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114話 晩餐会

「テレサは寝込んでしまったわ。看護をしているアイからの報告だと2~3日は無理みたい・・・」


「そうか・・・」


シャルが申し訳なさそうに俺を見ている。


テレサは俺とシャルの関係を知って気を失ってしまうくらいにショックを受けてしまっていた。

目を覚ましたみたいだけど、かなり落ち込んでしまっていて、今は誰とも会いたくないと・・・

俺でさえも会いたくないと言っていて、そこまでショックを受けていたとは・・・


(テレサ・・・、本当にスマン!)


今はそっとしておいた方が良いかもしれん。

落ち着いたらテレサの見舞いに行かなくてはいけないな。何を言われてもひたすら謝るしかない・・・


「テレサの晩餐会の参加は無理みたいね。まぁ、今回の晩餐会は私達王族とごく一部の貴族だけが出席する非公式の晩餐会だからね。お披露目というよりも、レンヤさん達とこの国の親睦会みたいなものよ。後は先程の魔王襲撃で助けていただいたお礼も兼ねているわ。」


シャルが説明をしてくれているけど、彼女は本当に強い子だよ。

内心ではテレサの事を気にしているはずだけど、そんな素振りは全く見せていないな。


「レンヤさん・・・」


シャルが心配そうに俺を見ている。


「そんなに心配しなくても大丈夫よ。後はレンヤさんがテレサを受け入れる覚悟を見せるだけだと思うわ。妹だからとの理由でレンヤさんは今まで躊躇していたのだし、テレサもそれがずっと心配の種で、私が出し抜いのは悪いけど、1人の女性としてしっかりと抱いてあげれば安心すると思うわ。だからね、今度は私とテレサで一緒にね・・・」


「分かったよ。覚悟は決めたけど、ここの場所で言う事か?いくらテレサの事が心配だったとしても、ちょっとなぁ・・・」


俺の言葉でシャルの顔が赤くなってしまった。

だってさぁ~、後ろでアン達がニヤニヤした顔で見ているんだよ。俺とシャルの話をバッチリと聞いているし・・・


「レンヤ君、テレサちゃんの事は私達に任せて。落ち着いたら私達もお見舞いに行くしね。その時に散々と煽ってくるから、ちゃんと受け止めてあげてね。お兄ちゃんらしいところを見せれば安心するわよ。」


マナさんがニッコリ笑っているけど、テレサを煽るって・・・

興奮してイノシシのように突進して来ないか?そっちの方が心配だよ。


「仕方ないわね。当分はテレサちゃんにあなたを独占されてしまうけど仕方ないわ。」

ローズがヤレヤレといった感じで首を振っている。

「私達も悪ふざけし過ぎたからね。お詫びの意味であなたの独占権はテレサちゃんに譲るわ。しばらくは戦いもないだろうし、パン屋の方はエミリーちゃんが頑張っているし、王都の出店に力を入れられるから2人でイチャイチャしていなさいね。」


ローズの言葉にみんなが頷いている。


こうしてみんなの仲が良いのは助かる。

普段は『自分が自分が!』って、我先にグイグイ来るけど、お互いに助け合わなければならない時はキチンとお互いを思いやる事が出来る。

だからだろうな。みんなと一緒にいても嫌じゃないし、安心していられるのだろう。



しばらくシャルの部屋で休んでいると、シャル専属メイドのマイが部屋に来て、晩餐会の準備が出来たと連絡を受けた。

裸を見られた事で少し恥ずかしいと思ったけど、マイの方は普段通りに俺に接していたので、ちょっと安心した。


(さすがプロだなぁ~)




マイの先導で会場のホールに案内されドアが開き中に入ると、「おぉぉぉ・・・」と感嘆の声が上がった。

国王様に2人の王妃様、それと王子様達に10名ほどの貴族が整列をして出迎えてくれたが、みんなの視線が俺の後ろにいる女性陣へと注がれていたのはすぐに分かった。


「これほどまでに美しい方々とは・・・」


貴族の中の1人がボソッと呟いたけど俺もそう思う。

普段でも美人だと思っているけど、こうしてドレスを着てしっかりと正装をするとここまで綺麗になってしまうとは、さっきのシャルの部屋でみんなを見て思った。


(ホント、俺には勿体ない人ばかりだよ。)


