表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの日、守りたかったもの。  作者: のん
第1章 宝来 万海(ホウライマミ)
2/5

知らされた事件




「けい…さつですか?」

身に覚えが無さすぎる。


「はい、テレビご覧になりましたか?

あなたの同級生、昼間(ヒルマ) 千秋(チアキ)が、殺人を犯したのですが。」


「ちあき…がっ?」

考えられないとこではなかった。

だって、彼は。


いつだって、誰かを殺したかった。


『解剖って面白そうだよね?

夏の自由研究それにしようか?』

楽しそうに、人の中身を知りたがり、お守りかのように怪しげな薬を持っていた。


「あなた、同じ学校でしたよね?

彼のケータイから何度か着信履歴があなたに残っていまして。

学校でも、覚えてますか?平成24年の5月辺りから何度か電話してましたよね?」


すぐにわかった。

危うくて。何かに怯えてて。

『万海といると、落ち着くわ。』

ある意味彼女は彼のストッパーだった。


「聞きたいのは、7月あたりのことですか。

前田(マエダ)くんのことですよね?」

「覚えてますか?」


忘れるわけが無い。

だって、あれは…


「前田くんが、(セイ)くんが、失明した前日ですよね。」


私の誕生日の前日。


『ねぇ、アイツ(前田)って、万海の何?』

『…ただのお隣さん…かな?

あー、でも、うちの弟いるじゃん?靖くんも弟いてさ、同じクラスだし、よく家にくるんだよ。

その時、靖がうちに迎えくるぐらいだけど』

電話越しだから気づかなかったけど。

あの日、彼は


『ふーん、目障りだね。』


どんな顔をして私と電話してたのだろう。


「あの日、そんな会話があったと。

では、昼間と宝来さんは恋人関係だったんですか?」


「近かったとおもいます。

でも、好きとも何も伝えられてませんし。

私も、大学はそちらの地元ではなくて、こちらを選びましたし。」

そう、逃げたかった…と思う。

彼からも、家族からも。


「あー、では、署まで来るとこは厳しいですよね?」

「いいですよ、丁度冬休みで、数日帰省する予定はありましたので。」

話すことに抵抗はなかった。




△△△△△


西 洋文(ひろふみ)と連絡先を交換したあと、すぐに彼女はテレビをつける。


ここ最近全くつけてなかったからか、テレビにうっすらとホコリがついてた


そして、ニュースに移る万海のツイートに焦りを覚えた。

彼女はすぐに持っていたリモコンの音量を上げながら、利き手でケータイを扱う。



聞きなれた着信音が数音なると、

「もしもし?」

スピーカーに切りかえる。

「あ、もっしー?まーちゃん?

え、ねぇまーちゃんのTwitterヤバくない?」

なんとも呑気な声だ。

だから電話したのに。

というか、電話して欲しかった。




「通知音とか全部切ってたから気づかなかったよ」


「相変わらずあんま見てないのに、ちーちゃんのことは見てるもんね…」


「だって、離れたから尚更…危うかっただろうし」


「なら、なんで、野放しにしたのよ…

本当、野放しにしちゃいけないタイプでしょ、あれは。

まーちゃんのおうち状況も分かるけどさー、あたしと一緒に住もうって話したじゃんかー」


「みちとは、住めないよ。男の子だし。」


そう。みちこと、電話越しのオネエ声は、梅村(ウメムラ) 美智男(ミチオ)。彼は、高校1年の時から、イケメンで通ってた。

高校時代、ほぼ万海、千秋の前では本性とも言えるおかまっぷりを発揮してた。



「ココロはいつでも乙女ですよーだ」




そして、高校3年の文化祭では、そのカミングアウトっぷりにもびっくりしたものだった。告白してきた女の子たちが思わず気絶するほどに。


「ってか、アカウント消してあげるから、IDとパスワード教えなさいよ。わからないんでしょ?」


「警察から電話きた、みちもきたの?」


「…来たわよ。出てやんなかったけど。でも、なんで…ほんとに。」




万海のケータイから、沈んだ美智男の声が

万海のケータイには、ものすごい勢いで、リツイートされてる画面そこには、



──────────────

2014/12/24

やってしまった

──────────────

2014/12/24

なにしたの?

──────────────



あの日のツイート。

なかなか、ツイートしない彼にしては珍しく。

思わず、リプライしたが帰ってこず。

心配になり、メールしたが返事はなく。

電話もしたが、出てくれなかった。




「自分の生まれた日に何してんだよ。千秋…」

美智男の問いに万海は応えれなかった




外の雪はいつの間にか止まっていた。




美智男と電話を終え、

再度自分の送った、リプライを見てた。

それに対して、知らない人からも返事が来ていた。




──知り合い?

