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102話 王都決戦⑩(シャルロット④)

SIDE シャルロット



(レンヤさん・・・、来てくれたのですね・・・)


ポロポロと涙が流れて止まりません。

誰かがフワッと優しく抱きしめてくれました。


「アンジェリカ姉様・・・」


とても優しく私を見つめてくれます。


「よく頑張ったわね。さすが、私の妹ね。」


「姉様・・・」


とても暖かい・・・

レンヤさんに抱かれた時も心が温かくなりましたが、アンジェリカ姉様の温もりもとても安心します。


(もう1人ではないんだ・・・仲間がいる・・・、新しい家族もいる・・・)


再び体の中から力が沸き上がってきます。

戦う力?いえ、みんなを守る為の力・・・


この力なら限界を感じません。いくらでも力が湧き出てくる気がします。


「シャル、テレサさんが頑張っているから私達も頑張りましょう。」


チラッとテレサを見ると・・・


「そ、そんな・・・」


見間違えるはずがありません!宝物庫にあるはずの聖剣ミーティアが!あの聖剣が!


「テレサがミーティアの継承者だったのね。レンヤさんの妹だけあるわ。」


聖剣ミーティアを手にしたテレサが圧倒的な強さで相手の魔人と戦っています。あまりの剣さばきの美しさに思わず見惚れてしまう程です。


(私も負けられないわ!)



「このガキがぁあああああああああああああ!」


リズが叫びながら再び真っ黒な火の玉を放ってきました。


「同じミスはしません!」


サッと右手を前に差し出します。グーングニルが私の手の上に浮いています。私の右手から青白い稲妻がパリパリと槍へと放電しています


「レールガン!」



ヒュン!



パアァアアアアアン!



「あれ?」


浮いていた槍が一瞬で消えてしまい。私に向かっていた炎の玉も、真ん中に穴が開いたと思った瞬間に霧散してしまいました。その延長にあったリズの右腕も肩から消滅しています。

それだではありません。リズの後ろにある壁も大きな穴が開いていて、全ての壁を突き破って遠く外壁まで穴が開いているのが見えました。


「ははは・・・、ちょっと威力が強過ぎたわ・・・、屋内じゃ使えないわね・・・」


背中に嫌な汗が流れてしまいます。

修理代がどれだけかかるのでしょう?


(私のお小遣いで足りるかな?)


はるか遠くまで飛んで行ってしまった槍が転移して私の手の中に戻ってきました。



「ぎゃぁああああああああああああ!」



我に返ったリズが悲鳴を上げています。

一瞬の事だったので何が起きたのか理解するのに少し時間がかかったようですね。

悲鳴から遅れて肩の吹き飛んだ腕の付け根から大量の真っ黒な血が噴き出しました。


「こ、この、ガキがぁぁぁ・・・」


憤怒の目で私を睨みつけます。


「たがが腕1本を吹き飛ばしただけで調子に乗るんじゃないわ!」


ピタリと血が止まります。


(何が起きるの?)


「そ、そんな・・・」


肩の傷口から赤黒い細長いものが生えてきたかと思った瞬間に、みるみるとその部分が膨れ上がり元の右腕に戻りました。

これは無くなった腕が回復魔法で元に戻ったわけではありません。単純に腕が再生したと理解しました。


「私の体は不死身よ・・・、いくら吹き飛ばされても再生するから、私を殺すのは不可能よ。どんなに神の力をもってしても私に勝てないわ。」


「ぎゃはははぁああああああああああああああああああああああああああ!」


耳障りな高笑いですね。とても不快です。




ですが・・・




そろそろ終わりにしましょう。




「倒すのは不可能と言っていましたね。それが本当か試してみますか?」


「ほざくな!たかが女神に力を借りただけのメスガキが!私の与えられた神の力を上回るのは不可能なんだよ!さっさと死ねぇええええええ!」


「それはお断りします。」


私の中に眠っている女神アイリス様の魂の欠片!今こそ真の目覚めです!