こんな俺に惚れてくれるなんて、ありがとうしか言えないな・・・


国王様達の後ろで正装をし青色のドレスを着たシヴァがアイと一緒に立っていた。

そうだ、彼女はカイン王子と婚約したのだよな。

それにしても、彼女もラピスと同じくらいに綺麗な女性だよ。先代のシヴァよりも美人だと思うな。


その横には・・・


(誰だ?いや、記憶にあるけど詳しく思い出せない・・・)


アンと同じ銀髪の女性が立っていた。


その女性は俺達を見ると深々と頭を下げ、俺達の方へゆっくりと歩き始めた。

同時にアベル王子も歩き始めた。


そして2人で一緒にソフィアの前に立ち再び深々と頭を下げた。


「聖女様、こうしてお目にかかれる日が訪れるとは感激の極みでございます。そして、私の婚約者であるリーゼロッテを助けていただいた事には、どれだけ感謝してもしきれません。」


アベル王子が頭を上げ感謝の言葉を述べていた。


(そうか、隣の女性は・・・、思い出した!帝国の皇女だ!)


女性の方は顔上げると止めどなく涙が流れていた。

ソフィアが優しく抱きしめる。


「良かったです。貴方の生きたい意思があったからこそですよ。その意思がなければ蘇生魔法は成功しませんからね。こうして助けられる事が出来たのは聖女冥利に尽きますよ。」


「あ、ありがとうございます・・・、こうして伝説の魔法によって私は生き返る事が出来ました。一度は死んだ身、生まれ変わった気持ちで彼と一緒になって頑張ろうと思います。」


優しく皇女様を抱きしめているソフィアを見ると当時から変わっていない。

誰にも優しく困った人には分け隔てなく救いの手を差し伸べる。

その眼差しは文字通り聖女そのものだな。

今では女神様の力まで使えるようになったし、現世に現れた女神様としてずっと語り継がれるのだろう。


「勇者様・・・」


(ん?国王様に呼ばれたけど?)


「この度は勇者様方のおかげで、あれだけの戦闘にも関わらず、聖女様のお力により亡くなった者も蘇生し、奇跡的に死傷者も建物の被害も全くありませんでした。そして、皇女は正式にサーベラス帝国最後の皇位継承者の亡命者として、我が王国で保護する事になりました。皇帝が闇に堕ち魔王となった今、彼女、リーゼロッテ皇女殿下が正式な帝国の後継者として我々が認める事にします。この事に関しては他の国々も我々に賛同するでしょう。そして皇女からはアンジェリカ様へとお話があります。」


皇女様がソフィアから離れアンの前に立った。


「アンジェリカ様・・・」


そのまま片膝を付き深々と頭を下げた。


「どうか帝国を救って下さい。父は邪神に魂を売り、私達の帝国はもう今までの帝国ではなくなりました。このままでは何も知らない民がどれだけ犠牲になるか・・・、私の力では何も出来ません。そして、帝国の最後の見届け人として、帝国が滅ぶ様を見届ける使命があります。」


「リーゼロッテ皇女・・・」


アンがジッと皇女様を見つめている。


「アンジェリカ様!あなたは優しい魔王を目指すと仰っていました!そして差別の無い国を作りたいと!父はもはや人間ではありません・・・、これ以上罪を重ねる前に・・・」


俯いている皇女様からポタポタと床に涙が溢れている。


「お願いします!父を!せめて父を安らかに眠らせて下さい!そして、帝国に平和を!その平和を勝ち取る事が出来るのはアンジェリカ様!あなた様以外に託せる方はいません!」


しばらく沈黙が続いたが、顔を上げアンをジッと見つめている。


「どうか!お願いします!帝国をあなた様の理想としている差別の無い国に!今も苦しんでいる民を助けて下さい・・・、今の帝国は滅びるべきなのです・・・、長きに渡りプライドだけが増長し、民の事を考えられなくなった者が上に立ってはいけません。」


