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103話 王都決戦⑪

テレサにシャル、あの2人はどうなっている?


テレサはいつの間にかミーティアの所有者になっていた。

フローリア様の言っていた通りだったな。確かに俺の知っている人だ、いや!知り過ぎだよ!


まさかのまさかだ・・・


しかもだ!

ミーティアを握ってからはあいつの雰囲気がガラッと変わった。剣聖?いや、テレサの剣術はそんなレベルを超えている。

テレサが口にした神の剣術『無蒼流』・・・

あの剣術は俺達の技術を完全に超えている。多分だけど、純粋に剣術だけだと俺よりも強くなったのではないかと思うほどだ。

俺やアンがフローリア様の加護を受けているように、テレサも他の神の加護を受けたかもしれない。その神は剣術の神なんだろう。


(アレックス・・・)


お前の後継者が決まったぞ。俺の妹だけど、お前のような真っ直ぐな人間だ。ちょっと変わっているが、これからの俺の助けになるだろう。

しかしなぁ・・・、俺の妹が後継者と知ったら、お前はどんな顔をするかな?


【大丈夫だ、もう知っているさ。】


(その声はアレックス!)


何で?


【まさかと思ったが、さすがはお前の妹だよ。規格外なところは同じだよな。いつか遠い未来でまた会おう。】


(空耳で無い!間違いなくアレックスだ!)


ポロっと涙が出てくる。お前は神の世界に行ったのだな?そして俺達を見ているのか?



返事は無いが間違いないだろう。



いつかは俺もお前のところに行けるのだろうか?



【おっと!1つ言い忘れていた。俺の子孫を頼むぞ。悲しませるような事をすると、どうなるか分かっているだろうな?魔王よりも怖いセレスからのお仕置きが待っているからな。ふふふ・・・】



(おい!お前!何て事を言う!)


ふ・・・、あいつは神になっても変わっていないな。



あいつの子孫ならばシャルだよな・・・


そのシャルにも驚きだよ。

目の色が俺と同じ黒色に変わっていた。しかも、勇者の俺と同じように雷魔法まで使える。いや!それ以上の魔法も使っていた。

それにあの姿は・・・

どう見ても女神の姿だぞ。

シャルの翼は飛行魔法の幻影の翼ではない本物の翼だった。それにあの純白に輝く鎧。あの鎧はただの鎧ではない、多分だが、俺やテレサの聖剣と同じ金属だと思う。

選ばれしものしか使えない神の世界にある金属・・・


本当に驚きだ、シャルは俺達の仲間になるのが決まっていたなんてな。

あの町での出会いは偶然ではなかったのだろう。

こうして俺と出会い一緒になる運命だったのだろうな。



「レンヤさん・・・」


(はっ!)


「レンヤさん、どうしたのです?」


ソフィアが俺の顔を覗き込んでくる。


「いや、ちょっと考え事をな・・・」


「そうですか・・・」


ジト目で俺を見てくるが・・・


「絶対に女の人の事を考えていたでしょう?ダメですよ、私以外の事を考えたら、今度はパイルドライバーですからね。」


一瞬、表情の無い顔で俺を見てくる。


ヤバイ!


これは必ず実行する顔だぞ!石の床にそんな技を喰らったらどうする?ソフィアの実力なら確実に死ぬ!間違いない!


「待て!待て!落ち着け!今は緊急事態だからな!お前も色々と話をしたいようだけど、全部終わってからな!分かったか?頼む!」


ニコッとソフィアが微笑んでくれた。


「私はそこまで聞き分けが無い女じゃないから安心して。レンヤさんとはじっくりとお話しをしたいし、さっさとこの邪魔者を片付けましょう。」


そう言って腕をまくりブンブンと回している。


当時のソフィアとは全く変わったな・・・

あの頃は「ザ・聖女!」って感じでお淑やかな少女だったのに・・・

見た目は更に美人になってアンやラピス達と遜色ない程なんだけど、とてもお転婆な感じだ。さっきの技もそうだけど、どうやら肉体言語という言葉を覚えたような気がする。

かなりデンジャラスな存在になったのは間違いない。



「この愚か者がぁああああああああああああ!」



バリィイイイイイイイイイイン!



