夢
幕が開けるには、何もかもが足りていないのだ。
――――
まぁ、足りないもなにも絶対にあり得ないんですよね。まさに夢で終わる話ですよ。
現実では起こり得ない。
夢現とはよく言ったもんだ。おいらのユザネは梦現だけんど。
ジジジジジー
それは、劇を観に来たお客様が必ず聴く音。
私の夢、それは、その音を奏でることである。
この物語のドラマを
是非作ってみたいのだ。
脚本、演出、監督、監督。
監督。いい響きだ。
だがこの物語たちに必要な役者は1人だけだ。
そう、1人だけ。
道化を演じる、不自然であり自然な演技ができる役者、ただ1人だけ。
全ての物語を1人でやってもらわねばならぬのだ。この物語たちの魅力はそこにあるのだから。
お客様など気にせず、ただ役に入り込んで欲しい。狂気に包まれてくれ。そして戻ってくるのだ。
この物語には狂気は必要不可欠。
お客様には内容よりも雰囲気で感じて欲しい。
この物語たちの世界に、役者は1人でいい。
飲み込まれていけばいいのだ、この物語に、この世界に。
ただただ集中して飲み込まれていけばいいのだ。
そう、それらはただの夢。
叶いもしない、醜く拙いただの夢。
PVのように、観客のいない劇を演じて欲しい
それもただの夢。