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あの日、守りたかったもの。  作者: のん
第1章 宝来 万海(ホウライマミ)
5/5

過去3






文化祭当日──



どこからも楽しそうな音が聞こえてた。




ステージ裏では最終確認が行われてた。






「1年、共学!やりきるぞー!」

「「「「「おおおーーーー!!!」」」」」




劇は、何事もなく、終わった。

客席もそこそこ埋まっていた。

反応も悪くなかった。





なのに、何か私はしてしまっただろうか?

「宝来、話あるから来て。」


演目終了後、先輩からの呼び出しだった。



講堂の裏に呼び出された。

制服に着替え、向かうと部活の先輩以外の先輩もいた。

「…あの、なにか?」




口を開いたのは、1個上の先輩だった。

「あんた、部則破ってるでしょ?」

…身に覚えがありません。



「どれでしょう?」

「っ!何個も破ってる訳?!」

聞き方を間違えた。



「いえ、どれを破ったんですか?

記憶にないので、どれを破ったと仰ってるのか教えてください…」


そして、身に覚えのない先輩から、ケータイの画面を突きつけられる。



「これ。──…梅村 美智男くんだよね?」



それは、あの日の。

放課後の。涙を吹いてる姿の美智男と、少し上を向いた万海が映っていた。




「これ!!美智男くんと付き合ってるんじゃないの!?って聞いてるの!!」


思い出した。

みっちーに、振られた先輩だ。

たしか…としか言いようがないくらい、確信はないけど。



「ありえません。

これキスしてる写真ならともかく…これで付き合ってるんじゃないのか、って言われても困ります。彼は友人です。」

というか、盗撮じゃんこれ。

失礼します、そう言って先輩方の答えを聞く前に立ち去った。




2階の廊下を抜ける。

片付けまで、何もすることは無い。

どこかで休もうとおもった。


「ねぇ、そこのお嬢さん?」

「!」


久しぶりに聞いた声だった


万年(ハンネン)おじさん…」

「おじさんは、やだなー、お兄さんにしといてよ。」




宝来(ホウライ) 万年(ハンネン)、彼は万海の父親である、起年(キネン)の弟である。

つまり、万海の叔父だ。




「え、なんでここに?」

「万海にも会いたかったけど、会いたい子がいたからさ…」

…会いたい子?

仕事終わりか、スーツ姿の万年に違和感を覚える。

「ふーん、それで?会えたの?」


「遠目だったけど、すぐ分かったよ。

そういえば、恵さんは、お元気?」


「そろそろ、お父さんか、万年さん来てくれないと爆発すると思う…」


「了解。また近々お家にいくよ」



万年は、そう言うと、

「じゃあ、また。」

と、万海が歩いてきた廊下を戻っていった。





万海も、休む教室を目指す。

空き教室になってるのは、自身のクラスだ。

扉を開けると。


「…ぁ」



「きゃ!」




…美智男がいた。



きゃ???



「何してるの?今日の演目に女装とかあったっけ?」


「ああああああああああああんた!!

ぶ、部活の方はどうしたのよ!?」



もう、きっとこれが素なのだろう。

と、腑に落ちた。

一緒にいればわかる。彼は可愛い物好きだ。



「部活の集まりとかないよ?

そもそも、呼ばれてもないし。

むしろ、みっちーのほうが、男テニの屋台みたいなのだしてなかったっけ?」


「お、おれは、今休憩だったから…」

思わず、美智男の姿をマジマジとみてしまう。

これで、筋肉とかなかったらほぼ女子だよなー…


「まーちゃん、何も言わないのかよ」


「なんとなく、そーかな?とは、思ってたけど。可愛いもん好きやし?

んでも、マリアとは張り合うじゃん?

そーゆー格好もしたいと思ってたの?」



あっけに取られてる、美智男は、諦めたかのように笑い始めた。



「バレてたのぉ?もー、やだー!

まーちゃんなら、分かってくれるかなー?とは思ってたけどね!思ってたけど!

ってか、マリアはあれはあの生き物が可愛いよね。」

思ったより、似合っていた。

口調も、マリアの衣装も。

少し丈が短いが、ふわりとしたスカートはなんとも似合っていた。



「みっちー、言いたくなかった?」

「みちって呼んでよ。

そっちの方が、ぽいでしょ?

言いたくないわけじゃないけど、受け入れてくれるかどうかは別問題だから…」



今度は逆だった。

美智男の溢れた何かを、万海はそっと拭った。





終盤。

キャンプファイヤーを囲む。




居残りしてもいいし、作業がなければ帰っても良いとされている。

マリアと2人で、解放されているベランダからキャンプファイヤーを眺めていた。


「終わったねー、万海ちゃん今度はもっと一緒に回ろうね!」

「そうだね」



「お、マリアにまーちゃん!」

1組の方から、美智男と千秋がベランダにでていた。


「みち、下に行かなかったの?」

「傍によったら、あれめっちゃ熱いんだよ!もう、熱すぎて千秋とここに涼みにきた!」

ちらっと、目線を千秋に向けたが、むしろ睨まれた。

相変わらず、私のことは嫌いらしい。


「あ。みて!万海ちゃん!靖だよ!片付け大変だよねー、サッカー部毎年生徒会のパシリらしいもんねー…


せーーーちゃーーーん!!!」

そうだね、と相槌を打つ前に、マリアは、キャンプファイヤーの近くで作業してる靖を呼ぶ。暗くてあまり見えないのであろうか。

靖は、首を傾げてこちらに両手を大きく降った。



赤い火が、ぱちぱちと音を鳴らし

上へと舞っていく。

「宝来、万海、」


呼ぶのも彼は嫌いなのだろうか?



「こい」




こちらを見つめる彼の目には、キャンプファイヤーの赤い炎の色が、片目に宿っているように見えた。

「ちょっと、いってくるね、」



マリアと、美智男に一言断りを入れ、誰もいない1組の教室の端にすわる。

「なに?」


「俺、おまえのこと嫌いだ」

小学生なの?って思うぐらい、ストレートに、はっきりとつげられた。



「みちの近くにいるから?」


「その前に、おまえ、女だし。

俺は、女嫌い。本当は話したくもない。

でも、美智男が話すからしゃべる。それだけ。」


「そか。大丈夫、私も千秋くんのことそんなに好意的に思ってないよ、」

これが最初のハッキリとした、千秋の万海への宣言だった。





△△△△△



やがて、季節は変わり、12月のキリストの生誕祭も高校3回目の定期試験も終えた年末。


この日は、おばあちゃんも、おじいちゃんもいない万海は万里と万年の家にいた。

「さ、2人とも暖かい格好してね、風邪ひいたら恵さんに怒られちゃうから」


「病院代なんてださないわよ!ってでしょ〜?にぃちゃんって母さんに弱いよなー」


「あ、あと今日俺の後輩も来るから。」

そう言われ、車に乗り込む。

「え、後輩!?女の人??」


「万里、残念だけど、男の人ですー」

ちぇっと、万里はいってるが、楽しそうにしてるのには変わりはなかった。




そして、紹介されたのが。



「どうも、大学時代、万年さんにお世話になりました、山下(ヤマシタ) (ヨシ)です。」

…それは、担任の先生だった。





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