第2話 仲間作りという名の修行
俺、弱いから修行しに行く……!!
……弱いって認めるのは、何だかな……
でも、雑魚モンスターに負けたからな……やっぱ雑魚なんだな……
待ってろよ……モンスターを仲間にしてやるから……(自分で戦え)
0-2 修行山
修行場となっている山の入口には、「モンスター注意!!」と書かれた看板が置かれていた。
「…………」
子供っぽい看板だな……というのが正直の感想だ。
「ここからモンスターが出てくるから、気を付けてね。最初だから、なるべくはアスレ、サポートするけど、少しずつ、サポート減らしていくよ」
「分かった……! 俺、頑張るよ……!」
「うんっ! シンなら出来るよ! きっと!」
セラと違って、アスレは俺に対して凄く優しいな……。アスレがセラみたいな性格じゃなくて良かった……。
「……! 気を付けて! 何か来る……!!」
気配を感じたのか、アスレは急に姿勢を低くして、警戒態勢に入った。俺も慌てて、しゃがみ、茂みに身を隠す。
ガサガサ……ガサガサ……ガサガサガサ!!
「「……!!」」
俺とアスレは茂みから離れ、さっと遠くに飛んだ。
「……! シン……分かったの!?」
アスレは俺の動きに驚きつつも、俺の傍に寄る。
「……何となくだが、後ろからガサガサ言ってたような気がしたから」
「す……凄い……」
アスレは目を輝かせた。すると……
ガサガサガサガサッ!!
「キュアアアアア!!!!」
茂みからモンスターが姿を現す。鳥のようなモンスターだ。
「……あまり迫力のないモンスターだな……こいつ」
「このモンスターはキュアード。見た目は確かに可愛らしいし、懐くと凄く甘えてくるけど……敵には容赦ないから、気を付けた方がいいよ」
なるほど……見た目で敵を騙して、ボコボコにするタイプってことか……。……それにしても、こいつ……モンスターなのに可愛い見た目していやがる。
「どうする? 戦ってみる?」
「いや……こいつ、仲間に出来ないかな……?」
どうも、こいつは倒せそうにない。それに、倒すの、何だか可哀想だ。
「出来るよ! やってみる?」
「ああ!!」
そう言うと、アスレは、仲間にする方法・コツを教えてくれた。仲間にするには、まずやはり、仲良くならないといけない。そこでコツ1。木の実など、お菓子をあげる。モンスターによって、好みは違うが、キュアードのような鳥モンスターは、人間の世界にいる鳥と同じように、木の実等が好きらしい。ただし、お腹いっぱいになると、食べなくなる。食べなくなったところで、コツ2。挨拶する。モンスターにも礼儀ってものがあって、礼儀知らずの人には、懐かないとか。モンスターが挨拶を返してくれるまで、挨拶し続けなければならないらしい。
「……挨拶って、どうすればいいんだ……?」
「ああ、それはね、こうすればいいよ!!」
そう言って、アスレはキュアードの近くに行って、頭を下げた。
「……!? そんな近くでしないといけないのか?」
「まぁ、モンスターにもよるかな。あとは慣れ! アスレは慣れてるから基本、近くに行くけど、シンみたいな初めての人は、まずは少し遠い所から始めたらいいと思う。モンスターによっては、凶暴で攻撃してくることもあるからね……。そっから徐々に距離を縮めて……最終的には、今のアスレぐらいの距離まで縮められたらいい感じかなー」
なるほど。確かに、その方がいいかもしれない。アスレは何回も仲間にしたことがあるだろうし、攻撃されたところで、さほど痛くないかもしれない。寧ろ、攻撃をかわすのかもしれない。
「……で、モンスターが挨拶を返してくれた後は、どうすりゃあいいんだ?」
「誓いを交わすの!」
「……誓い? 何の誓いだ? そしてどうやってするんだ?」
アスレに尋ねようとすると、
「キュアアアアアア!!!!」
キュアードが再び鳴き、こちらに向かってきた。
「!??」
俺は動けずにいると、キュアードは俺の近くの枝に止まり、俺をじっと見ている。
「……? キュアード……?」
「!? 珍しい……キュアード自ら、人間に近付くなんて……」
「キュアア」
さっきまでの鳴き声とは違う、優しい声でキュアードが鳴く。俺のことを見極めているような……調べているような……そんな感じだった。
『シン。今、キュアードは貴方のことを見極めているみたい。慎重にね。アスレは少し遠くに行ってるよ。キュアードがアスレに、二人っきりにしてって言ってきたから』
俺はビクッとし、振り返る。アスレは目の色を水色に変えて、俺を見つめていた。するとスッ……と目の色が元の黄色に戻り、アスレは姿を消した。……頭に直接、声が……。
「……キュア……?」
キュアードがそっと鳴く。俺は振り向き、キュアードを見つめた。……優しい目だ。さっきの目とは大違いだ。俺はアスレに教えてもらったコツを実践することにした。アスレからいくつか渡された木の実を一つ、そっとキュアードに差し出す。が、キュアードは食べない。もしかして、俺と会う前に木の実をいっぱい食べて、お腹一杯なんだろうか……? ……いや、それにしては違う気がする。キュアードはじっと、俺のことを見つめていた。
「……キュアード……お前は、俺をどう見極めるんだ……?」
「キュア……?」
キュアードは首を傾げて、俺を見つめる。
「俺は見ての通り、人間だ。弱い種族なんだ。きっと、俺の仲間になっても、何もいいことはねぇぞ。……それなのに、お前は俺を見ている。見極めている。俺は……何もいいところないぞ……? どう見極めるんだ……?」
俺はそう呟くも、分かるはずがないと思った。相手はモンスター。モンスターが人間の言葉なんて……分かるはずがない。
「……キュアア……!!」
キュアードは俺の傍まで飛んで来た。
「……俺を殺すのか……?」
「キュア!!」
キュアードは俺の周りをグルグルと回っている。……殺す気はなさそうだが……一体、何の目的で俺の周りを……?
