表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法にできないことはない  作者: 白辺 衣介
一章 バカ・ホライズン
9/30

バカ・ホライズン

 一踏破軍はアマナが怒ることも当然予見していただろう。クレイジーなのは確実で、ヤンデレを拗らせている節もあるアマナの前であんなことを言えば、殺害予告も止む無し。それこそ南無三。

 多少の冷や汗をかいているが、依然として圧は俺に向けたままだ。武人然とした態度は流石としか言いようがない。


「ジュン・ネリンよ。貴様は自分がどうしてこの女の下にいるのか考えたことはあるか?」

「ああ? そりゃあ――」

「生んでもらった。造ってもらった。ああ、それは確かに大きな恩だ。だが、貴様はこの二年でそれに見合う、それ以上の恩を、この女に与えたのではないか?」


 そう言われれば、そんな気がしないでもない。大恩を受けたのも、この二年でアマナの世話をしてきたのも確かだ。軽くアマナの十倍は働いたんじゃないだろうか。


「貴様がこの女の下にいる理由はもうないだろう? 何も人間と敵対しろと言うわけではない。我々が次へ進むために、少し協力してほしいだけだ。事が済めばすぐに返そう」

「俺がアマナの下にいる理由、ねえ……」


 アマナのため息とはまったく別種のため息を吐く。


「……ジュン……?」


 不安なのか、アマナが振り返って俺の名を呼ぶ。俺のことを造った存在のくせに、今俺が何を考えているかぐらい分からないのだろうか。


「確かに、理由らしい理由はねえかもな」


 そう言うと、アマナは泣きそうな顔をする。アマナのそんな顔を見るのは初めてなので、思わず吹き出しそうになった。


「ただ、アマナが俺と一緒にいる理由がある。強いて言えば、それが理由だ」

「そんなものが理由になるとは思えんな」

「だったら脳筋にも分かりやすく言ってやるよ」


 アマナを一瞥してから、一踏破軍に視線を戻した。


「俺はアマナが好きなんだよ」


 アマナが赤く微妙な顔をして、視線を明後日の方向へ飛ばす。口をすぼめてもごもごとわけもなく動かして、見るからに照れている。手元に目を落とせば、そちらも忙しない。


 乙女かお前は。キャラと歳考えろよ。


「それが造られた感情だとしてもか?」

「天然だとか人工だとか関係ねえよ、感情(これ)は俺のもんだ」


 恥じらってちらちらと俺を見るアマナには触れない。これ以上あいつを持ち上げようものなら俺の童貞が持っていかれる。あいつの処女を押し付けられる。とんだ等価交換だ。

 呆れ半分の答えでも一踏破軍は得心いったのか、豪快に笑う。笑うだけで空気がビリビリと振動する。何があっても近所に住んでほしくないタイプの奴だ。


「面白いものを聞かせてもらった。その礼としてはなんだが、今回はもう退こう。せっかく人間が疲弊した隙を突いたのだがな! ハッハッハッ!!」

「大人しく黙って帰れ」



 一踏破軍がモブ魔族と木っ端魔物を引き連れて帰った後、シガル砦は怪我人の対応に追われていた。俺たちの中には回復魔道を得意とする奴がいなかったので、そそくさと帰らせてもらった。

 魔王軍が撤退したことでレイは満足したのか、ファストに帰ってくるなり「じゃあ今日はこれで解散! ばいばーい!」と言い残して帰った。


 夕方になる前に帰って来られただけ喜ぶべきだろう。

 レオンは前述の通りに明日早朝勤務なので、休日を休むことに注力するため帰宅。残ったのは俺たち三人だけだ。


「私たちも今日はもう帰って休もうか」

「賛成です。私も一踏破軍を目の当たりにしてちょっと疲れました」


 トラブルメーカー、プロブレムクリエイターのアマナが外出して、寄り道もせずに直帰するとは珍しい。

 そう思っていると、名無に先行させたアマナが立ち止まって俺を見つめている。


「ね?」


 語尾にハートでも付いていそうな甘い声で、アマナが言った。



 こりゃあ部屋に鍵かけたぐらいじゃ対策になりそうにねえな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