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公爵令嬢

麗花と握手を交わし、

俺はアシリア学園の校門へ向かう……

麗花も俺の隣に並び、他愛のない会話をする。


「そういや、私が噂で聞いた話なんだがな。

どうやら、今年の留学生の中には全く魔力を持っていない奴が居るらしいぞ」


魔力は本来、生まれた頃から備わっている物であり、

その質と量によって、それからの人生が左右されると言っても良い。

実際、帝国の貴族や皇族は魔力の質が良く、量も多く、

時折、平民から魔力の質と量が良い者が生まれれば、養子として平民から買い取る貴族もいるのだ。

そして、魔力が極端に少ない者は差別の対象となることもある。


「そりゃ、可哀想なこったな…帝国なんて魔力も差別の対象として見るような国じゃ、まともに学園生活を送れねえだろ」


「しかし、魔力を全く持って生まれなかったってのもすげぇよな、大抵はかなり微弱でもある事はあるはずなんだが…」


そう言いながら、麗花は俺の方を見る…。


「ん、どうした?」


「なに、その魔力の無い奴がお前さんだったら面白いと思っただけさ」


「もし俺がそうだったとしたら、俺が貴族サマに虐められてたら助けてよね」


「おう、木の枝を武器として渡してやる」


そう言って、ドヤ顔を浮かべながら、

親指をグッ、と上げる麗花


「魔法に対して、木の枝で対抗出来ると思ってんのか、このゲス女」


「いや、出来る訳ねぇだろ、馬鹿かよ」


「殴っていい?」


俺も大概だが、コイツは人の神経を逆撫でするのが趣味なんじゃないか、と思う程に的確に悪口を吐いてくる

一種の才能なんじゃないだろうか…。

すると、


「邪魔だ、平民」


突然、背後から偉ぶった声が聞こえる

振り向くと、そこには白い制服を身にまとった金髪の男と取り巻きのような男達が立っていた…


「私の通る道の先に立つな、何故、この私が平民などの背中を追わねばならぬ」


ああ、これが貴族か…

連邦には貴族制度などが無かった為、実物を見るのは初めてだ…

なるほど……俺、嫌いだわ、こういう奴…

俺と麗花は道を開け、


「ま、いいや…ほら、俺が譲ってやった道を通ってどうぞ、貴族サマ」


「そうそう、私達のような平民如きに譲ってもらった道を堂々と通って下さいよ、貴族サマ」


「……貴様ら、この私がアルトハイム侯爵家が次男、ジェスタ・アルトハイムと知っての愚行か?」


「いや、お前なんて知らん、ついでにアル何とかも知らん、だからさっさと通って下さいよ、侯爵の七光りサマ」


「ぶふっ!!」


麗花が俺の煽りに吹き出す

とりあえず、親の威光を借りてそうな奴だったから、

そう挑発したのだが、麗花からすれば、何故か面白かったようだ


「貴様…平民如き、虫けらがこの私に対して、なんたる口の利き方を……」


「貴族ってのは身分は高いのに沸点は低いのか?」


「ぶはっ!その煽り方最高だ!あははははは!!」


……ごめん、俺にはイマイチ、お前の笑いのツボが分かんない


「お、おい…あの二人、やばいんじゃねぇ?」


「ああ…よりにもよって、留学生が侯爵家に逆らうなんて…」


周りから、ヒソヒソとそんな声が聞こえてくる…

どうやら、侯爵といった爵位持ちに逆らうのは帝国では絶対にありえない事のようだった…

だが、そんな俺達とジェスタの間に割って入るように…


「双方とも、そこまでよ!」


一人の少女が現れる…

上質な絹を思わせるような綺麗な銀髪を後ろでクロスした三つ編みと長い髪、翡翠色の瞳、愛らしい顔立ち……

そして、ジェスタと同じく純白の制服に身を包んでいる…


「き、貴様は……」


「アインフィールド公爵家、ソフィア・アインフィールドです…貴族には貴族として、もっと正しき振る舞い方があるかと思います、平民だからといって蔑ろにしていい理由にはなりません」


そう言って、ソフィアと名乗った少女はキリッ、と

ジェスタの方に闇を感じさせない誠実な瞳を向ける…


「フ、フン……ここはアインフィールド家の顔を立てておいてやる…行くぞ、お前達」


「は、はい!ジェスタさん!」


そうして、ジェスタ達は俺達の開けた道を通っていく…

そして、すれ違いざまに…


「貴族に楯突いて、どうなるか教えてやる」


俺に聞こえるように、

小さな声でそう忠告するジェスタ


「……入学当初から変な奴に目を付けられたなぁ」


「ま、挑発したお前さんが悪いしな」


「いや、お前もしてたよね?」


「私みたいな美少女が挑発なんてする訳ねぇだろ」


「お前の謎理論なんなの?」


俺が麗花と醜い擦り付け合いをしていると、


「貴方達も貴方達です、貴族を相手にあんな発言……相手が相手なら、もっと酷い事になっていたかもしれないですよ」


「確かにな…ありがとな、お陰で助かった」


「お前さん、公爵家の娘さん相手に早速タメ口じゃねぇか……私からも礼を言わせてもらうぜ、面倒臭そうな奴に絡まれて飽き飽きしてたんだ、サンクス」


「お前もタメ口なんだよなぁ…むしろ、俺より気安いまである」


「構わないですよ、貴族として正しき振る舞いをする事、平民とも気兼ねなく接する事がアインフィールド家のモットーですし…

改めて名乗らせて頂きますね、アインフィールド公爵家が長女、ソフィア・アインフィールド、以後お見知り置きを」


スカートの裾を掴み、優雅にお辞儀をする


「おっと、それならこっちも名乗らせてもらうぜ、セントレア学院からの留学生、一ノ瀬 恭也だ」


「なら、私も名乗らせてもらうかね、セインアーク学院からの留学生、黒波 麗花だ、よろしくな、ソフィー」


すげぇな、出会って数分であだ名をつけやがった


「麗花と恭也ね、覚えたわ…今後会う事があったら、よろしくお願いしますね」


そう言って、再び優雅にお辞儀をし、その場を去る…


「……俺、突っ込まなかったけど、あの子、敬語と気安い口調が混じってるな」


「あれだろ、貴族としての優雅な喋り方をやろうとしてるけど、慣れてないんだろ」


「なるほど、そういう事か」


すると、チャイムの音が鳴る……


「急がねえと、遅刻するかもな」


「急ぐぞ、恭也!」


そして、俺達は正門へ向かって走って行く……


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