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108話 王都決戦⑯

「デウス?」


「そうだ。私はデウスと呼ばれている。」


目の前の女性がニヤニヤと笑っているが、ラピスがいきなり立ち上がり俺の頭を杖で殴った。


「痛ってぇええええええええええ!ラピス!お前!いきなり何をするんだ!」


しかし、ラピスは俺の頭を掴み思いっきり床へと叩きつける。


ドン!


「うごっ!」


思わず変な声が出てしまうし、床にぶち当てられた額が痛い!


「ど、どうした?ラピス・・・、本当に・・・」


そして、俺の隣でラピスが土下座をしている。


(マジかい!あの傲慢なラピスがいきなり土下座だって!)


「デウス様!主人が無礼な態度を取って申し訳ありません!」



「デウスだとぉおおおおおおおおおおおおお!」



あっちの魔神達の方も大声を出して慌てていた。


「バ、バカな・・・、あの究極の引き籠り神がこうして表に出てくるだと・・・」


「だが、あれは間違いなく神器だ・・・、そんなものを使えるのはフローリアか、創造主である神しかいない・・・」


「キィイイイイイイイイイいい!何で私よりも綺麗なのよ!あの神は男だって聞いていたのにぃいいいいいいいいいいいいいい!」



「そうよ!このお方こそ神界最強7柱が1柱!『機械神デウス』様よ!」


土下座していたラピスが立ち上がり、薄い胸を張って俺に説明している。


(う~ん、こうやって並ぶとすごく対照的だ・・・、どこが?とは言わないが・・・)


ギロッ!


ラピスが殺気を込めた視線で俺を睨んできた。


タラリ・・・


(す、鋭い!鋭すぎる!何で俺の考えが分かる?)


・・・


そうえば・・・、こんなやつだったな・・・



「機械神デウスだと!そんなのはあり得ない!どうして最上級の神がこんなところに来るのだ!ここは数多くある世界の1つに過ぎないのだぞ!」



「ふふふ・・・」

何だ?デウス様が笑っている。

「なぜこの世界に来たのか詳しく話をするのは置いておくが、今の私はフローリアの楽しい仲間の1人だ。この世界はフローリアが最重要の案件にしているのだよ。そして、この聖剣が限界になっていた事もあったから、私がこうして来たのだ。」


「神がこの世界に直接干渉するのか!そんな事を・・・」


ロキが叫んだ。



斬!



「「「う・・・」」」



(嘘だろう・・・)


デウス様が軽くあの巨大な剣を振り下ろした。それだけでこの城が縦に両断されズレている・・・

そして遥か彼方まで地面も割れているのが見えた。


「どうだ?この神器の威力は?本気になればこの星をも両断は可能だろう。」


魔神達の目の前の床も延々と切れて深い溝が出来ている。

城が真っ二つになったのだから、下の地面までずっと切れているのだろう。

この威力を目の当たりにした魔神達もさっきまで余裕が無くなって身構えていた。


「まぁ、私がここへ来たのは別に戦いに来たわけじゃないぞ。神はあくまでも下界には直接の干渉出来ない。その理は私も守るし、お前達魔神や邪神のような事はしないから安心しろ。そして、貴様らが目の前にいるのは邪魔だ!すぐにこの場から消えるんだな。私の気が変わって本気を出す前にな!」



「「「くっ・・・」」」



「勇者達よ!この勝負は預けた!だがな!スタンピードだけはどうするのだ?人間には勝てない強力な魔獣ばかりだ!せいぜい足掻くがよい!」


ヴリトラが叫び、ロキと魔王ガルシアが一緒に姿が消えた。


「くそ!」


「ダーリン!頑張ってね。次は邪魔者がいないところで2人で激しく愛し合いましょうね。」


急に表情が真面目になった。


「私達はダリウス様の神殿で待っているわ。覚悟が出来たら来なさい。今度は本気の殺し合いよ・・・」


そしてニコッと微笑んだ。


「必ずあなたを私のモノにするわ。私の魂があなたを求めているからね。うふふ・・・」


投げキッスをしながらデミウルゴスが消えた。


(何のだ?あいつは・・・、よく分からん・・・)



