しておけ。」


「うん!分かったよ。」


俺に認められてか、嬉しそうに3人が頷いてくれる。

フランやソフィア達との模擬戦ではボロボロにされていたからな。ここで少しは自信を持ってくれれば嬉しいよ。




「いやぁ・・・」


「これ程とはねぇ・・・」


俺もローズも思わずため息が出てしまう。

20人ほどいたバンパイア達があっという間にユウ達に駆逐されてしまった。

しかも、初めての空中戦なのにスピードでもユウ達が上だ。逆に奴らが可哀想に思う程にユウ達が圧倒的だった。


「圧倒的とは分かっていたけど、あの子達はあれでもかなり手加減しているみたいね。」


「あぁ・・・、俺もそう思う。」


それにしても、ここまで圧倒的になるとは予想外だった。

生まれ変わった今の俺達の戦力は異常と呼べるほどだと思う。

500年前の時とは比較にならない程に圧倒的な強さをみんなが手に入れている。

これだけの戦力なら当時の魔王軍ですら圧倒出来るのでは?

当時一緒に戦ったラピスもソフィアもあの頃とは比べ物にならない程だ。まさに凶悪な強さを身に付けて戻って来た。


(特にソフィアが・・・、あれは異常だよ。)


テレサはミーティアに選ばれたが、テレサの強さはアレックスをも凌いでいるのは実感している。



アンの理想とする世界・・・



その為には邪神ダリウスを倒さなくてならない。そして、その部下である魔神、魔王も!


それが俺が生まれ変わった意味だろうな。

そして、アンが俺と出会った運命も、真に平和な世界を作る為に必要な事だったのだろう。


ここまで圧倒的な力は時にはこの世界に恐怖をもたらす可能性もある。

だけど、俺もアン達も恐怖で支配する気持ちは無い!


この力はみんなを笑顔にする為に使う力だと常に自覚しておかないとな。




「どうやら終わったみたいね。」


ローズが呟くと、確かにもう相手のバンパイア達は1人を残して全滅していた。

あの女バンパイアが逃げようとしているけど、ユウ達3人を相手では逃げる事も無理だろう。


(むっ!)


急に方向を変えて俺達へと飛んでくる。

俺達となら勝てると思ったのか?


「私もちょっと試したいスキルがあるから、今、使ってもいいかな?」


ローズがニッコリと微笑んだ。


「分かったよ。だけど程々にな。」


「分かっているわよ!だけど、あなたから貰った称号を試す機会が無かったから、何が出てくるか分からないし、万が一の時は助けてね。」


おいおい、俺の手に負えるものを頼むぞ。


「ふふふ、『召喚士』ローズマリー!頑張るわよ!」


ローズが両手を頭上に掲げ呪文を呟いた。

すぐに遥か上空に赤い魔法陣が浮かんだけど・・・


(おい!これは!)


魔法陣の大きさがハンパない!どんな大物を呼び出すつもりだ!


「あらら・・・、ここまで大きい魔法陣なんて・・・」


召喚魔法を唱えたローズすらビビっているが、本当に大丈夫なのだろうか?


ゾクッ!


「こ、これは!こんな圧倒的なプレッシャーは初めてだ!」


魔法陣から尋常ではない魔力が溢れている。王城で戦った魔神達よりも遥かに凶悪な魔力だ!

邪神でも呼び出すつもりか?


ズズズ・・・


魔法陣から巨大な物体が降り始めてくる。

緑色の巨大な・・・


「嘘だろう・・・、こんなの俺でも相手出来ないぞ・・・」


魔法陣から出現したモノは・・・


「ドラゴン!いや!そんな生易しい存在ではない!」


全身が緑色に輝いているが、俺の知っているドラゴンとは全く違う。大きさも桁が違う!


(エンシェントドラゴン?いや、それとも違う。)


エンシェントドラゴンはこの世界では最強のドラゴンだ。

前世では1度だけ見た事があるが、その最強と言われていたドラゴンでも全長は30メートルほどだが、目の前のドラゴンは50メートル近くはあるのではなかろうか?それほどまでに巨大だ。

しかもこのドラゴンの鱗は単なる緑色ではない!鱗1枚1枚がまるで宝石のように輝いている。


「こんなドラゴンなんて見た事が無い・・・」


「なんて綺麗なドラゴンなんでしょう・・・」

ローズがうっとりした表情で上空に浮いているドラゴンを見つめている。

「まるで鱗1枚1枚が宝石のよう・・・」


そのドラゴンだが、俺達へと向かっていた女バンパイアへと首を向けた。


「そ、そんなぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


絶叫を上げ女バンパイアが硬直し、そのまま落ち始めた。


「マズい!あれは失神している!」


かなりの高さから落下を始めてしまった。このまま落ちてしまうと、いくらバンパイアでも打ち所が悪ければ死ぬかもしれない。


ドサッ!


「おっと!」


上手い具合にお姫様抱っこで受け止める事が出来たよ。


(しかしなぁ・・・)


余程の恐怖だったのか、気絶した顔がとても残念な状態だ。

元が美人だから尚更可哀想な状態だよ。

それに失禁もしてしまったのか、下半身がぐっしょりと濡れている。


「あなた、これ以上見るのは男として失礼よ。いくら敵だったとはいえ、ここまで辱めを与えてはダメね。」


「わ、分かった・・・」


ユウ達が俺の隣に降りてきたので、ユアに女バンパイアを預けた。

ローズが指輪の収納魔法から家を取り出し、ユアとアズが女バンパイアと一緒に中に入っていった。

中で彼女を介抱するのだろうな。

まぁ、あんな状態を見てしまったのだ。敵とはいえ可哀想だし、なぜか同情してしまっている。


(で!)


