決闘の約束
「で、この後はどうすんだっけ?」
魔力測定の後、部屋を出た俺達は廊下を歩きながら話していた
「魔力測定を元にクラス分けは後日、発表されるから今日の所は自由行動が許可されてた筈だぞ」
「ふーん…なら、お前とは別のクラスになりそうだな?」
「ん?…あぁ、お前さんは知らないのか、魔力測定で黒が出た生徒や貴族以上の身分を持つ生徒はこの学園内での行動にかなり自由が効くんだよ、だから私は自分の意思で入りたいクラスを選ぶ事が出来る」
「なにそれ羨ましい」
どれだけの自由が効くかは分からないが、
色々と優遇されるんだろうな
「つーか、魔力無しの俺と一緒に居ていいのか?」
俺のそんな質問に麗花は呆れた顔を浮かべ…
「別にお前さんに魔力が無くても私になんの影響がある訳でもねえだろ、それに」
そこで麗花は言葉を切り…
「普通の連中と絡むより、お前さんみたいな変わった馬鹿と絡んだ方が絶対に面白い事になりそうだしな」
フッ、と笑みを浮かべながら、そう言うのだった…
「この最低女、隙あらば馬鹿っていうのやめてくんないかな」
「お前さんも大概だろ」
くだらない罵り合いをしていると、
「待て」
少し前に聞いた事のある偉そうな声が背後から聞こえた
俺と麗花はその声の主に振り返る…
「なんだジェスタかよ」
「誰だそれ?」
おいマジか、どんだけ周りを有象無象として認識してんだよ、この女…
「嘘だろお前……あのジェスタ・アル………ジェスタさんを忘れたってのかよ!?」
「お前さんもファーストネームしか覚えてねえじゃねえか」
いや仕方ないじゃん、帝国人の名前って長いんだよ
「おい、私を無視して話をするな、あと私の名前はジェスタ・アルトハイムだ!」
「なんすかジェスタさん、俺は今この最低女に俺に対する礼儀ってのを教えてるんで、後にしてもらっていいっすか?」
「礼儀がなってねぇのはお前さんだろ、麗花さんに対する礼儀を教えてやるよ、だから後にしてもらっていいか、ジェスタさん」
「少なくとも、私を無視してするような会話ではないだろう……というか、敬称を煽りで使うのは礼儀がなっているといえるのかな」
「……正論ぶつけないでもらっていいですか?ジェスタさん」
「馬鹿が露呈したな、恭也」
コイツも正論ぶつけられてる筈なのに知らん顔してんじゃねえよ、ツラの皮厚すぎんだろ
「まあいい、私は君に提案があるのだよ…クロナミ君」
「なんだ、要件があるなら言ってみな」
「先程の魔力測定の際の黒き輝き、実に見事だった……悔しいが、私は君よりも魔法使いとして劣っている事を自覚したよ」
……意外だな、難癖をつけてくるもんだと思ったが…
「だが、いくら君が魔法の才に恵まれていようと、それを妬み、君に危害を加えようとする者も居るだろう…
ならば、そうなった際、いくら君といえども助けが必要ではないかと思ってね」
貴族と言っても、案外まともな考え方するんだな、と思い
「…へぇ、意外とまともな事───」
「要は自分の傘下に入れってんだろ、回りくどい言い方すんな」
俺の言葉に割って入るように麗花がそう言い、
今更ながら、気付いた…
麗花の強大な力を自分の為に使いたいからこそ、こんな提案をしてきたのだ、と…
「私は私の認めた相手と以外、組むつもりはない、戦力が欲しいなら他を当たれよ」
「ほう……なら、そこの欠陥品は君の認めた相手だと?」
そう言って、俺の方を指さすジェスタ……
「欠陥品?……あ、俺の事?」
「指摘されないと気付かないのか?魔力を持っていないなど、才能以前の問題だろう、欠陥品と言って間違っているかね?」
そう言って、俺を嘲笑うジェスタ
すると、麗花が俺の前に立ち、ジェスタを正面から睨みつける
「…私が誰と組もうがお前なんかにどうこう言われる筋合いねえぞ、それに私もまだコイツを認めたって訳じゃない」
「え、そうなの?」
あの言い草だと、認められてると勝手に思ってたんだが…
「くっ……」
悔しそうな表情を浮かべるジェスタ…
「だが、ある条件をそっちが飲むなら、お前の下に着いてやってもいい」
麗花は指を一本立てながら、そう切り出す…
「条件、だと?」
「ああ、その条件さえお前が飲んでくれるなら、私はお前の手足になるし、お前の女になってやってもいい」
そう言って、ニヤリ、とした表情をする
「いや、戦力としてはともかく、君のような性格の恋人はお断りなのだが……」
「ああ、俺もジェスタと同じく、顔はともかく、彼女にはしたくねえな」
「お前ら二人とも蹴り殺すぞ」
明らかに不機嫌な顔になりながらも、麗花は話を続ける
「まあいい、条件ってのは簡単だ……タイマンで負かしてみせろ、そうすれば私はお前の下に付いてやるよ」
「ほう……その言葉に二言は無いな」
「おう、見事タイマンで恭也を負かした暁には私がお前の手足になってやるよ」
へぇ、タイマンで勝負を着けるなら、分かりやすい力関係が……ん?