「ふふふ・・・」

デウス様が俺を見て微笑んでいる。

「腐ってもあの女は神だな。貴様の真の存在を察知しているとは・・・」


「どういう事です?」


「おっと!これ以上は言えないな。まぁ、言ったところでどうにもならん。」


左手に握られていたアーク・ライトをジッと見つめた。


「これが今回の私が来た理由だ。」


「アーク・ライトですか?」


「そうだ、この剣は私が遥か昔に作ったのだよ。この神器のプロトタイプとしてな。そこにあるミーティアも同様だ。」


「このミーティアも!」


テレサがミーティアを握りジッと見つめる。

そのテレサをデウス様が優しく見つめていた。


「そうか、お前がアレックスの推薦した継承者か・・・」


(アレックス?何で神がアレックスの名を?)


「レンヤとやら、そう焦るな。表情でバレバレだぞ。かつて彼に言われたのではないのか?不愛想に見えるが、実はとても分かりやすい顔だってな。」


「うっ!そ、それは・・・」


「「確かにね・・・」」


クスクスとラピスとソフィアが笑っている。


「今は詳しい事は言えん。だがな、私が来た理由・・・」


デウス様の手に握られていた折れたアーク・ライトが輝いた。


(一体何が?)


輝きが収まると・・・


「こ、これは!」


刀身の半ばから折れていたアーク・ライトが元に戻っている。

いや!元にではない!

今までよりも一回り刀身が長く太くなっていた。柄も以前より豪華になっている。

しかも!同じ黄金の輝きだったのが、デウス様の右手に握られている神器と同じ輝きを放っている。


「どうだ?気に入ったか?」


「あ、ありがとうございます!しかし、どうして?」


「ふふふ・・・」


デウス様が嬉しそうに微笑んでくれた。最上級の美人の笑顔に思わず顔が赤くなってしまう。


「本当に見れば見る程そっくりだよ。そうだな?」


そう言ってテレサへデウス様が視線を移した。


「はい・・・、あの時の事は幻かと思いましたが、やはり・・・」


「そういう事だ。貴様たち兄妹は選ばれたのだよ。兄は彼と・・・、そして妹のお前はかつての彼の前世の妻だった魂だ。だからだろう、彼に執着していたのはな。そして、アイリスの魂の欠片を持つ娘よ。」


「は、はい!」


シャルがあわてて返事をした。


「お前も彼と因果があったからな。これ以上は言えんが、今世は2人揃って幸せにな。」


「「はい!」」


テレサとシャルが一緒に返事をした。

何が何なのか俺には分からないが、どうやら、テレサとシャルは俺と結ばれる運命だったという事なんだな。

俺の秘密は何なのだろうか?デウス様とテレサが知っているみたいだが・・・


(あっ!あのデミウルゴスと言った魔神も何か知っているようだ・・・)


「さて、話を元に戻そう。」


デウス様がアーク・ライトに視線を移した。


「今回、この剣が折れたのは、あの魔神の魔法に耐えられなくなって折れた訳ではない。アーク・ライトは使用者の魔力を糧に攻撃力が変わる。だが、今のお前の魔力に耐えられなくなってしまったのだよ。正直、お前の潜在魔力は化け物クラスだ。そんな魔力を一気に蓄積してしまったからな。まさか神鉄で出来た剣を壊すとは・・・、規格外にも程がある。」


フワッとアーク・ライトが浮かび俺の前まで移動し浮いている。


「さぁ、この剣は勇者専用でなく、お前専用にカスタマイズしておいた。もはや神器クラスといっても過言ではない剣になっただろう。思う存分に力を発揮出来ると思うぞ。」


浮いているアーク・ライトをグッと握った。


「何だ!これはぁあああああ!」


突然、頭の中に何かが流れ込んでくる。


【無蒼流を習得しました。称号が『勇者』から『勇者王』へとクラスチェンジします。】


勇者の称号を得た時と同じように頭の中に声が聞こえた。


「無蒼流・・・、勇者王・・・」


「ふふふ・・・、無事に覚醒したようだな。お前の魂が本来持っていた技だ。それ以上の技も使えるだろう。彼女達と力を合わせればな。」


デウス様がとても嬉しそうにしている。


「おっと!忘れていた。」


そう呟くと、今度はテレサが握っていたミーティアが輝いた。


「これは!」


「驚くことはない。ミーティアには今までリミッターをかけていたのだよ。本来の力に使用者が耐えられなかったからな。だが、お前は違う。あの剣術を継承したのだ、神界最強の剣術をな!これからは存分に戦え!兄妹で最強を目指すのだな。活躍を楽しみにしているぞ。」