再び深々と頭を下げた。


アンが皇女様の前にしゃがんで手を握ると、皇女様がピクンと震えた。


「顔を上げて下さい。」


「アンジェリカ様・・・」


「一国の代表たる者が私のような単なる一魔族の者に頭を下げたらダメですよ。私とあなたとでは立場が違い過ぎますからね。」

ニコッとアンが微笑んだ。

「ですが、あなたのお気持ちは十分に伝わりました。」


アンの全身が金色に輝いた。

輝きが収まると、黄金の鎧を纏い背中には薄く金色に輝く大きな翼を生やしたアンが立っている。


「女神フローリア様の名に誓います!私は邪神を打ち倒し、必ずこの世界に平和をもたらす事を!皇女様、安心してこの国で待っていて下さい。いえ、次期フォーゼリア王国王妃様ですね。帝国の事は私にお任せ下さい。必ず民が幸せだと思える国を作る事をお約束します。」



「アンが協力するなら私も協力するわよ。」


ラピスも前に出でくる。


「もちろん私もね。帝国にある教会も組織を一から立て直さないといけないでしょうしね。」


ソフィアがラピスの横に立った。


ラピスにソフィア・・・

お前ら、美味しいタイミングで出てきたな。

もちろん俺も宣言させてもらう。


「俺達勇者パーティーが帝国を救う事を約束する。それが俺達がこの時代に甦った意味だろう。神話の時代から続くフローリア様と邪神との戦いの決着をつける為に・・・」


「勇者様・・・」


皇女様が涙を流しながら俺達を見ていた。

その隣でアベル王子様が優しく皇女様を抱きしめている。


(この2人ならお互いに支え合って更にこの国を良くするだろうな。そんな気がするよ。)


アレックス・・・

お前の意志はちゃんと子孫に受け継がれているみたいだな。


「アンジェリカ様・・・」


今度は国王様もアンの前に立ち頭を下げた。

その後ろに王妃様達も立っていたが、シャルの母親の方の王妃様は俺を見てパチンとウインクをする。


(もう悪戯は勘弁だよ・・・)


「我ら王国はアンジェリカ様を全面的に支援します。帝国を救い新たに国を興された際は、我が王国が一番の友好国になるようお約束します。この国を助けていただいたお礼にはまだまだ不十分ではございますが、わが国もアンジェリカ様と同様に差別の無い心の豊かな国を作る事をお約束します。」


その後ろから貴族達が盛大に拍手をしてくれた。


「み、みなさん・・・」


今度はアンが涙ぐみながらみんなを見ていた。


(アン、こうして理解をしてくれる人がいて良かったな・・・)




その後の晩餐会はもう大変で大変で・・・


宰相様からは「儂の孫はどうじゃ?」って、婚姻を結ぼうと迫ってくるし・・・

聞けば宰相様の孫はまだ2歳の子供だぞ!いくら何でも気が早すぎる!

もちろん、丁寧にお断りしました。


また、貴族達からももっと妻を娶ったらどうか?と縁談の話が来るし、それにアン達にも自分の息子達を売り込もうとするなんて・・・

みんな引きつった笑いをしていたけど、許されるならこの貴族全員、俺の『ギガ・サンダーブレイク』で丸焦げにしてやりったかったよ。

俺の嫁さん達に何という話をするんだよ!


(誰にも絶対に渡さん!テレサもな!)




晩餐会といっても俺達の接待会みたいな雰囲気だったけど、やっと終わり、今は転移で我が家に移動しリビングのソファーで寛いでいる。


隣を見ると・・・


「こうして2人っきりなんて初めてね。」


ソフィアが頬を赤くして俺に寄り添って座っていた。


(あいつら・・・、俺とソフィアに気を遣ってくれたな。)


今の我が家には俺とソフィアしかいない。


王子2人の婚約式やシャルの婚約発表と立て続けに行事が続くとの事で、しばらくは王城に泊まって手伝ってもらいたいと国王様に懇願されてしまった。

ラピスからは、

「この国は元々が勇者と繋がりがあったし、復活した勇者との繋がりを内外に見せたい思惑もあるみたいね。」

と言っていたけど、まぁ、俺もそう思う。

特に、俺とシャルの婚約式は大々的に行いたいみたいだけど、正直、俺を政治的に利用されるのはあまり気が乗らなかった。

ただ、今後はアンが帝国の領土に国を興す事もあるし、そうなるとこの王国の後ろ盾も必要だろう。俺の妻としてアンとシャルがいれば、アンの興した国と王国が同盟関係となって他の国に手を出される確率も低くなるだろうとラピスが分析していたな。