──〇〇テレビ局です。お話を

──まみ、アカウント消したがいいよ

──何したか、しってるの?

──よく、友人でいられたよな

──おまえも狂ってんのか




思わずケータイをベットになげつける。


外はすっかり暗かった。

美智男に新しいアカウント作るか聞かれたが、作らなかった。




『万海、俺の誕生日…卒業しても祝ってくれるよな?』

「電話したのに、出なかったのは…これか。」




再び着信音がなる。

鈍いバイブ音。


表示名をみて、うんざりする。

「はい。」

「はい、じゃないわよ。

あんたふざけてんの?家出てからも迷惑ね、ほんとに。」

久しぶりの母親の声は、相変わらずヒステリックなものだった。

こちらの心配の声は無いのだろう。

万里(バンリ)は?」


「元気にしてるとでも?

あんたが家出てから、ずっと不良みたいなもんよ。」

「そか」


なら、元気にしてるのだろう。

「警察から電話こっちにもきてたんだけど、どーゆう事よ?

あんた、あのニュースになった男と知り合いだった訳?」


「学校が同じだっただけだし、たまに話してたぐらいだよ。

もう、連絡しないように言っとくね。じゃーね。」




ピッと、電話を切ると、座ってたベットに体を預けた。

明日は、飛行機で地元へと帰る。

万海は、ゆっくり視界をと閉じた。


△△△△△






搭乗アナウンスや、英語で到着のアナウンスがゆきかう。

彼はマフラーに顔を埋めながら、人を探してた。

ケータイには、


──もう着く


と、メールが届いてた。

あまり変わりのない、だが、少し髪が明るくなった姉が見えた。

「ねぇちゃん!」

「…!、万里、迎えありがとう」


むしろ、姉の万海の方がワンコのような弟の髪の毛が明るいシルバーに染まってたことに驚いてた。


「みっちーが、外で車回してるよ!

俺そっちのキャリーバッグ持とうか??」


「ありがとう、…みちも来てくれたんだ」

昨日はそんなこと一言も言ってなかったのに。


「本当は、ちーちゃんも誘って……」




その言葉を言い終える前に、申し訳無さそうに、万里の顔が歪む




「懐いてたもんね、万里」


「だって俺まじで、ねぇちゃんと、ちーちゃんくっつくと思ってたんだぜ?」

残念だが、それは無いな。

そう思ったが口にせず、ただ、万海は万里に微笑んだ。



「おー、まーちゃん久しぶり」

「外では、相変わらずそんな感じなの?」

黒い軽自動車があまりにも似合わない、見慣れた美青年がいた。




「だって、これから警察署だろ?

オネエでいくのは、なんかだめだろーが」

「…そか」

「みっちー、俺もついて行っていいかな?」

「万里は、来ても何も出来ねぇよ。

家帰っとけ、んで、まーちゃんおかえりパーティーの準備しててな、頼むぞ。」



万里は不服そうだが、美智男の応えに頷いた。



△△△△△


西 洋文は、年末にも関わらず、終わりそうもない書類に、その人相の悪さをさらに悪くしながら眺めていた。


「で?西、事情聴取終わったのかよ?」

「終わるも何も、あいつ素直にスラスラ話してくれましたよ?」


むしろ、スッキリした顔で、自分の殺しのことを話すもんだから、

こっちがイライラしたものだった。

でも──…


「でも、宝来 万海のこと聞いても、話してはくれなかったっすね。」

「あー、今日聴取がある子か?」


『宝来 万海とは、よく話してたのか?』

その問いに、その男はキレイなその面を、酷くゆがめてこっちを見てきた。

『万海は、関係ない』


あれで、何も関係がないのはありえなさすぎるだろうに。


「西さん、宝来って方がきてますが…」

「おー、今行くわ。」


△△△△△


事情聴取をする部屋に着くと、部屋には2人いた。

「こんにちは、遠くからすみません、西、洋文です。」

「お電話うけました、宝来です。」

「付き添いで、千秋の友人の梅村です」


梅村。

おもいだした、電話出なかったやつだ。


「そりゃ、どうも。今日は、確認のための聴取なので、あまり、固くならなくてもいいですから」

2人の顔はそこまで固くはなさそうだが。



「では、早速ですが。」

「あ、これ黙秘も出来ますよね?」

「、みち?」


このイケメン、話さないつもりだな。

「できますよ、」

「わかりました」


「では、早速ですが、

昼間千秋は、いつからあのような思考でしたか?」

「あのような、とは、どうゆうことですか?」


「誰かを殺したい。というような…

特定の誰かではなく、誰かをという。」


「知りません」




笑顔でそう答える美智男に、西は笑顔で、そうですか。と答えた。

隣に座る宝来は、美智男を心配そうに見つめてた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