(何だ?この音は?)


「くっ!アイツらを閉じ込めていた結界が破られるなんて!」


シャルが鋭い目で魔族の方を見ている。


「兄さん、気を付けて!」

テレサが叫んでミーティアを構えた。

「アイツらは単なる魔族じゃないわ!元は人間だけど魔族の力を、いえ!魔族よりも更に強力な力を持った人間になったわ!アイツらは自分達の事を『魔人』と呼んでいるわ!」


(ラピスの予想通りか・・・)


やはりダリウスは人間に興味を持ったか。グレンやリズもその力を与えられ、あんな変貌をしたのだろうな。


「魔人か・・・、厄介な存在だな。」


俺が呟くと横にいるソフィアがニコッと微笑んだ。


「あら、そんなに気を付ける存在なのかな?私にとってはそんなに困らないわ。」


そう言って無造作に俺の前に出て、奴等の方へと歩き始めた。


「このぉおおおおおおおおおお!舐めるなぁあああああああああ!」


魔人達の中から1人がソフィアへと駆け出し殴りかかった。


「ソフィアァアアアアアアアア!」


思わず叫んでしまったが、俺へと振り向きニコッと微笑んだ。


「この女め!何をよそ見している!死ねぇええええええええええええ!」



「無理よ・・・」



スカッ!



「何ぃいいいいいいいい!」


殴りかかった魔人の拳を、ソフィアは僅かに身を動かしただけで紙一重で躱していた。


「このぉおおおおおお!この!この!このぉおおおおおおお!」


どれだけ魔人が殴りかかろうが、ソフィアはどの攻撃も紙一重で全て躱している。

しかもだ!その場から一歩も動いていない!


(ソフィア・・・、本当にどうなったのだ?強いってレベルじゃないぞ!)


「はぁはぁはぁ・・・」


ソフィアに掠る事も出来ずに攻撃をしていた魔人がとうとう肩で息をしてゼイゼイ言ってる。


「あら?もう終わり?でかい口を叩いた割りには雑魚だったわね。」


「こ、このぉおおおおおお!ふざけるなぁああああああああああ!」


目が血走り憤怒の表情で魔人がソフィアに殴りかかった。



「そろそろ終わりにしましょう。雑魚がどんなに頑張っても雑魚よ。」



ソフィアが呟くと、魔人の動きがピタッと止まった。

いや!止まったのではなく止めただと!


ソフィアの目の前で動きを止めている魔人だが、殴りかかった右腕の手首と肘があり得ない方向に曲がっている。

あまりにも一瞬の事だったから俺も微かにしか見えなかった。


(あれがソフィアの動き?信じられん・・・)


殴りかかった魔人の手首を右手で掴み、同時に肘に左手の掌を当てていた。

その状態で自分の腕を交差し右手を捻っていた。

そんな事をすれば肘は逆方向に折れ曲がり、手首は180°回転して捻れ手首の骨も折れていた。

折れたと言うよりも砕けた手首と肘から骨が飛び出している。


(ソフィア、容赦無いぞ!)


当時の優しく少しオドオドしていたソフィアと比べ、今のソフィアは甘さが完全に抜けていた。

肉体的強さ以上に精神的強さが際立っていると思う。

どれだけの修行をしたのだろうか?普通の修行ではあそこまで強くはなれないはずだ。


「うぎゃぁああああああああああああああ!」


腕をへし折られた魔人が折れた腕を押さえ悲鳴を上げていた。


「五月蠅い・・・」


とても不機嫌な顔でボソッとソフィアが呟いた。



ズンッ!



「あ”!」


唐突に魔人の悲鳴が止み、口を開けて硬直している。グルンと白目を剥き、口から泡が出てきた。


(うわ!)


俺は思わず股間を押さえてしまったが、周りを見てみると・・・


どの男も、魔人達も含めて真っ青な顔をしながら股間を押さえている。


(ソフィア!エグい!エグ過ぎる!)