「召喚!バトル・ドレス!」



私の後ろに真っ赤な魔法陣が現れました。

その魔法陣の中から真っ白な甲冑が浮かび上がります。


「装着!」


私の体に真っ白に輝く甲冑が装着されます。まるでドレスのような甲冑でスカート部分まで白く輝く金属で出来ていました。

そして、私の背にはあの世界で見たアイリス様と同じく真っ白な大きな翼が生えています。

この部屋の天井に書かれている女神様の壁画みたいに。


「シャル・・・、その姿は・・・、お前は・・・、まさか女神様の生まれ変わりだったのか?」


父様達が驚きの顔で私を見ています。

そんな父様に私は微笑みました。


「父様、私は普通の人間ですよ。この力はレンヤさんと共に戦う為に頂いた力・・・、みんなを守る為の力です。その為なら私はどこまでも強くなれる、それが女神フローリア様の娘であられるアイリス様の力です。」


そしてリズに視線を移します。


「さて、この女神の鎧を纏った私も神の力を遠慮せずに出せるわ。私の女神の力か?あなたの悪魔の力か?どちらの力が上かはっきりさせましょう!」


ギリギリとリズが歯軋りをしています。

フワリ浮かび上がり上から私を憤怒の形相で睨みつけていました。


「ふざけるなぁぁぁ・・・、何が女神の鎧だ・・・、そんなものがこの世に存在する訳がない!勝つのは私だぁあああああああああああああ!その澄ました生意気な顔を滅茶苦茶にしてやるぅううううううううううううううううううううううう!」


絶叫しながらリズが私へと急降下してきます。


「飛べるのはあなただけじゃないわ!」


ヒュン!


フワッと飛び上がり、一瞬にしてリズの背後に回ります。


「いくらでも再生するといっても!これが無ければ飛べないわよね!」


槍を一閃させるとリズの背中に生えているコウモリの翼の羽根が根元からちぎれてしまいます。


「ぐぎゃぁあああああああああああ!」


悲鳴を上げながら墜落し床に激突しました。


「今度は私が上から見下ろす番になったわね。」


宙に浮いている私の視線には、床で蹲りながら私を睨みつけているリズがいます。



「このガキがぁあああああ!」


むっ!グレンが目を覚ましたみたいね。大剣を握り私に向かって飛び上がろうとしています。

大空の下ならいくらでも上に飛び上がれるのですが、ここは屋内、接見の間でいくら天井が高くても悪魔のグレンの力だと天井付近まで上昇しても届く高さでしょう。悪魔が2人・・・


(ちょっと厳しいかも?)


グッと槍を構えます。


「おっと、お前の相手は俺だ。」


(その声は!)


ガキィイイイイイイイイイン!


グレンの大剣がレンヤさんの聖剣で止められていました。


「グレン・・・、変わったな・・・」

レンヤさんが寂しそうにグレンを見ています。

「いくら人でなしのお前だったけど、とうとう人間を辞めてしまったのだな?そして、更に罪を重ねる・・・」


「無能がぁぁぁぁぁ~~~~~、俺に指図するんじゃない!」


キィイイイイイイン!


レンヤさんが聖剣を力任せにグレンごと振り切りました。あれだけのパワー、本当にレンヤさんは凄過ぎます。

聖剣を正眼に構えました。


「もうお前は救えない。女神フローリア様に代わり、俺がお前に引導を渡してやろう。」


「ふ、ふざけるなぁあああああああああああああああ!」


グレンが真っ赤な顔で絶叫しながらレンヤンさんへ迫り大剣を振り下ろそうとしました。



「ふん!」



レンヤさんの体が一瞬だけブレたと思ったら、その場から少しずつ体が薄くなり消えてしまいました。



「真っ向!唐竹割り!」


いつの間にかグレンの後ろにレンヤさんが立っていて、剣を下段に構え残身の姿勢を取っていました。



ズルッ!



グレンの体が中心から縦にズレ始めます。


「そ、そんな・・・俺が・・・、最強のこの俺がぁぁぁぁぁ・・・無能なんかに負ける訳がぁぁぁ・・・」


そのまま左右に分かれ床に転がってしまいました。

サラサラと砂のように崩れ始め、あっという間にその姿が無くなりました。


「シャル・・・」


「レンヤさん・・・」


レンヤさんが私を見つめてくれます。

その優しい視線が私に力を与えてくれます。


(レンヤさん、励ましてくれてありがとう・・・)


「グレェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッッン!」


リズの絶叫が響き渡りました。


「よくもぉおおおおお!よくもぉおおおおお!私のグレンをぉおおおおおおおおおおおおお!」


血の涙を流しながらリズがレンヤさんを睨んでいました。

そこまでリズはグレンを愛していたのでしょう。

だからって、何でも許される訳はありません。


今度は私の番です。

悪魔に堕ちたリズも・・・


私が安らかに眠らせてあげます。


これが女神の力を引き継いだ私の使命の1つです。闇に堕ちた魂の救済も・・・


「リズ!あなたの相手は私よ!間違えないで!」


ギロリとリズが私を睨みました。


「殺してやる!殺してやる!滅茶苦茶になぁあああああああああああああああ!」


「何!あれはぁあああ!」


思わず叫んでしまいました。

リズの体があの悪魔の姿から更に変化していきます。


上顎から2本の牙が生えて、鼻が黒く尖っていきます。

体から黒い毛が生えてきました。みるみると全身が真っ黒になっていきます。



「コウモリ?」



美人の部類に入っていたでしょうあのリズの顔が毛むくじゃらになって、まるでコウモリのようになってしまいました。

背中の翼もいつの間にか再生され、そう、まるでコウモリが人間の姿になったような感じです。

手足は先程と同様に黒い鱗に覆われていますが、指が異常に長くなり爪も更に鋭く禍々しい色になって伸びています。



「コロス、コロス・・・、ニンゲンハスベテコロス・・・」



発声器官も思考も変になったかもしれません。どう見ても理知的な様子は無く、獣がそのまま人間の姿をとっているのでは?



「シャル・・・」


(アンジェリカ姉様の声?)


振り向くとアンジェリカ姉様が立っていました。

しかし、その眼には悲しみの色が浮かんでいます。


「私の目には見えるの。あれがダリウスの力が暴走した状態・・・、もう元には戻せないわ・・・」


「姉様・・・」


「魂までが黒く染まってもう破壊の事だけしか考えられなくなっているの。輪廻の輪からも外れて生まれ変わる事もないわ。いくら敵だった者でも可哀想過ぎる・・・、だからシャル・・・」





「永遠に眠らせてあげて・・・、それしか方法が無いわ・・・」





「姉様、分かりました・・・」


グッと槍を構えリズだった者を見つめます。更に変貌が進み、もう人間の面影がほとんど無くなっています。


魂の救済が出来ないなら・・・


槍に私の神気を込めると、更に青白く輝きバチバチと放電が激しくなりました。



「ゴ、ゴロズゥゥゥ・・・」



リズが羽を大きく広げました。その羽根には小さな黒い蟲が大量に張り付き蠢いています。

こんなのが広まったらこの国が亡びるわ!


「そうはさせない!」


槍を頭上に掲げました。


「ギガ!サンダァアアアアア!ブレイクッッッ!」


ドオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!


天井を突き破り、巨大な雷がリズの上に落ちました。


「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


悲鳴が上がってそこにいたのは・・・


ブスブスと煙を上げ、まだわずかながら蠢いている肉塊がいました。


「これでサヨナラ!」


フワリと宙に浮き翼を大きく広げます。

槍をグッと前に構え一気に前に飛び出しました。

高速でリズに突撃し、一気に槍を突き刺しそのまま持ち揚げ上昇します。


「ライジングゥウウウウウ!インパクトォオオオオオオオ!」


バリバリバリィイイイイイイイイイ!


リズの全身が稲妻に包まれます。


「そしてぇえええええ!プラズマ・ボール!」


私の体の周りに青白い光の玉がいくつも浮かび上がります。


「数億度のプラズマで原子も残さず燃え尽きなさい!」


光の玉がリズの周りを舞って一気に大きくなりリズを包み込みました。



【ありがとう・・・、こんな私の為に泣いてくれて・・・】



そんな声が頭に響きました。

その時の私はいつの間にか涙を流していました。

あの変わり果てたリズに同情したからなのか?いくら魔物となり人の姿ではなくなりましたが、それでも私が初めて人の命を奪った罪悪感からなのか?

いろんな感情が私の中に渦巻いています。


だけど・・・


こんな可哀想な人は生み出してなりません!


(ダリウス・・・)


絶対にあなたを許しません!いくら神でも!


「リズ、いえリズさん・・・、安らかに眠って下さい・・・」




「シャル・・・」


(この声は?)


