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第1話 人外の世界

0-1 ある親子の家


 どうやら異世界に転移してしまった俺。そして目の前にいるのは……明らかに人間じゃない親子。この世界は一体……。

「あの……貴方達は……」

俺はとりあえず、親子について聞いてみることにした。色々聞きたいことはあるが、まずはお互いのことを知って、そして助けてもらったお礼を言うのが最善策だろう。

「あぁ、申し遅れました。私はシェイラン村に住んでいます、セラと申します。そしてこの子は、私の娘のアスレです」

セラが言うと、続いてアスレも言った。

「初めまして。あたし、アスレと言います! 貴方みたいな生き物に会ったの……初めて!! 会えて嬉しい! 仲良くしよ!!」

アスレは目を輝かせて、ピョンピョンと俺の周りを跳ねる。

「あ、こら、アスレ……」

セラは困ったような顔をしながら、俺を見て

「結構やりたい放題しちゃうけど、悪い子じゃないので……仲良くしてやって下さい……」

そう言った。

「はい。そうします。えっと……俺はシンと申します。この度は……助けて下さり、ありがとうございました……!!」

俺は一気に早口で言い、頭を下げた。命の恩人に失礼なことは出来ない。

「そ……そんな、私なんかに頭下げないで……!! 上げて、上げて……!!」

セラは慌てて、俺の頭を上げさせる。そんなに慌てなくても……。俺は周りを見渡す。セラ・アスレ親子の家は、木で作られていて、どこか安心する構造だった。家具は主にアジアン風の物が多いが、所々に緑があって、自然とアジアンを組み合わせた感じは見事に安心感で満たされる。……俺の部屋はどんなんだったっけ……。………………。駄目だ、まだ思い出せない。

「ねぇ、シン。シンは何処から来たの?」

考え事をしている俺に、アスレは尋ねる。

「何処から来た……か。うーん……。…………」

「?」

必死に思い出そうとする俺にアスレは首を傾げて

「シンも覚えてないの?」

そう言ってきた。……”シンも”……? アスレの言葉が妙に引っ掛かった。

「……どういう意味だ? 俺も……って……」

「お母さんから聞いたの。人間はこの世界に来た時、今までの記憶が無くなるらしいの」

「!?」

そんなことがあるのか……? この世界に飛ばされた人間……全員が記憶を無くす……だと……!?

「記憶がないということは……やはり貴方は人間だったのですね。どうりで弱いと思っていました。あんな雑魚にやられる者なんて、まずいませんからね」

「よ……弱い……だと……」

「ええ、貴方は弱いです。力も武器も何も持っていない、雑魚以下です」

「うぐぐ……」

言い返せない。だって事実だから。何も持ってない俺が戦ったことで、すぐに倒れるだけ……。……ってか、この親、俺が人間と確信してから、口が悪くなってねぇか!? こいつ、こんな口調じゃなかっただろ!?

「だって、人間という生き物は甘やかすと駄目な生き物に育つと聞きますもの」

しかも、思ってることお見通しだし……。……ってか、まさかとは思うが……さっき、変な夢(?)に出てきた女性って……こいつ……? そう言えば、姿は見えなかったが、声調がこいつと似てるような……。

「……ふーん、頭はそんなに悪くないのね」

否定しなかった!! あの女性はこいつだったのか!!

「……こいつこいつって……私、ちゃんと名前あるんですけど……」

「……セラ、貴方って人は……とんでもなく凄い人だったんですね……」

「別にそうでもないわ。貴方が弱すぎるだけ」

”弱すぎる”という言葉が心に刺さるも、気になったことを聞いてみた。

「……俺がただ者じゃないってのは、どういうことですか……?」

「そのままの意味よ。貴方は人間だけど、今まで此処に来た人間等とは違うってこと」

セラは早口で面倒臭そうに言う。”今まで此処に来た人間等とは違う”……? どう違うんだろうか……。

グゥーー……。

お腹空いたな……。そういや俺、此処に来てから何も食べてないんだな……。

「シン、お腹空いたの?」

「ああ。此処に来てから、何も食べてないもんでなー……」

「アスレもお腹空いたー! ねぇねぇ、お母さん! 御飯にしよー!!」

アスレはセラの前でぴょんぴょん跳ねて言う。……何と可愛らしい……。……おっと、俺のことロリコンだとか思った奴? 俺はロリコンじゃねぇんだよなー。残念っ!! 残念賞にティッシュでもあげるわ。え、いらない? ……受け取っとけ! いつか使うだろ?(俺には邪魔な物でしかないから、返品されるのは、正直困るからな……。)

「あらアスレ、もうお腹空いたの? さっき朝御飯食べたばっかじゃない」

セラの言葉から、今は朝なのだと知る。……って、全然朝じゃねぇ!! 夜だよ、これ!!

「ああ、此処はね、1年中、夜みたいに暗いのよ」

セラはそう説明した。

「前までは、人間の世界と同じく、明るくなったり、暗くなったりしてたらしいのー。でも、アスレが生まれた時には、もうこんな感じだったらしいのー」

アスレが付け加える。……昔は俺のいた世界と同じだったのに、今はずっと夜……? 何か問題でも起きたのだろうか?

「……貴方、何も食べてなかったわね……。仕方ない、御飯、作ってあげるわ。ただし、次から材料集め、してちょうだい」

「材料集め……?」

「この村の近くに山があるわ。言えば、貴方が倒れてた山。あそこにね、たくさん食料があるの。それらを集めて、私の家まで持って帰って来て。料理は私がするから。あと、3人分、御願いね?」

「ええ!? あの山、モンスターがいるって!! 俺、何も鍛えてねぇし、武器もねぇのに……無理だろ!! あと、3人分って……かなりの量だぜ!?」

俺がそう言うと、はぁ……と溜め息吐いて

「仕方ないわね……。じゃあ、しばらくこれを使うといいわ」

そう言って、セラは俺に箱を渡す。

「その中に武器が入ってるから、しばらくはそれを使えばいいわ。ただし、いつまでもそれを使ってたら、強くなれないままだから、今日から私かアスレのどっちかが貴方を指導してあげる。厳しくするから、覚悟するのよ。アスレも御願いね」

「う、うん……! 分かった! アスレ、頑張ってシンを強くする!!」

「こんな感じでいいかしら」

「ああ。それで良い。これから宜しく御願いします……!」

明日から忙しくなりそうだ。体力が持つかは分からないが、こうまでしないときっと強くなれない。鍛えられない。弱い俺じゃ駄目だ。強くなるんだ……!!

「人間がどこまで続くか、興味あるし……」

セラはぶつぶつと独り言を言いながら、何やら食料を切っている様子。……速い。慣れた様子で次々と食料を切っていっている。……こいつらもまた、人間と同じなんだよな……。強いとか弱いとか関係なく。

「それじゃあ、シン! 特訓するよ! 此処じゃ、さすがに危ないから、外で特訓しよっ!!」

アスレは俺の手を引いて玄関に向かう。

「行ってきまーす!! お母さんっ!!」

「行ってらっしゃい。気を付けるのよ」


 アスレは俺の手を引いて、山の方へ走った。……最近運動していなかったせいか、少し走っただけで息切れがした。それに対してアスレは、全然余裕そうだ。

「山はねー、一番簡単なダンジョンなの。人間が鍛えるにはもってこいの場所! ちなみにアスレも此処で修業してたの!」

人間とか子供の修行場だったのか……あの山は……。

「さ、そろそろ着くよー!」

走って10分……ぐらいの距離か。歩くと、15~20分。近いっちゃ近いか……。入口らしきものが見えてくる……。

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