まさかのまさか!

ソフィアの膝が魔人の股間にメリッ!と深々と食い込んでいた。

しかもだ!あの食い込みようはハンパじゃないぞ!確実に潰れている!それも!再起不能レベルに!


(お、恐ろしい・・・、ソフィアがそんな攻撃をするなんて・・・)


あの痛みは男にしか分からないが、絶対に喰らいたくない!

そんなえげつない攻撃をするソフィアには逆らえないかも?自分の身に降りかかかると想像するだけで、股間がキュッ!としてしまった。


今の攻撃だけでも再起不能になった魔人だったけど、ソフィアは本当に容赦しない。


「トドメ!」


軽く飛び上がり体を独楽のように回転し、スラッとした足を魔人の延髄に真上から叩き付けた。


ゴシャ!


鈍い音を立てながら魔人の頭部が顔面から石畳の床へとめり込んだ。


ドンッ!


そのまま右足でめり込んだ頭部を踏みつけた。

魔人が一瞬痙攣したように見え、そのまま体が崩れ始め砂となり消滅してしまった。



(瞬殺かい・・・)



「ねっ!言った通りでしょう?」


ソフィアが俺に向かってウインクをしてくる。


いやいやいや!

ソフィアさんや、ちょっと強過ぎ!

魔法ではラピス、剣ではテレサに、肉弾戦ではソフィアがトップのパーティー?


(俺の立場って・・・)


ちょっとぉおおお!500年前とは全く違うぞ!あの時の勇者パーティーも人類最強と言われていたけど、ここまでの破壊力は無かったぞ。それに今はアンもシャルも一緒になっている。それこそ今がこの世界で史上最強に間違い無いだろう。


(やはり神であるダリウスとの決着を前提にしているのだろうな。)


それにしても、彼女達の存在感が強過ぎるから俺の存在が薄い気がする。

一応、主人公なんだけどな・・・


気にしないようにしよう・・・



「ゾーン!」


(何だ?)


身長が2メートルを軽く超えるだろう大柄で屈強な男が泣きながら出てきた。


「よくも!よくも!俺の親友を・・・」


ギロリとソフィアを睨んだが、そんな視線にも全く怯えず、ソフィアの方も視線が鋭くなった。

しかも!ソフィアから発せられている殺気が尋常ではない!俺すらも背中に汗を搔いてしまう程だ!

そんな殺気をまともにぶつけられている魔人は大量に汗をかいて動けないでいた。


鋭い視線のソフィアだったが、急に優しい笑顔になった。

だが、笑顔とは裏腹に殺気が更に強くなっている。


「さて、少し体を動かしてスッキリしたから、本来の聖女としての仕事をしますかね。その後でゆっくりとあなたの相手をして差し上げますよ。」


晴々とした顔でソフィアが微笑んでいる。

ソフィアの聖女の仕事だって?肉弾戦だけじゃなくて?


神化エボリューション!」


ソフィアの全身が金色に輝き始めた。


(何が起きるのだ?)


バサッ!


俺の前には瞳が金色に輝き、背中に真っ白な大きな翼が生えたソフィアが立っていた。

まるでフローリア様が降臨したかのような聖なるオーラを発している。


「驚いた・・・」


「ふふふ・・・。これが1万年の修行の果てに習得した力ですよ。あの子だけが女神様の力を降臨させられる訳じゃないからね。」


シャルだけじゃなくてソフィアも女神化するなんて・・・


そして優雅に両手を頭上に掲げた。

翼も大きく開いた。


「女神の息吹!」


死体になって床に倒れていた騎士達の体が光輝いた。宙に浮き国王達の方へ移動している、

ゆっくりと床に置かれ輝きが消えた。


「「「うぅぅぅ・・・」」」


(そ、そんな!)