後を振り向くとレンヤさんが立っていました。

私を見てニコッと微笑んでくれました。

その瞬間、今までの思いが溢れ涙が出てきます。


「レンヤさん」


レンヤさんに抱き着きます。


(温かい・・・、私を包み込んでくれる・・・)


ダメ!涙が止まりません!


「シャル・・・」


「怖かった・・・、戦うってこんなに怖いなんて・・・」


ギュッと抱きしめてくれます。

今までの戦いを思い出してガタガタ震えていた私でしたが、レンヤさん温もりが私の恐怖を和らげてくれます。


「すまない・・・、俺が遅くなったせいで怖い思いをさせてしまったな・・・」


そんな申し訳なさそうな顔をしないで下さい。

私はこの国の王女です。国の危機には私も立ち向かわなくてはなりません。


それが戦う力を持った者の努めです。


(でも・・・)


こうしてレンヤさんを見ていると何かとても甘えたくなってきます。

昨日、久しぶりに会えたけど、ちょっとだけしか会えなかったから、ずっとこのままでいたい。

ずっと抱きしめて欲しい。


「だけど、シャル・・・、頑張ったな。」


そう言ってレンヤさんが微笑んでくれました。


レンヤさんが褒めてくれました。もう幸せで胸がいっぱいです。

私も嬉しくて微笑んでしまいました。


「だって、私はあなたの妻ですよ。妻は旦那様の手助けをするのは当たり前ですからね。」


もう我慢出来ませんでした。

レンヤさんに思わずキスをしてしまいました。


レンヤさんとのキス・・・



最高に幸せです!



唇が離れ幸せな気持ちでレンヤさんの胸に顔を埋めました。

ずっとこうしていたいです。


(はっ!)


我に帰って思わず父様のところへ視線を移してしまいました。



・・・



・・・



父様の握っている手がプルプルと震えています。

母様は口に手を当てて「ふふふ・・・」と嬉しそうに私を見ていますし、カイン兄様は大きな口を開けて唖然とした顔で私を見ていました。


(し、しまったぁああああああああああああああああ!)


レンヤさんが私の視線に気付き、一緒に父様達を見ていました。

ダラダラとレンヤさんの額から汗が流れ落ちています。

そうでしょうね、国王や王妃である父や母の前で堂々と抱き合っていますし、しかも!キスまで!

もう誤魔化しようがありません!


(やってしまった・・・)


咄嗟に離れましたけど、顔が思いっ切り熱いです!本当に火が出そうに熱いです!


「シャ、シャル・・・、俺はテレサのところに行くな。あっちもそろそろ決着が着きそうだし・・・」


レンヤさんがそのまま回れ右をしてテレサの方へとダッシュで逃げました。


「レンヤさん!ちょっと待ってよぉおおお!」


さっきの女の人が慌ててレンヤさんの後を追いかけて行きました・


「ふふふ・・・、私が聞いていた当時のソフィアさんとは全然違いますね。ホント、人の話は当てになりませんね。」


アンジェリカ姉様が笑ってレンヤさん達を見つめていました。



(えっ!)



私の聞き違いではなければ・・・


「ソフィア様?」


「そうよ、彼女は私の父を倒した勇者パーティーのメンバーの1人、『聖女ソフィア』よ。私と同じく500年の眠りから覚めたのよ。」


本当にソフィア様?

この城にある肖像画に描かれているソフィア様と比べると、かなり違う気がしますが・・・

確かソフィア様が魔王を討伐した時は今の私と同じ年齢だったはず。あれから大人になったらあそこまで美人になるのかしら?確かに面影はありますね。


それ以上に・・・

アンジェリカ姉様から信じられない言葉が出ました。


ソフィア様と同じ500年前から目覚めたと・・・

父親が勇者パーティーに倒されたと・・・



まさか・・・



アンジェリカ姉様は?



姉様を見つめるとニコッと微笑んでくれました。


「シャル、私の事は気になるでしょうね。そろそろ真実を話す時が来たようです。」


(アンジェリカ姉様の真実?)


アンジェリカ姉様はやはり・・・




ですが、姉様が誰あろうが私には関係ありません!

私が大好きで敬愛する姉様には間違いありませんから!


私は姉様を信じます。


だって、レンヤさんもラピス様もお互いに信頼し会っていますからね!

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