デウス様の姿が薄く見え始めてきた。


「さて・・・、私はもう帰るが、後の事は頼んだぞ。これ以上の干渉は私は出来ん。だが、今のお前達ならスタンピードどころか魔神も恐れる事は無い!お前達の頑張りを期待する。」


「「「はい!」」」


スッとデウス様の姿が消えた。



クルッとみんなの方へ振り向いた。


「みんな・・・」


アンを先頭に全員が俺の前に並び、グッ!と親指を立てサムズアップしている。


「さぁ!まずはスタンピードを何とかしないとね。」


アンがグッと魔剣を構える。


「いえ!先にこの城を何とかしないとね。このままだと早々に2つに割れてしまうわ。」

そう言ってラピスが天井を見ながらため息をした。

「デウス様も加減を知らないからねぇ・・・、直すのは大変よ・・・、私がこの城を直すから、みんな、外の方は頼むわ。」



『それは私が何とかしましょう。』



(この声は!)


俺、アン、ラピス、ソフィアが顔を見合わせる。

この声には覚えがあった。


突然、ホールの中心部分に大きな光の玉が現われた。


徐々に輝きが収まると・・・、そにいたのは・・・


やはり・・・



「「「「フローリア様!」」」」



俺達全員が声を上げた。


そこには、アンと同じく黄金に輝く鎧を纏い、背中には金色に輝く大きな翼を広げたフローリア様が佇んでいた。


まさか、ここで実体化したのか?

アン以上に圧倒的な聖なる気配を感じる。


チラッと国王や貴族達を見ると・・・


全員が膝を付きフローリア様へひれ伏している。

ここまで強力な神気を浴びれば、普通の人ならああなってしまうのは間違いないだろう。


『みなさん、落ち着いて下さい。』


みんなが顔を上げフローリア様を見つめた。


『これから、あなた方はこの世界の救世主達の活躍を見ることでしょう。邪神、魔神に負けない彼らの力を!そして必ず世界を救ってくれる事を!』


そして、俺達へとウインクをしてくれた。


『この城は私が完璧に直しておきますよ。だから、あなた達は安心して魔物の討伐に向かって下さい。今のあなた達なら例え前代未聞の十万以上のスタンピードでも問題ないでしょう。いえ、軽々と終わらせてくれると思いますよ。』


不思議だ・・・


魔神が現われた時、十万匹以上のスタンピードの発生が分かった時、その時は何とかしないと思ってとても焦っていた。

そしてアーク・ライトも折れてしまい、かつて無い焦燥感に駆り立てられた。


だけど今は違う。

デウス様の励まし、そしてフローリア様も現われてくれた。



それ以上に・・・


俺の手に握られているアーク・ライト・・・


お前から伝わってくる波動がとても安心する。俺の最高の相棒だよ!

グッと掲げお前を見る。


(立派にそして豪華になったな。今のお前に釣り合うように俺も頑張らないとな!)


柄頭に埋め込まれている赤い宝玉が嬉しそうに点滅していた。


「よし!いくぜぇええええええええええええええええええ!」



サーチで王都へと迫ってくる魔獣達の反応を調べた。

魔神達の言った通り、恐ろしい数の魔獣が4方向から迫っていた。


「北から来る集団が一番多いな。その数は5万を下らないだろう。南は約3万、東と西からも2万づつ来ているな。北は俺が受け持つ。あいつ等の言った数よりもかなり多いぞ。」