前世の時のように単に魔王や邪神を倒すだけではいけない。

当時は考えていなかったが、倒して平和になった後の事の方が大変なんだろうな。

この王国をここまで大きくしたアレックスには脱帽だよ。賢王として歴史に名を残した事は裏でどれだけ苦労したのだろう?


(お前が一番の英雄だったのだろうな。)


アン達は「私達がこの城に残れば問題無いから、2人で新婚気分を味わってね。」って言われ送り出されてしまった。

ソフィアの事も仲間と認めてくれたのだろうな。こうして送り出してくれた事に感謝するけど、後のお返しも考えると怖いよ・・・




「それにしても・・・」

キョロキョロとソフィアが周りを見渡している。

「ラピスから聞いたけど、これがフローリア様が以前使っていた携帯式の家なのね。こんな立派な家なんて、バカみたいな容量の収納魔法持ちならではね。感動しかないわ・・・」


「そうだな、おかげでこうして快適な生活を送れるから、フローリア様とラピスには感謝しかないよ。」


「そうね・・・」

寄り添って座っていたソフィアだったが、頭を俺の肩に乗せて更に密着してくる。

「ラピスも変わったわね。」


「そうだな、あの頃のラピスは殆ど感情を出さなかったし、男嫌いもあって俺もアレックスとも会話があまり無かったな。それが今は・・・」


「ふっ、そうね、ラピスがあれだけ積極的にレンヤさんと話をするなんて、あの時は想像もしなかったわ。私も初めてレンヤさんに会った時は、今のようにこうなるなんて想像もしていなかったわよ。」


「それは俺が一番ビックリしているよ。まさか2人から告白されるなんて想像もしていなかった。」


ソフィアがうっとりとした目で俺を見つめている。

「ホント、初めて会った時のレンヤさんなんて、殺気の塊で怖いってものじゃなかったわよ。」


「あぁ・・・、それはラピスにも言われたよ。」


「もうぉぉぉ~~~」

拗ねたような感じの表情で抱き着いてきた。

「今は2人っきりなのよ。私だけの事を見て、私だけの事だけ考えて欲しいな。」


「デリカシーが無くてスマン・・・」


「いいのよ。」


ソフィアが立ち上がり俺の膝の上に座った。

そのまま抱き着かれ、ソフィアの美しい顔は俺のすぐ目の前にある。

こうしてマジマジとソフィアの顔を見るのは初めてだ。


(本当に綺麗だ・・・)


「そんなところを含めても全部レンヤさんの事が好きだから・・・」


ゆっくりとソフィアの顔が近づいてくる。

お互いに目を閉じ唇が重なった。


どれだけ唇を重ねていたのだろう。

キスが終わり上気した顔でソフィアが俺を見つめている。


「一つお願いしても良いかな?」


「何だ?」


「ベッドまではお姫様抱っこで運んで欲しいな。恋愛小説でよくあるシーンじゃない?私もお姫様に憧れていたの。好きな人と結ばれる理想のシーンなの・・・」


恥ずかしそうな表情がとても可愛い。

かつての旅ではお互いあまり知る事は無かったけど、これからはずっと一緒だ。

少しずつソフィアの良いところ、可愛いところを見つけていこう。

ラピスと同じでお互いにもっともっと好きになれるはずだ。


「お安いご用だ。」


「きゃっ!」


ソフィアを抱きかかえると可愛い悲鳴を上げた。

そのまま転移でベッドの前まで移動した。


ソフィが俺の首に手を回し再びキスをした。


「レンヤさん、末永くお願いしますね。」


「こちらこそな。ソフィアに嫌われないよう頑張るよ。」


「大丈夫・・・、レンヤさんの事は絶対に嫌いにならないわ。愛してる・・・」


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