チラッと上を見てみると・・・


(うわぁ~~~、ドラゴンがまだ上に浮いているよ。どうする?)



カッ!



ドラゴンが緑色に輝いた。

あまりにも眩しくて目を開けていられない。


「くっ!」


どうやら輝きが収まったようだ。

ゆっくりと目を開けると・・・


上空に浮いていた巨大なドラゴンの姿が消えていた。


(どこに消えた?)


上に向けていた視線を下ろすと・・・


(誰だ?)


メイド服を着ている女性が俺達の前に立っている。

緑色に輝く髪にエメラルドグリーンの瞳のとても美しい女性だった。

フローリア様と似た雰囲気を纏っている感じがするのだが気のせいか?


「初めまして。」


その女性は和やかに微笑みながら深々とお辞儀をしてくれた。

動作が流れるようで見事なお辞儀だった。王城でもメイドは何人も見ているが、ここまで素晴らしい動作のお辞儀をする人は初めて見た。


「呼び出しにより参上しました。あの姿では刺激が強過ぎたようですね。勝手ながら人間の姿にさせていただきました。」


「は、はぁ・・・」


ギャップが激し過ぎて理解が追い付かない。

あんな巨大なドラゴンが、今、俺の目の前にいる美女に変化しただと?

ローズもユウも俺と同じで目が点になっている。


「私はエメラルドドラゴンのミドリと・・・」



【ミ、ミドリィイイイイイイイイイイイ!ですってぇええええええええええええええええええ!】



「うお!」


何だ!急にラピスの念話が入ってきた!

あまりの大声で頭の中がガンガンする。


【ラピス!急にどうした?】


「こ、これはミドリ様!」


(はい?)


なぜだ?ラピスの声が俺の隣で聞こえるのだが?


ゆっくりと顔をを声のする方に向けると・・・


「げっ!」


あのラピスが土下座をしていた!


(こ、こんなラピスの姿なんて!)


あ、あり得ない!

あの厚顔無恥のラピスがぁああああああああああああああああ!


(し、信じられん・・・)


急に現れたのは転移で移動してきたのだろうが、ここまでラピスが慌てて来て、しかも土下座までしている!

この世の終わりでないかと思う程の衝撃だった。


「ラピスさん・・・」


ミドリと自己紹介してくれた女性が優しくラピスの語りかけた。

どうやら2人は知り合いみたいだな。

それにしても、ラピスがここまで遜る程の存在なんて、もしかして?


「ここは神界でもありませんし、私はただのメイドなんですよ。ここまで畏まらなくてもよろしいです。」


「し、しかし・・・」


「それに、私は召喚に応じて呼び出された存在です。ですから、今の立場はあなた方が私よりも上なんですからね。」


「は、はぁ・・・」


何度も言うようだが、あのラピスがここまで気を遣うなんて見ていて面白いが。そろそろ助け船を出さないと永遠にラピスが土下座を続けてしまうだろう。


「ラピス、このお方は?」


俺がラピスへ話しかけるとゆっくりを顔を上げ俺を見つめる。


「改めてご挨拶しますね。私はエメラルドドラゴンのミドリと申します。竜の姿では大きすぎますし、普段はこのように人間に変化しているのですよ。」


(エメラルドドラゴンって・・・)


この世界では聞いた事が無い名前のドラゴンだ。

ん?

そういえば、ミドリさんは『神界』って言っていたよな?


「そうよ、レンヤ・・・」


ラピスが俺の疑問に反応した!

また心を読んだのか?


「ミドリ様は神界にお住みになっているのよ。エメラルドドラゴンはこの世界では神話で語り継がれている伝説の神竜よ。ブレスの一息で世界を滅ぼせる程に強大な存在よ。」


「し、神竜って・・・、そんな存在を私が召喚してしまったの?」


ローズが青い顔でミドリさんを見ている。

しかし、ミドリさんは変わらずにこやかに微笑んでいた。


「いくら私でもここまで破壊をする事は出来ませんよ。まぁ、収束ブレスならこの星を貫通させて、星の核を壊してこの星自体を爆発させる事は可能ですけどね。」


(おいおい、この星を爆破って・・・、結局世界を滅ぼす事に変わらないぞ・・・)


「それによ!ミドリ様はフローリア様と同じく超越神様の奥様なの!立場的にはフローリア様と同格なんだから!そんなお方を召喚するなんて・・・」


「はぁぁぁぁぁぁ~~~~~」と、ラピスが疲れたように長いため息をしてしまう。

神と呼ばれる存在を召喚してしまったからな。今回は分別のある方で良かったけど、邪悪な存在だと俺達の手に負えなくなる可能性もあった訳だ。


「ラピスさん、そんなに気にしなくても良いわよ。」


「ミドリ様・・・」


「私達はなかなか下界には行けないし、こうして召喚されれば堂々と行けるから悪い事ばかりではないのよ。美冬さんも冷華さんもこの世界に遊びに行きたいって言っていたから、今度は彼女達を召喚してね。フェンリル枠でなら召喚も可能なはずよ。」


「フェ、フェンリルって・・・」


またもやローズの顔が青くなってしまう。


「フェンリルも伝説の魔狼よ・・・、私の召喚術って・・・」


「ふふふ、あなたの存在は私達にもメリットがあるのよ。だから遠慮しないで私達を呼び出せばいいからね。」


「いやいや!そこまで不敬な事は出来ません!」


ラピスもローズと同じように青い顔になってしまった。

こんなラピスの姿って初めて見た気がする。

いつもと真逆の感じだしな。


最後にかなりのハプニングになってしまったが、面白い光景が見れたんだから良しと考えるか・・・




「レンヤ・・・、また失礼な事を考えていない?後でお仕置きよ・・・」




げっ!ラピスに勘付かれてしまった!

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