アンとシャルが俺の隣に立った。


「私とシャルはレンヤさんと一緒に行くわ。」

「何でしょう?レンヤさんと姉様と一緒にいなければならないと思います。どうしてか分かりませんが、この3人で力を合わせなければならないと思うのです。」


「分かった。俺達3人は北へ行く。」



「それじゃ、私は南に行くわ。」

ラピスが杖をグッと構えてニヤリと笑った。

「メテオ以外にも殲滅魔法はいくつもあるからね。私の本気の力を見せてあげるわ。」


「フライ!」


ラピスの背中に大きな白い翼が生え飛び上がり、天井に空いた穴から大空へと飛び立った。



「私は東ね。大聖女の本気の力を見せてあげるわ。回復だけの私じゃないからね。」


ソフィアが翼を広げ天井へ飛び上がり、ラピスと同じように大空へ飛び立った。



「私は西を担当するわ。兄さんに真のミーティアの力を見せてあげるわ。」


テレサがミーティアを頭上に掲げた。


「ミーティアよ!真の力を!」


そう叫ぶとミーティアが白く輝いた。

剣の輝きがテレサの右手へと伝わり、右腕全体が輝き背中から銀色に輝く大きな翼が出現した。


「テレサ・・・」


ニコッとテレサが微笑んだ・


「兄さん、これがミーティアの真の力の1つよ。そして、それ以上の力も秘めているわ。」


フワッと浮かび俺の前に立った。そのまま俺の顔に近づきキスをされた。

すぐに唇が離れたがテレサの顔が真っ赤だ。


「ふふふ・・・、兄さんのパワーをもらったわ。これで元気100倍!次は兄さんから私にキスをしてね。」


(おいおい・・・、テレサは本当にブレないよ・・・、だけどな・・・)


「あぁ、頑張ったならな。」


「約束だからね。」

そう言ってフワッと再び浮かび上がり、同じように天井の穴から大空へ飛び立った。



「さて、俺達も行くか?」


後ろを振り向くとアンとシャルがコクッと頷いた。


「フライ!」


俺の背中から真っ白な大きな翼が生えた。まぁ、これはイメージの幻影だけどな。

フワッと浮かぶとアンもシャルも飛び上がった。


そのまま天井の穴へと飛び上がり、2人も俺に続いて飛んでくる。


神の世界、神界の魔物?そんなのは俺達にとっては何も障害にならないよ。

俺の気持ちを分かってくれるように、アーク・ライトの宝玉が点滅していた。






『行ってしまいましたね。』


フローリアがレンヤ達が飛び立った天井を見つめていた。


『さて・・・、みなさん、顔を上げて下さい。』


王族も貴族の全てがフローリアへ平伏していたが、その言葉で全員が顔を上げる。


『さて、この城を直しましょう。お話はそれからですね。』


壁や床や天井、この城全体が全て輝く。

その輝きが収まると・・・


「そ、そんな・・・」


国王も含めて全員が驚愕の目で周りを見ていた。


「これが本物の神の力・・・」


シヴァも驚きの顔で周りを見渡している。


今までの戦闘でボロボロになっていた接見の間が綺麗に直っていたどころか、まるで新築の城のように真新しい床や壁になっていた。


『私達神がご迷惑をかけましたからね。これはお詫びの気持ちですよ。』


ニコッとフローリアが微笑んだが、国王は深々と頭を下げている。


「そ、そんな勿体ないお言葉です!女神様のご尊顔をお伺い出来るどころか、こうして労りの言葉までいただくとは・・・、末代まで語り継がれる幸せでございます!」


『ふふふ・・・、そんな大げさな・・・』


フォン!


天井に四角い大きなパネルの様なものが4枚現われた。

各々のパネルには外の映像が映っている。


「こ!これは?」



『あなた方はこれから奇跡を見ることになりますよ。この世界の救世主の誕生をね。レンヤさんや彼女達の姿をご覧になりましょう。邪神、魔神にも負ける事のない彼らの姿をね。』



そう言って、フローリアの姿が消えた。


国王や貴族達は天井に残された映像を祈るように見ている。

その映像には大量の魔物が王都へと迫ってくる姿が映っていた。


「勇者達よ、そしてシャル・・・、頼んだぞ・・・、我らの希望を見せてくれ・・・」


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