「キュア、キュア、キュア!!」
……何かを伝えたそうだな……。だが、残念なことに、俺はキュアードの言葉が分からない。……必死に鳴いているのに……申し訳ないな……。
「キュアー!!!」
キュアードは叫ぶように鳴き、俺の額に頭を当ててきた。
「……!?」
すると、炎のように赤い光が俺達を包む。何だ……これ……。そう思っていると、赤い光はスッ……と消え、キュアードは俺の額から頭を離す。
「……!? キュアード……!!」
離れたキュアードの首には、さっきまでなかったものがあった。
「キュア!!!」
キュアードは俺の傍に寄って、スリスリしてきた。
「……? もしかして……だが……さっきの赤い光は……誓いを交えた……ってことなのか……?」
とりあえず俺は、スリスリしてるキュアードをそっと撫でる。……フワフワしてる。そして、温かかった。
俺はキュアードを連れて、アスレを探した。アスレ曰く、キュアードに二人っきりにしてって言われたから、遠くに行ってるとのこと。
「……何処まで行ったんだ……? アスレは……」
「キュアー!」
どうやら、キュアードもアスレを探してくれている様子。声を上げて、アスレに居場所を知らせているようだ。
「……あまりうろうろするのも良くねぇか。こいつはともかく、俺は初めて来たもんだから、歩き回ると分からなくなる。それに、アスレも見つけにくくな――――」
「誰が見つけにくくなるって?」
「うお!?」
急にアスレが現れ、俺は思わず声を上げ、尻餅をついてしまった。
「あはは!! シンってば、間抜けだね」
「キュアア……」
アスレには笑われ、キュアードには呆れたような鳴き声を上げられ、精神が折れそうだ……。
「驚かすなよ……ったく。ってか、何処行ってたんだ?」
俺は立ち上がりながら、アスレに尋ねる。
「アスレもこの山、久しぶりだったから、散策してたのー!」
アスレは笑顔で答え、ピョンピョンと跳ねた。すると急にアスレは跳ねるのをやめ、俺の横にいるキュアードを見た。
「シン……もしかしてその子……さっきの……?」
「ああ。いつの間にか、懐かれたみたいで、何も分からないまま、誓いを交えたかもしれねぇ。ほら、見てみろよ。キュアードの首」
アスレはキュアードの首を見る。何かペンダントらしきものが首にかけられていた。
「……! このマーク……! このペンダント……! シン、貴方はキュアードを仲間にしてる!! 誓いも交わされている。どうやってしたの?」
アスレはペンダントに触れ、目を輝かせる。
「いや……それが、俺は何もしてないんだ。全部、こいつから動いてくれたんだよな」
そう言って、キュアードの頭を撫でると
「キュア♪」
と高く鳴き、目を閉じて、されるがままになっている。気持ちいいようだ。
「……!! そんなに懐かれているんだね。シンは、モンスターとすぐに仲良くなれる力があるのかもね」
アスレは笑う。……本当、性格が真逆だな……セラと。
「……あ、もうこんな時間だね。今日はここまでにして、下山しよっか。……全然特訓してないけどね……」
アスレは苦笑いし、シンに”帰ろ”と言わんばかりに、俺に手を差し伸べる。俺はアスレの手を取り、仲間にしたキュアードと共に下山した。特訓は何もしなかったが、モンスターを仲間にすることが出来たのは、大きな一歩ではないだろうか。……そう自惚れる俺だった。
やっと更新です。
読みにくかったら、ごめんなさい……。
あと、次話の更新も、遅くなると思います……。
気長に御待ち頂けると有難い限りです。