騎士達がゆっくりと目を覚まし起き上がる。

聖女のスキルの中には確かに蘇生魔法があったが、生き返る確率はとても低く、しかも対象が1人だけだ!その魔法を使うだけで魔力を全部使い果たす程だったはず・・・


それを十数人一度に・・・


しかも確実に生き返らせるなんて・・・



これが『大聖女』の力・・・



「リゼェエエエエエ!」


国王達がいる中で大声が聞こえた。

慌ててそっちの方に振り向くと、1人の男性が女性を抱えて大声で泣いていた。

その女性も涙を流している。


「私は・・・、確か殺されたのでは?傷が一つも無い・・・」


「リゼ・・・、奇跡が・・・、奇跡が起きたんだよ・・・」


「アベル・・・、私は・・・」


男性が更にギュッと女性を抱きしめていた。


「今は何も考えなくていいから・・・、君が生きてさえいれば・・・」



「どう?」


ソフィアが俺の横に立ち嬉しそうに見ていた。


「驚いた・・・、、まさかソフィアまでが女神様の力を使えるなんて・・・」


本当に驚きしかない。



「神域結界!」



ソフィアが叫ぶと国王様達のところと貴族達のところに薄く金色に輝く透明なドームのような結界が出来た。


「この結界はちょっとやそっとで壊れないから安心して戦って。上級魔法くらいじゃ傷1つ付かないからね。」



「舐めるなぁああああああああ!」


魔人の中で1番偉そうなヤツが右手を突き出した。


「デス・クラウド!」


そいつの掌から真っ黒な霧が湧き出し国王の方へ飛んで行ったが、障壁に阻まれ消え去ってしまった。


「だから無駄って言ったわ。」


ソフィアがニヤニヤしながらその魔人を見ていると、その魔人の後ろからガリガリな魔人が出てくる。


「魔王様!」


そいつに呼ばれた男が魔王か?

確かにさっきのガタイがデカい魔人と同じくらいに身長は軽く2メートルを超えているが、2人から発せられている威圧感が全く違う。それに他の魔人と違って額と側頭部に3本の角が生えているとはな。


「この場は私が!」


ガリガリの魔人が魔王に対して床に膝を付き頭を下げていた。


「イレイザーか・・・、例の街を血の海に沈める計画はどうした?」


「はっ!既に設置は完了し、起動を始めました。もうすぐにこの王都は魔獣で溢れ返って血の海になります。」


「ガルシア!貴様!民に手を出すとは、そこまで堕ちたか!」


国王が叫んでいるが、魔王は高笑いで機嫌が良さそうだが・・・


(ふっ・・・)


その顔がどうなるかな?


(ラピス、頼んだぞ・・・)


「ふはははははぁあああああああああああああああ!何とでも言えぇええええええ!俺は貴様の絶望した顔が見たいのだ!さぁ!この国が滅亡する様をこの目で見届けよ!」



「それはお前だよ・・・、魔王!」



俺が魔王に宣言した瞬間に、この接見の間から外へ続くバルコニーと、シャルの魔法で穴が開いた天井から黄金の光が差し込んできた。


「何だ!何が起きた!」


魔王が驚愕の目で外の様子を見ている。

ガリガリの魔人も信じられない顔で俺を見ていた。



「俺は勇者レンヤ」



「勇者だと!」


「お前達、俺の物語は読んだ事があるか?勇者パーティーの中で誰か1人足りないと思わないか?」


「まさか・・・、大賢者・・・」


魔王がギリギリと歯ぎしりをしながら俺を見ている。


「そう、ラピスもこの時代に甦った。そして、お前達の動きはラピスが全て読んでいたのさ。今の光は極大魔法の1つ『スターライト・アロー』だ。お前達自慢の召還魔法陣はラピスが全て潰した。貴族街を襲う冒険者崩れの連中も、スラム街の魔族もそろそろ全て片が付くだろうな。」


俺の右側にアンが、左側にソフィアが、後ろにテレサとシャルが立っている。


「さて、ラピスもそろそろ戻って来るだろうな。」


ギリギリと血走った目で魔王を始め魔人全員が俺達を睨んでいる。

アーク・ライトを掲げ切っ先を魔人達へと向けた。



「さぁ、決着を着けよう。そして、お前達の後ろにいる邪神ダリウス!貴様も滅ぼす!」

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