「なんで俺?」
「私が戦ってもいいが、それだと反則に近いからな、代わりにお前さんが戦ってくれ」
「……ジェスタさん、手加減してくれますよね?」
「いいや、例え相手が欠陥品であろうと私は手を抜くつもりは無い」
いや、この人、魔力測定の時に見たけど赤に黄が混ざってたんだよなぁ…
口だけじゃなくて、普通に強いと思う…
「はぁ……仕方ねえな、俺も腹を括るとするか」
「なら、この決闘は決まりだな…安心するといい、決闘で負けたなら私は二度とクロナミ君を勧誘しないし、君の事も欠陥品と呼ばないと誓おう」
「俺が負けたら、俺がジェスタに麗花を押し付けられるのか…」
……あれ?勝っても負けても得しかなくね?
「因みにお前さんが負けたら、私がジェスタの下に付いてからはパシリとしてお前さんを使うからな?」
…マジで押し付けたくなってきたわ
「ならば、決闘の場所と日時はどうする?」
「今日の夜、学園の噴水広場でいいだろ…お前にも恭也にも準備の時間が必要だろうからな」
「了解した、ではまた夜に会おう」
そう言って、ジェスタは踵を返し、去っていく…
「やったな親友、私に認められるチャンスだぞ」
俺に向き直り、親指を立てながら、そう言う麗花
「俺は今日、お前に出会った事を猛烈に後悔してるよ」
なるほど、
確かにこの性格ならいくら優秀でも厄介払いされるわ…
「いきなり失礼なヤツだな…そうだ、この後時間あるか?」
「あるけど……また厄介事に巻き込む気じゃねえだろうな」
「いや、どうせ夜の決闘まで暇だからな……街で飯でも食いに行くとしようぜ、私が奢ってやるよ」
「帝都の高級焼肉に行こうぜ、焼肉」
「奢りって聞いた瞬間、顔を輝かせてんじゃねえよ、それに帝都は鉄道使わないと行けねえだろうが、そこら辺のラーメン屋で我慢しろ」
「ケチかよ……つーか、帝国にラーメン屋ってあるのか?連邦国じゃ一般的だけどよ」
帝国と連邦国は独自の食文化が発展している為、
連邦国で当たり前の料理も帝国では扱っていない可能性がある
「数は多くないが、学園に来る途中に屋台を見つけたからな、そこに行くとしようぜ」
「屋台!?連邦国でも中々見ねえぞ?」
「連邦国の職人が帝国でも広めようとしてるみたいだな、中々年季が入ってそうな見た目だったから、味は期待していいんじゃねえか?」
「俺、大盛りでアブラマシマシニンニクマシマシヤサイマシカラメで頼むけどいいか?」
「その店が魔法の呪文に対応してるならな…あと、食べ切れるんだよな?私がお前さんの手伝いする羽目にならないだろうな?そんな聞くからに濃そうなラーメンを食う気は無いからな?」
「俺は食べ物は残さない事に定評のある男だぜ?」
「ならいいさ、お前さんの好きなように頼めよ」
そう言って、麗花は俺の横を通り抜け…
「さ、行くぞ親友、昼飯ついでに街を見て回るとするか」
「おう、そうだな親友」
いつの間にか親友呼びされていたので、
俺もそう返す…
コイツとはなんだかんだで長い付き合いになりそうだな…
俺はそう思いながら、麗花に着いていく事にした…
中々、毎日投稿というのが難しいですね・・・